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網内人 の商品レビュー

3.8

26件のお客様レビュー

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2024/09/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

果たさなかった復讐の果て、死んだ妹の「本当の姿」に出会う姉の物語。ギリシャ神話の復讐神ネメシスの名を冠する、復讐代行ハッカー「アニエ」が、とにかくかっこよかった。 現代の香港、広州から香港への移民三世にあたる「アイ」は、相次いで父と母を失い、妹の「シウマン」と二人、公営住宅で暮らしていた。しかし、妹のシウマンは、地下鉄での痴漢被害がきっかけとなったネット掲示板への書き込みにより、自殺してしまう。妹を死に追いやったネット虐めの犯人を見つけ出すため、「アイ」は、裏稼業の探偵ハッカー「アニエ」に、犯人の捜索を依頼する。 いわゆる義賊モノで、「アニエ」が、その犯罪を暴き、復讐という私刑の形で罰を与える人々は、法では裁くことのできない、あるいは、裁いたとしても、軽い罰則で揺らされてしまう人々である。著者自身もあとがきで語っているように、違法なやり方ではありながらも、正義を実行する「アニエ」には、アルセーヌ・ルパンのイメージが重ねられているようだ。 何よりも印象的なのは、やはり「アイ」が妹の「シウマン」が生前にfacebookへと書き残した言葉を読むシーンだった。「妹のため」に犯人への復讐を果たすことだけを生きがいに、ついに犯人を自殺させる寸前まで追い込んだところで、「アイ」は、それまで知ることのなかった妹の本心をそこに見ることになる。 「どうして『妹の敵』なんだ? 『あんたの復讐』だろ。あんたは家族を失った苦しみから、その怒りをぶつける対象を見つけて憂さ晴らしをしたいだけなんじゃないか。妹さんにその責任を押しつけるな。妹さんの敵は、『あんたの復讐』だ。あんたの妹さんはもういない。なのにどうして、あんたは妹さんが『敵を討って』もらいたがっていると思うんだ? 死人に口なしだからって、そいつはあまりに虫がよすぎるんじゃないかね」(p456) 「アニエ」の言葉は辛辣だ。「誰かのため」は、いつでも「自分のため」というエゴのカモフラージュになる。「アイ」は、「妹のため」に敵を討とうとしたが、妹の思いは別にあった。 「その自撮り写真は、左側のほとんどをシウマンの顔が占めていて、右側には、バスルームから出てきたのか、タオルで髪を拭っている女性の姿がある。それは紛れもないアイ自身だった。アイの隣には夕食の準備をしている母がいる。二人はお喋りに夢中で、シウマンが隠し撮りをしていることに気がついていないようだった。」(p472) ほとんどのデータが削除された、自殺した妹「シウマン」のスマホに残された二枚の写真のうち一枚は、おそらく好意を寄せていたのであろう友達とのツーショット。そして、もう一枚は、姉と母に気が付かれないように撮られた家族三人の「家族写真」だった。 「アイ」は、その写真とfacebookに残された遺言を読んで、初めて妹が何を思い、何を望んでいたのかを知ることになる。突きつけられたのは、一番身近にいたはずの妹に対する、自分自身の無知だった。 「アニエ」は、高度なコンピュータ技術を駆使し、他人のデバイスをハッキングし、ネット上から個人情報を奪いだしていく。インターネットに残された個人の足跡は、一人ひとりの、現実以上に現実な姿を、ときに死人の生前の姿さえも留めている。 それらは、誰に向けてあるのだろうか。少なくとも、「シウマン」のfacebookは偽名であり、「アニエ」が「アイ」に見せなければ、誰の目に触れることもなかったであろう心の内だった。 誰にも向けられていない言葉。インターネットには、そういう言葉が溢れかえっていることを思う作品だった。

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2024/03/04

終盤の謎解き、というか真相の説明がなんだか冗長で、驚きもなく、なんだかなーといった感じ。地の文の視点が、章を変えることもなく変わるので少し読みづらかった。

Posted byブクログ

2021/11/17

「自己犠牲を理由とした自殺(自死)」がもたらすものは……。 「私はみんなには不要なんだ…」「私が死んだ方がみんなのためになる…」 湊かなえや辻村深月の“本”によく出てくるタイプで、他人から見て自分はどう見えるかばかり意識していること、これは究極のジコチュウ、「他人を思いやる」こ...

