ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前 の商品レビュー
胸の淵をなぞるような、期待とも不安ともつかない心地よい緊張感に満ちた小説集。 予定調和などというものから数光年遠ざかったところで、言葉たちが自由形の星座を描いている。しかも、時速数千キロで移動を続けながら。ある一行では、私はまだあなたを遠くから眺めている。その次の一行で、私とあ...
胸の淵をなぞるような、期待とも不安ともつかない心地よい緊張感に満ちた小説集。 予定調和などというものから数光年遠ざかったところで、言葉たちが自由形の星座を描いている。しかも、時速数千キロで移動を続けながら。ある一行では、私はまだあなたを遠くから眺めている。その次の一行で、私とあなたはとても親密な距離で向かい合っている。次の一行で、私とあなたはどこにいるのだろう。 私はそういう、想像もできないところからあらわれて、何が何だかわからないまま、意味すら飛び越えて私の腕の中に飛び込んできてくれる唐突な親密さを求めていたのかもしれない。言葉に手を引かれ縦横無尽にイメージの中を駆け抜けてゆくことができる、そんな本。 初めて手にした多和田さんの作品がこの本で良かった。 特に好きな作品:『雲を拾う女』『ヒナギクのお茶の場合』
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多和田葉子はドイツ在住で欧州内はもちろんインドやアメリカ日本などを行き来する旅ガラスな作家である。 本書は様々な文体を駆使して書かれた不思議な話が詰まった短編集。 日本文学によくある不思議モチーフのあざとさがないところが気に入った。不思議なことのうち一本の糸になるものを描いたと作者は言う。 作者が体験したこと感じたことをモチーフに構成された話が多いのだが生の体験談のリアルさはなく、ふわふわとした話から普遍的な真理がじわりと滲んでくる感触。 マイノリティのこと、女性であること、国境を越えること、クィアな性のことなどいろいろと感じるところはあるのだが、殊更に取り立てて述べることは難しい。 そういうわけで、世には多和田葉子論が数多くあるようなので詳しく検討するにはそれらを読むのがよいのだろう。 面白かった。しかし良くわからない。
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