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ことばの教育を問いなおす の商品レビュー

4.3

12件のお客様レビュー

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2024/04/07
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ことばの力とは何か? どうやって育てるのか? それぞれ専門分野が異なる3人の往復書簡のような意見交換。自分の中では鳥飼先生の分野にもっとも馴染みがあるので、鳥飼先生の意見が一番スッと入ってきた。しかし大村はまという大きな教育をどのように受け継ぐかは興味がある。教育に王道なしとはよく言ったもので、同じ生徒、同じ先生という条件にはないのだから、唯一絶対のメソッドなんてない。大村はまの教育がどんなに優れていようと、うまく適用されない現場や生徒がいるだろう。だからそれぞれの優れた教育法の核を認識して、教員がそれぞれの教室で一人ひとりの生徒をよく見て、もっとも適した方法を取る必要があるのだ。それはとても大変な道だけど。 英語と日本語を比較することで深まる部分というのは自分の中にめちゃくちゃあった。自分は文法(というか文の構造)大好きなので、句や語に分解して理解していくというのを、英語・古文・漢文すべてでやっていたな、と。でもそれが万人に通じるとは思わないし、学習初期には向かないだろう。

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2023/03/21
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対談形式で、ことばの教育について日本語、国語、英語にかかわらず、哲学や理論など様々な視点で語られている。 互いに批判を恐れず、誤解を解き合い、少しずつ本質に迫っていく姿勢に尊敬の念を抱かずにはいられない。 p198〜 教える者がなすべきは、自身が研鑽を積んで真剣に学習者と向き合い、彼らに刺激的な知を提供して学びを深化させること、そのような教育を通して自律性を育むこと。 国語であれ英語であれ、ことばを教えることも、根本はそれに尽きる〜

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2021/09/02

戦後の国語教育を支えて来た大村はまの教育実践。そして、グローバル化に伴い小学生から授業として取り組まれていく英語。アクティブラーニング、英語のみの授業といった指導方法。この本を通して、私自身も授業について考えさせられました。

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2020/08/15

国語教育での大村はまの実践的な指導方法を継承している刈谷夏子と、英語教育で先進的な発信をしている鳥飼玖美子が、ことばの教育について議論した好著だ.まとめの形での刈谷剛彦の提言も良い.『星の王子さま』を例に英語、フランス語、日本語の絡みを議論する部分が楽しめた.(p155-) 大学...

国語教育での大村はまの実践的な指導方法を継承している刈谷夏子と、英語教育で先進的な発信をしている鳥飼玖美子が、ことばの教育について議論した好著だ.まとめの形での刈谷剛彦の提言も良い.『星の王子さま』を例に英語、フランス語、日本語の絡みを議論する部分が楽しめた.(p155-) 大学入試の問題点について的確な議論がなされている.

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2020/08/20
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外国語習得の基盤は母語(国語)。「第二言語としての英語」(ESL)≠「外国語としての英語」(EFL)。後者を意識的に勉強した学生の読み書き能力が高いことは珍しくない。異言語習得の基盤は「母語」だから。 BICS(日常会話力)CALPS(認知的学習言語能力)。CALPSにはまず、母語の獲得が大切。だから母語を獲得してから海外に行った方が学習言語を習得するのが早い。 にも拘わらず、(日本語が覚束ない)幼少期から英語漬けにしようとする。母語をしっかり獲得しないから、日常会話レベルの発音だけは流暢になっても学習言語の修得がおぼつかない。にも拘らず、もてはやされるのは日常会話レベルの流暢さ。 考えてみれば、英語教育もまた言葉(人間)を育てる教育。言葉であるからには、生き生きと興味深い豊かな世界に直結しているはず。しかし単語を暗記したり、学術的な文法書を読んだり、単なる入試対策であったり、TOEICの点数を上げるためであったりと、英語は無機的は要素の集積のように感じてしまう。言葉として当然持っているはずの豊かさや人間らしさ、社会や文化ということを忘れ、スキルの集合体としての英語ばかりを見るようになっている。 原点に戻って、言葉(人間)を育てる英語教育を目指すべき。 協同学習は「自律性」の涵養に有効とはいっても、学習者中心の能動的な学習を誤解して、生徒や学生をグループに分けて話し合いをさせる(自由放任)だけでは学びにならない。共同学習の原点は、「周囲との相互行為を通して一人では到達できない領域に達する」ところにある。教師による適切な介入と丁寧な指導があってこそ「共同学習」は「自律性」の育成に大きな役割を果たす(p198)。これが、コミュニケーションとしての英語の学習の原点なのだろう。 それにしても80年代から、教育行政に(教育素人の)経済界が(自社の利益を念頭に置きながら)割り込みすぎ。英語は人間育成でなく、産業育成に成り下がっている。こういった現状が教育をダメにしていることを考えれば、必読の価値がある一冊だ。

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2020/05/17

先に読んだ「沈黙する知性」でもありえたかもしれない世界を思考する話がありましたが、よく考えるということは、そういう力をつけることなのかなと思いました。「近いもの、どこかに共通点のあるもの、ふと思い出したもの、まったく関係のなさそうなもの……とにかく、並べてみて、比べてみる。(P1...

