責任という虚構 増補 の商品レビュー
難解だったけど、なんとかかんとか読み終えれた。 衝撃を受けたのが、外部の視点(概念)。 神を殺した人類は、個人の中に自由意志があるとしてきた。しかし意志とは何かと問われると無限遡及する。因果論(原因-結果)で意志は特定しない。とは言え決定論(全ては決まってる)とするなら意志はも...
難解だったけど、なんとかかんとか読み終えれた。 衝撃を受けたのが、外部の視点(概念)。 神を殺した人類は、個人の中に自由意志があるとしてきた。しかし意志とは何かと問われると無限遡及する。因果論(原因-結果)で意志は特定しない。とは言え決定論(全ては決まってる)とするなら意志はもはやないことになる。 神を殺して、個人主義的に生きてきたのに、意志はないというなんとも無茶苦茶な世界。 では我々は何をもって生きているのか。 社会・文化・常識・慣習・法・制度・規範などだ。 しかし、それぞれの出発は「個人」だ。 社会は個人の集団、文化は個人の歴史、常識は個人が集まった意識、慣習は個人のならわし、法・制度・規範は個人を縛る。これらは個人から成る。 個人(意志)はないのに、あるじゃないか。 それを著者は「虚構」と呼ぶ。 我々はその虚構のおかげで生きている(神もそうだった)。現実と虚構は相補的に成り立っている。 個人の中にあると信じた「意志」。意志があるとする。「あるとする=虚構」だ。 この虚構の存在を「責任」から遡り立証していく。 様々な哲学者や思想家の文献を引用し、議論を重ねて辿り着いた通過点が『責任という虚構』だった。
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「正義論の正体は神学であり、自由と平等は近代の十戒である」という言葉に本書の立場は明確に示される。 今の世の中に生きていると建前と本音の乖離が大きくなりすぎ、もはや建前が建前として機能していないのではないかとさえ感じることがある。しかし著者の問題意識はより徹底しており、誰もが「〜...
「正義論の正体は神学であり、自由と平等は近代の十戒である」という言葉に本書の立場は明確に示される。 今の世の中に生きていると建前と本音の乖離が大きくなりすぎ、もはや建前が建前として機能していないのではないかとさえ感じることがある。しかし著者の問題意識はより徹底しており、誰もが「〜ということにしてある」と認識する「擬制(建前)」ではなく、その存在や価値を疑わない自由や平等、主体、責任、能力主義といった近代社会を構成する本質的概念の「虚構」性を俎上にあげる。 責任の議論は自由意思の不在からホロコーストのアイヒマン、麻原彰晃の死刑判決にまで及び非常にスリリングであり、学術界からの反論も多かったようだ。補考ではそうした原著への批判に対する回答がなされており、増補として文庫化された。 全編を通して非常に読みやすく、微妙な問題を扱っているにも関わらず主流派(多数派)の陥りがちな誤りを鮮やかに指摘して説得力がある。 現代人を生きづらくさせている諸々の「正しさ」から降りつつ、相対化の無重力空間へ放り出されずに繋ぎ止めておく「虚構」はあり得るのか、そんな疑問が浮かんでいる。
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ホロコーストや死刑制度といった具体例を起点に,「責任」の性質を心理学的観点から論じた本。補考案では分析哲学の手法も導入されている。
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私が普段から感じていた科学の限界について、とてもわかりやすく言語化してくれていて腑に落ちることが多かった。
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責任とは、何らの実体ももたない社会的現象=虚構であり、近代的な自律的個人像は根拠をもたないイデオロギーと断じる。 自由に伴う責任、という因果律的な認識は単なる誤謬であり、人間が何らかの内因で行為できるような自発的主体という観念も幻想であると説く。 普遍的真理など存在せず、その時...
責任とは、何らの実体ももたない社会的現象=虚構であり、近代的な自律的個人像は根拠をもたないイデオロギーと断じる。 自由に伴う責任、という因果律的な認識は単なる誤謬であり、人間が何らかの内因で行為できるような自発的主体という観念も幻想であると説く。 普遍的真理など存在せず、その時代・社会ごとに受け入れられる価値観が存在するのみだ。人間が集団の中で生きるために〈外部〉と〈内部〉を虚構として創りだしてきたということを、決して否定的に述べることなく個人から集団への変遷において必然的だと主張する。 「虚構のおかげで現実が成立する。」 目を背けたくなるような事実、あるいはそれとして認識できないような事実について、冷静かつ精緻な筆致で淡々と記述していく。 規範論を遠ざけ、徹底的に記述的態度を取って責任の本質・正体を見出そうとする様子には好感が持てた 衝撃を受けた箇所・感心させられた箇所が多すぎて述べることが出来ないが、取り敢えず言えるのは、この500頁という厚さでリーダビリティを損なわせることなく、しかも誰でも理解できるようなところから議論を始めているところは凄い。 聞いたことあるようなホロコーストに対するアーレントの「悪の陳腐さ」の議論から、タイムリーな冤罪の議論まで、集団が自律稼働したことによる影響について網羅的に論じられているため、各章を読むだけでも充分大きな成果が得られると思う 個人的には、『アルコホリズムの社会学』で扱われたアディクション、『イルカと否定神学』で扱われた引きこもりなどの社会性の問題などの根本原因である近代社会の欺瞞について、また新たな視点を追加してくれるような本ですごく満足。 いつの時代もそうなんだろうけど、「当事者としては」やっぱり近代ってとんでもない時代なんだなと思った。神を殺した罪かな 「虚構のない世界に人間は生きられない。」
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一般的には自由と責任は表裏一体の因果関係であり、なので法や規範の判断の元になる自由意志によって罰される。 ただ、人の行動は脳の信号を起点に人が意識を持つ以上、自由意志はないので責任はないはず。それにもかかわらず規範で人を罰する矛盾をつく。 結局自由も責任も、社会が決めた虚構で...
