鐘を鳴らす子供たち の商品レビュー
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終戦から2年になろうとする昭和22年(1947年)7月から同年12月まで放送されたNHKラジオ連続放送劇「鐘の鳴る丘」をモチーフにした物語。 ひょんなことからこの放送劇に出演することになった小学生・良仁の視点から、戦後の占領下でスタートしたラジオ放送や演劇界、原爆被害にあった広島の人々、悲惨な状況にあった戦災孤児たち、少年保護団体の活動、新しい憲法、新しい時代への希望などが描き出される。 読み終えたのは、ちょうど長崎の原爆投下の日。 コロナウィルスの影響で各地の追悼式典などが縮小され、ますます戦争を語り継ぐ事の難しさを感じる、この時期にちょうどこの本を手にした事に、なんともいえない巡り合わせを感じた。 戦争のさなか、戦後の苦しい時にも子供たちは夢を描き、新しい時代に立ち向かおうと心を燃やしていたこと。 占領下にあっても素晴らしい物語を届けようと奮闘していた人々がいたこと。 憲法読本を握りしめて父親に反抗していた祐介が、すっかり変わってしまったこと。 仲間の中で一番苦しい状況にあった将太が、大学紛争で闘い続けていたこと。 『放送劇は、物語は、きっと祈りなのだ。昨日よりも、今日よりも、明日はもっと幸せに。』 『物語は確かに真実ではないかもしれないけれど、決して嘘っぱちではない。』 戦争の悲惨さだけではなく、この物語の中にある祈りも、語り継ぐことの中にあって欲しいと思う。 多くの人たちに、もちろん子供たちにも、ぜひぜひ読んでもらいたい。
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東京の焼け野原にバラックが立ち並び、戦災孤児たちか地下道で暮し、闇市が庶民の生活を支えていた時代、演劇界の第一人者菊井一夫作の浮浪児たちが主人公のラジオ放送劇『鐘の鳴る丘』が放送される。 その放送劇に参加することにより、猛特訓を経て新しい時代を感じつつも、団結を強めていく小学生た...
東京の焼け野原にバラックが立ち並び、戦災孤児たちか地下道で暮し、闇市が庶民の生活を支えていた時代、演劇界の第一人者菊井一夫作の浮浪児たちが主人公のラジオ放送劇『鐘の鳴る丘』が放送される。 その放送劇に参加することにより、猛特訓を経て新しい時代を感じつつも、団結を強めていく小学生たちの奮闘が描かれている。戦後という時代背景が丁寧に描かれていて、さすが『マカン・マラン』の作者だなと思わせる秀作。
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戦後の混乱の中で、子供たちがラジオドラマ放送の劇に抜擢されるお話。 ラジオドラマに取り組む子供たちの元気な様子は本番うまく行くだろうか…と読んでいるこちらまでハラハラさせられる。 その一方で、アメリカ軍の監視下にある現状。日常生活でも、軍人が車を乗り回し、戦争孤児など、生活に...
戦後の混乱の中で、子供たちがラジオドラマ放送の劇に抜擢されるお話。 ラジオドラマに取り組む子供たちの元気な様子は本番うまく行くだろうか…と読んでいるこちらまでハラハラさせられる。 その一方で、アメリカ軍の監視下にある現状。日常生活でも、軍人が車を乗り回し、戦争孤児など、生活にも、戦争の傷痕が残っている中で、ラジオドラマもしかり。思うように自由に表現させてもらえない状況に、「表現の自由」とは何かを考えせられた。
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もとはNHKのドラマをもとに書かれた小説だったようですが、新刊のコーナーにあったのでタイトルにひかれて借りて読んでみました。 読みやすく内容も分かりやすい戦争孤児をモチーフにしたラジオドラマを演じる子供たちの物語。 ドラマから小説なので人物設定などがきっちり出来ており読んでて安心...