先に読んだ「沈黙する知性」でもありえたかもしれない世界を思考する話がありましたが、よく考えるということは、そういう力をつけることなのかなと思いました。「近いもの、どこかに共通点のあるもの、ふと思い出したもの、まったく関係のなさそうなもの……とにかく、並べてみて、比べてみる。(P150)」国語・英語を学ぶ手法が同じであれば、4技能とはアンバランスでも仕方がないような気がします。

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2020/03/27

以前から「国語教育」と「英語教育」との連携や関連性に興味があり、タイトルを見てこれに打ってつけだと感じて読んだ本。 英語教育、国語教育、社会学の3賢人による「対書」形式で論が進んでいた。日本語と英語では、文化も理論体系も異なるが、「言語」としての教育の目標が1つに集約されたのを...

以前から「国語教育」と「英語教育」との連携や関連性に興味があり、タイトルを見てこれに打ってつけだと感じて読んだ本。 英語教育、国語教育、社会学の3賢人による「対書」形式で論が進んでいた。日本語と英語では、文化も理論体系も異なるが、「言語」としての教育の目標が1つに集約されたのを読み、なんだかホッとした感覚を覚えた。

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2020/01/25

英語教育、国語教育、社会学のプロの方が、それぞれ異なる立場からことばの教育について論を交わしている本。議論の中心となるのが、大村はまさんという国語教師の方が実践した教育方法。半世紀の間、ひたすら、言葉を使うことの重要さを子供に感じてもらうような実習を自ら考えだしては実践したらしい...

英語教育、国語教育、社会学のプロの方が、それぞれ異なる立場からことばの教育について論を交わしている本。議論の中心となるのが、大村はまさんという国語教師の方が実践した教育方法。半世紀の間、ひたすら、言葉を使うことの重要さを子供に感じてもらうような実習を自ら考えだしては実践したらしい。 論点としては想像以上に幅広く、面白かった。国語教育・英語教育に共通する現在の問題点や重要な点は何か?ことばの力を育てるために有効な方法は何か?そもそも教育について考えるとき、「理論」とはどんなふうにつかうべきものか? 最後にまとめられていた通り、ことばの教育=考える力の教育という点が印象的だったし納得した。 (現状は国語・英語教育ともに必ずしもそうなっておらず、表層的な部分で特に話すスキルを重視する風潮にあるが、書くことで思考能力を高める段階を経ないと、深い思考を言葉にして話すことはできないとのこと) 同時に、だからこそことばの教育は難しい。 また、本書でもふれられていた通り、教育の理論は、実践を振り返る際のよりどころとしてには参考になり重要ではあるが、誰にでも効果的な教育方法というのは成り立たない。 そんな中でも、ことばの力・考える力を育てるのに重要なこととしては、次のような点が挙がっていた。 ・帰納的思考(抽象化)と演繹的な思考(具体化)を往復する。 ・メタ認知の視点(自分の使っている言葉が自分のいいたいことにあっているのか?を反省的にみる視点)を持っておく。 ・話す力を鍛える前に、書く力を鍛える。書くためには、まず読むことで、筆者の思考のプロセスを学び取る。

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2020/01/07

教育の本質的な部分を手堅く突いた、正攻法の指南書です。本当に大切なことは、こういう書物にこそ書いてあります。 最近はYaho●や●martNewsでやたらと英語、プログラミング、早期教育、教育改革を煽り、人々を煙にまく論調が目立つ分、このような書は見向きもされないのかもしれません...

教育の本質的な部分を手堅く突いた、正攻法の指南書です。本当に大切なことは、こういう書物にこそ書いてあります。 最近はYaho●や●martNewsでやたらと英語、プログラミング、早期教育、教育改革を煽り、人々を煙にまく論調が目立つ分、このような書は見向きもされないのかもしれませんが。。悲しいことです。

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2020/01/05

実践の国語教師大村はまの教え子として国語教育のありかたを考え続ける刈谷夏子、性急な英語教育改革をあやぶみ発信し続ける鳥飼玖美子、そこに社会学の立場から教育を論じる苅谷剛彦も加わって、対談ならぬ対書形式で、章ごとに書き手が変わって話を継ぐリレー仕立ての一冊。キーパーソンとなっている...

実践の国語教師大村はまの教え子として国語教育のありかたを考え続ける刈谷夏子、性急な英語教育改革をあやぶみ発信し続ける鳥飼玖美子、そこに社会学の立場から教育を論じる苅谷剛彦も加わって、対談ならぬ対書形式で、章ごとに書き手が変わって話を継ぐリレー仕立ての一冊。キーパーソンとなっている大村はまをはるかな目標とあおぎつつ、英語と日本語の語学教育にたずさわってきた私自身にとっては腑に落ちること多い内容(ああ、自分の教育感の根っ子のところは大村はまの存在と言葉で支えられていたんだと改めて気づいた)だけれど、急に読んでもわかりにくいところはあるかもしれない。 親として大学入試改革に巻き込まれていろいろ気をもんで迷惑しているけれど、これを機に国語も英語も日本語もひっくるめた「ことばの教育」にもっと関心がむけられるようになればさいわいと思いたい。国語=文学鑑賞(ときに道徳)+漢字や文法の暗記ではなく、本当の「読める」を支え「考え、伝え合う」をたすける力をつける科目になってほしいし、英語(外国語)も単語や文法の暗記やコミュニケーションよりもむしろ第二の言語習得を通じて第一言語である日本語の感覚を問い直す科目になってほしい。 まずは私自身が教壇に立つときの覚悟をあらたにして、こどもとのコミュニケーションの中でもあれこれ意識していこう。

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