迷子のままで の商品レビュー

天童荒太(著者)

2024/06/06

久々の天童荒太作品。
人間の心の闇の部分、弱い部分を描き切るのが上手な作家さんだと思う。
表題作と「いまから帰ります」の2作品が掲載される本書。
「迷子のままで」ではネグレクトが描かれ、「いまから帰ります」では震災後が描かれる。
生きるっていうのは重いな…と思わされる。
人間には表と裏、光と闇の部分が混在していてどちらか一方で成り立っている人なんていない、そんなことを思いながら読んだ。

2024/01/31

児童虐待を扱った「迷子のままで」、東北大震災後の東北の地での再生を感じさせる「いまから帰ります」の２編。苦しく感じながらも、やり直し生きていくことを模索する終わり方で良かった。子供の虐待は、描写を読むだけでもグッと辛い小野がある。

2023/08/09

子どもの虐待死・震災後の現実にまつわる2編
どちらも迷子のままの心情が綴られた作品で強いメッセージが込められた作品だと思った。
文中に出てくる伊丹万作さんの言葉で
「騙されると言うこと自体が既に1つの悪である」「騙されていたと言って平気でいられる国民ならおそらく今後も何度でも騙されるだろう」ストンと納得出来た。
私は人の立場に立って自分で考える事を忘れている気がする。人の意見に流される、惑わされ自分の意志がどこにあるのかを見失う事がある。『郷に入れば郷に従え』は良い事だけではないと思う。

虐待に関しては被疑者だけが罪人ではない事が浮き彫りになった作品だったと思う。

2022/09/15

迷子のままで
児童虐待、虐待の連鎖。
100%連鎖したらなくならない。
子どもだった自分、大人になった自分との葛藤がリアルだった。

いまから帰ります
震災にまつわる、せつない話。
でも温かく、希望が持ててよかった。
沢山の沢山の人が、きっと今も帰ろうとしている。そして待っている人がいる。
不思議な出来事も信じられる。

2022/04/24

いやあうまいなあ…
天童荒太さんの小説好きかも。
人間のいいところも悪いところもしっかり描かれているのに、読み終えた後に残るのは、ほんのりとしたあたたかさ。

2021/07/09

「家族狩り」に比べると、やわらかできれいな文章。カッなって暴力をふるってしまいそうになるシーンの心理描写とか、ほんと秀逸。人間って、こういう気持ちを持っているんだよ。「好き」だけでなく、自分の中の暴力性を知ったうえで、「家族になる」、「子を産む」選択をしてほしいなあと思う。明るいだけの未来、美しい家族は存在しない。
この本にはいっている、『今から帰ります』も、よかった。

2021/02/05

天童作品久しぶりに読んだ
小品二作
「迷子のままで」は父親とはどういう存在かを考えさせられた。
「永遠の仔」にもつながる感じがした。
「いまから帰ります」が東北大震災の話とは。
迷子はまだまだいる。

2020/11/03

2話目「今から帰ります」
こういう境遇の方々がまだまだ沢山いらっしゃるのでしょうね。生死の確認が出来なければ気持ちの踏ん切りはつかないのでしょう。非現実的だけど本当にあって欲しいなと思う。
だまされることについても考えさせられる。

2020/10/26

２編とも良かった。こういう切り口の作品はたくさんあるのかもしれないけれど、天童荒太だから！という作品だったんじゃないかと思う。
2020/9/3読了

2020/10/20

中編が２つ。
じっくり長編で読みたい気持ちもあったが
このくらいだから、かえってよかったのかもしれない。

「迷子のままで」　
子どもを虐待して殺してしまう親
みんなが幸せに育って
幸せに成長して
幸せに結婚するわけじゃないけど
でも負の連鎖みたいなのはいつか止めたい
自分は関係ないと思わないで暮らさなければ

「いまから帰ります」
福島の原発の処理作業をする男性たちの話
根は深い
正しい、間違ってる、だけではおさまらない大きな事故
でも
またこんなことが起こらないように
悲しい人がまた増えないように
考えていかなければ