悲しみの秘義 の商品レビュー
心に沁み入る言葉。 ◯祈ることと、願うことは違う。願うとは、自らが欲することを何者かに訴えることだが、祈るとは、むしろ、その何者かの声を聞くことのように思われる。 ◯生きるとは、人生とは何かを問うことではなく、人生からの問いに応えること ◯人生は、答えを出すことを求めない。だ...
心に沁み入る言葉。 ◯祈ることと、願うことは違う。願うとは、自らが欲することを何者かに訴えることだが、祈るとは、むしろ、その何者かの声を聞くことのように思われる。 ◯生きるとは、人生とは何かを問うことではなく、人生からの問いに応えること ◯人生は、答えを出すことを求めない。だが、いつも真摯な応えを求めてくる ・花の供養に、春、花びらを1枚拾う。 ◯愛する気持ちを胸に宿したとき、私たちが手にしているのは悲しみの種子である。その種には日々、情愛という水が注がれ、ついに美しい花が咲く。悲しみの花は、けっして枯れない。それを潤すのは私たちの心を流れる涙だからだ。生きるとは、自らの心のなかに一輪の悲しみの花を育てることなのかもしれない。 ◯愛し、そして喪ったということは、いちども愛したことがないよりも、よいことなのだ ◯「花も紅葉もなかりけり」、そう詠まれた言葉にふれるとき、私たちの心には、かえって花も紅葉も、色あざやかに浮かび上がってくる。それは、生きている希望などない、と叫んだ瞬間、かえって生の意味を、はっきりと感じるのに似ている。意識では絶望を感じていても無心は、わずかに射し込む光を見逃さない。 ◯読者とは、書き手から押し付けられた言葉を受け止める存在ではない。書き手すら感じ得なかった真意を個々の言葉に、また物語の深層に発見していく存在である。こうした固有の役割が、読み手に託されていることを私たちは、書物を開くたびに、何度となく思い返してよい。
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Eテレ「理想的本箱」を見て、気になって借りた図書館本。 心に留めたい言葉がじわじわと心に沁みて、読んだ本も、もう一度読み返したくなる。 悲しみと向き合うというより、自然と受容していけるような気がしてくる。 返却したけれど手元に置いておきたくて、購入することにしました。
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喜びや楽しみの多い幸せな人生を願いがちだけど、悲しみのない人生などないのだと改めて思った。悲しみに向き合う言葉が沢山書かれていた。
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大切にしたい言葉が沢山載っていて付箋まみれ。ただ自身の悲しみをある程度受け入れられている状態じゃないと響かないだろうなと感じる部分もあった。
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本屋さんで出会った文庫本。読み終わったら付箋だらけになった。著者の悲しい別離体験が彼の思考にただならぬ深さを与えたのだろうか。僕の妻や子供たちは健康的に生きてはいる。でも、両親や親戚、友人など多くの人たちを失ってきたが、今思えばまるで歯が抜けた程度にしか思えないのは、僕には人間的...
本屋さんで出会った文庫本。読み終わったら付箋だらけになった。著者の悲しい別離体験が彼の思考にただならぬ深さを与えたのだろうか。僕の妻や子供たちは健康的に生きてはいる。でも、両親や親戚、友人など多くの人たちを失ってきたが、今思えばまるで歯が抜けた程度にしか思えないのは、僕には人間的に何か欠け落ちているものがあるのだろうか。だから自分はこんなにも軽薄なんだろうか。著者若松英輔さんの深い叡智と人間的な優しさにただならぬ嫉妬を感じてしまった次第である。
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作者が名著に記された言葉を味わい、掘り下げて。悲しみとはなにかを考えた作品、 悲しみ=愛しみ=美しみをあらためてしれたり、悲しいを経験することで作者がなにを得たのかをしれた 読んでいると心が静かになった。 読み返していき本の内容を味わっていきたい
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内容は難しいが、すらっとよめる量。今の私にはなかなか理解は難しい。もう少し、自分自身の存在意義を感じるようになれたら、もう一度読み直してみよう。
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読みやすい文量。悲しみとの向き合い方、もし死を身近に経験したらこうなるのかと感じた。言葉の選び方が知性に満ちている。
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この本を手に取ろうと思ったのは、悲しみとの向き合い方を知りたかったからです。30冊の本からの引用の言葉のなかに、心に響く言葉がたくさんありました。大切な人を失ったことがもたらすものは、悲しみだけではないことに気づかせてくれました。それ以上のことがあることにも気づかせてくれました。...
