盆土産と十七の短篇 の商品レビュー
ユーモアとどうしようもない無常さがあふれていた 由緒正しい日本文学を読んだ気がする あとがきの「一尾の鮎」で短篇の手法が語られている 最初の一文が気に入ればどんどん湧き上がってくるらしい 死がすぐそばにあった作家の名短篇集 だった
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エビフライを食べると 必ず話題に上る、教科書で触れた名著を再読。昭和の暮らしが生き生きと描かれて心地よい。金色の朝の主人公の少年がとぼけているが、カッコいい!
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表題作の「盆土産」は過去に教科書で読みました。 ゆったりとした空気感、方言、貧しいながらも温かい家族の団欒、特に大きな出来事が起こるわけでもなく、淡々と綴られる文章が教科書の素朴な挿絵と共にずっと心に残っていてました。その後ずっとタイトルが思い出せず、ふとネットでキーワード検索し...
表題作の「盆土産」は過去に教科書で読みました。 ゆったりとした空気感、方言、貧しいながらも温かい家族の団欒、特に大きな出来事が起こるわけでもなく、淡々と綴られる文章が教科書の素朴な挿絵と共にずっと心に残っていてました。その後ずっとタイトルが思い出せず、ふとネットでキーワード検索してみたところあっさり見つけられました。懐かしくて、早速図書館で借りて読み返したら目に飛び込んできた「えんびふらい」の単語に「確かにこんなのあった!」となんだか嬉しくなりました。 三浦哲郎さんの「百日紅の咲かない夏」も好きです。
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一尾の鮎を念頭において作品を書きたいという著者。無駄な装飾がなく簡潔ですっきり、でも早瀬に押し流されない力強い作品。まさにそのとおり。素晴らしい短編集です。80年代に教科書にのったというから、文章はもちろん秀逸だが、さらにその織りなす世界は多様性に富んでいます。250ページに17...
一尾の鮎を念頭において作品を書きたいという著者。無駄な装飾がなく簡潔ですっきり、でも早瀬に押し流されない力強い作品。まさにそのとおり。素晴らしい短編集です。80年代に教科書にのったというから、文章はもちろん秀逸だが、さらにその織りなす世界は多様性に富んでいます。250ページに17篇だからどれもかなり短いのですが、どっしりしています。ぜひぜひおすすめします。最近の小説にはない繊細さと品格と情緒と。ジーンとくる読後感です。ゴテゴテと盛りすぎ作品の作家たち、こういう文章を読め!!
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すごく良い本。短篇しか読まないと言っていたあの子にも読ませたい。 以前読んだ短篇がおおい、さらにいいなあ2回目。やはり根底にこの作者の文章を味わいたいという気持ちがあるからだろう。そんな書き手になりたいものだ。あとでもうすこし詳しく書く。 巻末の三つのエッセイがほんとうによい。 ちなみに短篇の前半にも家族のことについて書いたエッセイ寄りの小説がある。おふくろの消息、私の木刀綺譚、猫背の小指、ジャスミンと恋文、汁粉に酔うの記、方言について、春は夜汽車の窓から。 巻末の三つは盆土産のこと、金色の朝のこと、一尾の鮎となっている。研究としても、書き手の心得的にもよいものを読んだ。
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Panasonic melodious libraryで知りました。 とても面白かったです。 エビフライとつぶやいてしまう男の子。 睡蓮の泥池に入ってしまう男の子。 ロボットになり切ってしまった男の子。 家族の話が多くどこか悲しみもあり、そして温かい家族の愛情も。 どの短編もじっ...
Panasonic melodious libraryで知りました。 とても面白かったです。 エビフライとつぶやいてしまう男の子。 睡蓮の泥池に入ってしまう男の子。 ロボットになり切ってしまった男の子。 家族の話が多くどこか悲しみもあり、そして温かい家族の愛情も。 どの短編もじっくり読みました。知らず知らずじっくり読んでしまう。 そして気になるのは『睡蓮』 睡蓮の泥池に入ってどんどん沈んでいく悟はどうなったのでしょうか? 『メリーゴーランド』の父と娘はどうなったのでしょうか? ほんとうに気になります。
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「私の木刀奇譚」(永井荷風の「墨東奇譚」に掛けてある)、「猫背の小指」「ジャスミンと恋文」「汁粉に酔うの記」「方言について」「春は夜汽車の窓から」7編は私小説風で、現在の安定した境地(三浦哲郎の若い時の家族の宿命を、ようやく克服した、重要な意味を持つ)を思わせる。 「おおるり」(「石段」を除く)「睡蓮」「星夜」は、死の絡む話である。「ロボット」は少年が死に、「鳥寄せ」では出稼ぎがうまくゆかなかった父親が、郷里の裏山で枝に首を吊る。「メリー・ゴー・ラウンド」も、父娘の(母は亡くなっている)心中未遂を描く。未来ある中学生・高校生に、こういう暗い話を読ませたくない。PTA的になるのではないけれど、努力の物語、苦難を越える物語を、読んでほしい。 「とんかつ」は禅寺の雲水になった少年の1年の成長を、「じねんじょ」は四十を越えた小桃が、初めて実父に会う物語を描く。父親が「怨みでもあらば、なんでも喋れや」の科白が良い。
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今まで読んだ短編集で、最も心に突き刺さる一冊だった。 夫の「えんびふらい、っていうやつ。あれ、なんていう小説だっけ?」をきっかけに探して読んでみた。小説まったく読まない夫が、唯一、覚えてた作品が、この短編集所在の「盆土産」だった。切ない。これ以外にも、三浦哲郎氏本人の体験に基づく...
