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絵ことば又兵衛 の商品レビュー

4.3

13件のお客様レビュー

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2026/03/14

本書は絵師 岩佐又兵衛 の半生を描いた物語である。 もっとも、私はこの名前を聞いてもすぐには思い浮かばなかった。歴史に名を残すほどの絵師らしいのだが、正直なところ馴染みがない。 本書の表紙には 洛中洛外図屏風 があしらわれている。 「洛中洛外図といえば 狩野永徳 ではないのか」...

本書は絵師 岩佐又兵衛 の半生を描いた物語である。 もっとも、私はこの名前を聞いてもすぐには思い浮かばなかった。歴史に名を残すほどの絵師らしいのだが、正直なところ馴染みがない。 本書の表紙には 洛中洛外図屏風 があしらわれている。 「洛中洛外図といえば 狩野永徳 ではないのか」と思う人も多いだろう。実際、その代表作として知られるのが、織田信長が 上杉謙信 に贈ったとされる上杉本である。 しかし洛中洛外図は永徳一人の作品ではない。多くの絵師によって描かれ、現存するだけでも百点以上あるという。そのうち国宝に指定されているのが二点。永徳による上杉本と、もう一つが舟木本と呼ばれる又兵衛作の屏風である。 表紙をよく見ると、人々が狭い小屋に入り、人形浄瑠璃を見物している場面が描かれている。脇の注釈には「山中ときはあやつり」とある。著者はどうやらここから物語の着想を得たようだ。 元になっているのは 山中常盤物語。 奥州へ下った牛若丸を訪ねて旅立った母・常盤御前が、山中の宿で盗賊に殺され、後に牛若がその仇を討つという物語である。又兵衛はこの物語を絵巻として描いた。その制作の背景には、越前松平家からの注文があったという。本書ではその経緯も描かれている。 このように本書は史実を下敷きに又兵衛の生涯をたどるが、物語の核心は別にある。 それは父子の相克である。いわば エディプスコンプレックス に通じる、古くから語られてきた人間のドラマである。 絵師の人生を描きながら、そこには普遍的な親子の物語が浮かび上がってくるのである。

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2025/02/06

2025.2.6完了 吃音の持ち主が絵師として成功していくお話。当初は吃音をベースに話が進められていくが、中盤からは吃音よりも生家へこだわりが強くなる。時代として武家の接点があまり描写のないのはいい感じ。

Posted byブクログ

2023/12/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

谷津矢車の歴史小説。主人公絵師岩佐又兵衛は実在の絵師で荒木村重の子供というのも史実らしい。てっきり架空の人物架空の設定かと思ったのだが…。 物語は天賦の画描才能を有しつつも、将来の吃癖と不器用な生きざまの主人公又兵衛が、器用な立ち回りが生き残る必須の術ともいえる織田豊臣徳川の時代変遷の中に生きていく様を描く。 絵を描く描写の丁寧さが読みどころながら、絵心が皆無な俺にとっては、人間描写の巧さが核心部であり味わいどころだった。 人と関わることに不器用で苦手な又兵衛がその煩悶の逃げ口として余計に絵にのめりこむ様や、後半のある瞬間に自分の絵を完遂させるために、人との関わりをひとつ深く入り込むあたりの下りは、のめりこみ過ぎて通勤電車で危うく目的駅を通過しそうになったほど。 「人は誰しも後悔を引きずって生きるもの」という結論に自分のくだらない人生を照らし合わせて、なんかすごく安心させてもらった。

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2022/07/11

2022.7 説明も多いし、血肉躍るシーンもないしハッピーなシーンも無いけれど静謐な空気が流れる良い小説でした。 力のある若い作家さんの小説はいいね。

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2022/06/09

米澤穂信さんの「黒牢城」を読んだ後なので、その息子の物語がより感慨を持って入って来た。 この作品で描かれる荒木村重は「黒牢城」の彼とは違うのだが、代わりに息子・又兵衛をずっと見守るのが母代わりとなった乳母・お葉と遠い記憶の中にぼんやりといる実母・だし。そして彼の一生を支えた絵。 ...

