向田邦子ベスト・エッセイ の商品レビュー
向田邦子さんの文章を読んだ。初めて読んだ。 多くの人がお手本にしたい文章とっていることがよくわかった。 とても読みやすいし、読者に不快な思いをさせない、面白いエッセイばかりだ。 今の時代では想像すらできないくらいの珍事も、向田さんの前にやってくる。 都内でライオンを目撃したり、人...
向田邦子さんの文章を読んだ。初めて読んだ。 多くの人がお手本にしたい文章とっていることがよくわかった。 とても読みやすいし、読者に不快な思いをさせない、面白いエッセイばかりだ。 今の時代では想像すらできないくらいの珍事も、向田さんの前にやってくる。 都内でライオンを目撃したり、人が落ちてきたり(大丈夫です。怪我していません)、文章以外のところでも何かを引きつける天性のものがあったのだろうか? しばらく、本屋で向田邦子さんの書籍を物色することになるだろう。 楽しみだ。
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初めて向田邦子の文章を読んだけど、なるほど読みやすい。常識や世間体に捉われずに、身の回りに起きたあれこれについて驚いたり喜んだりしていて、その素直さは読んでいて心地よいし時代を超えて愛される理由も分かった。とは言え昭和の香り漂うエピソードは多く、少し洒落たサザエさんを見ているよう...
初めて向田邦子の文章を読んだけど、なるほど読みやすい。常識や世間体に捉われずに、身の回りに起きたあれこれについて驚いたり喜んだりしていて、その素直さは読んでいて心地よいし時代を超えて愛される理由も分かった。とは言え昭和の香り漂うエピソードは多く、少し洒落たサザエさんを見ているような感覚も覚えた。
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昭和を感じるベストエッセイ。女性の放送作家は、当時としては気鋭だったことだろうが、何か、侘び寂びを感じて、読みやすく、親しみを感じる。
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アイデンティティーがしっかりある人だと思った。 私はこれがいいというこだわりを持ち続けること。 短所をなおすのではなく、短所をいかすという生き方が素敵だなと思った。
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この時代に生まれ生きたからこそ書ける話の数々。そもそもの文体が美しく、品が良い。それでもしゃっきりとしていて、人間らしさが伺える。大人の女性としても憧れてしまった。きっと日常が尊く思える。
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どのエッセーもとても素晴らしかったが、犬の銀行が一番好きだ。 飼い犬の「向田鉄」が近所の犬と遠出しているうちに、作者は手を泥だらけにして穴をほって鉄の埋めたコレクションをのぞき見する。埋め戻してやりながらこれは犬の銀行なのだと定義する。 20代半ばの大人の女性がこれをやってるのが可笑しくて可愛らしい。 さらには預金をしていない自分を省みて、犬のコレクションを見たからその気になったわけでもない、などどいいながら、そのあと自分名義の預金通帳を作る。 そして「私には預金があるのよ」と日本橋の銀行から颯爽と歩き、電車の中で前に腰かけた人々の懐具合を勝手に想像するくだりは、可笑しさ可愛さMAXである。 ただこのエッセイが本当に見事なのは、可笑しい可愛らしいで終わらないところだ。話はあっという間にガラッと転換する。 鉄は十か月で死んでしまう。預金は鉄のお墓に充てられる。 そのあたりの作者と作者の母親の描写は、名作ドラマのようだった。
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エッセイはナマモノ。 時代を共有しているからこそ「わかる~」と感じるのだと、時間が経って再読したときに、初めてわかった。 向田邦子さん死後40年に際し。
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エッセイの名手のベストとくれば面白くないはずがない。 昨今、“普通の人々”のSNSにつづられる日常が、やたらポジティブでキラキラしていて、ちょっと居心地悪く感じていたのだが、本書には著者のネガティブな感情も、人様にさらしては恥ずかしい家族の一面も、プロの手で生き生きとつづられて...