もとはNHKのドラマをもとに書かれた小説だったようですが、新刊のコーナーにあったのでタイトルにひかれて借りて読んでみました。 読みやすく内容も分かりやすい戦争孤児をモチーフにしたラジオドラマを演じる子供たちの物語。 ドラマから小説なので人物設定などがきっちり出来ており読んでて安心だったので一晩で読み切ってしまえました。 基本的人権の尊重は子供一人一人にまで守られるべき..か? 最後に医者の息子が反抗をしてみたが実際は医者になり、その子にもまた、医者にさせようという親心がなんとも皮肉で面白かったなぁ
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新コロでストレスフルな日々の中、同じような厳しい時代を昨日よりも今日よりも、明日はもっと幸せにと新しい時代の子供たちが鳴らした鐘は、実は警鐘だったんだ。放送劇は、物語は、きっと祈りなのだ、納得。
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敗戦後の混乱期にラジオドラマに出演した小学生の奮闘の物語。 一番惹かれた人物は将太ですが、大学紛争で行方不明のままで終わっているのは残念である。 印象に残った文章 ⒈ 長い舌で舐めとったアオは、あっという間に咀嚼しながらやっぱりぽろぽろと涙を流した。 ⒉ 君たち浮浪児も、僕と同じ...
敗戦後の混乱期にラジオドラマに出演した小学生の奮闘の物語。 一番惹かれた人物は将太ですが、大学紛争で行方不明のままで終わっているのは残念である。 印象に残った文章 ⒈ 長い舌で舐めとったアオは、あっという間に咀嚼しながらやっぱりぽろぽろと涙を流した。 ⒉ 君たち浮浪児も、僕と同じ子供だって分かったからだ。 ⒊ 放送劇は、物語は、きっと祈りなのだ。昨日よりも、今日よりも、明日はもっと幸せに。
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浮浪児に注目してラジオドラマにした菊田一夫こと菊井先生の訃報からかってのドラマの子供達が集まる.蘇る思い出に戦後の子供達の生き生きとした様子が伝わってくる.劇と現実が合わせ鏡のように重なってとてもリアルに物語が進む.大人になったその姿のギャップがまた説得力があって,人生こんな感じ...
浮浪児に注目してラジオドラマにした菊田一夫こと菊井先生の訃報からかってのドラマの子供達が集まる.蘇る思い出に戦後の子供達の生き生きとした様子が伝わってくる.劇と現実が合わせ鏡のように重なってとてもリアルに物語が進む.大人になったその姿のギャップがまた説得力があって,人生こんな感じだと納得.
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戦後生まれの私は、幼い頃、ラジオが自然に耳に入ってました。野球中継、相撲中継・・・。「とんがり帽子」の歌、「君の名は」の歌。古内一絵さんの大作「鐘を鳴らす子供たち」(2020.1)をじっくり味わいつつ読了しました。~緑の丘の赤い屋根 とんがり帽子の時計台~♪ この歌の一番はよく知...
戦後生まれの私は、幼い頃、ラジオが自然に耳に入ってました。野球中継、相撲中継・・・。「とんがり帽子」の歌、「君の名は」の歌。古内一絵さんの大作「鐘を鳴らす子供たち」(2020.1)をじっくり味わいつつ読了しました。~緑の丘の赤い屋根 とんがり帽子の時計台~♪ この歌の一番はよく知ってましたが、二番以降は知らなかったし、「鐘の鳴る丘」が普通の小学生による生放送の連続ラジオ放送劇で、その内容が戦災孤児を扱っていたことは知りませんでした。著者の綿密な取材による子どもたちへの優しいまなざし、そして希望溢れる未来への夢を堪能しました。
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戦後の子供達が、傷付きながらも今の子供達と変わらない純粋さをもって逞しく生きていたお話。「鐘の鳴る丘」の事は全く知らなかったけれど、作り上げ、演じ、聴く、それぞれの人達の感情が豊かに描かれていました。憎みながらも受け入れるしかない現実や、美談過ぎて聞くに耐えない子供達の言葉が、胸に刺さって泣きたくなりました。そんな綺麗事じゃないよね…って思う事は、現代でも、大人になってもたくさんある。幼いながらに乗り越えていく姿は逞しいし、美しかった。万年筆のお話が最後まで気になりました。彼が書いた小説を読んでみたい。
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