あめつちのうた の商品レビュー

朝倉宏景(著者)

2020/11/27

面白いか？問われたら、間違いなく面白い。でも、良いか？と聞かれたら答えに詰まります。

甲子園球場の整備を担う実在の阪神園芸(株)を舞台にした青春小説です。
この着眼点が良い。朝倉さんは初めて読みますが元高校野球児でスポーツ小説がメイン。そんな朝倉さんが裏方として頑張るグラウンドキーパーを題材にし、丹念に描いて見せたグランド整備の様々なノウハウや「あるある」が興味深く面白い（もっとも阪神園芸は「甲子園の神整備」という本で有名で単純に裏方とは言えないですけど)。
スポーツ馬鹿の父親の下に生まれた運動神経ゼロの主人公・雨宮大地と兄とは真反対の高校屈指のスラッガーの弟・傑。大地の親友で秘密を抱えるピッチャーの一志、歌手を目指す球場のビールの売り子・真夏、会社の同僚で大地をいたぶる長谷。それぞれが悩み苦しみ絡み合いながら自分の進む道を探して行きます。爽やかな話です。そういう意味で「面白い話」です。
でも、何となくハッとするような新鮮な展開は無く、どこか「そうだよな」という物語の収まり方です。また文章も特に引き付ける様な表現の上手さは感じません。途中からは筋を追う速読に変更し読了しました。

2020/11/17

甲子園球場で、神整備と有名な阪神園芸に入社した新入社員とその男の子を取り巻く周りの友達や先輩達との青春小説。
正直言うと阪神園芸の神整備の方に重点が置かれているのかと思って読み始めたら、そうではなくそれぞれの悩みと人間関係に重点が置かれていたのでちょっとアレ？っとなってしまった。
でも、新入社員として入社して、右も左も分からない中必死に仕事を覚えて行く中で、そこから学んだ事を私生活の悩みにも生かして成長していく姿はまさに青春。
とても清々しい小説だった。

2020/11/12

グラウンドキーパーという仕事をこの本で初めて知った。
だから、甲子園て特別なのか…
甲子園で高校野球、球児が輝くのは、意味があった。
守られてる。
読み進めるごとに、グラウンドキーパーの仕事を知り、人生とはこういう事だと感じた。
天と地をひっくり返せ…

2020/11/05

甲子園球場、阪神園芸、阪神タイガースなどなど野球好きの自分にとっては実に魅力的なワードやシーンが散りばめられていて、ぐんぐん引き込まれていきました。
情景描写も細かく、また甲子園球場の裏側が細かすぎるくらいよくわかり、とても良かったです。
野球のプレイ中のシーンも、目に浮かぶようで上手いな…と思わされました。
ストーリーも登場人物それぞれの線がつながり、からみあって、ほどけていく、そんな感じで終わり方も良かったと思います。
オススメします。

2020/11/03

全国レベルで言うと甲子園は自分家から近所で
窓からそっち方面の天気がわかるくらいだから
親しみを持って読みました

阪神園芸さんは本当に見事なお仕事で
雨の後なんかは、おお〜っ！ってな感じです
野球に関してはシロートですが
グラウンドが整っていくのは見てたらわかるし楽しい
その神業をクライマックスに持っていくんだから
これは盛り上がります笑

現実を離れた創作っぽい感じはするものの
エンタメ的な楽しさがあってよかった！
どれだけ雨が降っても立ち上がれるかもしれない？という勇気をもらえるし
学校でしんどい思いをしている子たちに
こんな未来があるかもしれないっていう希望を持ってほしい

グラウンドキーパーさんのお仕事内容がわかったから
今度野球見るときは土が気になってしまいそうですね笑

2020/11/02

野球の聖地、甲子園球場のグラウンド整備を一手に引き受ける阪神園芸（なんとここの社名は仮名を使わない）に就職してきた主人公。とある理由で野球が嫌いで野球が好きな彼が背負った過去と今を生きる姿を描いた、王道直球の青春お仕事小説である。

先輩との確執あり、上司からの教えあり、親友との苦しくも尊い友情、ほのかな恋物語、親兄弟とのかかわり…１年を甲子園を舞台に繰り広げられる成長譚は、ほんと読んでいてすがすがしい。

ここまで素直な青春小説が令和のこの世でまだ通用するんかと、そして５０超えたおっさんの心にここまで突き刺さるのかと感心してしまう。作者の文章にそれだけ力と熱がこもっているんやろなぁ。

