歪んだ正義 の商品レビュー
自信の喪失、孤独・疎外感、精神病的性質。それらは適切なナラティブによって、惨めな惨状ではなく英雄の素質となる。 コミニケーションと自己実現としてのテロリズム。承認欲求がテロの要因だというのは新鮮で同時に凄くリアリティがあった。 思えば映画タクシードライバーもジョーカーも、自尊心の...
自信の喪失、孤独・疎外感、精神病的性質。それらは適切なナラティブによって、惨めな惨状ではなく英雄の素質となる。 コミニケーションと自己実現としてのテロリズム。承認欲求がテロの要因だというのは新鮮で同時に凄くリアリティがあった。 思えば映画タクシードライバーもジョーカーも、自尊心の回復を求めて、絶望した孤独な男が社会とのコミニケーションとして事件(テロ)を起こす映画だった。テロを防ぐ一番の方法は不幸な人間を作らないことなのかもしれない。 チー牛や弱者男性をバカにしているとテロを起こされるかもしれないというようにも読める。 必読本だと思う。
Posted by
「普通の人」がなぜ過激化してしまうことがあるのかを、イスラム国、パレスチナ問題、それに日本で起きた障害者施設での殺傷事件、秋葉原での通り魔事件などを取り上げ、ローンウルフ型と言われるテロ行為を防ぐ方法を模索している。 読んでいて非常に気が重たくなる本であるが、重大事件の裏にも「...
「普通の人」がなぜ過激化してしまうことがあるのかを、イスラム国、パレスチナ問題、それに日本で起きた障害者施設での殺傷事件、秋葉原での通り魔事件などを取り上げ、ローンウルフ型と言われるテロ行為を防ぐ方法を模索している。 読んでいて非常に気が重たくなる本であるが、重大事件の裏にも「防げたかも知れないタイミング」があったようで、個人レベルであれば周囲の人が手を差しのべることによる解決策が提示されているのが救いだ。 しかし国家同士となると難しい。読んでいて昔のアニメ「伝説巨神イデオン」を思い出した。異なる民族が誤解を重ねて戦いが泥沼化し、相互に愛し合う個人が存在し目的も望みもお互い似通っているにもかかわらず戦いがやめられずに、最後は「神」の力によって双方が全滅するという話だった。人類が到達する先終点がこうならないように祈りたいものだ。
Posted by
★彼女がいれば★見たい情報だけを集める認知バイアスネットの発達で広がっているのは、テロに限らずよく言われるところ。ローンウルフテロの入り口には、トラウマがもたらす被害者意識があることが多く、個人の悩みを社会に広げて合致する物語をつくり(借りてきて)、外部手段を非人間化してテロに至...
★彼女がいれば★見たい情報だけを集める認知バイアスネットの発達で広がっているのは、テロに限らずよく言われるところ。ローンウルフテロの入り口には、トラウマがもたらす被害者意識があることが多く、個人の悩みを社会に広げて合致する物語をつくり(借りてきて)、外部手段を非人間化してテロに至る。その際に思いとどまらせる家族や社会というプラスの資産を欠いていると、テロにつながりかねない。虐げられている人々はそうした資産を欠きがち、との分析。 テロに最後に踏み切る段階、人間は切羽詰まると限られた選択肢で物事を判断してしまうというのは日常生活でも実感することだ。 レベルは違うが確か「ネットと愛国」にあった、ネトウヨの活動をやめた理由に「彼女ができたから」があったのと同じ流れに思えた。 事故や天災など、どんな人でも入り口に辿り着く可能性はあり、決して特殊な地域の出来事ではないというのは、なるほどだ。 著名な新聞記者がイスラエルの留学先で学んだことを踏まえ、アカデミズムとジャーナリズムの中間をめざしたという。ただ、社会心理学の学問としての性質をこちらがうまくつかめていないので、テロが生まれる考え方や見方を単に提示したように感じてしまった。 スタンフォードの監獄実験が最初に出てくるが、この実験の信憑性を問う記事をちょうど読んだこともあってかもしれない。
Posted by
タイトル的に過激化する者に対して否定的見解が述べられるのだろうと思っていたが、徹頭徹尾中立的な視点で分析されていて内容がスーっと入ってきた。研究者としての姿勢に感銘もうけた。 心理学、人類学などの観点を織り混ぜて述べられているので学びも多い。 テロに限らず、身近にあるうつになるメ...
