生きるということ 新装版 の商品レビュー
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「To Have から To Beへ」財産、知識、健康、社会的地位、権力・・・「持つ」ことがすべてでいいのか?という命題が突きつけられる。 この「持つ」ことがすべての社会が、現在の主流をなしつつあり、しかもその「持つ」ことが全ての社会が、現在の諸問題の根源であり、そして人類の消滅という人類的、世界的危機の原因であるとしたら、我々はすぐにでも「持つ」ことがすべてという考えを改めねばならない。 では、「持つ」という概念に対する概念とは何か?フロム氏はそれが「To Be (ある)」ということであると導きだし、我々に示してくれた。 本書の訳者は、そのあとがきで、著者エーリッヒ・フロムのことを「心理学、生物学、社会学、神経生理学などのあらゆる面から人間を観察、研究し、その悲劇的な限界を見極めたうえで、なおかつ生を肯定するのである」と述べている。 本書は、現代の人類的危機(=悲劇的な限界)の予言書であり、なおかつその危機を回避するための、貴重な提案書でもあると思う。 本書の最終章で、現在の様相を的確に言い当てている。 「社会の力、多くの住民の冷淡さと無力さ、ほとんどすべての国の政治的指導者の無能さ、核戦争の脅威、生態学的な危機、それだけで世界の多くの地域に飢饉をもたらしうる気候の変化のような現象」・・・このような危機的状況から我々は脱却できるのか? 著者は「救済の一応の見込みはあるのだろうか?」と述べている。 その疑問符をうけて、次下では、「商取引の観点に立てば、そのような可能性はない。理性的な人間であれば、勝ち目が僅か2%しかないのに、全財産を賭けたり、儲かる見込みが同じようにわずかしかない投機的事業に、多くの資本を投じたりはしないだろう。」と述べている。 この言葉も生々しい。核戦争の危機が終末時計で数十秒のところまできており、世界の指導者が無能のように見える国際的な情勢、世の中の趨勢を目の当たりにして、それに対抗する理性の勝利が僅か2%しかないというのは、まさに現実問題以外のなにものでもない。 果たして、この流れを止めることができるのか?人類が自ら救済できるのか?どんどん泥沼に足をすくわれていくのではないのか?我々は手をこまねいて、その蟻地獄のうずにまきこまれていくしかないのか? 著者は、「一応の見込み」を今後の人類に示してくれている。 新しい「社会」と新しい「人間」の実現は、次の諸条件が満たされたとき、初めて可能となる・・・と。 利益、力、知性の古い動機付けが、「あること」、分かち合うこと、理解することの新しい動機付けに取って代わられること。 市場的性格が「生産的な愛する性格」に取って代わられること。 サイバネティクス宗教が、新しいラディカル・ヒューマニズム精神に取って代わられること(※それらの定義は本書のなかでされている)。 では、どういう人物が力を併せたときそれが実現できるのか?・・・抽象的表現ではあるが、「知恵と、信条と、信条に従って行う勇気とをもった人間」といい、彼は過去に存在した人物の中で、仏陀、キリスト、マイスター・エックハルト、マルクス、シュヴァイツァーたちの考えを本書に多く引用している。 すなわち、彼らが「To Be」の生き方を肯定し、実践してきた代表的人物ということだ。そして、彼らのような指導者が現れ、また人々が「To Be」の生き方に共感し、チェンジしていくことができるときに、我々は救済されるということだろう。 この「To Be」の生き方を知るだけでも、我々の日常の生活は、様々な束縛から解放される。なぜなら、我々は、端的に言えば、物を手に入れたり(すなわちTo Have)、貯えたりしなければいけない環境に組み込まれ、奪い合うために競争し、果ては戦争を起こし、自然や生態系を破壊して自滅しそうになっている、そういう世界や社会に生きているから。 本書は、自らの生き方の解放から、世界的課題の解決までを含めた濃厚な一書であると思う。
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いやあ難しかった。歴史への興味が薄めな身としては話を頭に入れ込むのが難しい。たしかに「持つ」ことばかりに意識を持っていかれてるなと自覚できた。ただ分析に特化した本なので「ある」を実践する具体的な方法等はあまり書いていない。他の本で補って、また時が経って戻ってきたらいいなと思う本だ...
いやあ難しかった。歴史への興味が薄めな身としては話を頭に入れ込むのが難しい。たしかに「持つ」ことばかりに意識を持っていかれてるなと自覚できた。ただ分析に特化した本なので「ある」を実践する具体的な方法等はあまり書いていない。他の本で補って、また時が経って戻ってきたらいいなと思う本だった。
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「消費することの特質は多義的である。すなわちそれはまず不安を除いてくれる。というのは、持っているものを奪われることがありえないからである。しかし、それはまたより多く消費することをも要求する。というのは先の消費はすぐにその欲求充足的性格を失うからである。」 要は、持てば持つほど豊...
