神さまの貨物 の商品レビュー
表紙はやさしいタッチで、雪の夜の森に一条の光と女性の絵。「自分の子どもを棄てる親の話などではない。そんな話はたまらない。」という導入。 ウソである。 表紙と導入からやさしい世界のあたたかな物語を期待して読み始めただけに、ギャップに沈んだ。 舞台は第二次大戦末期、ユダヤ、強制収...
表紙はやさしいタッチで、雪の夜の森に一条の光と女性の絵。「自分の子どもを棄てる親の話などではない。そんな話はたまらない。」という導入。 ウソである。 表紙と導入からやさしい世界のあたたかな物語を期待して読み始めただけに、ギャップに沈んだ。 舞台は第二次大戦末期、ユダヤ、強制収容所、強制労働に服する庶民と家族。優しさを持つひとはいるが、世界が絶望の中。やさしい世界の話にはなり得ない。 戦争を知るよい教材なのかもだけど、勝手に期待して勝手に失望して申し訳ないけれど、穏やかな気持ちでいたい今読んだことは後悔している。
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書店で装丁がとても気になり、いわゆるジャケ買いしてしまった一冊。行間もかなりあり、読みやすい。ですが内容は深いです、とても。表紙は、まめふくさんというイラストレーターさんで、とてもすてきなイラストです。
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フィクションとは言えない物語。 たった75年前に、こんな想像さえできない歴史があったことを、こういった本が語り継いで欲しい。
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第二次世界大戦のころの森に暮らす貧しい木こりの夫婦には子どもがいなかった。おかみさんは、雪原を走る貨物列車を見るのが好きだった。木こりは町に商品を運んでいると言うが、本当はユダヤ人を収容所に運んでいるのだった。時折貨物列車から投げられた紙を拾うが、おかみさんは字が読めなかった。そ...
第二次世界大戦のころの森に暮らす貧しい木こりの夫婦には子どもがいなかった。おかみさんは、雪原を走る貨物列車を見るのが好きだった。木こりは町に商品を運んでいると言うが、本当はユダヤ人を収容所に運んでいるのだった。時折貨物列車から投げられた紙を拾うが、おかみさんは字が読めなかった。そして、ある日列車の格子窓から手が伸び、きれいなショールにくるまれたものが投げられる。それは女の子の赤ん坊だった。おかみさんは、天からの贈り物だと自分の子どもとして育て始める。 はじめはユダヤ人の子を育てていると分かったら自分たちも殺されると反対していた木こりも、子どものあどけなさに負け同意する。 一方、窓から子どもを投げたユダヤ人の本当の父親は、赤ちゃんの母親や兄弟は収容所で殺されてしまうが、父親は生き延び終戦を迎える。女の子とおかみさん(木こりは亡くなってしまった)と、ユダヤ人の父親は…。 昔話のように「むかしむかし、大きな森に」と始まるストーリーは、過酷な時代を生き抜いた奇跡の物語だった。著者の父親・祖父が、実際に貨物列車に乗せられ最終収容所へ移送されたという。
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童話ような書き方だが、悲劇の歴史をベースに書かれている内容は重く深い。 祈ることは信じる力、それは強さになるのだと、木こりのおかみさんが示している。 赤ん坊の父親も同じ。娘が生きていることを祈り信じたから、収容所を生き延びる強さになった。 赤ん坊の存在が周りの大人たちに働きか...
童話ような書き方だが、悲劇の歴史をベースに書かれている内容は重く深い。 祈ることは信じる力、それは強さになるのだと、木こりのおかみさんが示している。 赤ん坊の父親も同じ。娘が生きていることを祈り信じたから、収容所を生き延びる強さになった。 赤ん坊の存在が周りの大人たちに働きかける力の強さを思う。 貧しい木こりの夫婦は、赤ん坊を託されると「世の中の重さも暗さも空腹も、貧しさも、自分たちの悲しさも、もう気にならなくなった」「世界が軽やかで確かなものに感じられるようになった」という。 赤ん坊は神さまからのかけがえのない贈りもの。愛そのものなのだ。 父親が娘と再会したシーンは、言葉にできない。ただただ号泣。掛け値なしの愛なのだろう。 エピローグに「愛があればこそ、人間は生きていける」とある。 あの時代、悲惨な状況を支えたのは愛なのだろう。今の時代、愛の重みは同じだろうかと考えてしまう。
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タイトルと梗概を読んで、なんとなく図書館で借りた本だが、とんでもない傑作だった。大人向けの童話(矛盾した表現だが)の体裁をとっているため、大きなフォントサイズ、すかすかの行間で、あっという間に読み終えてしまう。だが、心の奥深くを揺さぶられる。途中からぼくの頭の中では鮮やかなクレイ...
タイトルと梗概を読んで、なんとなく図書館で借りた本だが、とんでもない傑作だった。大人向けの童話(矛盾した表現だが)の体裁をとっているため、大きなフォントサイズ、すかすかの行間で、あっという間に読み終えてしまう。だが、心の奥深くを揺さぶられる。途中からぼくの頭の中では鮮やかなクレイメーションが上映されていた。簡潔な文章なのに映像喚起力がすごかった。
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子は宝。 子は命そのもの。 子は希望。 赤ん坊の赤いショールが、生きる命の象徴であるかのように色鮮やかに描かれている。
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人間は誰かしらからの愛によって生かされている。そう強く感じさせられる作品でした。 愛で満ちた家庭の描写はとても素敵でした。
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1930年代フランス。子供が欲しい貧しい木こりの妻が、貨物列車の窓から投げられた女の赤ちゃんを受け取る。その貨物列車は、ユダヤ人を乗せて強制収容所へ向かう列車でしょう。我が子の一人だけでも・・・。という父親の祈り。 戦争により、生きるものと生きられないものが選別された遠くない過去...
1930年代フランス。子供が欲しい貧しい木こりの妻が、貨物列車の窓から投げられた女の赤ちゃんを受け取る。その貨物列車は、ユダヤ人を乗せて強制収容所へ向かう列車でしょう。我が子の一人だけでも・・・。という父親の祈り。 戦争により、生きるものと生きられないものが選別された遠くない過去。 このお話は、フィクションですが、実際に起きたことの断片のひとつかも知れません。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この一冊に込められた、至上の思いを「愛」と呼ばずに何と呼ぼうか。 神とともに生きる人々の、その純粋で強い思いと、ヒトが簡単に心を悪魔と化してしまう恐怖を感じる。 命のはかなさと尊さ、そして、それを強く信じる人と、軽んじる人の対比。 戦争はひどい、つらい、苦しい、どれだけそんな言葉を並べても、きっといつの時代も戦争へと導きたがる人はいる。無垢で無辜で非力な民はどうやってそれから逃れられるのか。 死と背中合わせの中で救われた小さな命。それをまさに自分の命を懸けて守った人々の、その強い思いを信じたい。 きこりの妻の願いを受け入れた森の男の変化。その変化こそが、誰もが持っている無垢なるものへの「愛」なんでしょうね。凄惨な最期ではありましたが、彼が彼女たちと過ごした時間は、人生の最上の時だったのだと思います。 私は、この小さな小さな一冊を、そっとずっと誰かに送り続けたい、そう思いました。
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