この本を手に取ろうと思ったのは、悲しみとの向き合い方を知りたかったからです。30冊の本からの引用の言葉のなかに、心に響く言葉がたくさんありました。大切な人を失ったことがもたらすものは、悲しみだけではないことに気づかせてくれました。それ以上のことがあることにも気づかせてくれました。また、書物を読むこと、そして文章を書くことの大切さも書かれていました。 これからも折に触れて、この本を読みたいと思いました。小さくて薄い本だけれど、中身はとても濃いかったです。
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若松英輔(1968年~)氏は、慶大文学部卒、「三田文學」編集長、読売新聞読書委員、東工大リベラルアーツ研究教育院教授等を務めた批評家、随筆家、詩人。幼児洗礼を受けたカトリック信者。宮沢賢治、井筒俊彦、小林秀雄、須賀敦子、神谷美恵子、池田晶子、リルケ、ヴィクトール・E・フランクルら...
若松英輔(1968年~)氏は、慶大文学部卒、「三田文學」編集長、読売新聞読書委員、東工大リベラルアーツ研究教育院教授等を務めた批評家、随筆家、詩人。幼児洗礼を受けたカトリック信者。宮沢賢治、井筒俊彦、小林秀雄、須賀敦子、神谷美恵子、池田晶子、リルケ、ヴィクトール・E・フランクルら、古今東西の思想家や作家・詩人の作品と思想を読み解いた、一般向けの著書多数。2016年以降、NHK番組「100分de名著」で多数の作品の解説も担当している。 本書は、上記の人々のほか、プラトン、原民喜、井上洋治、遠藤周作、高村光太郎、石牟礼道子、チャールズ・ディケンズ、鈴木大拙、河合隼雄、堀辰雄、岡倉天心らの作品を、「悲しみ」をキーワードに読み、綴ったエッセイ26編が収められている。初出は日経新聞夕刊(2015年1月~6月)の連載で、2015年に出版、2019年に文庫化された。 私は、初出は新聞連載時に目にしていたはずなのだが、ほとんど記憶にはなく、今回まとめて読んでみることにした。 また、私は、著者の本では、『生きる哲学』(2014年)をしばらく前に読んでおり、同書も同じように、上記の人々らの作品からの引用をベースに書かれているのだが、本書のエッセイは初出が一般紙であることから、比較的読み易い文章となっている。(但し、書かれている内容自体が「易しい」わけではないと感じる) 読み終えて、解説で俵万智が書いている「見失いがちな「人生を俯瞰する視点」を宝石のような言葉が思い出させてくれる」という言葉通りに思われた。(必ずしも物理的に忙しいわけではなくても、なぜか)心に余裕がなく、近視眼的にしかものを考えられないときに、本書を開くと、日常とは明らかに違う時間が流れ始める。。。そんな感じである。 いくつもの気付きや心に残るフレーズがあったが、いくつかを挙げてみると以下のようなものだ。 「祈ることと、願うことは違う。願うとは、自らが欲することを何者かに訴えることだが、祈るとは、むしろ、その何者かの声を聞くことのように思われる。あの頃の私には、慈しみも他者へのいたわりもなかった。自信と呼べるようなものも、まったく感じられていなかった。他者を信用する以前に自分を信じられていなかったのである。だが、もっとも欠落していたのは祈りである。人生の声を聞くことができなくなってしまっていた。」 「あなたに出会えてよかったと伝えることから始めてみる。相手は目の前にいなくてもよい。ただ、心のなかでそう語りかけるだけで、何かが変わり始めるのを感じるだろう。」 「死の床にある人、絶望の底にある人を救うことができるのは、医療ではなくて言葉である。宗教でもなくて、言葉である。」(池田晶子『あたりまえなことばかり』からの引用) 自ら人生の折り返し地点を過ぎて感じるのは、この類の本は、往々にして、それまでに経験したことや、今置かれている環境とそれを踏まえた心持ちによって、異なる部分が心に残るものである。また時を置いて、読んでみたいと思う。 (2024年6月了)
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