悪い夏 の商品レビュー
佐々木守は、ケースワーカーである。 彼の身分は、船岡市役所に勤める公務員。 社会福祉事務所にいるが、決して望んできたわけではない。 決してやる気に満ち溢れていないし、どちらかというと流されがち。 同僚には高野といういい加減な男性と、宮田という同い年で仕事ができ、物もはっきりいう女...
佐々木守は、ケースワーカーである。 彼の身分は、船岡市役所に勤める公務員。 社会福祉事務所にいるが、決して望んできたわけではない。 決してやる気に満ち溢れていないし、どちらかというと流されがち。 同僚には高野といういい加減な男性と、宮田という同い年で仕事ができ、物もはっきりいう女性がいる。 どちらも深く付き合いたくない、彼はそう感じている。 今日も暑くて、人間関係もいまいち…そんな日々が過ぎてゆく。 その守の人生が転落していく。 受給者に思慕の念を抱き、自分が救ってあげるんだ、なんて思い始めた時から。 不正受給や、公務員と思えないような輩、クスリに、本当の生活困窮者に… 本書の内容は悲壮で、救いがない。 出てくるほぼ全ての人が愚かな行為をしでかしている。 著者の書くように、本人たちにとっては悲劇でも、遠くから見れば喜劇、そうかもしれない。 だが、わたしにとってそれはやはり悲劇だった。 もし、ここで、セーフティーネットがもう一つ貼られていたら、とか、もっと相談できるところがあれば、とか、仕事での付き合いの人に深入りしすぎなければ、我慢しなければ、と思ってしまう。 問題の本質は複雑で、一つ解決したところで皆が救われるわけでもない。 本作は後味の悪い作品ではあるが、福祉というものについて、考えさせる一面を持っていた。
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人間の内側が出ている物語。 全員悪者。ほんとにそれに尽きる話。 読みやすくて一気に読み終わりました。
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これほどめちゃくちゃな事はあるんだろうか。 めちゃくちゃ過ぎて笑えてきてしまう。 一気読みで、寝る前に読むと目が冴えてしまうので危険。 年金より生活保護のほうが多くもらえる、この制度もどうなんだろうか。
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帯に書いてあるように、「クズ」と「ワル」しか出てこないし、読後感もあまり良いものではない。だけど偶に読みたくなるジャンルの本。登場するキャラの境遇と自分を比べてホッとしたいのかも知れない。筆力は文句なし。
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帯に伊岡瞬さんが「クズとワルしか出てこない。最低にして最高。」と書かれていたのがめちゃめちゃ気になっていた読んでみた。こちらは染井さんのあとがきまでセットで読むことをオススメする。 悲劇と喜劇、ラストのドタバタはまさしく喜劇なのだけど、確かに本人たちは至って真剣。私もそこに居合わ...
帯に伊岡瞬さんが「クズとワルしか出てこない。最低にして最高。」と書かれていたのがめちゃめちゃ気になっていた読んでみた。こちらは染井さんのあとがきまでセットで読むことをオススメする。 悲劇と喜劇、ラストのドタバタはまさしく喜劇なのだけど、確かに本人たちは至って真剣。私もそこに居合わせたら喜劇の一員になると思う。言葉は悪いけど確かにクズしか出てこない。こんな人たちに会ったことがない。でも、何かのはずみに一歩踏み外したら…。知らない間に覚醒剤を盛られることは現実にもありそうで怖い。 どうなるかどうなるかと気になって、途中から止まらなくなる1冊。でもこれ、なんでミステリ大賞受賞作品なんだろ。ミステリーなのかな??サスペンスぽい。
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読書友達の薦めで読んでみた。読んで大正解。話の展開が気になって仕方なく、読み止まらない作品だった。 社会福祉をテーマにした本作は、生活保護制度の負の面に焦点を当て社会の闇に鋭く切り込みを入れている。制度を悪用する人間たちはどこまでもタチが悪く、こうした隙だらけの弱者たちを地域の経...
読書友達の薦めで読んでみた。読んで大正解。話の展開が気になって仕方なく、読み止まらない作品だった。 社会福祉をテーマにした本作は、生活保護制度の負の面に焦点を当て社会の闇に鋭く切り込みを入れている。制度を悪用する人間たちはどこまでもタチが悪く、こうした隙だらけの弱者たちを地域の経済ヤクザは巧みに食い物にしようとする。斯様に救いようのない人間ばかりが登場する中、唯一主人公の佐々木守だけは、男らしさはいささか欠くものの、物語中盤でふとしたことから愛に芽生えそれを強いプライドに変えていくひたむきな若者である。しかしその純粋な心もまた周囲の人間の悪意に無惨に踏みにじられ、人生を狂わされる。 本作の吸引力の強さの理由は、こうした人々の描写が極めてリアルであり、一連の出来事は自分の身の回りでも十分に起こり得ると想像させるからであると思う。
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深夜営業をしているとある本屋さんになんとなく立ち寄った際、この本を絶賛するPOPが目に留まり迷うことなく購入。 まるで落ち続けるジェットコースターのような物語。 ページをめくる手がとまらない。 物語が進むに連れてどんどんどんどん引き込まれていく。 これは確かに絶賛したくなる。
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人の道を外れることは、誰にでもあり得る、ホント些細なことだと思い知らされる作品で、一気に読み終えてしまいました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
誰も幸せにならないが、ラストにそれぞれ凄絶な滑稽さを見せる登場人物たちは、なぜかユーモラス。 まさに「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」。怒涛の転落劇を面白く描けるのはすごい! 守と愛美が恋仲に近くなる描写が好きだったので、守の急転直下はショックだった。
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「クズとワルしか出てこない」同情できる人もできない人も入り混じり、テンポも展開も小気味良くて面白かった。読書に馴染みがない人にもオススメしやすい。
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