「消費することの特質は多義的である。すなわちそれはまず不安を除いてくれる。というのは、持っているものを奪われることがありえないからである。しかし、それはまたより多く消費することをも要求する。というのは先の消費はすぐにその欲求充足的性格を失うからである。」 要は、持てば持つほど豊かになるのでは無く渇望が悪化するばかり。消費も感覚が麻痺して加速する。 再読したけれど、自分への啓蒙として常に持っておきたい本。一生物。
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「私たちの生存本能が無力化したことのさらに別な説明は、人びとに要求される生き方の変革があまりにも極端なので、彼らは今払わなければならない犠牲よりは将来の破局を選ぶのだ」p27 「しかし、それはまたより多く消費することをも要求する。 消費はすぐにその欲求充足的性格を失うからである...
「私たちの生存本能が無力化したことのさらに別な説明は、人びとに要求される生き方の変革があまりにも極端なので、彼らは今払わなければならない犠牲よりは将来の破局を選ぶのだ」p27 「しかし、それはまたより多く消費することをも要求する。 消費はすぐにその欲求充足的性格を失うからである」p50 「現代の消費者は次の定式で自分を確認するだろう。 私はある=私が持つものおよび私が消費するもの」p50 「どちらも自分の意見を変えること、あるいは相手の意見が変わることを予期してはいない。 それぞれが自分の意見を変えることを恐れているのであって、そのわけはまさに、それが自分の所有物の一つであるので、それを失うことはそれだけ貧しくなったことを意味するからである」p58 「合理的権威は能力に基づいていて、それにたよる人の成長を助ける。 非合理的権威は力に基づいていて、それに従属する人を搾取するのに役立つ」p62 →自由からの逃走 確認する! 「一方子供は、成長する子供に努力を期待しながら、自分はその努力をしていないことを自らの行動によって示す人びとからの、圧力や放任や過保護には反抗するのである」p63 →笑 「昔は、人の所有するすべてのものが大切にされ、手入れされ、役に立つかぎり最後まで使われた」 p106 「このことを理解するのが今日これほど困難なのは、ほとんどの能動性が疎外された〈受動性〉であり、一方では、生産的受動性がめったに経験されないからである」 p131 「この背景を考えると、主観的に無意味で、疎外された、まったくの日課となった仕事の問題は、自由なアテネ人にはほとんど起こりえなかったのである」 p132 「eudaimonia すなわち福利(もしくは真の幸福や人間の繁栄)は快楽にあるのではなく、徳と合致した能動性にある」p132 「最適度の成長を遂げるかぎり、それだけ私たちは自由で、強くて、合理的で、喜びにあふれるだけでなく、精神的に健康でもある」 p135 「労働はマルクスにとっては人間の能動性を表わし、人間の能動性は生命である」 p136 「アルバート・シュヴァイツァーは文明の衰退と回復の研究において、現代の〈人間〉を不自由で、不完全で、集中性がなく、病的に従属的で、〈まったく受動的〉であると見ている」 p137 「喜びとは、人間がより小さな完成からより大きな完成へ、推移することである。悲しみとは、人間がより大きな完成からより小さな完成へ、推移することである」 「最適度に自由で、合理的で、能動的でなければならない。自己のなりうるものにならなければならない。これが私たちの本性の生来の可能性である善として、理解されるべきものである」 「したがって喜びは、自分自身になるという目的に近づく過程において、私たちが経験するものなのである」 p165 「食卓が少数者だけのために用意され、多数者は少数者の目的に奉仕しながら、残りもので満足しなければならなかったその間は、不服従は罪であるという意識を養成しなければならなかった。 国家も教会もそれを養成し、両者は協力した。両者ともに自己の階級組織を守らなければならなかったからである」 「国家は、不服従と罪とを融合させるイデオロギーを得るために、宗教を必要とした。教会は、国家によって服従の美徳を教え込まれた信者を必要とした」 p167 「思想を書き留めることは時の中で起こるが、思想を心にいだくことは、時の外で起こる創造的できごとである」 「あることのすべての現れにおいて、同じことが言える」 「愛することの、喜びの、真理を把握することの経験は、時の中で起こるのではなく、今ここで起こる。この“今ここ”は永遠である。すなわち時を超越している」 p176 「」 「彼らが自己の哲学を当然のことと考えているのは、ただそれらが彼らにとって常識にすぎないからなのであって、彼らは自分のすべての概念が一般に受け入れられた準拠枠に基づいていることに、気付いていない。 このような人物が総体として根本的に違った人生観に直面すると、それを〈気違いじみて〉いるとか、〈非合理的〉とか、〈子供じみて〉いると判断し、一方自分はまったく〈論理的〉であると考える」 「本能による決定を欠くうえに、脳によって、進みうる多くの方向を考えることが可能なので、私たちに必要なものは全面的な献身の対象、すなわちすべての努力の焦点であり、すべての事実上の価値の基礎である。 」 p187
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とても難しく読むのに時間がかかった。集中しないと文章の意味がわからないところも多々あり、読み直したりそのままにして読み進めたりした。 持つこととあることについて 執着する→自由が妨げられる→自己実現が妨げされる
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〈持つ〉生き方か、〈ある〉生き方か。 人間は矛盾する生きものなのでどちらの傾向もあると思うけど、なるべくなら物事に執着せず生きていけたら…と思う。 「いい本だった」の一言では終わらせられない。「自分のため、社会のために考え続けよ」と言われている気がした。 これまでの性格や慣習を...