タイトル的に過激化する者に対して否定的見解が述べられるのだろうと思っていたが、徹頭徹尾中立的な視点で分析されていて内容がスーっと入ってきた。研究者としての姿勢に感銘もうけた。 心理学、人類学などの観点を織り混ぜて述べられているので学びも多い。 テロに限らず、身近にあるうつになるメカニズムが理解できた。 今の疲弊ムードの日本には広めるべき本かと思った。
Posted by
人がどのように過激化し、テロリズムへと走っていくのか、またテロリズムに走る人間とそうでない人間を分けるものはなんなのか、について考えさせられた。
Posted by
テロリズム寄りの取材経験から、「普通の人」が過激化する過程を考えている本。私はYouTuberなどの過激な言動を考えながら読んだが、この本はトルコやISなどの外国の内容を批判的に盛り込み、良くまとまっている。
Posted by
https://mainichibooks.com/books/social/post-45.html
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
愛着共同体の話はしんどいなあ。帰属集団は必要だけど、そう簡単にはいかないよね。とはいえ、危険分子をAIが見つけてそこに来年になったら会いに行くねとお好みの属性の魅力的な異性(性的志向によるか)の当局のアバターがご連絡して、思いとどまらせる未来というのもなんかいやだ。
Posted by
本書は「なぜテロリストが誕生するか?」ということをジャーナリストである著者が研究し、記した本である。 著者はテロを研究する以前は、 もし自分が将来テロを起こす可能性があるか? という問いには 自分は100パーセント無い と答えることができると思っていたそうであるが、テロ...
本書は「なぜテロリストが誕生するか?」ということをジャーナリストである著者が研究し、記した本である。 著者はテロを研究する以前は、 もし自分が将来テロを起こす可能性があるか? という問いには 自分は100パーセント無い と答えることができると思っていたそうであるが、テロリストを研究するにつれて、人間は誰もがテロを起こす可能性があると思うようになったという。 しかし、同じ環境に置かれても全員がテロを起こすわけではなく、そこにはテロを「起こす人」と「起こさない人」がいる。 ではその違いはどこから発生しているのか? それを細かく研究し、本書にはその結論が書かれている。 その違いの一つは、他者に救いを求めることができるスキルを持っているか、持っていないかということである。 そんなこと誰でもできるだろうというかもしれないが、人生で成功してきた人間こそ、他人に助けを求めるということは難しいのである。 また本書では、人間の暴力性についても記されている。 人間の暴力性はもともと誰もが持っており、それは実験でも証明されている。 スタンフォード大学での有名な実験で、フィリップ・ジンバルドー博士により実施された『監獄実験』というものがある。 この実験は無作為に選んだ白人の男性をくじ引きで二つに分け、一方のグループは看守役、もう一方のグループは囚人役を演じさせたのであるが、実験中にあまりに看守役たちの行為が過激にエスカレートしたために、実験途中で中止となったという実験であった。 その他にも数多くの研究結果等が論じられているが、この分野については、まだまだ研究途上であり、著者は独自に研究を進め、みずからその結論に至っている。 見事である。 本書は、テロを起こす人間、そしてそれを防ぐ方法が書いてある学術書であるが、著者がジャーナリストから学者へ移行していく手記としても読むことができる。 非常に興味深い本であった。
Posted by
メモ→ https://twitter.com/lumciningnbdurw/status/1394882294276526081?s=21
Posted by
- 1
- 2