一般的には自由と責任は表裏一体の因果関係であり、なので法や規範の判断の元になる自由意志によって罰される。 ただ、人の行動は脳の信号を起点に人が意識を持つ以上、自由意志はないので責任はないはず。それにもかかわらず規範で人を罰する矛盾をつく。 結局自由も責任も、社会が決めた虚構であり、自由意志みたいな内側にあるものじゃなくて外側にあるもの。普遍的な規範を追い求めても袋小路じゃないかと問題定義している。
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実験から導かれる結果では、人の行動は権威に弱く、同調圧力に流され、役割を与えられると演じようとする。さらに、意思決定以前に脳内では活動が始まっていることも測定されている。 そこから自由意志を否定しながら、責任論を哲学的に考察する。禅問答のようになって当然結論は出ないのだが、そのままでは秩序ある社会は回っていかない。 だから、もやもやしていても、多数決が正義と決めつけて、どこで線引きするか決めつけながら、進んでいくしかないのでしょうね。 まあ、数々の実験の結果が正しいかどうかは諸説あるようですが、行きつくところはそれほど変わらないかもしれません。
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哲学に興味はあるけど、カントやニーチェのことは有名な言葉だけ知っている程度。哲学関連で読んだことのある本は『愛するということ』(エーリッヒ・フロム)、『幸せになる勇気』(岸見一郎)、中島義道氏の著書数冊程度で、哲学書を一から紐解いたこともなければ、心理学と哲学の明らかな違いを述べることさえ難しい。そういうレベルの私が挑戦し、長い時間をかけて読破しました。理解度はまだまだ他の皆さんには及ばないかもしれませんが、私なりの感想を。 読んだことのある関連書は『服従の心理』のみ。『イェルサレムのアイヒマン』はいずれ読めたらと考えています。 専門的な用語は逐一ググッてみて、概要を簡単な言葉で表してくれているもので一時的に理解したとみなして読み進めました(でないと全く前に進めない)。 <内容として、主に私が深く印象に残ったもの> ・「自由に行動できるから責任がある」のではなく、「責任のために自由を規定する」 ・個人は外因要素が集積した沈殿物 ・美しさや賞罰、道徳などは根拠があって決められているものではなく、大衆が認めるから基準ができて定められるもの ・格差を認めるために人間は自由であり、努力すれば上流階級へいけると思える仕組みができあがっている(努力しなければ自己責任、となる) 1~4章くらいまではサクサク読み進めることができましたが、5章以降からは難易度がぐっと挙がって専門的な話が多くなり、読書スピードが目に見えて落ちていきました。しかし、それでも読み進めることができたのは、知的好奇心のせい、と言ったら格好をつけていると思われるでしょうか。 「規範論ではない」と著者自身が言っているように、本書は「こうあるべき」といったべき論から離れて、あるがままの世界の仕組みを俯瞰し、「こういう風になっているんだよ」と次々に教えてくれるような内容でした。 本書もかなり苦労して読了したのにも関わらず、著者の別著作も読んでみたいと思えるほど、読了後には目を開かされた思いで爽快感があり、達成感も一入です。何となく暮らしていたら絶対に気づけなかったようなことに、(本書を読んだことで)気づくことができました。 題の『虚構』という部分に惹かれて読むことを決めましたが、ここがまさに争点であり肝だったのは、読む前から理屈では理解できなかったものの、自分の着眼点を素直に褒めたいと思います(笑) 「増考」の内容もかなり難しめでしたが、自由意志と因果律、責任と自由について、より深く理解するためにはとても重要な内容だと感じました。 巻末の解説を読んで本書全体の内容をざっとおさらいすることができて、しかも分かりやすい形に変換してくれていたのでとても助かりました。 文庫版と単行本、どちらを読もうか迷っている方がおられましたら、文庫版をお勧めします。 じっくりと取り組んでみて分かったことですが、哲学書を読む最大のコツは「結論を急がない」「慌てない」「なるべくコンディションが整っている時に読む」ですね。 時間をおいて、またいつか再チャレンジしてみたい本です。
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責任は因果律と関係ない。設定されるもの。虚構であるということの記述。 「自由とは因果律に縛られない状態ではなく、自分の望む通りに行動できるという感覚であり、強制力を感じないという意味に他ならない」
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本題は4章からだが、個人的には1.2.6章が1番面白く感じた。社会秩序というものがいかに根拠のないもので支えられていて、薄氷の上に成り立っているかという事がわかる。絶対的な神が消えた現代において法や道徳、自由、責任、これらのものを証明する根拠は存在しない。だが虚構は(たとえそれが...
本題は4章からだが、個人的には1.2.6章が1番面白く感じた。社会秩序というものがいかに根拠のないもので支えられていて、薄氷の上に成り立っているかという事がわかる。絶対的な神が消えた現代において法や道徳、自由、責任、これらのものを証明する根拠は存在しない。だが虚構は(たとえそれが虚構だとわかったとしても)それが真理であると信じないと社会が成り立たないため、そういう意味ではこの本は役に立たない。しかし、この本は確実に新たな視座を読者に与えるだろう。
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