大名倒産(上) の商品レビュー
江戸時代の経済構造を下敷きにした、異色の時代小説である。 江戸期の経済は、石高制という農本主義を基盤としていた。幕府も諸藩も、年貢米による自給自足を原則としていたのである。しかし、実際の経済はその枠を容易に超えていった。商品経済・貨幣経済の発展により、石高制は急速に形骸化してい...
江戸時代の経済構造を下敷きにした、異色の時代小説である。 江戸期の経済は、石高制という農本主義を基盤としていた。幕府も諸藩も、年貢米による自給自足を原則としていたのである。しかし、実際の経済はその枠を容易に超えていった。商品経済・貨幣経済の発展により、石高制は急速に形骸化していく。 その結果として生じたのが、幕府や諸藩の慢性的な財政難であった。これを補ったのが商人による「大名貸」である。だが本来、借財は返済されてこそ成立するもの。にもかかわらず、返済不能に陥った債務は一方的に破棄される――いわゆる「お断り」である。 現代の感覚からすれば無法にも思えるが、これは決して過去の特殊な現象ではない。形を変えれば、いわゆるモラトリアムとして、私たちの時代にも通じる問題である。 こうした矛盾を抱えながらも、幕藩体制は約270年にわたり存続した。当時の人々にとって、「藩は潰れないもの」という認識が常識であったに違いない。 では、もしその前提を覆し、あえて藩を倒産させようとする藩主が現れたらどうなるのか――その大胆な発想から生まれたのが本作である。 貧乏神や七福神までも登場し、重いテーマを軽やかな滑稽譚へと仕立てている点が実に面白い。
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長男がいなくなり他の兄弟がバカか病弱、まさかの貧乏大名家主のお鉢が回ってきてしまった和泉守。神さまで出てきて表現豊かで時代小説のイメージが良い意味でガラッと変わった。 鮭に目がない大名、いいねぇ。
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大名倒産を企むご隠居に対して、突然家督を襲封することになった三男が倒産させまいと奮闘する物語。人として正しい行いと、真直ぐで正直な心で困難に立ち向かえば、周りの人の協力も得られ、果ては神仏までもが味方するというのが良かった。すべての才能を持つ必要はなく、何か1つに集中して人の役に立つというのも大切。奇跡が奇跡を呼び、倒産を免れるのがよかった。
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江戸末期、泰平の世が長く続き、武士の矜持や制度が形骸化し、時代が移り変わり意義も薄れもともとの意味も分からぬままにただただ伝統を重んじ思考停止のまま同じことを繰り返すうちに、借金にまみれながら面子だけは保たねばならぬという、当事者たちは大真面目ながらも傍から見れば、馬鹿じゃないの...
江戸末期、泰平の世が長く続き、武士の矜持や制度が形骸化し、時代が移り変わり意義も薄れもともとの意味も分からぬままにただただ伝統を重んじ思考停止のまま同じことを繰り返すうちに、借金にまみれながら面子だけは保たねばならぬという、当事者たちは大真面目ながらも傍から見れば、馬鹿じゃないの?!という大名たちの生きる様を、死神や七福神、薬師如来まで登場させて、見事な娯楽小説に仕上げた怪作。登場人物は多いし、当時の制度やら建前の身分と実力が乖離していた実情やら、複雑な儀礼のあれこれを読み易い筆致でサラサラ見事に説明しつつ、現代の価値観に照らしてカラリと批評も差し込みつつ、適度にくだけた洒落も挟みつつ、人物像もしっかり書き込んでくれて、本当に楽しくあっという間に読了。この前に芥川賞受賞作品をなんとか読み終えたばかりだったのもあり、さすが直木賞作家さん、読み易い面白いサイコー!と思いながらウキウキ読みました。『憑神』という作品もあるし、浅田さんは貧乏神がお好きなのかな、と思ったり。それにしても七福神のほとんどが外国の神様だったとか、布袋さんはもとは人間だったとか、まったく知らなかったです。いったいどうやって終わるのかな、と残り少ないページ数を気にしながら読み進み、やっぱりそれしかないよね、という感じに収まったのですが、それはそれとして、先代のご隠居様の描き方も素晴らしかったです。まったく関係ないのですが、塩引鮭が好物という大番頭の越中守が、カール・ハイアセンの複数の作品に登場するキンクスという豪快な人物を思い起こさせ、この頃全然読んでいないハイアセンの作品も読みたい気持ちになりました。映画化されているみたいです(映画では高田延彦さんが演じられていますが、個人的なイメージはクリント・イーストウッドのような骨格は大きいけれどやせ型の人)。
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浅田作品は 初ですが。 面白かったです。 キーポイントは 鮭ですかね。 貧乏神と言いたいところですが 今回は 鮭で行きます。 一気に 上下読んでしまいました。 浅田作品 ちょっと 気になります。
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年末年始用と思い、上下を図書館で借りる。上を読み終わってから映画の予告編を見ると、神木隆之介が主役で、杉咲花と出ていた。本の中では杉咲花は居ないはずだが、ずいぶんと変えているようだ。 越後の丹生山藩が借金25万両を抱えて、どうにもならなくなり計画倒産をすることに。それを聞いた長男...
