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誓願 の商品レビュー

4.5

35件のお客様レビュー

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2020/11/21
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面白かった!一気読み!! ブッカー賞に外れなし!かもしれない。 最近読んだディストピア文学の中では、ピカイチの面白さだった。翻訳家さんに感謝!! 脱北者のことや、福音派のことやらがアレコレと想起されて興味深いのはもちろん、展開のスリリングさは前作以上。 生き別れの異父姉妹がお互いの言動に違和感を感じ合う場面。どちらかというとギレアデ側で育った姉の性格の方に親和性を感じてしまうのは、日本(あるいは東アジア?)では女性に対して抑圧的な場面がまだまだ多いことの証左のような気がしてならなかった。果たして、私たちは私たちの国の中に根深く残る「ギレアデ」を自分たちで取り除けるのだろうか?リディア小母やベッカの死を無駄にすることなく。 清教徒と革命、とくれば、クロムウェルと恐怖政治がセットでイメージされてしまうけど、詳しくは無いのであくまでもイメージ。ただ、作者は「人類史上前例のないできごとは作中に登場させない」というルールを前作以来踏襲されたとのことなので(あとがきより)、きっとそのへんの歴史的事実をよく知っている人には「あー」ってなるんだろう。そう考えると、エピローグが昨今のメイドコスプレに対する痛烈な皮肉になってる。何も考えんとメイド服着たり着せたりして喜んどる人には耳に痛い話。本作を読んで、メイド服が性的、っていう文脈のおぞましさに少々耳を傾けてから秋葉原に足を運ばれたし。また味わい深かろうて。

Posted byブクログ

2020/11/13
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政界の中心にいるリディア小母。 司令官の娘として育ったアグネス。 そして、カナダで育ったデイジー。 この三人の独白から始まり、最後には全員の視線が一致する。 読書とは実に面白い! 作り話が現実と重なる瞬間を味わうことができるのだから。 侍女の物語からの脱却。女性たちの反撃は小さな事で始まる。始めるしかなかったリディア小母が中心というのが皮肉だけど、彼女の、そして彼女達の人生を破壊したものが、破壊されてしまうのも自明の理かと思う。 しかし、最後のシンポジウムもあるのは笑ってしまった。

Posted byブクログ

2020/10/24

現代人は性の喜びを知ってしまい、インターネッツで話題になった性の喜びおじさんが「性の喜びを知りやがって、許さんぞ!」と嘆きながら憤死したのも仕方がない。 一方で本書で描かれるのは性の喜びが剥奪されたときに、どのようなディストピア社会が到来するのかという一種の思考実験である。この...

現代人は性の喜びを知ってしまい、インターネッツで話題になった性の喜びおじさんが「性の喜びを知りやがって、許さんぞ!」と嘆きながら憤死したのも仕方がない。 一方で本書で描かれるのは性の喜びが剥奪されたときに、どのようなディストピア社会が到来するのかという一種の思考実験である。この様相がすさまじくグロテスクであると同時に、極めて高いリーダビリティにより、ディストピア小説の最高峰ともいえる完成度を本書は誇っている。 なにせ、本書の舞台となるギレアデ共和国はキリスト教の原理主義者らがクーデターによりアメリカ合衆国の政権を奪取して誕生した国家である。ギレアデでは、性の自由を人民から剥奪し、女性から全ての教育を撤廃させた上で、子供を産めるかどうかを唯一の女性の価値基準として単なる”生殖マシーン”として女性を扱うことを強要する。 そしてその共和国に対して静かなるクーデターを起こそうとする3人の女性たちの冒険が本書のメインの筋書きとなる。あまりにも想像を絶した世界観でありながら著者自身が「ギレアデ共和国とは様々な歴史的事実の寄せ集めであり、そこには空想の余地はない」と明言しているように、このディストピア社会は一歩間違えれば起こっていたかもしれない現代社会の危うさを提示する。 ディストピア小説といえば、ジョージ・オーウェルの『1984』が古典として浮かぶわけだが、現代のディストピア小説の最高峰は本作であり、いずれ『1984』よりも本書が着目を浴びる日が来てもおかしくないと思う。そんな日が来なければよいということを祈りつつも。

Posted byブクログ

2020/10/24

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』の続編。前作は「侍女」のオブフレッドのひとり語りという形式だったが、今回は3人の登場人物がリレーのように順に語っていく。『侍女の物語』がギレアデ国家の安定期の出来事であったのに対して、『誓願』は崩壊前夜、というか崩壊の契機を作り出した女性たち...

マーガレット・アトウッド『侍女の物語』の続編。前作は「侍女」のオブフレッドのひとり語りという形式だったが、今回は3人の登場人物がリレーのように順に語っていく。『侍女の物語』がギレアデ国家の安定期の出来事であったのに対して、『誓願』は崩壊前夜、というか崩壊の契機を作り出した女性たちの物語。『侍女の物語』が出版されてからかなりの年月が経っているので、まさか続編が読めるとは思わなかった。今回もまた終わりにギレアデ歴史研究会のシンポジウムの様子が描かれている。小説のなかの出来事ではあるが、悩みや苦しみも含めたそれぞれの女性たちの意図から紡がれる物語の後にいくら時間が経っているとはいえ「お気楽な」感じの研究者たちの様子を読むと、両者の対称性にイラッとする。後世の歴史家が再構築できることには限界があり、「歴史」として記録されたり知られたりすることはほとんどない、女性たちの生き様があるのだということを忘れてはいけないという著者の思いも込められているのかもしれない。

Posted byブクログ

2020/10/13

『侍女の物語』の続編ではあるけれど、別の物語としても読める。骨太で壮大。現実との呼応。(『侍女』後)35年分の現実の経過に伴って、『侍女』に託した世界もアトウッドも深く太く更新されてるんだなあ。 読みであり。 あのフレーズがここで出てくるかあ!とニヤリとしたり。 訳者あとがき、...

『侍女の物語』の続編ではあるけれど、別の物語としても読める。骨太で壮大。現実との呼応。(『侍女』後)35年分の現実の経過に伴って、『侍女』に託した世界もアトウッドも深く太く更新されてるんだなあ。 読みであり。 あのフレーズがここで出てくるかあ!とニヤリとしたり。 訳者あとがき、解説ともに充実。

Posted byブクログ