アルジェリア、シャラ通りの小さな書店 の商品レビュー
フランス領下のアルジェリア生まれのエドモン・シャルロ は21歳でアルジェで書店を開き出版にも乗り出す。アルベール・カミュ、サン=テグジュペリ、アンドレ・ジッド、フィリップ・スーポー、ジャン・ジオノ等の文学者と交友関係が綴られ興味深く、第二次大戦後の独立運動に対する植民地政府による...
フランス領下のアルジェリア生まれのエドモン・シャルロ は21歳でアルジェで書店を開き出版にも乗り出す。アルベール・カミュ、サン=テグジュペリ、アンドレ・ジッド、フィリップ・スーポー、ジャン・ジオノ等の文学者と交友関係が綴られ興味深く、第二次大戦後の独立運動に対する植民地政府による大虐殺等の歴史的背景も記され学ばされる史実の多い本でした。
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1930年半ばに、アフリカ、アルジェリアに小さな書店兼出版社を開いたエドモン・シャルロのスリリングな活動を記した一冊。 第二次大戦期のアルジェの彼の店には、カミュをはじめとして多くの作家たち、そして本を愛する人々が集い、読み、そして書く。 書店はその作家の本を出版し、売り、そし...
1930年半ばに、アフリカ、アルジェリアに小さな書店兼出版社を開いたエドモン・シャルロのスリリングな活動を記した一冊。 第二次大戦期のアルジェの彼の店には、カミュをはじめとして多くの作家たち、そして本を愛する人々が集い、読み、そして書く。 書店はその作家の本を出版し、売り、そして貸し出す。 その文化の躍動が、シャルロの手帳を軸に甦る。 時代のダイナミズムを感じた。
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アルジェリアに有ったその出版もする書店には、カミュやジッド、サン=テグジュペリが出入りしていた。 という言葉と、"アルジェにある書店"という響きから読み始めたこの話。 実在した、アルジェリアのアルジェで書店(兼出版社)を開き、多くの文学作品を世に出したエド...
アルジェリアに有ったその出版もする書店には、カミュやジッド、サン=テグジュペリが出入りしていた。 という言葉と、"アルジェにある書店"という響きから読み始めたこの話。 実在した、アルジェリアのアルジェで書店(兼出版社)を開き、多くの文学作品を世に出したエドモン・シャルロ シャルロは高校時代に出会った先生( ジャン・グルニエ カミュにも影響を与えた)が素晴らしい。先生に何をやり遂げたいかと聞かれ、出版物に興味があると主人公がこたえると、 「少しばかりの勇気を持って、一歩ずつ取りかかれば、乗り越えがたいと思えることでも、やすやすとやりとげられるものだよ。」 これで書店を開く決意をするんですね。 大学近くに開いた書店の名は〈真の富〉 ショーウインドウには "読書する一人の人間には二人分の価値がある" 〈真の富〉は新刊も、古本も、そして本を買う余裕のない人には貸し出しもする書店。そして、出版も手がける。 カミュの処女作品を出版し、 詩人から原稿が送られてきたり、、作家たちへの依頼など精力的にし、雑誌も創刊する。 その後第二次世界大戦で用紙やインク不足、その後レジスタンスとみなされ投獄なども そしてアルジェに来ているジッドやサン=テグジュペリと親交など、刺激的な日々が続く。 その後サン=テグジュペリは飛行中に消息を断つ。 その時の思い出が素晴らしい。
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この本を紹介してくださった方のインスタテキストに「使命感」という言葉があった。これほどまでに「使命感」を持って、編集人・出版人として、そして書店経営者として生きた人が遠くアルジェリアにかつていて、こうして物語となって出会えたことが素直にうれしかった。 出版人・シャルロの、193...
この本を紹介してくださった方のインスタテキストに「使命感」という言葉があった。これほどまでに「使命感」を持って、編集人・出版人として、そして書店経営者として生きた人が遠くアルジェリアにかつていて、こうして物語となって出会えたことが素直にうれしかった。 出版人・シャルロの、1935年から1961年までの日記と、シャルロの書店を整理しにやってきた、まったく本に関心のない青年、リヤドの現代の物語が折り重なって描かれていく。 シャルロの文学に対する情熱やたくさんの著名な作家さんたちとの交流。また、戦時下の紙やインク不足への苦悩や家族との関係なども赤裸々に日記は語っている。 ーー作家は書かなければならないし、出版社は本に生命を与えなければならない。この考えに限界があるとは思わない。文学というものはあまりに重要だから己の時間をすべて捧げないわけにはいかない。ーー 一方でリヤドは本屋さんをとりまく様々な出会いなどを通して、心が動いていく。 ーーリヤドは明かりをつける。ずっと昔、この同じ場所に、作家や、詩人や、画家がいた、と彼は考える。もうたくさんだ、この話すべてが、僕には頭痛の種だ。ーー この本屋がまた『真の富』なんて、最強の屋号なんである。この名前がついた所以もまた素敵なんである。 本屋さんはまさに、真の富。でも。現代日本は、この「真の富」がどんどん失われている。
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「読書する一人の人間には二人分の価値がある」 アルジェリアは、地中海文明・文化の一つとして古くから歴史に存在している。 カルタゴからローマ帝国、イスラム勢力支配を経て、1830年に地中海を隔てた対岸の国フランスに占領された。 物語は、21世紀のパリに住むアルジェリア人学生がア...