年末年始用と思い、上下を図書館で借りる。上を読み終わってから映画の予告編を見ると、神木隆之介が主役で、杉咲花と出ていた。本の中では杉咲花は居ないはずだが、ずいぶんと変えているようだ。 越後の丹生山藩が借金25万両を抱えて、どうにもならなくなり計画倒産をすることに。それを聞いた長男はショックで死亡。縁の遠い4男に白羽の矢が立ち、殿さまになる。足軽のどうでも良い境遇で育った4男の松平小四郎は、江戸城で老中に呼び出されて、藩が2両の支払いも出来ないことに驚く。家老達や元藩主の父に聞いても教えてくれない。周囲の評判では父親は大層に評判悪いことがわかる。 まじめで頑張る小四郎だが、父親や重臣達の手助けがなかなか得られない中、幼馴染や全てを打ち明けて外部に次々と助ける人が現れてくる。 なぜ、こんなに借金が増えたか良くわからないが、どうやら貧乏神が取り付いた模様。貧乏神が現れたり、七福神が出けて来たりと展開がハチャメチャ。浅田次郎さんの作風はこんなんだっけと考え込んでしまう。下巻は恐らく借金が無くなっていくのだろうが、一段も二段も展開がめちゃくちゃになりそうで怖い・・。
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やっぱり浅田次郎さんの作品はいいなあ。登場人物が愛おしい。 殿やご隠居の裏と表の掛け合いも楽しい。 後半も楽しみ。 絶望的な状況をひっくり返すことはできるのか否か。
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真面目一徹が、粋で鯔背でかっこいい。 時代もので珍しく感動しました。 後半も楽しみ! だけど難しくて進まない…
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貴種流離譚のバリエーションとして 庶民として育った庶子が御家の事情で王家を継ぎ 持ち前の庶民感覚で名君になる。ってのがあって これは序盤はまんまソレですね。 お大名が倒産?というショッキングなテーマが主題で 庶子から大名になった(多分)主役のお殿様も小道具の一つに過ぎない感があり...
貴種流離譚のバリエーションとして 庶民として育った庶子が御家の事情で王家を継ぎ 持ち前の庶民感覚で名君になる。ってのがあって これは序盤はまんまソレですね。 お大名が倒産?というショッキングなテーマが主題で 庶子から大名になった(多分)主役のお殿様も小道具の一つに過ぎない感がありキャラの掘り下げは薄め。 しかも貧乏神まで物語に絡んできていつもの浅田次郎氏とはちょっと違う味がします。 下巻も楽しみだけど上巻だけの評価だと星3つかな。
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今年(2023年)6月に神木隆之介君の主演で映画化されるものの原作。浅田さんの作品はそれなりには読んでるが、この作品はなんか読み難い。なんだろう、説明が多すぎるから?話としては貧乏参勤交代がこの上巻のメインかな。同じ作者の「一路」を思い出すが、まだあの方がましやったな。これは凄す...
今年(2023年)6月に神木隆之介君の主演で映画化されるものの原作。浅田さんの作品はそれなりには読んでるが、この作品はなんか読み難い。なんだろう、説明が多すぎるから?話としては貧乏参勤交代がこの上巻のメインかな。同じ作者の「一路」を思い出すが、まだあの方がましやったな。これは凄すぎるくらい凄い。領国に入ってようやくちょっと面白くなってきたので、後半に期待
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