兄の終い の商品レビュー
すごいな、この作者は。最終的にはお兄さんを許せたんだ。 作者は嫌っていてほぼ絶縁状態だった兄の突然の死を警察から知らされる。そこからの後処理の為に奔放する五日間を描いたノンフィクション小説。 ふとしたきっかけでネットで書評を発見し、その瞬間に読むことを決意した。 何故か。僕に...
すごいな、この作者は。最終的にはお兄さんを許せたんだ。 作者は嫌っていてほぼ絶縁状態だった兄の突然の死を警察から知らされる。そこからの後処理の為に奔放する五日間を描いたノンフィクション小説。 ふとしたきっかけでネットで書評を発見し、その瞬間に読むことを決意した。 何故か。僕にも大嫌いな兄がいるからだ。出来ることなら絶縁したいし、早くこの世からいなくなってほしいとすら思う。そんな僕だから、この本のあらすじには惹かれずにいられなかった。 読了後、最初に抱いた感想が冒頭の文章だ。この作者とは置かれた状況が違うといえど、両親の仕事なんとも言えない蟠りと憎しみを兄に抱いていた点は共通している。そんな作者が、兄の死後の後処理に奔放し、諸々の問題を片付けていく様は本当に素直に尊敬に値した。僕に同じように出来るか。とてもそうは思えない。この作者は兄のことを憎みきれなかった。そこが僕との違いだ。僕は完膚なきまでに憎みきっている。 僕の兄は小学生の男子を育てるシングルファザーでも無ければ、病気のせいで定職につけない50代中年でも無い。不謹慎かもしれないけど、僕はそのことに感謝したい気持ちになった。そうでなければこの作者のように大嫌いな兄のために奔走して最終的に哀れな兄を許す気になっていたのかもしれないのだから。この作者には畏敬の念しか無い。僕も50前後になればその境地に至れるのだろうか。 作者の甥っ子とそのお母さん達のこれからの人生が幸多きものであることを祈っている。
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警察署からの電話で兄の死を知った。周りに迷惑ばかりかける人だった。体を壊し、職を失い、貧困から這いあがることなく死んだ兄を弔うために、元妻、息子、妹である私が集まり…。怒り、泣き、ちょっと笑った5日間の実話。 短い時間に行われた作業がすごすぎる…。私にはできないと思った。 共著...
警察署からの電話で兄の死を知った。周りに迷惑ばかりかける人だった。体を壊し、職を失い、貧困から這いあがることなく死んだ兄を弔うために、元妻、息子、妹である私が集まり…。怒り、泣き、ちょっと笑った5日間の実話。 短い時間に行われた作業がすごすぎる…。私にはできないと思った。 共著繋がりで読んだ。
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スピード感と迫力ある文章に、気がつけば読み終えていた。 村井さんにとって、絶対に許し難い存在であった兄。 突然、彼の死の後始末をしなければならなくなったその気持ちは計り知れない。 絶望と悲嘆の中にありながら、兄の前妻と困難に立ち向かう。 見知らぬ土地の人の優しさに触れながら、この...
スピード感と迫力ある文章に、気がつけば読み終えていた。 村井さんにとって、絶対に許し難い存在であった兄。 突然、彼の死の後始末をしなければならなくなったその気持ちは計り知れない。 絶望と悲嘆の中にありながら、兄の前妻と困難に立ち向かう。 見知らぬ土地の人の優しさに触れながら、この経験が心あたたまるものへと変わっていく様子に救われる思い。 どんな人であってもその生涯、生き様というものは物語なのだなと感じた。 残された小学生が転校のため学校を去る時のお別れ会、先生たち、里親さんとのふれあいに、思わず目頭が熱くなった。
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村井さん3冊目 「兄は確かに優しいところもある人だった。 わかり合えなくても、嫌いきることはできない どこにでもいる、そんな肉親の人生を終う意味を問う。」 作品紹介より 大変だ。 こんなことってあるのか。 疎遠になっていた関係性の良くない兄の訃報。 両親は...
村井さん3冊目 「兄は確かに優しいところもある人だった。 わかり合えなくても、嫌いきることはできない どこにでもいる、そんな肉親の人生を終う意味を問う。」 作品紹介より 大変だ。 こんなことってあるのか。 疎遠になっていた関係性の良くない兄の訃報。 両親は既に他界。 肉親は自分のみ。 ひとが住んでいた空間をきれいさっぱりするっていうのは大変 お子さんもいて、亀と魚もいる。 兄の元妻と村井さんとの関係性が良いのが救い。そうでなければ、誰かがいなければ一人では無理だ。 片付けは大変。自分のものだって大変なのに、亡くなった兄のものだなんて。 特殊清掃員、神だ。 やるしかない、そこに尽きる。 でもだんだん片付けが進むと共に、煩雑な手続きが終わってくると共に、本の温度が変わってくる。 本の最後、 生活支援課保護担当者の話と、里親夫妻の話に、家族から見たその人なんてほんの一面なんだなと 淡々としたダイアローグになおさら思った。 村井さんのあとがきの気持ちが、もうここにはいないお兄さんに伝わったらいいのに。 いい本だった。
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大人になってからは関係の薄くなった亡き兄の後始末を、妹である著者と、兄の元妻とでおこなった経過がつづられたエッセイ。著者は、母親が兄贔屓であったことを根に持っていて、母親にも兄にもどんよりとした感情を抱き続けていることが文章の端々からにおってくる。最終的には、厄介で迷惑な人だっ...
