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鳥の歌いまは絶え の商品レビュー

3.7

21件のお客様レビュー

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2020/08/30

SF。クローン。終末。ディストピア。 全体的に静かで美しい作品。 2部のラスト、モリーとマークのやりとりがとても好き。 サンリオ文庫からの復刊助かります。

Posted byブクログ

2020/08/28

人間がいた時代、その後のクローンの時代、またその後のクローンと有性生殖者たちの対立の時代。この三部構成はとても壮大かつ野心的な設定ではあるのですが、なぜか盛り上がりには欠ける作品。 もちろん、その盛り上がりのなさを、時代の推移を叙事詩のように描いていると捉えれば、それは本作の魅...

人間がいた時代、その後のクローンの時代、またその後のクローンと有性生殖者たちの対立の時代。この三部構成はとても壮大かつ野心的な設定ではあるのですが、なぜか盛り上がりには欠ける作品。 もちろん、その盛り上がりのなさを、時代の推移を叙事詩のように描いていると捉えれば、それは本作の魅力となるのでしょう。しかし、そのドラマ性の無さにどうしても気持ちがついていかなかったというのが実情です。ただ、くり返すと、読む人が読めば、きっと面白いからこその復刊なのでしょう。 一つだけすごいと思えたのは、人間がいなくなるという、まさしくポストヒューマンな世界を幻視したことです。本書の発表が1970年代であったことを考えれば、慧眼であったと言ってよいでしょう。

Posted byブクログ

2020/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

環境汚染の影響で人間を含む生物が極端な不妊傾向に陥りつつある世界。シェナンドアの谷に住む一族は、密かに谷一帯に研究所や病院を建設し、一族のメンバーをクローニングすることにより人類文明の継続を図る。その一員・デイヴィッドは、従姉妹シーリアとの許されない恋に悩みつつ、クローンたちの面倒をみていたが、新たに生まれ続けるクローンが自分たちオリジナルとは異なる精神世界を持っていることに気づく・・・ 美しくて、切ない物語。 3篇の中篇による、シェナンドアの一族による年代記の体となっており、第一部は一族のオリジナルであるデイヴィッド、第二部は数世代後のクローンであるモリー、第3部はモリーが有性生殖で産み育てた息子マークがそれぞれの物語の主人公を務めます。 オリジナルの世代が全資産を投入して決死の覚悟で生み出したクローンの子供たちは、オリジナルには理解できない共感覚を持ち、意識も価値観も共有して常に同じクローン同士で行動し、オリジナル世代を忌み嫌います。個性を持たない彼らは、世代を経るに従い、指導者層と労働者層に分化し、指導者層は需給バランスに応じて労働者層の「生産」と「訓練」をもコントロールするようになっていきます。 しかし、クローンたちには「想像力」と「創造力」が決定的に欠けていました。物事を概念的・普遍的に捉えることができず、新たなことへのチャレンジを極端に恐れる彼らの社会は、ある時突然生まれたモリーの「個性」を理解することができません。モリー自身もまた、自らが獲得した「個性」を持て余し、クローン社会から放逐されて緩やかな破滅の道を進んでいきます・・・。 語弊を恐れずに言えば、とても「わかりやすい」作品です。 オリジナルとクローンの対比が明確で、ラストシーンでクローン社会の滅亡とマークの一族の繁栄を描くことで、個性を持った人間の勝利をこれ以上ないほどわかりやすく提示し、「やっぱり人間はこうじゃないとね!」との明確なメッセージ性が感じ取れます。 ただ、そのわかりやすさ故に、中盤ぐらいから「あー、この後こうなっていくんだろうなぁ・・・」と先が読めてしまい、ラストシーンに至って「まぁ、これまでの流れだったら、そりゃこうなるよねぇ・・・」と全く盛り上がらず、感動に至らなかったのが、鴨の正直な感想です。情景描写が濃密で、読み応えのある作品ではありますけど、思ったよりも内容はイマイチ、と言わざるを得ない感じ。全体的に古い、という印象もありますね。 この時代のSFは、これに限らずメッセージ性の強い作品が多い印象で、時代の必然なのかな、とも思います。

Posted byブクログ

2020/08/02

放射能汚染により、繁殖能力が低下した社会で存続するためのクローン技術を適応させた世界、という設定。ちょっと古い時代に書かれた話なんだろうな、というのは「放射能」という設定で思ったり。今のSFはコロナのような感染症拡大後とかになるのかなぁ。 設定されている土地がバージニアなのがな...

