八月の銀の雪 の商品レビュー
全5話 タイトルになっている『八月の銀の雪』は日本の今の問題を考えされられながらも、自然の美しい核のお話も交え素敵なストーリーになっていました。 巻末の参考文献の多さが物語っていますが、人の心を科学のお話と並列しながら展開されていく内容は非常に勉強になりました。 それなのに、...
全5話 タイトルになっている『八月の銀の雪』は日本の今の問題を考えされられながらも、自然の美しい核のお話も交え素敵なストーリーになっていました。 巻末の参考文献の多さが物語っていますが、人の心を科学のお話と並列しながら展開されていく内容は非常に勉強になりました。 それなのに、読みやすい。 直木賞候補になったのも納得です。
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社会の中で生きにくさを感じた時、他の生きものに目を向けることで救われることがある。 人とは違う時間軸で生きている、人とは違う世界の見方をしているものたちがいる。それを感じるだけでも、違うんじゃないかな。 宇宙の茫漠な時間に想いを馳せた時、悩みは小さなことだと思うことがある。逆に...
社会の中で生きにくさを感じた時、他の生きものに目を向けることで救われることがある。 人とは違う時間軸で生きている、人とは違う世界の見方をしているものたちがいる。それを感じるだけでも、違うんじゃないかな。 宇宙の茫漠な時間に想いを馳せた時、悩みは小さなことだと思うことがある。逆に小さな世界の力強さ美しさを知り、力づけられることがある。 本作は、そんな自然と生きものに出逢う5つの短編。 生きにくさを抱えた主人公たちが、地球の層構造、クジラ、伝書鳩、珪藻、気象に魅せられた人に出逢うことで人生を見直すきっかけを得る。 それぞれの悩みの内容と出会う自然科学の話が見事にリンクしていて、ほんとにうまい。 どの話も優しく心に沁みてきます。
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6編の短編で構成されていて、表題作の「八月の銀の雪」がトップバッター。就職活動がうまくいかない大学生と地球の内核を研究するベトナム人留学生が主人公となっていて、最近コンビニに入るたびに外国人労働者が多くなったと感じていたので、初読みの伊予原さんにすんなりととけこんだ。 2作目の「...
6編の短編で構成されていて、表題作の「八月の銀の雪」がトップバッター。就職活動がうまくいかない大学生と地球の内核を研究するベトナム人留学生が主人公となっていて、最近コンビニに入るたびに外国人労働者が多くなったと感じていたので、初読みの伊予原さんにすんなりととけこんだ。 2作目の「海へ還る日」は子育てに自信が持てないシングルマザーと学術的な資料や研究に使う生物画を描く画家、「アルノーと檸檬」では俳優の道を諦めた男と伝書バトの本を書く元科学記者、「玻璃を拾う」は失恋した女性と珪藻アート作家、「十万年の西風」は原発の下請け会社を辞めた男と気象研究者と、それぞれに登場する主人公たちは現代社会で誰もが抱える悩みを持っている人たち。困った状況で、彼らは科学やサイエンスに触れることでヒントを得て、前向きな気持ちを取り戻していく設定だ。6編を通して登場する主人公たちに心を寄せるというより、会話文で紹介される蘊蓄めいた科学的な理にとても興味をそそられた。 読んだばかりの「少年と犬」と同路線だったからか、2作目の「アルノーと檸檬」が印象深かった。故郷に帰れない主人公と違い、死にものぐるいで家に帰る伝書鳩は読んでいて切ない。まだ通信手段がない時代には新聞社では伝書鳩が飼われ、鳩の飼育係が居た。その飼育係は定年後もアルノーと云う素晴らしい遺伝子を引き継ぐ鳩を飼い続け、遠隔地でアルノーを放つ。ところがアルノーは自分の巣へ戻る途中でアクシデントが起き長年帰ることができない。何とかたどり着くのだがもうすでに飼育者は死んでいた。マンションに建て替えられて巣へ帰れずに隣の古びたアパートのベランダへ降り餌をもらっている。鳩は太陽コンパスと体内時計、地磁気などにより方角を知る能力に優れ帰巣本能が高いらしい。「身近な鳥のすごい事典」で知識を補ったが、人間の勝手さに腹立つ思いがこみ上げる。地球は人間だけのものではないと改めて教えてもらう。シートン動物記の「伝書鳩アルノー」も面白そうだ。 6作目の「十万年の西風」も原発も絡めて改めて頭に入れて置かなければならないテーマだろう。福島県へ続く千葉の海岸で凧を揚げている気象研究者が語る会話に背筋が寒くなった。偏西風を利用してアメリカ西岸へ打ち上げられた風船爆弾などの話は知っていたが、気象学を研究していた人との絡みが何とも悲しい。 すべて6作とも設定はほぼ同じ。起承転結といった物語の展開を望む人向きではないが、ストーリーの中で核となり会話となり語られる蘊蓄(うんちく)は耳を傾ける価値があると思う。学問を究めた結果を知ることで得られる安心感を小説の中で表現できたらと語る著者の思うところだろう。単に学術書を読んで知識を得るのは退屈だが、こういう形で得られるのは有益だ。 デビュー作の「月まで三キロ」を読んでみたくなった。
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「月まで3キロ」によく似てた。 科学の話と人の物語が上手く結びついて、ほほーっとなるかんじ。 この人は科学がほんとに好きなんだなー。
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理系は苦手な分野のはずなのに、著者の柔らかく包み込むような表現力がクッションとなり一気に読み進めてしまいました。思い通りにいかない就活に悩む大学生とベトナム人コンビニ定員を描いた表題作は、どこへ着地するのだろうと思っていたけれど、思いもよらぬ壮大な話へと繋がっていて驚いた。どの作...
