遠い唇 の商品レビュー
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北村薫さんは初めて読んだ。 「解釈」がとても面白かった!! 宇宙人みたいな地球外生物が地球を探索していて、情報収集のために太宰治の「走れメロス」、夏目漱石の「吾輩は猫である」を解釈する話。 「走れメロス」では、なぜ太宰治はメロスを助けずに傍観してたのか?同じように走って疲れないのか?など太宰治の日記だと思い込んで、解釈していく内容で楽しく読ませてもらった。
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久しぶりの北村薫。 短編集は心地よい。夢中で読んでしまった。 表題作「遠い唇」少し切ない感じのするお話。逝ってしまった人が鮮やかに心の中に蘇るような、けれど、もう手の届かないことを哀しむような。コーヒーの香りとともに心の中に生き続ける人がいる。 「しりとり」こちらも逝ってしまった方からかけられた謎。和菓子の音節が初めて会った情景を指すなんて、また、それをご主人が大切な思い出として取っておいてくださったなんて。逝ってしまった後もぬくもりをくれるようなお話。 「パトラッシュ」のほほん、とした感じの小編。 「解釈」こんな風に読まれていたら、漱石も太宰も苦笑いだ。 「続・二銭銅貨」もし乱歩と、こんなやり取りがあったら、と想像すると、スリリングだ。 「ゴースト」これだけは、他の小編と少し毛色が違うお話。ちょっと、どう評価してよいか分からない。 「ビスケット」この話を読むために、この本を買った、と言って過言ではない。姫宮あゆみが大人になり、作家になろうとは。そしてまた、大学で殺人事件が…。NHKの「探偵Xからの挑戦状」の原作になるらしい。謎解きに関しては、どこかで聞いたような覚えがあったので、すぐに分かった。それよりも名探偵のその後の人生を知ることが出来て、とても嬉しかった。伴侶を得て一時期は幸せな時があった、と知ることが出来て嬉しい。しかも、その伴侶が…。そして叔父さんが亡くなってしまっていた。時の流れは仕方がないが、小説の中まで律義にしなくても、いやいや、リアリティがある方がいいのか…。「あゆちゃん」と叔父さんの親子のような関係性にあたたかなものを感じていた私だった。また「冬のオペラ」を読み返そう。
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なんでこの本を図書館で予約して読むことにしたのか分からないんだけど、とにかく手元に来たので読みました。 文章がスマートだし、描写も美しいので、読むのをやめるということはないけど、美しすぎるからなのか、心にあまり何も残らなかった。
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無理やり☆5にさせられる感じかなあ。上手いんだよねえ、文章も題材の生かし方も落とし方も。7つの短編の内、6つが謎解きミステリー。謎を解きながら、ちょっとした人生の断片が顔を出す。そのさりげなさが憎い。最後の「ビスケット」の名探偵は、不思議な存在だ。「冬のオペラ」というこの作者のミ...
無理やり☆5にさせられる感じかなあ。上手いんだよねえ、文章も題材の生かし方も落とし方も。7つの短編の内、6つが謎解きミステリー。謎を解きながら、ちょっとした人生の断片が顔を出す。そのさりげなさが憎い。最後の「ビスケット」の名探偵は、不思議な存在だ。「冬のオペラ」というこの作者のミステリーに出てくるらしい。現代という時間にいる名探偵を憎たらしいほど上手く描いている。憎い憎いばかり言ってるなあ。やれやれ。
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最早、研究書か蘊蓄小説しか描かなくなってしまったのかと思っていた北村薫が、原点に戻って「日常の謎」小説(短編集)に挑んだ。 謎を解くことで浮かび上がる、人の気持ち。それこそが醍醐味で、北村薫の優しさも相まって、読後感はすこぶる良い。 よかったのは次の数編。 「遠い唇」 女性...