放射能汚染により、繁殖能力が低下した社会で存続するためのクローン技術を適応させた世界、という設定。ちょっと古い時代に書かれた話なんだろうな、というのは「放射能」という設定で思ったり。今のSFはコロナのような感染症拡大後とかになるのかなぁ。 設定されている土地がバージニアなのがなんか懐かしい。南北戦争ではあそこは南側だったし、ちょっと反体制なイメージがありましたよね、今はどうかわかりませんが。 というわけで単体繁殖の共同意識はわかる気がするんですが、同じ遺伝子構造でも年齢が違ったらその共有は無理そうな気がするんですがどうなんだろう。ま、クローン技術がまだそこまで追い付いていない現代での仮定の話ではあるんですけどね。 変化に対応できない単一化社会という辺りは少し現代と重なるところがあるかもな〜とか思いながら読みました。面白かったです。

Posted byブクログ

2020/07/26

地球上のあらゆる生物が生殖機能を喪失しつつあることを知ったデイヴィッドは、クローン技術をつかい種の保存を画策する。仲間とともにシェナンドアの谷に研究所を創設し、研究に明け暮れる彼は、ついにクローン人間を誕生させる。クローン人間はオリジナルと寸分違わない容姿と申し分ない才能を発揮。...

地球上のあらゆる生物が生殖機能を喪失しつつあることを知ったデイヴィッドは、クローン技術をつかい種の保存を画策する。仲間とともにシェナンドアの谷に研究所を創設し、研究に明け暮れる彼は、ついにクローン人間を誕生させる。クローン人間はオリジナルと寸分違わない容姿と申し分ない才能を発揮。研究所を発展させ、人類存続の要となるはずだった。だが、クローン人間はオリジナルとは相容れない存在であることを悟ったデイヴィッドは… 人類がクローンを生み出す一部、クローンだけの谷で異端児が生まれる二部、逼迫するクローンの谷とその行く末を描く三部構成で描かれる本書は、ヒューゴー、ローカス、ジュピター三賞を受賞したケイト・ウィルヘルムの代表長篇です。 地球上の生物が生殖機能を失う理由を本書では核兵器はじめとする放射能汚染と説明付けています。核兵器の脅威と対面する当時の時代背景を感じられますが、本書の主題はそこにはありません。 ではクローンが主題かと問われると果たしてそうなのかなぁと首を傾げてしまいます。もちろん、本書の主役はクローンです。本書で描かれるクローンには幾つかの特徴があり、例えば共感性がとても強く、仲間のクローンと離れることを極端に嫌います。クローンも世代を経るにつれ、その特色が強まり、やがては個人(=個性)という概念がなくなります。個性を失くしたクローンは創造性を失い、突発的なトラブルに対処できなくなります。そういった状況にある谷で生まれた異端児、マークはクローン社会の限界を感じ、ついに行動を起こします。これが本書のラスト。こう振り返ると、クローンはあくまで外側であって、大事なのはその中身ではないかと思うのです。多様性というと強引なまとめ方かもしれませんが、生物がその種を連綿と受け継ぐことのできただろうその特性にシンプルに目を向けた物語かなと。ちなみに、そんな物語なのに、デイヴィッドやクローンどもが近親相姦を求める姿には、何か皮肉めいたものを感じざるを得ませんでした。 いまでこそ多様性というと、ダイバーシティと横文字になり、オーソドックスなテーマなのかもしれません。にも関わらず、本書に魅力を感じたのは、情景豊かな描写により醸し出される荒廃した世界観と、メインとなる登場人物(デイヴィッドやモリーなど)の末路があまりにもマッチしていたからかと。特に二部が印象に残ります。モリーが個性(というか自我?)を獲得する姿は感動的で、まるで人類が火を獲得したかのよう。そんなモリーの結末には、「えぇ、まじか」と思わず声が出てしまうばかり。喪失感を味わうのだけど、それが一番しっくりくる終わらし方。この辺りのうまさにこころを揺さぶられました。最後は(たぶん)希望の持てる幕引きでもあったしね。いい作品でした。

Posted byブクログ

2020/07/23

おもしろかった。わりと重いテーマだと思うのですが、3部構成ですっきりまとまり、読後感が軽くすんでいる。

Posted byブクログ

2020/06/14

海外文学はあまり読まないのですが、ブクログでフォローしている方のレビューを見て、どうしても読みたくなった一冊。 とっても面白かった。 日本語訳なので、最初は少し読み慣れないところもあったけれど、物語の面白さにどんどん引き込まれていってしまった。 3部からなる物語。 第一部は核...