今まで読んだ短編集で、最も心に突き刺さる一冊だった。 夫の「えんびふらい、っていうやつ。あれ、なんていう小説だっけ?」をきっかけに探して読んでみた。小説まったく読まない夫が、唯一、覚えてた作品が、この短編集所在の「盆土産」だった。切ない。これ以外にも、三浦哲郎氏本人の体験に基づく母や娘とのエピソードや「回転木馬」など、捨てコンテンツなしの正しく名短編集。「回転木馬」は八戸の暗い海を思い浮かべながら読みました。何でかな、八戸の海、季節問わず何回も行ってるけど明るいな、って感じたことがない。そのイメージにピタッと重なる作品でした。 小説にいまいち興味が持てない人や今までファンタジーとか口当たりの軽いものを読んできた人も、まずこれ読んでほしい。そしてできれば、これに続けて『JR上野駅公園口』(柳美里さん)にトライしてほしい。
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三浦哲郎ファンの友人から勧められて、楽そうなやつ、と短編集を手に取る。 この薄さに18篇もあるのだから、本当にショートショート。 エビフライ、金色の朝、読んでみて、なかなか好きだと思ったが、短編は短くて味が重いのでなかなか読み進められない。 1ヶ月以上経ってなんとか読んだ。 出...
三浦哲郎ファンの友人から勧められて、楽そうなやつ、と短編集を手に取る。 この薄さに18篇もあるのだから、本当にショートショート。 エビフライ、金色の朝、読んでみて、なかなか好きだと思ったが、短編は短くて味が重いのでなかなか読み進められない。 1ヶ月以上経ってなんとか読んだ。 出稼ぎの親、畜産や農業に忙しい子供。 東北生まれで、6人兄弟のうち、4人が自死、失踪、と言葉も出ない環境で育った作者の一見ドライながら、奥底にこびりつく感情を裏ごしせずに読んだような気がした。 教科書でおなじみ、とあるが、私は一つも読んだ覚えがなかった。 世代的なものかもしれないが。。。 後半の作品はラストが死や消失を予見させる作品が多い。特にロボットは、例によって発達凹凸児童の言動を感じさせて、結末には胃がムカムカした。 おおるり、睡蓮、とんかつ、あたりが好みです。
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この著者の作品は多く読んで来たつもりでも、初読のものが結構あった。 今回通読して感じたのは食べ物にまつわる表現が見事だということ。海老フライやお汁粉を食べている時の描写はもちろんのこと、それらに対する憧れを切々と紡いでいる部分に読んでいるこちらの空腹感をいや増す力があった。 「甘...
この著者の作品は多く読んで来たつもりでも、初読のものが結構あった。 今回通読して感じたのは食べ物にまつわる表現が見事だということ。海老フライやお汁粉を食べている時の描写はもちろんのこと、それらに対する憧れを切々と紡いでいる部分に読んでいるこちらの空腹感をいや増す力があった。 「甘いものでも沢山食べると酔ったような気分になる」そんな感覚を持った記憶はないのだけれど、それほどに「甘さ」が遠かった時代があったのかと思い知らされた。そしてそれを体験できたことを少し羨ましく思った。飽食の時代の現在では喪失した感覚かも? 作品の一行目に重点を置いてそこで全体のリズムを掴む、というのが短編を書くこつだそうな。巻末の随筆にそのようなことが書かれていた。 それを念頭に置いて各短編を見直してみると、確かにどの作品も冒頭を読んだだけで、その先が読みたくなる仕掛けになっているように思う。それも仰々しいものでなく、例えば普段生活していてふと視界をかすめた景色がいつもと違っていて、なんだろう?と気になって振り返りたくなるようなささやかさ。読者を作中世界に引きずり込むのでなく、こちらから近付きたくなるようなさりげない一文が心地いい。
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