米澤穂信さんの「黒牢城」を読んだ後なので、その息子の物語がより感慨を持って入って来た。 この作品で描かれる荒木村重は「黒牢城」の彼とは違うのだが、代わりに息子・又兵衛をずっと見守るのが母代わりとなった乳母・お葉と遠い記憶の中にぼんやりといる実母・だし。そして彼の一生を支えた絵。 彼は吃音により言葉で伝えることが苦手。だが代わりに絵で「語る」。それがタイトルの意味だった。 実際の彼がどうだったのかは分からないが、この作品での又兵衛は自身が荒木村重の息子であることを大きくなるまで知らない。 それは『己の周囲三尺の中に引きこもり、その中で生きてきた』からなのだが、その元を辿るとやはり吃音ということにたどり着くのだろうか。 話せば笑われたり苛立たせたりするので話さなくなり、自身の思いを伝えることも聞きたいことを聞くこともしなくなる。 自分が何者なのか知りたいと伝えられたのは関ヶ原の戦いが終わってからだった。 だが彼の吃音を嗤うことも急かすことも、逆に落ち着いてなどと宥めることもせず普通にやり取りしてくれる人も多くいる。 乳母お葉はもちろんだが、パトロン笹屋、狩野工房での兄弟子・内膳、妻となるお徳、仕官する織田信雄と松平忠直、その父・結城秀康、最初の絵の師・土佐光吉、影響を与える長谷川等伯など。 又兵衛の人生も波乱万丈だが、お葉、内膳、結城秀康・忠直親子に織田信雄、長谷川等伯など彼の周囲にいる人々もまた波乱万丈。 忠直は一般に乱心者の悪いイメージでしかないが、彼は娘・鶴姫に何かを残したいと又兵衛に絵を依頼した。その父・秀康もまた息子・忠直に残したいと自分の似絵を又兵衛に依頼した。 自分から『すべてを奪った』父・村重とは真逆の人だった。 吃音と父・村重への憎しみは終始又兵衛を苦しめるが、彼もまた自分の息子や弟子たちとの関わり方を反省するところがあった。 内膳から『そうか。お前は武士にはなれなんだか』とがっかりされるが、信雄に仕え忠直に仕え、物語にはないがその後は江戸に招聘されるらしいし、御用絵師としてある意味武士に似た生き方をしたのではないだろうか。荒木家再興も父・村重が望む生き方も出来なかったが、絵師「岩佐又兵衛」の名は残したし岩佐家を継承する息子も育った。 言葉を操ることは出来なくでも絵で語り『弱くか細い糸』ながら人と繋がった。 結城秀康からは『世の静謐を乱す絵』、長谷川等伯からは『奇妙の絵師』、土佐光吉からは『人を寄せ付けぬ』『寒い絵』、内膳からは己を『曲げられぬか』と言われるが、彼の絵は何故か人を惹きつける。 織田から豊臣、さらに徳川の世へと目まぐるしく変わることへの反発も多くの人々の中にあり、それが又兵衛の絵への共感を呼んだということだろうか。

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2021/11/14

海の見える寺に住み込み幼いながらも働く又兵衛は、吃音で生きづらい日々を送っていた。 そんな又兵衛が絵師と出会い、絵を描くことの喜びを知る。 絵の道を進みながら、自分の生まれを知り、母を殺された怒りや恨みを心に抱きつつ歩む、又兵衛の人生を描いた作品。 吃音とその生い立ちで苦労をす...

海の見える寺に住み込み幼いながらも働く又兵衛は、吃音で生きづらい日々を送っていた。 そんな又兵衛が絵師と出会い、絵を描くことの喜びを知る。 絵の道を進みながら、自分の生まれを知り、母を殺された怒りや恨みを心に抱きつつ歩む、又兵衛の人生を描いた作品。 吃音とその生い立ちで苦労をする又兵衛なのだが、実は周りに支えてくれる人や力になってくれる人がいるなぁと思いながら読んだ。 マイナスの感情にとらわれて生きる又兵衛の人間らしさが愛おしく、心配しながら応援しながら読み進めて、色々な人との関わりの中で最後にたどり着いた心がとても嬉しく思いました。 大満足の一冊です。

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2021/02/16

絵師の話が好きで、何冊か読んでいますが、今回も引き込まれました。 又兵衛とは何者なのか、という謎を秘めたまま、物語は進みます。狩野派の内膳、長谷川等伯、時の絵師に出会いながら、父親の結城秀康の義に応えるため、部下や家族といろいろな問題を起こしている松平忠直にも、忠義を尽くそうとし...

絵師の話が好きで、何冊か読んでいますが、今回も引き込まれました。 又兵衛とは何者なのか、という謎を秘めたまま、物語は進みます。狩野派の内膳、長谷川等伯、時の絵師に出会いながら、父親の結城秀康の義に応えるため、部下や家族といろいろな問題を起こしている松平忠直にも、忠義を尽くそうとします。 そして又兵衛が何者なのか、なぜ「母」は殺されたのか、誰が殺したのか、謎が明かされます。 「山中常盤」を描いた又兵衛の真意。絵師の心意気が、絵の持つ力を最大限に発揮し、人の心を動かしていく・・・ラストは心打たれました。

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2021/01/13

「絵」は好きである 自分で描くことも好きであり、 観ることも好きである、 いわゆる有名どころの画家たちには あまり興味はないけれとど、 少し外れたところ(?)に位置づけられている 画家たち ニコ・ピロスマニ フリーダ・カーロ 小川芋銭 モード・ルイス グランマ・モーゼス 大道あや...

「絵」は好きである 自分で描くことも好きであり、 観ることも好きである、 いわゆる有名どころの画家たちには あまり興味はないけれとど、 少し外れたところ(?)に位置づけられている 画家たち ニコ・ピロスマニ フリーダ・カーロ 小川芋銭 モード・ルイス グランマ・モーゼス 大道あや … 辺りになってくると 俄然 興味が湧いてしまう そんな中のお一人が 岩佐又兵衛さん ずっと以前から気になっていた 絵描きさんでしたが 最近どうやら取り沙汰されてきたことが なにやら嬉しいやら、なにをいまさら…やら 本書の「背」に「又兵衛」を 見てしまったので 思わず 手に取ってしまいました 又兵衛さんを吃音者として 設定した筆者の谷津さんの着想も 面白く 最後まで読み進めさせてもらいました。 以前、京都に観に行った時の 「岩佐又兵衛展」の図録を 引っ張り出して来て 矯めつ眇めつつ 嬉しく 嬉しく

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2020/11/21

豊国祭礼図の作製で,内膳が又兵衛を外したのは,真実を曲げろという指示を聞かないのを嫌ったのではなく,そのようなことをさせたくなかったからだと思う.

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2020/11/21

・岩佐又兵衛(父は荒木村重) ・吃 ・結城秀康 ・松平忠直 ・『豊国祭礼図屏風』 ・『山中常盤絵巻』 ・土佐光吉、狩野永徳、長谷川等伯

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