〈持つ〉生き方か、〈ある〉生き方か。 人間は矛盾する生きものなのでどちらの傾向もあると思うけど、なるべくなら物事に執着せず生きていけたら…と思う。 「いい本だった」の一言では終わらせられない。「自分のため、社会のために考え続けよ」と言われている気がした。 これまでの性格や慣習を変えることはそう簡単にではないけれど、「実践と切り離された洞察は、結局、無効なのである。」の一文を胸に、わずかずつでも自分の中における〈ある〉生き方の比重を大きくしていきたい。
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難解な部分が多く、休憩を挟みつつ一日かけて読了。 特に存在的・性格学的の違いについて理解できていないので『人間における自由』も後日参照したい。 「持つこと」と「あること」の違い、それぞれの幸不幸を知った上で、「あること」を体現した生き方をしたいとは思うが、現代社会でのそれは容易...
難解な部分が多く、休憩を挟みつつ一日かけて読了。 特に存在的・性格学的の違いについて理解できていないので『人間における自由』も後日参照したい。 「持つこと」と「あること」の違い、それぞれの幸不幸を知った上で、「あること」を体現した生き方をしたいとは思うが、現代社会でのそれは容易いことではないと痛感する。 「あること」が一つの固定した型や態度でなく、流動する過程だからこそ、常に自己および他者とありのままで向き合うことが求められる。 『愛するということ』の前にこちらを読んでみて、非常に多くの学びがあったが、十全に理解しきれてはいない。年齢を重ねていくたびに読み直したい。
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哲学書の難解な言い回しに3分の1も理解できなかったように思う。宗教に関わるテーマになると拒否反応を示してしまう偏見を何とかしたいものだ。やはり哲学と宗教は切っては切れないものらしい。人間の存在様式として、持つことの執着や自己中心的な弊害には納得。あること、については理想と思想が入...
哲学書の難解な言い回しに3分の1も理解できなかったように思う。宗教に関わるテーマになると拒否反応を示してしまう偏見を何とかしたいものだ。やはり哲学と宗教は切っては切れないものらしい。人間の存在様式として、持つことの執着や自己中心的な弊害には納得。あること、については理想と思想が入り混じった感じで分かったような、分からないような…であった。
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訳者が指摘するように、まだ同性愛が逸脱・異常と見なされていた時期の仕事ゆえの難点は無視できない(あるいは、まともに恋愛できないと本書で指摘されるサディストやマゾヒストに関して「彼らの」声を代弁する作業もまた必要だろう)。だが、それを踏まえてもいまもなお読ませ、考えさせる強度を備え...
訳者が指摘するように、まだ同性愛が逸脱・異常と見なされていた時期の仕事ゆえの難点は無視できない(あるいは、まともに恋愛できないと本書で指摘されるサディストやマゾヒストに関して「彼らの」声を代弁する作業もまた必要だろう)。だが、それを踏まえてもいまもなお読ませ、考えさせる強度を備えた仕事であると唸る。個人的な経験に属する愛をここまで一般化・普遍化して平たい図式として展開し、そこから現代社会がはらむ異常・病理まであぶり出すその手つきに舌を巻く。そして、そんな時代においてこそ自分の実感に誠実に向き合う必要がある
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やっぱフロムの描く言葉ってすごく難しいです。 なかなかスゥーっと理解が追いつかない難しい書き方で、生きるということは、難しいなって思いました。To Have or To beという2軸で書かれています。よりよく生きるには…。今の僕にはより“良く"の良くがわかりません。 ...
やっぱフロムの描く言葉ってすごく難しいです。 なかなかスゥーっと理解が追いつかない難しい書き方で、生きるということは、難しいなって思いました。To Have or To beという2軸で書かれています。よりよく生きるには…。今の僕にはより“良く"の良くがわかりません。 今この瞬間を思いっきり生きていてそれでいいじゃん。それがいいじゃんって思いました。 この本は、僕の友達から、おまえ生き方下手だけど、本当は1番ありのままで生きてるのがおまえなのかもな!下手くそな人生だけど俺は嫌いじゃないよって言われて誕生日にもらいました。 うーーん。 生き方が下手。 何も言えないけど、俺は俺のやり方で生きるということ。を今この瞬間を思いっきり生きて。パッとある日自然に何も誰も居なかったよーに死んでいきたいと思いました。
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