寿町のひとびと の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
<目次> 序章 文庫版のための新話(寿町のニューウェイブ) 第1章 ネリカン 第2章 ヘブン・セブンティーン 第3章 愚行権 第4章 キマ語 第5章 沖縄幻想 第6章 帳場さん二題 第7章 さなぎ達 第8章 刑事 第9章 寿共同保育 第10章 山多屋酒店 第11章 寿生活館 第12章 人間の謎 第13章 白いズック靴 第14章 お前は何者か <内容> 初刊は2020年。朝日新聞社出版の「一冊の本」連載の記事をまとめたもの。文庫化に際し、序章を加えた。横浜・寿町は、自分の営業時代に、先輩から「あそこの町には車で行くな!当たり屋にやられるぞ!」と脅された街。事実、その周辺の街でたかられたこともある。自分のような一般の人間からすると、異様な街であり、異臭のする近づきたくない街なのだが、様々な事情でこの街に集ったもの達と、それを助けるべく集まったもの達には、それぞれ様々な人生がある。答えのない日々を、人間がもだえ苦しみながら、でもそれがよいことなのかもしれない。全うに生きているはずの自分たちの方が、かえって異常なのかもしれない。
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自分の地元の特殊な町の様子を描いた本、知っている町をもうちょっと知れるかな…程度で買ったのですが、私は何も知らなかった。 通った事もあるし見た事もある建物や商店。 しかし、それは通っただけだし見ただけだと気付かされた。 登場する苦しい生活を強いられている人達に、私はやはり偏見を持...
自分の地元の特殊な町の様子を描いた本、知っている町をもうちょっと知れるかな…程度で買ったのですが、私は何も知らなかった。 通った事もあるし見た事もある建物や商店。 しかし、それは通っただけだし見ただけだと気付かされた。 登場する苦しい生活を強いられている人達に、私はやはり偏見を持っている。 この本を読み終えた今、180°とは言わないが、真実90°くらいは見方が変わったと思う。 自分はこういう状況には絶対になりたくないから必死に生きようとか、そういう考えを持つ事でも、立派な理解なのだと思える。 真の無関心こそが悪と思う。 自分に出来る事を見付ける事が、ひいては自分の為にいつだって成る。
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寿町には行ったことがあるし、その成り立ちや最近の様子も少しは知っているつもりだった。 そこにどんな歴史があったのか全然わかっていなかったくせに。
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労働者の街であった寿も住民の高齢化が進み介護事業所のような福祉関係の施設が目立つようになりました。寿の変遷を知ることができるノンフィクションです。 寿共同保育っていうアナーキストのコミューンみたいなものが存在していたのは知りませんでした。
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寿町で暮らす人から支援する人まで、様々なひとびとの生き方や活動について。 お前は何者だ? の問いに、私は部外者であるとしか答えられないが、いつかあちら側に行く可能性も否定できず、でもその頃には寿町の性質も変わっているかもしれなくて… 間違いなく、寿町は変わりつつある、その兆しが後...
寿町で暮らす人から支援する人まで、様々なひとびとの生き方や活動について。 お前は何者だ? の問いに、私は部外者であるとしか答えられないが、いつかあちら側に行く可能性も否定できず、でもその頃には寿町の性質も変わっているかもしれなくて… 間違いなく、寿町は変わりつつある、その兆しが後書きにも書かれている。 かつて賑わいのあった寿町の様な形でなくても、社会のあちら側と言われる人間が存在する限り、新しい形の寿町は存在し続ける。 あちら側とこちら側という表現が成立しなくなるような、そんな社会を作っていくことが理想。 自分に何が出来るか?と問う。
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東京の山谷、大阪の西成と合わせて日本三大ドヤ街と言われている横浜の寿町。横浜の中心部にあり、めでたい名前ではあるが最貧困地区という現実。 その寿町を取材した本が出版された。 足かけ6年という取材期間。住民の高齢化と高い罹患率。取材した人をしばらく振りに訪ねると、もう亡...
東京の山谷、大阪の西成と合わせて日本三大ドヤ街と言われている横浜の寿町。横浜の中心部にあり、めでたい名前ではあるが最貧困地区という現実。 その寿町を取材した本が出版された。 足かけ6年という取材期間。住民の高齢化と高い罹患率。取材した人をしばらく振りに訪ねると、もう亡くなっていた、ということも頻繁にある。生活費をギャンブルや酒に全てつぎ込む人、貧困詐欺に無自覚に加担している人、病気で働けない人、そんな人たちを支援する福祉の人々、ドヤ街が形づくられる前から住んでいた人々、支える人、支えられる人、の様々な人家模様が描かれている良書だ。ルポルタージュとして、酔っぱらいの昔話を鵜呑みしていいのかという問題点もあるけど、故郷や肉親縁者との絆を断ってここに流れ着いた人たちの過去を追跡するのは難しいのだろう。 戦後の高度成長期、工場地帯には体ひとつで稼げる仕事が溢れていた。仕事のない地方から続々と出稼ぎ労働者が押し寄せ、彼らが泊まる安い宿泊所、ドヤ(ヤドというのも憚られるくらい粗末なヤドだったからドヤと呼ばれるようになった、と言われている)が建てられた。海上物流の拠点であった横浜港にも仕事は余るほどあった。働けば働くだけ金は稼げた。家族のために金を送る人が多かっただろうが、若くて、体も頑強な肉体労働者にとってドヤ街をとりまくネオンサインの歓楽街は魅力的だった。酒や女やギャンブルに溺れ、借金まみれになる人もいた。依存症になる人もいた。友人と思っていた人に騙され、借金を肩代わりして破産した人もいた。そして面目がなくなって、故郷に帰ることもできなくなり、この街から離れられなくなった。 寿町が他のドヤ街と違うのは、各地の経済がバブル崩壊とともに縮小していったにも関わらず、横浜だけはつい最近まで、みなとみらい地区の再開発という巨大プロジェクトが進行していたということだ。 常に住みたい街のランキングで上位になる横浜(横浜駅周辺とみなとみらい地区)を建設してきたのは、寿町に集まってきた労働者たちだ。景気の良いときは3Kと呼ばれた仕事を担ってきた重要な作業員たちだが、再開発も縮小し、工事現場でも大型機械化が進んで、人力に頼らなくなると、調整弁として使い捨てされたのも寿町の労働者たちだ。 こんな一等地に貧困地区を抱えなくてもいいじゃないか、彼らを他の地域に移して、再開発したほうが横浜の発展に繋がるじゃないか、そんな意見はチョイチョイ挙がるらしい。 井戸水の恩恵を受けておきながら、井戸を掘ってくれた人の恩を忘れるような横浜でいいわけがない。 そんな人はハマッ子失格!