「自己犠牲を理由とした自殺(自死)」がもたらすものは……。 「私はみんなには不要なんだ…」「私が死んだ方がみんなのためになる…」 湊かなえや辻村深月の“本”によく出てくるタイプで、他人から見て自分はどう見えるかばかり意識していること、これは究極のジコチュウ、「他人を思いやる」ことの勘違い。 この物語では、バットマンのようなダークヒーローが香港の社会問題とITの闇を闇の中で成敗していく。珍しくはないが、描かれた謎解きや登場人物の心理解説、伏線の構成には驚くばかりで、作者がただものではないことはよく分かる。 ただ… 法律や公序など無視して次々IT技術や最新機器を駆使して謎を暴き、復讐する姿に、なぜか爽快感はなく、嫌な気持が続いてしまうこと(作者の狙いかも)。 「社長と秘書の怪しい関係」が語られたり、「汚い部屋に住む偏屈なオタク」「スマートでおしゃれなIT起業家」「デブでチビで唇が分厚く醜い人物」がそのままの役割で登場したり、ちょっと「ステレオタイプ」であることが興ざめすること。 …少し残念。 「SNSが絡むいじめ問題」「匿名・その他大勢による他者攻撃」 これらが「現代社会特有の問題」とされるのは、本質的に人間の持つ醜い“毒”の出方がITによって強化されて“猛毒”となったため。 無言でスマホを見ている人たちには、今まさに“猛毒”を仕掛けている、または浴びているひとがいる……これは「ホラー」かも。

Posted byブクログ

2021/09/29

最初は設定を頭に入れるのが大変でしたが割り切って速読鬼となり、そこからはドライブ感含めて楽しめました。終盤でここに決着するだろうと予測していたところから大きく伸びて、そう来るか。と思いました。シウマンの自撮り写真のシーンで涙。

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2021/07/25

どんでんどんでん返しあり。 記述が詳細で本が分厚くなった。ヒーロー像としてはありきたりではあるのだが。 舞台となる香港が中共によって変わってしまったのでシリーズ展開はどうなるのやら。

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2021/06/07

 いわゆる「華文ミステリー」が一躍注目されることとなる流れを拓いた立役者のひとり、陳浩基(ちん・こうき)。2014年に刊行した『13・67』が、翌年の台北国際ブックフェア大賞といった賞を複数受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、さらにはウォン・カーウァイが映画化権を取得。日本...

