深夜特急 新版(5) の商品レビュー
この巻では、一生日本にいるだけでは絶対に味わえない感覚というものを一番強く感じた。 それは長旅特有の退廃的な感傷だ。 筆者は、果てしなく長い旅が終わりに向かいつつある中で、ここまでと異質の後ろ暗い感情に支配されるようになる。 アジアと欧州の文化が入り混じるトルコや、古代文明の痕...
この巻では、一生日本にいるだけでは絶対に味わえない感覚というものを一番強く感じた。 それは長旅特有の退廃的な感傷だ。 筆者は、果てしなく長い旅が終わりに向かいつつある中で、ここまでと異質の後ろ暗い感情に支配されるようになる。 アジアと欧州の文化が入り混じるトルコや、古代文明の痕跡を随所に感じられるギリシャを訪れる。自分だったら一番胸を躍らせるだろう。 筆者は旅の序盤から異国人の熱気、異文化的な触れ合いを浴び続け、新鮮さが摩耗した。 旅の中での唯一の使命を果たした。 唯一マストで立ち寄りたかった地も踏破した。 値切り交渉や一期一会の現地人からの施しもルーティン化し、擦れてしまった。 きっと居心地の悪い要素が重なって、病のように暗い感情が強くなるのだろう。 それでも筆者は旅を前に進める。ラスト一巻、旅との向き合いにどう結論を出すのか楽しみである。 自分は長旅をしたことがないから分からない感覚だが、この退廃的な側面が出てくるまで旅を続け、その感情も味わい尽くすことを含めて旅の醍醐味なのではないかと思った。 すぐにでも同じ感覚を体感しに飛び出したい、と思う一方明日の仕事に備えて寝ようとしている自分から。せめて思いだけ馳せて。
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旅はいよいよ壮年期に入り、心が浮き立つことの少なくなった主人公。 熊をけしかけられたり、見ず知らずの人からホームパーティーに誘われたりと読んでいるこちらは相変わらず面白いのですが、確かに小説にも最初の頃に感じた旅への情熱が感じられなくなってきています。 しかしながら、楽しい一冊で...
旅はいよいよ壮年期に入り、心が浮き立つことの少なくなった主人公。 熊をけしかけられたり、見ず知らずの人からホームパーティーに誘われたりと読んでいるこちらは相変わらず面白いのですが、確かに小説にも最初の頃に感じた旅への情熱が感じられなくなってきています。 しかしながら、楽しい一冊です。次が最後になります。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
(第14章)パルテノン神殿に対して「観光地として生き永らえている」と印象を持つ感覚は少し分かるような気がした。 旅に好奇心や新鮮さ、刺激を感じなくなってくることを「旅の壮年期・老年期」と人生になぞらえていて、ますます旅を魅力に感じる。 「旅は私に二つのものを与えてくれたような気がする。ひとつは、自分はどのような状況でも生き抜いていけるのだという自信であり、もうひとつは、それとは裏腹の、危険に対する鈍感さのようなものである。(中略)「自信」が「鈍感さ」を生んだのだ。私は自分の命に対して次第に無関心になりつつあるのを感じていた。」
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ヨーロッパに入った時の物価の高さが印象的でした。今はどうなんでしょうか。アジアとヨーロッパの経済格差が気になりました。また、イスタンブールは行ってみたいと思いました。著者が旅と人生を同じように捉えているところにも共感しました。
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トルコをあとにし、ようやくヨーロッパへ。アジアの喧騒から離れ、ついにヨーロッパ、ギリシアへと渡る。そこではどのような旅が、出会いが待っているのか。 旅は見るものではなく、出会いを通じて感じるもの、触れるものなのだなぁ。
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私はこの巻が1番好きだった。インドや香港の目まぐるしいイベントたちも読んでいて楽しかったけど、私は人が何を考えているのかを知るのが楽しいから、これらのイベントを経て作者が今考えていることを知ることができて楽しかった。
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舞台がアジアからヨーロッパへと移り、いよいよ旅の佳境を迎える第5巻。 作中でも、ギリシャに入ってから沢木氏は繰り返し、なぜ旅をするのか、そしてこの旅をどうやって終えるのかといったことを考える。 いつからか見聞きするものに目新しさを感じなくなり、自らの旅が青年期を終えた事に気づくの...