大人になってからは関係の薄くなった亡き兄の後始末を、妹である著者と、兄の元妻とでおこなった経過がつづられたエッセイ。著者は、母親が兄贔屓であったことを根に持っていて、母親にも兄にもどんよりとした感情を抱き続けていることが文章の端々からにおってくる。最終的には、厄介で迷惑な人だったが、私一人は兄を許そう、というところで終わっている。後始末をしているなかで、いままで知らなかった兄の生き様が少しずつ見えてきて、著者の感情がかすかに変化していく、というところが読みどころなのだろう、と思う。しかし、私一人は兄を許そう、ということは、兄の上に立って見下ろして、兄の人生全体や人格を裁いているわけで、しかもこの妹は文章を書くことを仕事にしている人なので、こうして本にされて己の人生を妹のフィルターを通した形で勝手に公開されてしまうのである。そういう兄妹関係であり、親子関係だったんだろうなあ、と読んでいるこちらは思い、ページを閉じたのであった。
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村井理子さんのエッセイ「兄の終い」読了。 翻訳書の文章が読みやすくて好きになった村井理子さんのエッセイ2冊目。 2019年、突然、疎遠になっているお兄さんが住んでいる宮城県の警察から電話がかかってきて、「お兄さまのご遺体が本日午後、多賀城市内にて発見されました」との連絡が!?...
村井理子さんのエッセイ「兄の終い」読了。 翻訳書の文章が読みやすくて好きになった村井理子さんのエッセイ2冊目。 2019年、突然、疎遠になっているお兄さんが住んでいる宮城県の警察から電話がかかってきて、「お兄さまのご遺体が本日午後、多賀城市内にて発見されました」との連絡が!? その電話から、数日後、お兄さんの元妻の加奈子ちゃんと一緒に、お兄さんを火葬し、アパートを引き払い、お兄さんと一緒に済んでいた甥っ子を加奈子ちゃんが連れて帰るまでの、いろいろな出来事を書いているエッセイ。 突然亡くなった方の遺品の整理、もろもろの手続きの大変さと、疎遠であっても肉親の死に対する気持ちの動きなど、あぁ、大変だなぁ、と、いつか自分にも降ってくるかもしれない事態を予習させてもらった、って感じでした。ありがたや。 大変なことではあるけれど、女性2人がチャキチャキと立ち向かう姿が読んでいて気持ちよかった。
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この本以前読んだけど読書メーターに記録がない。思えばこの本が村井さんの初めての本だったな。改めて読み直すと、不仲の兄の突然死、汚部屋の片付け、甥の手続き、ペットの譲渡、火葬…とまさに嵐のように1人の人生を片付けた記録に圧倒された。
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人生の短さについて 疎遠で迷惑だと思ってた兄の死。 兄の部屋はわたしの部屋のような気持ちがした。 これは実話かな? 現実味のある話しでいろんな人に勧めたくなる。 火葬する前に服をきせるかな?わたしだったら。なんて考えたりした。 死ぬにも捨てるにもたくさんのお金がいる。
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残されたたった一人の肉親である著者の兄が、宮城県多賀城市内のアパートで、脳出血により死亡。その後始末のいきさつが綴られた作品。 一緒に片付けをする兄の元妻と娘や、亡くなった兄を発見した息子の様子が描かれている。著者の心情と合わせ書かれた本書は、一編の小説を読んでいるような感覚にな...
残されたたった一人の肉親である著者の兄が、宮城県多賀城市内のアパートで、脳出血により死亡。その後始末のいきさつが綴られた作品。 一緒に片付けをする兄の元妻と娘や、亡くなった兄を発見した息子の様子が描かれている。著者の心情と合わせ書かれた本書は、一編の小説を読んでいるような感覚になった。
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図書館にて。 「家族」で気になっていた息子さんのその後の生活が、お母さんお姉さんと一緒に暮らせることになり幸せに暮らしているらしいとわかり、とても良かった。 ただ、今回お兄さんが亡くなったことによってそういう生活を送れることになったところが非常にもやもやした。 様々経緯があってそうなり、誰にもどうしようもなかったのかもしれない。 部外者がどうこうできることではないのだけれど、お兄さんが亡くなって借りていた部屋がものすごくものすごく汚かったくだりはぞっとした。 小学生の男の子がそこに一緒に暮らしていて、お兄さんの亡骸の第一発見者となったことがいいことではなかった。 彼の通っていた小学校の先生やお友達が、彼にとって救いになっていた、その雰囲気が伝わってきてこちらも救われた。 もっとどうにかならなかったのかと部外者である私は思うけれど、どうにかならなかったとしてもどうにかなればよかった。 お父さんとの生活でも幸せな時間はたくさんあっただろう。 それはそれとして、お父さんであるお兄さんが亡くなったことで、お母さんお姉さんと暮らせるそれまでより清潔な生活が得られたのだとしたら、お兄さんは天寿を全うしたんだと思う。 そう思ってしまうのもやはり他人だからか。 元奥さんと妹である村井さんが必死で走り回ってこなす煩雑な、人が亡くなった後しなきゃいけないたくさんの処理ももっとどうにか…と思った。 いつか自分も、家族も迎える死、決して他人ごとではなく身につまされた。
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