お仕事小説のもう一つの醍醐味、その仕事ならではのトリビア、深イイもバランスよく散りばめられているので、甲子園のあれやこれや、芝生のあれやこれやも学べて、これもいいスパイスになっている。

野球好きならずとも、ぜひ読んでほしい１冊。本屋大賞、本の雑誌ベスト１０には必ず顔を出してくるだろうなあ。さすがにこのミスは無理やろけど（笑

2020/10/15

これは私にとって今年一番良かった本になりそうな気がする！(゜▽゜*)笑いあり、涙ありで読み終えるのが勿体なかった(*´∇｀*)若者達の未来に幸あれ！＼(^o^)／

2020/10/12

運動が苦手な雨宮大地は、家族への鬱屈を抱えながら、甲子園球場の整備を請け負う阪神園芸へと入社する。
ところが、仕事は失敗続き。
自分は本当に一人前のグラウンドキーパーになれるのだろうか?
同性愛者であることを周囲に隠す親友・一志や、重い病気を患いながら歌手を目指すビールの売り子・真夏、ケガでプロへの道を断念した、同僚の長谷。
大地は同じく「選べなかった」運命に思い悩む仲間たちと関わり合いながら、自らの弱い心を掘り起こすように土へ向き合っていく―。
(アマゾンより引用)

野球場のことなんて普段全然意識してなかったけど、大変なお仕事だなーって。
てか、世の中にはホントいろんなお仕事があるなーって思った。
主人公の父親はあり得んわ。
私だったらもう関わりたくない。

2020/09/27

阪神甲子園球場の整備を請け負う〈阪神園芸〉の新入社員・雨宮大地の一年間を描く。

〈阪神園芸〉と言えば雨の日の、いわゆる神整備で有名だが、そこには表面を整備するだけではない、グラウンドの土を管理して水はけを良くしているということ、芝も一年を通して美しく維持するために管理していること、甲子園ボウルの時はマウンド部分を削り取って平らにしていること、高校野球の大会時にはグラウンド整備だけでなく校旗の揚げ下ろしなども行っていること…等々、お仕事小説として様々なことを知れて良かった。

小説としては、主人公の大地のコンプレックスが痛々しくて自己肯定感が低いどころか常にビクビクしていて大丈夫かと心配だったが、次第に前を向けるようになっていってホッとした。

ある理由で野球が嫌いなのに野球が好きで、そのために東京からわざわざ〈阪神園芸〉に就職した大地と、夏の甲子園のヒーローから一転、怪我により野球を諦めて〈阪神園芸〉に就職した一年先輩の長谷。
不器用で仕事を覚えるのが遅い大地と、先輩の仕事を見て覚えられてセンスもある長谷。対照的で何かとぶつかる二人だが根っこは似ているところもある。
ビールの売り子バイトのかたわら歌手になることを目指している真夏や、高校の同級生で大学の野球部でピッチャーをしている一志(かずし)。二人もそれぞれ抱えるものがある。特に一志の問題はどうなることかとハラハラした。

大地が一方的に周囲から鍛えられ励まされしながら成長さしたり変化していくのかと思われた序盤とは違って、大地もまた周囲を励ましたり変えていったりしている。

『感謝を求めるのではない。しかし、結果的に感謝される仕事』

自己肯定感が低いのではなくて、ずっと肯定して欲しくてたまらなかった大地の痛々しさはそこに自身で気付き原点と向き合うことでようやく出口が見えてくる。
また長谷、真夏、一志もそれぞれの出口、あるいは新たな一歩を見つける。
大地の名前に込められた『雨が降るからこそ、地固まる』のように、困難も仲間たちと共に乗り越えられれば更に強くなれる。
先輩社員たちや大地の家族も良い人たちだった。

2020/09/22

甲子園の神整備で知られる阪神園芸を描いたお仕事小説。

あの神整備で最近脚光を浴びる阪神園芸。新入社員の一年と、甲子園の年間のスケジュールがリンクした構成。時に水を必要とする土、適度な乾燥と湿り気のバランス。シーズンオフには天地返しをおこなうなど、登場人物の感情をグラウンド整備にたとえたストーリー展開が上手い。その分、個々の人物の造詣はやや単調か。LGBTの出てくるのも唐突な感がある。本当に必要だっのか。

甲子園の土と広い空。総じて良くできた小説。