舞台がアジアからヨーロッパへと移り、いよいよ旅の佳境を迎える第5巻。 作中でも、ギリシャに入ってから沢木氏は繰り返し、なぜ旅をするのか、そしてこの旅をどうやって終えるのかといったことを考える。 いつからか見聞きするものに目新しさを感じなくなり、自らの旅が青年期を終えた事に気づくのだ。 そして身も蓋もないことを言ってしまえば、読者である僕も同じ。 バスでジプシーを見かけた話や、パトラスで誕生日パーティーに呼ばれる話など、個々のエピソードとしては興味深いものも多い巻なのだが、そのどれもが1巻の香港編ほどに、自分も旅に出たいという思いを湧き立たせるものではなかった。 特に、バスで乗り合わせたギリシャの大学生に、なぜ日本は戦後成功したのかと沢木氏が聞かれ、ただ「ラック」と答えるシーン。 氏の人生観や世界観が象徴的に現れた箇所なのだろうが、むしろこの回答になんの意外さも感じない自分に驚いた。 思うに、旅を続けるうちに沢木氏の中で人生観、世界観が固まってくるのとまったく同様に、読者である僕の中でも「沢木耕太郎」観がいつの間にか出来上がっていたのだろう。 そしてそれは、僕自身の中に朧げにあるものとはまた違うもの。それだけのことだ。 乗りかかった船、とまで言うといささか失礼に過ぎるような気もするが、沢木氏の出す答えが何であれ見届ける。そんな気持ちで第6巻を読む事になりそうではある。
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- ネタバレ
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トルコは親日の国のせいか安心できるのかと思いきや、熊に脅かされたり、ペルポネソス半島で美景に出会ったり 私は、有名観光地に立ち寄らずに通り過ぎてしまうのは理解できないなぁと感じてしまう 読み終えた本が、中古本として他人に譲られていくのはなかなか良いことだと思う
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長い旅には人生と同じように、幼年期、少年期、青年期、壮年期があり、移ろい変わるのかもしれないという言葉にピンときた。私は一時期旅だけをして生きていきたいと思っていたことがあったが、何が目的なのか考えていくうちに、旅だけをする人生はつまらないと感じてしまった。でも、これは人生と旅を...
長い旅には人生と同じように、幼年期、少年期、青年期、壮年期があり、移ろい変わるのかもしれないという言葉にピンときた。私は一時期旅だけをして生きていきたいと思っていたことがあったが、何が目的なのか考えていくうちに、旅だけをする人生はつまらないと感じてしまった。でも、これは人生と旅を一緒に考えたからであって、歴史を勉強してから行ったり、どうしても経験してみたいことなど何か目的を持って行ったら素晴らしい経験になるのではないかと思う。作者の見てきた長旅をしている者たちは疲労で好奇心が摩耗し、外界に対し興味がなくなっている。そしていつ崩れるかわからない危うさと隣り合わせで旅の目的すらなくただシルクロードを通り道として通過する。私の旅の目的は、観光名所やお土産に興味がないことは作者と同じで、だったら何をしに外国へ旅に出るのかと聞かれると、食べ物やら人との出会いやら現実逃避やら自分探しやら、あまりパッとしない答えになってしまう。そしてそれらがどうしても旅じゃないと達成できないのかと聞かれたら、違うと言うと思う。これから旅をする理由とか目的とかを考えてみたい。
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トルコを経てヨーロッパ、旅も終盤です。 最初は見るもの聞くものあらゆる体験が新鮮だったものが、デリー辺りからだんだんと疲労が蓄積して鈍感になり、中東に入ってそれがひどくなっていきます。目的を失った長旅の中で命を落とす若者もいる中で、ヨーロッパまでたどり着いた主人公は、そうした旅を...
トルコを経てヨーロッパ、旅も終盤です。 最初は見るもの聞くものあらゆる体験が新鮮だったものが、デリー辺りからだんだんと疲労が蓄積して鈍感になり、中東に入ってそれがひどくなっていきます。目的を失った長旅の中で命を落とす若者もいる中で、ヨーロッパまでたどり着いた主人公は、そうした旅を経て自分が変わり、二度とそうした旅をすることのないことに喪失感を憶えるようです。 しかし、この変わった先に主人公がどんな新しい地平を見るのか、次の最終巻が楽しみです。
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