理系は苦手な分野のはずなのに、著者の柔らかく包み込むような表現力がクッションとなり一気に読み進めてしまいました。思い通りにいかない就活に悩む大学生とベトナム人コンビニ定員を描いた表題作は、どこへ着地するのだろうと思っていたけれど、思いもよらぬ壮大な話へと繋がっていて驚いた。どの作品も何でもない小さな日常を切り取ったエピソードから、登場人物を掘り下げていき最後には静かな感動が広がる。はるか昔から連綿と続く生物や大自然の神秘は、人間関係に疲れ果てている現代人の心をそっと癒してくれる。
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化学の世界を小説の中にうまく入れています。うちにも理系にすすむ娘たちがおりますが、我が子には何かが実ると信じてあげることが母としてできるこよかなと第2章を読んで思います。
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科学が絡んだ5つの短編小説 自然の壮大さ、生物の神秘が人の小さな心を癒してくれるようでした それぞれ違う分野の科学にまつわる話ですが、どれも面白くもっと詳しく知りたい…! と理工学部出身の自分としては、理系心をくすぐられました 耳を澄ませていよう。その人の奥深いところで、何...
科学が絡んだ5つの短編小説 自然の壮大さ、生物の神秘が人の小さな心を癒してくれるようでした それぞれ違う分野の科学にまつわる話ですが、どれも面白くもっと詳しく知りたい…! と理工学部出身の自分としては、理系心をくすぐられました 耳を澄ませていよう。その人の奥深いところで、何かが静かに降り積もる音が、聴き取れるぐらいに_φ(・_・ 2021/02/21 ★3.9
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眼科の待ち時間に、短編の1話目「八月の銀の雪」を読み始めたら、止まらなくなった。あぁ上野のカハク、しばらく行ってないわ。しまなみ海道沿いのレモン畑、京都の川沿いの道、五浦海岸と勿来。縁のある地名が物語に没入させてくれる。自然科学の知識に関する見識を拡げてくれる小説という立ち位置も...
眼科の待ち時間に、短編の1話目「八月の銀の雪」を読み始めたら、止まらなくなった。あぁ上野のカハク、しばらく行ってないわ。しまなみ海道沿いのレモン畑、京都の川沿いの道、五浦海岸と勿来。縁のある地名が物語に没入させてくれる。自然科学の知識に関する見識を拡げてくれる小説という立ち位置も、もの珍しいし評価されるべき点なのだろう。でも個人的にはむしろ、日本の様々な土地の歴史や、愚かささえも含んだ人間の営みを描いたことにこの小説の素晴らしさがあると思う。5話目「十万年の西風」で描かれた戦争と原発の話は、すべての日本人が知るべきことだと思った。
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高校時代、地学の先生が大好きで(恋愛的な意味合いではなく)、地学部に便乗してフィールドワークに行ったりしたことや、授業内容なんかを思い出した。 毎日生きてても、地殻のことや珪藻土のことなんか意識にないけど存在してるのですよね。伝書鳩のことや風船爆弾のこと、知らないことがなんて沢...
高校時代、地学の先生が大好きで(恋愛的な意味合いではなく)、地学部に便乗してフィールドワークに行ったりしたことや、授業内容なんかを思い出した。 毎日生きてても、地殻のことや珪藻土のことなんか意識にないけど存在してるのですよね。伝書鳩のことや風船爆弾のこと、知らないことがなんて沢山あるんだろう。駆け足で読んだけど、ただ面白いでは無く、自分の中に何かを残した本だったように思う。
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八月の銀の雪が一番印象に残っている。伊予原さんの本を読まなかったら、地球の中にどんなものがあるのかも知らなかった。科学で習わなかったこと、興味を持たなかったことが、たくさんではきかないくらいある。それを、物語を通じて知ることができる。フィクションだけど、ノンフィクション。「確か...
八月の銀の雪が一番印象に残っている。伊予原さんの本を読まなかったら、地球の中にどんなものがあるのかも知らなかった。科学で習わなかったこと、興味を持たなかったことが、たくさんではきかないくらいある。それを、物語を通じて知ることができる。フィクションだけど、ノンフィクション。「確かなこと」が心地良い。
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