 いわゆる「華文ミステリー」が一躍注目されることとなる流れを拓いた立役者のひとり、陳浩基(ちん・こうき)。2014年に刊行した『13・67』が、翌年の台北国際ブックフェア大賞といった賞を複数受賞。世界12カ国から翻訳オファーを受け、さらにはウォン・カーウァイが映画化権を取得。日本でも2017年に邦訳が刊行され、各種年間ランキングを大いに賑わせました。  ただし、中華圏という意味では間違っていないものの、彼は正確には香港出身の作家であり、『13・67』も現在から過去へと歴史を遡行していく「逆年代記(リバース・クロノロジー)形式」でもって、国家ではない香港という社会の政治や生活、アイデンティティを辿る内容。そんな著者が現代の――正確には2015年当時の――情報化が進みながらも混沌とした香港を舞台に描いた第二長編が今作なのですが……これが凄まじく面白かった!  図書館で嘱託の派遣司書として働くアイは、中学生の妹シウマンが住居の窓から投身自殺したことに納得できないでいた。シウマンは約半年前、地下鉄での痴漢被害に遭い、その後、犯人として逮捕された男の甥と名乗る人物により、インターネット掲示板に「叔父は冤罪で、不良の女に陥れられたのだ」という過激な告発文が書き込まれて以来、ネット民からの中傷に晒されていた。この人物を突き止めるため、ハイテク調査の専門家である「アニエ」という探偵を訪ねるのだが……。  インターネットの闇がモチーフとなっている本作。実はアルセーヌ・ルパンが大好きだという著者が、「現代の怪盗」として生み出したしたのが、天才ハッカーであるアニエです。染みのついたTシャツの上にしわだらけのジャージ、七分丈のパンツ、鳥の巣のように乱れた髪。正義という言葉を嫌い、しかし妙な誠実さで筋は貫き通し、非道には非道をもって制裁する。このキャラクターが恐ろしく魅力的であることはもちろん言を俟たないけれども。  実は個人的にひたすら感心してしまったのが、主人公であるアイの造形と、彼女が「知って」いく道程の描写でした。  決して幸福とはいえない環境に育ち、香港社会の時代のうねりや容赦ない格差に振り回されながらも、強い意志を保って妹を守り生きようとしていた姉のアイ。アニエに「原始人」と称されるほど技術音痴でネットにも疎く、時に独りよがりでズレた発言をしてしまっても、アニエの言葉や指摘に目を開かされ、自身の無知と思い込みを知り、学んでいく。  そうしてアニエとともに妹を追い詰めた人物を追う中で、少しずつ明らかになる14歳の妹の、姉には見せていなかった姿と、その心の内。「知って」は取り乱し、大きく踏み外し、それでもなお逃げずにまた前を向き、時にはアニエも舌を巻くほどの洞察を示してみせたりして、ひたむきに歩んでは「知って」いく。  そんなアイとともに進んだ先ですべてを――著者とアニエが張り巡らしていた企みを読者が「知った」とき、それまで見えていた景色は大きく反転します。その時、アイが迫られる深い葛藤と、あるひとつの選択。その向こうに待つエピローグ。  と、最後まで驚きと味わいに満ちた、至高の華文サイバーミステリです。

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2021/05/27

今のネット社会の闇問題をテーマにした今作品。主人公を助けてくれるスーパーハッカー登場し、ン?シリーズ化するのかな?とゆう期待を持たせて物語は終る。本格ミステリとはまた違った味わいアリ。

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2021/04/16

新聞で紹介されてたこの本。 香港を舞台にしたミステリーで、普段あまり手を出さない翻訳ものだけれど、香港に少し縁があったので読み始めた。 地名や街道名や交通の仕組みなど懐かしく…最初は人の名前から頭に浮かぶインパクトがなさすぎて、毎回こいつは誰だ!?となったのも束の間、アイのしつこ...

新聞で紹介されてたこの本。 香港を舞台にしたミステリーで、普段あまり手を出さない翻訳ものだけれど、香港に少し縁があったので読み始めた。 地名や街道名や交通の仕組みなど懐かしく…最初は人の名前から頭に浮かぶインパクトがなさすぎて、毎回こいつは誰だ!?となったのも束の間、アイのしつこい質問に答えるアニエがもはや自分の相棒にも思えてきた、面白かった。 二段組を制覇した満足感にも○

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2021/04/16

2021.4 出だしがあまりに暗すぎて、読む気が失せてしまいました。ここを超えれば面白くなるのかな??でも耐えられず離脱。

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2021/04/12
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※このレビューにはネタバレを含みます

ネット上で中傷され、自殺した妹。 姉とハッカーでもある探偵が、その中傷者を追い詰めていく。 事件自体、家庭環境も含め、暗いが、徐々に犯人に迫っていくのは面白かった。 シリーズ化の予定とのことで次回作に期待。

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