黙過 の商品レビュー
タイトルに直感を得て百円で購入。医療系ミステリーであった。生命倫理についての話。 黙過とは、知っていて黙って見過ごすこと。 ここには善悪の判断をどうするか?という意味が含まれている。その中で選ぶ行為がここで言う黙過のことだ。最終的には、覚悟を決めて選ぶしかないという結論。うん、...
タイトルに直感を得て百円で購入。医療系ミステリーであった。生命倫理についての話。 黙過とは、知っていて黙って見過ごすこと。 ここには善悪の判断をどうするか?という意味が含まれている。その中で選ぶ行為がここで言う黙過のことだ。最終的には、覚悟を決めて選ぶしかないという結論。うん、まあそうだわな。 私が取り上げたいのは、関係性の中で起こる無意識的黙過なので少し違う。 これとは別に、昨今のネットでの他者叩きを見て思うこと…。 p220 「本来、無知は罪ではないの。九十パーセントの一般人が答えられる“常識問題”を間違ってしまった人でも、九十パーセントの一般人が答えられない “非常識問題”の答えを知っているかもしれない。誰もが知っている知識を知らなかったからといって、その人を馬鹿にした言葉は、いずれ自分に返ってくる。どんな人も自分にはない何かしらの知識を持っている、という当たり前の事実を理解していたら、おいそれと他人を見下せない。とはいえ、無知ゆえに人を追及し、名誉を貶め、苦しめたとしたら、それは罪よ」
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全てが繋がった時、少し行き先が垣間見えて、読むスピードが止まったのですが、最後まで読まなかったら、突きつけられた問いを、また曖昧にやり過ごしてしまうところでした。
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短編かと思いきや、最後の一章"究極の選択"で全てが絡み合う良構成。 命の尊厳、種の優位性などの重いテーマながら、患者喪失の謎や厄介な詐病等々織り込まれるミステリが良い。
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移植手術、安楽死、動物愛護……“生命”の現場を舞台にしたミステリー。あなたは必ず騙される――『闇に香る嘘』を超える驚愕!(e-honより)
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下村さんの作品は今のところハズレなし。 本作は特に優れたミステリーでした。 「優先順位」「詐病」「命の天秤」「不正疑惑」「究極の選択」からなる医療ミステリーの短編集。 それぞれ異なる話のはずが「究極の選択」で全てが繋がり、各編で解決したはずの謎がひっくり返されます。見事な構成で不自然さや違和感もありません。 この構成だけでもすごいのに、問題提起もお見事。深く深く考えさせられました。 「命の天秤」では人間が食べるために動物を殺すことの是非を問いかけられ、私もこどもに聞かれたら答えに窮するかもしれないと気付かされました(この点はきちんと学び、自分なりの答えを持たなければ)。 また「究極の選択」はもう本当に究極で、どうかそんな選択をしなければならない状況が私の人生に訪れないでほしいと願うしかなく、そんな自分が情けなくなりました。 客観的に考えれば、作中にある「私たちは、命の過剰な重さに自らを雁字搦めにしてはいないでしょうか」という問いを素直に受け止め、あまりに不自然な状態で生き長らえる必要はないと言えるけれど、それがもし大切な身近な人間だったらと想像すると答えは出ないのです。 日々医療が進歩するのは素晴らしいことです。 けれど進歩と同時に人としての倫理観や、地球上に存在する動物の福祉、共存のあり方も考えておかないと私たち人間は医療の進歩の結果、絶望を味わう可能性もあることを知らされました。
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帯に『あなたは5回騙される』とあったけど、確かにその通り。別々のストーリーの4つの短編でそれぞれ騙されて、最後の『究極の選択』で大どんでん返し。こんな騙され方があるんだ!という感じ。 終盤はパズルのピースが次々とはまっていくように、全ての疑問が思わぬ形で見事にはまっていくのはとて...
