カインの傲慢 の商品レビュー

中山七里(著者)

2022/07/07

なかなか重いテーマ。

臓器移植を願う患者や家族にとって、高いお金を支払ってでもなんとかして欲しいと願う。
かたや、お金に出来るのは自分の臓器のみという人。
すこく冷めた目で見たらウィンウィンの関係だけど…どうなんだろう？

不運？だった王少年と小塩少年がストーリーのスタートだったから犬養刑事は正義に見えたけど、終盤の考え方もないとは言えないと思うと複雑。

2022/07/07

今回の犯人は分かりやすく、どんでん返しとしては弱いラストかと。
それよりは、この作品のメッセージ性が、より重要な意味を持っているように思います。

臓器移植が必要な人たちと比べてドナーが圧倒的に少ないために、提供者が現れる前に亡くなってしまう患者たち。臓器を売って生き繋ごうとする貧困層。そこに生まれた不幸な子どもたち。横行する臓器移植ビジネス。
誰かを一概に悪とは言えない問題に、犬養が出す結論とは。
考えさせられるラストでした。

2022/06/08

臓器売買の是非がテーマの一つ。本作の中で行われた事件はとても許せることではないのだけど、でも単純に悪いと言いきれない面もあったりして、重たい気持ちになった。
医療と法律。犬養刑事の苦悩は続く。

手術した少年たちが死ななければバレなかったのに、それは医師の技術不足のせいということだったのかな？手術件数が少なくて経験を積めないから？彼らが死ななきゃいけなかったのは気の毒すぎる。

2022/05/02

内容（「BOOK」データベースより）
違法な臓器売買の検挙は、形を変えた殺人だ―。練馬区の公園で、少年の死体が発見された。調査の結果、少年は中国人だと判明。しかも死体からは臓器が持ち去られていた。捜査一課の犬養隼人は、後輩の高千穂明日香と共に捜査に乗り出す。少年の生家は最貧層の家庭だった。日中の養子縁組を仲介する不審な団体の存在も明らかに…。その頃、都内では相次いで第2、第3の死体が見つかる。やはり被害者たちは貧困家庭の少年で―。背後に見え隠れする巨大な陰謀。それに立ち向かう犬養たちの執念と葛藤。驚愕のラストが待つ、医療と社会の闇にも迫った警察ミステリ。

2022/03/12

刑事・犬養隼人シリーズの6作目。主人公犬養の娘が腎臓病で移植待ちという設定だけに勢い医療モノが目立つ。本作は，公園の緑地に内蔵を取り除かれた死体が発見されたところから始まる。一作目の「切り裂きジャックの告白」の模倣犯かとも思われたが，色々と状況が違った。持ち去られていた臓器は肝臓の一部だけだったのである。第2，第3の被害が発生するが，被害者はいずれも若者で貧困家庭の子供だった。というところから移植のための臓器売買が疑われ，日本の臓器提供のハードルの高さや機会の少なさに較べ，中国ではギリギリ法に触れないビジネスとして確立されているという話。中国の最貧の村では臓器よりほかもう売るものがないとか，日本でも貧困層の拡がりから似たような状況になってるとか社会問題を取り上げた話となっている。犬養・高千穂コンビの活躍で事件の全容が解明されていくが，結局金と地位のある一番の元凶には手が届かないという物足りなさが残る。臓器売買ルートを叩き潰すことで命を救えない人が出てくるというのは現行法上はやむを得ないことでこれは法の見直しをまずしっかり検討する必要がある。しかし本作の事件で問題とすべきはもっと別のところだろうと思うのだが，何故か最後まで触れられていなかった。
しかし借金のカタに臓器売買なんて，日本でもドラマや漫画の中では何十年も前から存在していたけどねぇ。

2022/03/12

とても考えさせられる作品です。
悪いことは分かっているけど、その人の立場になれば誰が加害者で誰が被害者か判断できなくなります。
ラストは、悲しさと怒りと切なさなどが複雑に絡まり何とも答えようのない感情になりました。

2022/05/21

臓器を一部抜き取られた十代の子供の遺体が相次いで見つかる。彼らはみな貧しく問題がある家庭の少年たち。切り裂きジャックの模倣犯かとも思われたが、背後には中国人ブローカーの存在がちらつき始める…。

貧困層と富裕層で広がる格差。生まれる需要と供給。人間の命を金で買うことは罪なのか？

陣野は犬養が事件を解決したせいで自分の孫は臓器移植を受けることが出来なくなったと詰る。
彼の金に物を言わせて他人の命を買おうとする行為も、犬養を責めるこの行いもタイトルにある「傲慢」だと感じた。

犬養はドクター・デス事件以降、警察官としての遵法精神と父親としての愛情の狭間で懊悩していたのだろう。
今回の事件を経て彼の苦悩は深まるばかり。

なんといっても今作は高千穂成長回。
これまで“女性警察官”として母性が強調されてばかりでいまいち見せ場なしだったが、今回は技能を活かして貢献し警察官として大きな一歩を踏み出していた。

2022/02/21

重い内容をエンタメで読ますさすがの七里ワールドだけど読後感は苦い。得意のどんでん返しは七里ファンならば先読み出来てしまうと思う。

2022/02/19

犬養シリーズ第五弾！
今回は貧困と臓器売買がテーマ。持てる者は臓器を金で手に入れようとし、持たざる者は己の臓器さえ売買の対象とする。日本と外国の臓器に対する違いを明らかにするとともに、その陰で行われる闇の商売に焦点を当てた。
最後の終わり方は何もなす術がない突き放した終わり方であるが、これはこれで深みが出てなんとも言えない。
犬養シリーズは順番に読み進める必要がある。本作から読むのではなく、第一作から読んでほしい。

2022/01/31

臓器移植、子ども、所得格差
テーマが辛かった
立場が変われば、大事にする視点が変わると思った。
正しいって思っても、他の人はそう思わないってことがたくさんあるな。

電子booksの最後に「ラスプーチンの庭」の第1章の試し読みがあって、早く読みたくなった。