海外文学はあまり読まないのですが、ブクログでフォローしている方のレビューを見て、どうしても読みたくなった一冊。 とっても面白かった。 日本語訳なので、最初は少し読み慣れないところもあったけれど、物語の面白さにどんどん引き込まれていってしまった。 3部からなる物語。 第一部は核実験などによる放射線障害で人間が住めなくなる環境で、なんとか人間が生き延びるために実験室でクローンを作り出そうとする。 第二部は、統一されたクローンたちの中で、個人として生きることに気づいた一人。 第三部ではその子供がさらに個として生き、統一された集団から離れていく。 物語 本編の最後 バリーの一言「なにもかも、そのためだった。」 が衝撃的。 全然違うけれど、映画「カサブランカ」の警部を思い出してしまった。 読み応え抜群。 本当に読んで良かったと思いました。

Posted byブクログ

2020/05/23

出版社のSNSで目にしたあらすじがおもしろそうだったのと、東逸子さんの表紙イラストに惹かれて、馴染みのないSFではあったが予約購入をしてまで挑戦してみた。80ページくらいまでは忍耐が必要だったし、日々の疲れに邪魔をされたりもしたが、100ページくらいからは一気に読めた。つらい場面...

出版社のSNSで目にしたあらすじがおもしろそうだったのと、東逸子さんの表紙イラストに惹かれて、馴染みのないSFではあったが予約購入をしてまで挑戦してみた。80ページくらいまでは忍耐が必要だったし、日々の疲れに邪魔をされたりもしたが、100ページくらいからは一気に読めた。つらい場面が多々ありおもしろかったとは表現しにくいが、それでもこの2020年に読めたことが意味を持つのかもしれない。『シェナンドア』の章でモリーが獲得していくものを見守るのはつらくもあったのだけれど、それでも彼女の様子はとても感動的だった。

Posted byブクログ

2020/05/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かつてサンリオSF文庫から刊行されていた長篇が復刊。 『クローン』というものに関する浮世離れした描写にはやや違和感があるものの(現代ではこのような描かれ方はしないだろうな、という感じ)、面白かった。

Posted byブクログ

2020/05/11

77年のヒューゴー賞受賞作だが、その前後はというと、  75年 ル=グウィン「所有せざる人々」  76年 ホールドマン「終わりなき戦い」  77年 本作  78年 ポール「ゲイトウェイ」  79年 マッキンタイア「夢の蛇」  80年 クラーク「楽園の泉」  81年 ヴィンジ「雪の...

77年のヒューゴー賞受賞作だが、その前後はというと、  75年 ル=グウィン「所有せざる人々」  76年 ホールドマン「終わりなき戦い」  77年 本作  78年 ポール「ゲイトウェイ」  79年 マッキンタイア「夢の蛇」  80年 クラーク「楽園の泉」  81年 ヴィンジ「雪の女王」  82年 チェリイ「ダウンビロウ・ステーション」  83年 アシモフ「ファウンデーションの彼方へ」  84年 ブリン「スタータイド・ライジング」 と、ある種の政治的状況下にあった、といえなくもない。 まぁ、ファンダムのことも当時のアメリカ社会の空気感も判りはしないのだけど。 で、帯ではティプトリーやル=グウィンと並べられているけど、ご当人に女性SF作家としての自意識が強かったとも思えない。 この後、主戦場をミステリーに移していることをみても、SF作家ではなく商業作家として身を立てることへのモチベーションが強かったんだろう、と思う。 本作自体は、3つの中編から構成された年代記で、今なら三部作として一編毎に500ページくらい費やされていたのだろうな、と思ってしまう。 個人的には、普遍的な名作、ではなく、時代の産物、と感じるところだけど。 今回のカバーイラストも、サンリオ版の「誤読」を引き継いで弓矢を持った女の子(ビーチクは無し)が描かれているけど、これでないと文句言われると思ったんですかね…

Posted byブクログ