エッセイの名手のベストとくれば面白くないはずがない。 昨今、“普通の人々”のSNSにつづられる日常が、やたらポジティブでキラキラしていて、ちょっと居心地悪く感じていたのだが、本書には著者のネガティブな感情も、人様にさらしては恥ずかしい家族の一面も、プロの手で生き生きとつづられている。 だから「そうそう、こういうことあるよねー」と共感してしまうのだろう。誰しも案外ネガティブだ(まれにいる真性ポジティブな人と長時間一緒にいるとぐったりしてしまう)。 ネガティブといっても、SNSにグチを書く人のように読んでるほうが心配になる類のものではない。くすっとした笑いに昇華しているところが、プロの技術。 著者の父親のような“明治男”風の面倒くさい大人、世話好き(おせっかい)の先輩、小学校時代の先生ほか各所に登場する個性豊かな面々も、今や希少人種になった。物質的にははるかに豊かになっているし。本書のような“昭和の日常”ってだんだん理解されなくなってくるのかなあ。
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※猫町倶楽部で読書会に参加した記録です 「人はなぜエッセイを読むんだろう。」 ----------------------- 2021年8月21日(土)ラウンジ一周年祭特別・没後40周年企画 「向田邦子 ベスト・エッセイ」 ----------------------- 読書会終了5分前くらいにぽつり、お話しさせていただいたタイトルのこと。 わたし自身の普段の読書傾向が「実用系」「人文思想系」「栄養学系」あたり、具体を求めることが多いから出た疑問かもしれません。 著者自身がとても魅力的だから? 人となりを深く知りたいと思うから? 何気ない日々なのに視点が豊かだから? 書き味が面白く、日常を「読ませる」力があるから? 向田邦子さんの場合はこれらすべてに当てはまるなと感じました。 おそらく中学校の国語教科書以来の著作。参加を決めてから日が少なく、駆け足気味の読了になってしまったことをもったいなく思います。 ■「父の詫び状」で始まり、「手袋をさがす」で終わる。 冒頭「父の詫び状」で書かれた少女時代。当時らしい、厳格な父親像の裏に見え隠れする家族愛のこと。 そこから巣立って人として社会人として人生を歩み、当時の女性としては相当苦労したのではないかと思わせる生き方を表す「手袋をさがす」で終わる。 この構成がすばらしい。一冊に「向田邦子」が詰まっているまさにベストでした。 ■「家族」「食」「動物」「こだわりの品」「旅」「仕事」「私」 7つのカテゴリーで選ばれた50篇。読書会で特に人気だったのは、教科書にも載っていた家族愛「字のない葉書」、「食らわんか」のお弁当作り、「沖縄胃袋旅行」の旅と食、「ままや繁盛記」のお仕事っぷりなどでしょうか。 おいしそうで、なつかしくて、笑えて、ためになって、しんみりして。いろいろな感情を揺さぶられるお話の数々。 ■わたしがとくに好きだった一話 今回一番わたしの心に残ったのは詫び状の次の一遍「ごはん」でした。東京大空襲に遭った記憶と、その翌日に絶望感の中「最後においしいものをおなか一杯食べよう」となった昼食の思い出。作家がつづる”戦争体験“をあらためて読んで感嘆しました。 「赤黒い空にB29、はがき大の火の粉が降る」「火のついたネズミが駆け回るように火が回る」「犬とは思えない獣の遠吠えがおそろしく響き、やがて消える」圧倒的な描写。 また、後半では病床にあった幼少期の記憶と、精力をつけるためにと食べさせてもらっていた鰻丼の思い出がつづられます。わたし自身も幼少期はすこし身体が弱く(循環器系)、病院通いの思い出もあるのでこれはとても身近なお話で。 「戦争体験」「ごはん」「病床の記憶」「ごはん」…悲しい思い出には必ず、それを補うような食事の思い出があったそう。陰陽のようで、悲しみに終わらず心に残り、それが向田邦子という人の作家性につながっていることを感じさせた一遍でした。 ■人はなぜエッセイを読むんだろう。 冒頭のぽつり疑問に戻ります。 エッセイは、自分の人生と異なる「非日常」を味わえて物語的であり、場合によっては「具体」の行動として学びにもできる。いわば文学と実用書のハイブリッドなのでは…?!(飛躍) 向田邦子さんの生き方はきっとずっとあこがれだろう。 成人してからだいぶ経つけれど、こういう「大人の女性」になりたい。理想像がまたひとり心に刻まれました。 読書会ご一緒していただいた皆さま、ありがとうございました。
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「手袋をさがす」がとてもよかった。私も斯くありたいと感じる、なんらかの普遍性を持っているように思う。「紐育・雨」「沖縄胃袋旅行」もよかった。
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