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横浜の寿町、日本の三大ドヤ街の一つ。車でその周辺部はしばしば通るが、中に入ったことは一度もない。 もっとも最近はかつての賑わい?は薄れた。本来の日雇い労働者供給場所としての活躍は、20年前位から急速に衰えていると思う。今寿町に住んでいる人達はほぼ老人で、若い人の多くは精神の人だと...
横浜の寿町、日本の三大ドヤ街の一つ。車でその周辺部はしばしば通るが、中に入ったことは一度もない。 もっとも最近はかつての賑わい?は薄れた。本来の日雇い労働者供給場所としての活躍は、20年前位から急速に衰えていると思う。今寿町に住んでいる人達はほぼ老人で、若い人の多くは精神の人だという。 それでも昔は街の中に学童もあった。その学童の責任者が紹介されている。見た目はまんまドヤ街のおじさんだが、出身校は栄光から横国。そして鶴見の小学校教師時代は担任のクラスで色々ユニークな教育も行い、評判もよかった。しかしある年、6年の受け持ちクラスが荒れ(当時の鶴見では珍しくもないのだが)、家出女子も現れてその対応に苦慮。挫折を知らない彼は、学年途中で教師をやめてしまう。その後そのクラスは崩壊した。こんな経験を経て復活し、見初められて寿町に新たに作られた学童の責任者となる。そして、寿の子供達の熱量に魅せられてしまう。 そこの子供達は学校でも差別されるので結束力が強い。そして親をはじめ大人を信用しない。仲間内でしか通じない言葉を操り、ボランティアでやって来るフェリス女学院の生徒の鞄をパクったりする。でも彼はそんな子供達の中から高校進学を希望するものに対し、学童が終わってから毎晩無償で勉強を教え、毎年2~5人の生徒を高校に合格させてきた。 また、親が国大の教授で自分は通産省のエリート技官であった女性が、左翼の活動家と同棲し子供を授かり、寿で旦那は印刷工、彼女は自信で望んで日雇い労働者となり、子供を寿共同保育で育てた。 今は寿町周辺にも普通のマンションが建つようになり、ドヤもシェアハウスとかになり、そのうち本来の寿町はなくなってしまうと思うが、横浜駅周辺からみなとみらい地区に至るまでの膨大なインフラ整備用の労働力を何十年も供給してきたことは覚えておきたい。 それにしても上で紹介したような人達は、自分達で望んでやってきたし、これからも同様の人は出てくるだろう。このような街が無くなってしまったら、どこで暮らせばよいのだろうか。 あと、れいわ新撰組の山本代表についても触れておきたい。寿町の大イベント越冬闘争(いわゆる年越しイベント)に山本代表が来ていた。著者は彼についてエキセントリックな政治家としか見ていなかったが、彼が配膳の手伝い(選挙活動なら圧倒的にこちらが良いだろう)だけでなく、参加者が食べ終わった食器を洗っていたことに感心したという。まぁ偽善的と見る人もいるかもしれないが、自民党議員はもちろん、東大出みたいな共産党議員だって、絶対に寿町住人の食器など洗うことはないだろう。
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題名に「ひとびと」と銘打っている割には最終的に寿町の概要と歴史になってしまったのはつまらなく感じた。個人情報の問題もあるんだろうけれど、正に今、そこにいる「寿町のひとびと」を描いて欲しかった。
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横浜にある寿町。 そこに暮らす人々を、ホームレスとかヘルパーさんとか、帳場さんといったステレオタイプな括りで書くのではなく、佐藤さん 鈴木さんといったように個別にひとりひとりに取材して書かれたドキュメント。 そこには当然ステレオタイプではなく、さまざまな人生が描かれる。 個人的に...
横浜にある寿町。 そこに暮らす人々を、ホームレスとかヘルパーさんとか、帳場さんといったステレオタイプな括りで書くのではなく、佐藤さん 鈴木さんといったように個別にひとりひとりに取材して書かれたドキュメント。 そこには当然ステレオタイプではなく、さまざまな人生が描かれる。 個人的に知っている土地でもあり、感慨深いものがあった。
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一言で言うと面白かったです。かなり踏み込んだ取材をしていて、ウラ話のような話も多くて、支援する側される側の垣根を越えて人と人とがぶつかり合っていました。交番勤務の時に1人で暴動に立ち向かい、ヤクザに助けられた話は、今の世の中では考えられない状況でした。私も何かやりたい、と、思わせ...
一言で言うと面白かったです。かなり踏み込んだ取材をしていて、ウラ話のような話も多くて、支援する側される側の垣根を越えて人と人とがぶつかり合っていました。交番勤務の時に1人で暴動に立ち向かい、ヤクザに助けられた話は、今の世の中では考えられない状況でした。私も何かやりたい、と、思わせる内容でした。
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