帯に『あなたは5回騙される』とあったけど、確かにその通り。別々のストーリーの4つの短編でそれぞれ騙されて、最後の『究極の選択』で大どんでん返し。こんな騙され方があるんだ!という感じ。 終盤はパズルのピースが次々とはまっていくように、全ての疑問が思わぬ形で見事にはまっていくのはとても気持ちよかった。 ミステリーだけど、殺人も死体も出てこないのも新鮮。どちらかというと命を救うことに関連したミステリー……それって珍しい。 テーマはとても重くて考えさせられる。『人間の命は動物の命より重いのか』『動物の臓器を移植したら、人間ではなくなるのか』医学が進歩し死ぬはずの命も助かるようになって、人間はもっともっとと欲張って長生きする方法を求めていくようになってしまった。考えるだけでなくて技術の進歩で実現できるようになって、人間の長生きへの渇望はエスカレートしている。 昔なら仕方ない…と諦めていた状態でも、それが違法で倫理違反であっても助かる方法があるばかりに、患者や家族は悩まされることになるのだなぁと思った。
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本筋とはあまり関係ないけれど、中盤に少し登場の天童教授が魅力的でした。 「本来、無知は罪ではない。90パーセントの一般人が答えられる常識問題を間違ってしまった人でも、90パーセントの一般人が答えられない非常識問題の答えを知っているかもしれない。 誰もが知っている知識を知らなかっ...
本筋とはあまり関係ないけれど、中盤に少し登場の天童教授が魅力的でした。 「本来、無知は罪ではない。90パーセントの一般人が答えられる常識問題を間違ってしまった人でも、90パーセントの一般人が答えられない非常識問題の答えを知っているかもしれない。 誰もが知っている知識を知らなかったからといってその人を馬鹿にした言葉は、いずれ自分に帰ってくる。どんな人も自分にはない何かしらの知識を持っている、という当たり前の事実を理解していたら、おいそれと他人を見下せない。とはいえ、無知ゆえに人を追及し、名誉を貶め、苦しめたとしたら、それは罪よ。」
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すごく好きな作家さん。 短編集と思って読んでおり 今回はどの話もぐいぐい読ませるけど 落ちが弱いというかゆるいなーと思っていたが 最後の話を読み始めてふるえた やっぱり好きだなー
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今作は、命の倫理とは何かを読者に問いかけている。 一方で、作中には反差別や正義を掲げる人々を厭う描写が何度も登場する。例えば「何かに強烈に反対している時点で強い感情を抱いているのだから、"反何々"と自称する者ほど他者に攻撃的になるのも当然だ。」「反、なんてわざわざ何かに付けている人ほど攻撃的な気がします。」という同様の内容を2つの章に亘って書いている。ASGのみを批判する文章だとは思えない。 "差別主義者"の語にあえて"レイシスト"というルビを振っていることから、レイシズム(人種差別)の存在が作者の意識から抜け落ちていたとは考えにくい。しかし、アンチレイシズム(反人種差別主義)の活動はまさに人命を守るために必要である、という視点は完全に欠けている。命に優先順位をつけることの是非を描きながらも、ある属性が他の属性より下位の存在として扱われそれゆえに命を落とす人がいる社会に怒り、抗議し、"反差別主義"を標榜して連帯する者たちに対してはただ否定的な立場をとっている訳だ。 登場人物の台詞を借りれば、「"正義の人"宣言をしなくても、心優しく、差別発言をせず、悪口も言わない人」がいくらいたところで差別はなくならないし、そのような人こそがしばしば構造的差別を温存する。それこそ『黙過』ではないのか。 この視点の欠如がどうにも引っかかってストーリーに集中できなかった。
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最終章で話が合わさると、ガラッと一気に思わぬ方向にもっていかれる構成。真相は明らかでも答えはなくて、逆に考えなさいよって問いかけられるような...こういう話を知れただけでも身になるお話。
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