「読書する一人の人間には二人分の価値がある」 アルジェリアは、地中海文明・文化の一つとして古くから歴史に存在している。 カルタゴからローマ帝国、イスラム勢力支配を経て、1830年に地中海を隔てた対岸の国フランスに占領された。 物語は、21世紀のパリに住むアルジェリア人学生がアルジェリアにある小さな書店跡を解体するアルバイトに来たところから始まる。 並行して語られるのは、20世紀の二つの戦争からその後の独立運動のころ。 ひとりの若者がアルジェリアに文学の夢を抱いて書店と出版社を開く。 その名は<真の富>。 主人公シャルロの日記で、文学への情熱と友情に基づきカミュやジッド、サン=テグジュペリの作品を世に送りだした様子が語られる。 しかし、シャルロの願いは、地中海沿岸に文学の興隆を目指したもので、政治的思惑はないにもかかわらず、争う双方から疑われてしまい、その道のりは多難。 さまざまな困難の果て、シャラ通りの小さな書店のみその場に残る。 大学の課題をこなすためだけにフランスからやってきたリヤドと、書店廃業の後、その場で図書館として貸出管理をしてきたアブダラーが奇妙なやりとりで交流してゆき、政治や時代を超えて文学の価値が細々とつなぎとめられていく。 少し、翻訳された文章になじむのに時間がかかり、十分にアルジェリアの書店世界を味わうことができなかったのが心残り。
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エドモンシャルロの手帳という形でアルジェリアでの書店経営と出版の困難さを挿入されるアルジェリア植民地解放への一連の歴史と重ね合わせ、現在バージョンとして取り壊されるシャラ通りの小さな書店を整理しに来た若者の視点で描く。 アルジェリアのサッカーチームの活躍の挿話などいろいろなエピソ...
エドモンシャルロの手帳という形でアルジェリアでの書店経営と出版の困難さを挿入されるアルジェリア植民地解放への一連の歴史と重ね合わせ、現在バージョンとして取り壊されるシャラ通りの小さな書店を整理しに来た若者の視点で描く。 アルジェリアのサッカーチームの活躍の挿話などいろいろなエピソードが心に残る。
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本(読書)にまったく興味のない大学生のリヤドは、大学の実習の単位のためにアルジェにやって来た。元書店、その後図書館になったが今は使われておらず、カフェにするために本を片付け書棚を取り払うように言われる。仕事を始めるリヤドに、書店の元顧客が本を捨てるなんて、と驚く。 2017年のリ...
本(読書)にまったく興味のない大学生のリヤドは、大学の実習の単位のためにアルジェにやって来た。元書店、その後図書館になったが今は使われておらず、カフェにするために本を片付け書棚を取り払うように言われる。仕事を始めるリヤドに、書店の元顧客が本を捨てるなんて、と驚く。 2017年のリヤドと、1930年代にこの書店を開業したエドモンド・シャロルの日記が交互に展開されていく。シャロルは実在の人物で、書店と小さな出版社を営んでおり、カミュやジャン・ジオノなどの作家の作品を出版し交流もあったという。世界大戦やアルジェリアの独立などで翻弄されるシャロルと、ただ本屋の整理のためにやって来たリヤドの変化を描いていく。 初めは、たんたんとした流れに感じたが、徐々に20世紀のシャロルに引き込まれていく。それにつれてリヤドの変化にも興味が注がれていく。面白い設定で、中盤からは先が気になって仕方がなかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第二次世界大戦を挟んで相次ぐ資産難、物資難に見舞われながらも本、出版に対する熱い想いを失わず、絶えず世に良き文学を送り出そうとしたエドモン・シャルロとアルジェリアの小さな書店の仮構の手記に補われた現実に基づく物語。 どちらかというとぶきらぼうな文体で、淡々と流れるように語られる物語だが、その中に息づく本、文学、出版に対する熱量がすさまじすぎて心が粟立つ。 過ぎ去った時間と創出された足跡、重みに反比例するようにあっさりと失われる歴史とわずかに芽生える愛着。 解の提示のない自らで咀嚼する系の物語。
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書店を立ち上げた当初の話と手帳に記された記録からみる当日の感情。そして今その書店を別なものにしなければいけない青年の感情の変化が面白い。
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アルジェリアのアルジェにかつてあった書店「真の富」を巡る物語は、フランスの植民地の時代から第2次世界大戦、アルジェリア独立戦争を経て、現在までの歴史の中での変遷を語っている。 店主エドモンド・シャルロが書店兼出版社兼貸本屋を運営する日々を手記の形で描く。 戦争中の用紙・インク不足...
アルジェリアのアルジェにかつてあった書店「真の富」を巡る物語は、フランスの植民地の時代から第2次世界大戦、アルジェリア独立戦争を経て、現在までの歴史の中での変遷を語っている。 店主エドモンド・シャルロが書店兼出版社兼貸本屋を運営する日々を手記の形で描く。 戦争中の用紙・インク不足、言語統制、投獄!資金不足、様々な困難にぶつかりながらも、良い本を世の中に出すことへの熱意は衰えなかった。その想いに共感するカミュやサン=テグジュペリを始め多くの作家たちとの交流、本を愛する人たちの熱い想いに胸打たれる。 カミュと言えば今話題の『ペスト』もアルジェリアが舞台だったっけ。 シャルロの手記が書店を巡る過去を伝えながら、平行して書店を解体整理をすることになった今も描かれる。それを担うのは、本に全く感心を持たない若者リヤド。 書店最盛期の情熱と全てが終わった後の静けさとの対比が切ない。本を熱望する人々と本に価値を持たない人との対比も。 そしてもう一人重要な人物、元書店員の老人アブダラーは、雨降るなかでも歩道に立ち続けて書店を見つめている。今にいながら過去を見つめている。アブダラーは書店の過去と今を繋ぐ不思議な存在だ。 リヤドがアブダラーや町の人々から受け止めたものは、書店の歴史であり、そこに関わってきた人々の想いであり、書店がここにあった意味だったのだろう。
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