ふたり、この夜と息をして の商品レビュー
図書館でたまたま目に入った作品。聞いたことのないタイトル、著者の名前も知らない。いつもならこういう衝動買い的な選び方はあまりしないのだけれど、マグリットの『光の帝国Ⅱ』を彷彿とさせる仄暗い表紙の写真と、か細くて繊細な裏表紙のフォントの雰囲気に惹かれて、吸い寄せられるように手に取...
図書館でたまたま目に入った作品。聞いたことのないタイトル、著者の名前も知らない。いつもならこういう衝動買い的な選び方はあまりしないのだけれど、マグリットの『光の帝国Ⅱ』を彷彿とさせる仄暗い表紙の写真と、か細くて繊細な裏表紙のフォントの雰囲気に惹かれて、吸い寄せられるように手に取っていた。 30分もかからずに流れるように一息に読んでしまい、ところどころちょっと泣きそうにもなった。優しい人といると自分も優しくなれる。作中でそう繰り返す高校生たちの素直さや純朴さに胸打たれるのは、わたしがニヒルでシニカルで、どこまでも捻くれた大人になってしまったからかなぁ。いつの間にか、自分に対しても他人に対しても、常に余分な思考や記憶やプライドでがんじがらめになって、シンプルに物事を捉えたり言葉にしたりすることが、本当に難しくなってしまったと思う。 著者は1995年生まれ、美大卒のグラフィックデザイナーさんとのこと。読み終わったあとで知った。丁寧で繊細で、細部まで温かい心遣いの行き届いた文章だった。今、読んで良かった。読書って本当にタイミングが大事なものだと思うから。
Posted by
大きなことは起こらないが、優しい気持ちになれる。 淡々と進む中で暖かさを感じられる。 一味違った青春のお話。
Posted by
読み心地のいい本でした。 優しい人が近くにいると、自分も優しい人になれる。 本当にその通りだな、と思った。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「どれだけ深く繋がっても、どうしようもなく分かち合えないものっていうのは、誰もが持っているものだよ。伝えられないことがあったとしても、私が私の友達を好きだと思う気持ちには、嘘はないわけだしね」 人の優しさに何度も胸がつまった作品。すごく、すごく良かった。突き刺す表現も心地良い表現も心に残るものが多くあった。 夕作と槙野、ふたりだからこそ分け合えた痛み。登場人物皆のその先が気になる。
Posted by
装丁に惹かれるように手にとった一冊 さぁ読もうとページをめくり、 装丁の写真 神木隆之介 で、手が止まりました。ん?あの神木隆之介?毎朝観てる神木隆之介?写真?写真撮影もするの?? 調べてみたら、あの神木君でした。多才だなぁ。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
主人公含めた5人の高校生がみんな優しい。優しい人の周りには優しい人がいるというのは、その通りだと思った。自分のことを好きと思えなくても、優しい人たちに出会えた自分のことは何だか否定できない気持ちに共感した。 保健の先生の人生の先輩としての達観した優しさには、私自身も救われた。
Posted by
高校生の頃ってなんであんなに他人の目線が気になるんだろう。過去を思い出して微笑ましさと苦しさで複雑な気持ちになる。 秘密を話す恐怖もわかるけど、やっぱり言ってもらえない限り人の苦しみを理解することなんかできないな〜 夕作も槙野も優しいけど、それ以上に周りの友人たちに恵まれていると...
高校生の頃ってなんであんなに他人の目線が気になるんだろう。過去を思い出して微笑ましさと苦しさで複雑な気持ちになる。 秘密を話す恐怖もわかるけど、やっぱり言ってもらえない限り人の苦しみを理解することなんかできないな〜 夕作も槙野も優しいけど、それ以上に周りの友人たちに恵まれていると思う。
Posted by
心の動きの描写が細やかで、女性作家の作品かと思った。 何となく、出てくる人は皆優しい。詩を読んでいるような後味が印象に残った。
Posted by
❇︎ 傷を抱えた主人公は周りの人と距離をとり、 誰とも深く関わらないように息を潜めて ただ毎日をやり過ごすように生きていた。 そんな主人公が偶然クラスメイトと 話すようになったことがきっかけで、 周りに少しずつ人間関係ができていく。 傷ついた心。 自分を守るための嘘。 人と...
❇︎ 傷を抱えた主人公は周りの人と距離をとり、 誰とも深く関わらないように息を潜めて ただ毎日をやり過ごすように生きていた。 そんな主人公が偶然クラスメイトと 話すようになったことがきっかけで、 周りに少しずつ人間関係ができていく。 傷ついた心。 自分を守るための嘘。 人との距離。 嘘をついている罪悪感に身を切る思いを 感じながらも、どうしとも踏み出せない一歩。 もどかしい気持ちと止まることが当然だと 理解して受け入れる共感。 夕作(うさ)や槙野と周りの人たちの 優しい想いに心が洗われます。 〜保健の先生の一言〜 君は自分を心配してくれている人のこと、 ちゃんと考えたことはある? この言葉をまっすぐ受け止めて苦しいと 感じれた主人公の夕作をいい子だな、 と思いました。
Posted by
切なさもありながら心が暖まる作品でした。 誰にも言えない悩みを抱きながら生きている者同士が少しずつでも前を向くことができたのが本当に良かった。 高校生、というのが物語に入り込めた一つの要因でもあった気がします。
Posted by