最早、研究書か蘊蓄小説しか描かなくなってしまったのかと思っていた北村薫が、原点に戻って「日常の謎」小説(短編集)に挑んだ。 謎を解くことで浮かび上がる、人の気持ち。それこそが醍醐味で、北村薫の優しさも相まって、読後感はすこぶる良い。 よかったのは次の数編。 「遠い唇」 女性の回りくどい意思表示は、わからないことが多い(←私だけ?)。でも、この小編の暗号がわかる人は少ないだろう。大学サークルの女性の先輩の連絡葉書にあった意味不明のアルファベット。先輩は「何でもないわ。‥‥いたずら書き」というだけ。 2年越しに解かれた謎は、ああ言った後の「硬く結ばれた唇」と共に永遠に記憶に残る。 「しりとり」 今度は、早世した夫が妻に残した俳句もどき。 数年前のメモが、作者の分身の如き「わたし」によって解かれる。どうしても解かれるべき謎ではないけど、解かれた時の風景が美しい。 「続・二銭銅貨」 言うまでもなく(と言う言い方が出来るのは、北村薫ファンぐらいなもの)江戸川乱歩の出世作「二銭銅貨」を俎上に上げて、かの作品の「隠れた真相」を乱歩自身が突き止めようとした小編である。時は太平洋戦争末期、乱歩は20年前に「二銭銅貨」の「案」を話してくれた人のお宅を訪れ、ずっと気にかかっていた疑問をぶつける。 ‥‥とは言え、当然コレは北村薫の創作だ。基本あの小説「だけ」から、これだけの「真相」を創作できるのだから、やはり北村薫は凄い。 「ゴースト」 北村薫は編集者を主要人物にすることが多い。「八月の六日間」も「太宰治の辞書」も、この短編集の「しりとり」でも、この「ゴースト」でも編集者が出てくる。北村薫の活動範囲は書庫か図書館か、それとも各出版社の編集者(何故か女性)との語らいなのだろうか?それは兎も角、女性の細やかな心理は描かれている。 ‥‥と思っていたら、後書きで主人公は「八月の六日間」の朝美だと「謎解き」がありました。 「ビスケット」 「日常の謎解き」ではない。殺人事件が起きてしまう。しかも、「冬のオペラ」の巫弓彦と姫宮あゆみコンビが20年ぶりに再会する。それもそのはず、テレビ番組用の特別原作として書かれたという「謎解き」がありました。
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乱歩「二銭銅貨」のオマージュ作品があるときいて飛びつきました。 面白かったー。 テンションあげるために 二銭銅貨を読み直してから読みました。 こんな「続編」もあるな、と 江戸川乱歩愛の溢れた作品でよかった!! 初読みの作家さんだったかも。 どれも読みやすい短編でした。
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久々に北村薫さん やはり、読み始めると止まらない ビスケット 粗筋を覚えているのに、どこで読んだか思い出せなくて なるほど あの番組ね
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謎解き短編集。 『遠い唇』何十年も前に自分に宛てられた暗号を解く。分かった後は何とも切ない。 『しりとり』俳句と和菓子を絡めた亡き夫の妻への想い。いい夫婦だなぁ。 『パトラッシュ』帰宅して鍵を出すはずなのに定期券を出したことが何度かあるのを思い出した。私も疲れてたんだな…。 『解...
謎解き短編集。 『遠い唇』何十年も前に自分に宛てられた暗号を解く。分かった後は何とも切ない。 『しりとり』俳句と和菓子を絡めた亡き夫の妻への想い。いい夫婦だなぁ。 『パトラッシュ』帰宅して鍵を出すはずなのに定期券を出したことが何度かあるのを思い出した。私も疲れてたんだな…。 『解釈』直訳するとこうなるんだ、と面白かった。文学ってすごい。 『続・二銭銅貨』本家の江戸川乱歩『二銭銅貨』を知ってたら、より楽しめそう。 『ゴースト』忙しすぎて冷静な判断が出来なくなり勘違い、時間と労力を無駄にする。忙しい時程休憩が必要。 『ビスケット』巫弓彦、姫宮あゆみ。聞いたことあるぞ…と思ったら、付記で『冬のオペラ』の二人だと分かって嬉しくなった。『太宰治の辞書』を読んだ時と同じく、その後の彼女たちはこんな風に生きてきたんだなぁとしみじみ。 バラエティに富んでいて、味わい深い一冊でした。
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人の死なないミステリーを描かせたら随一と感じている北村薫氏の短編集。 大学時代の先輩が葉書に残した暗号、江戸川乱歩の「二銭銅貨」へのオマージュのほか、ミステリーからは少し離れる二作品、そして最後の一作は殺人事件だが、血生臭くないダイイングメッセージもの。
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わたしの人生もまた、物語のひとつである。 いつからだろう。自分の物語において己の注意は、今読んでいるそのパートや、以前にあった伏線などをすっ飛ばすようにして、そのストーリーの続き、あるいは結末にばかり目を向けてしまうようになった。しかも、それだけではない。わたしは大体のそのま...
わたしの人生もまた、物語のひとつである。 いつからだろう。自分の物語において己の注意は、今読んでいるそのパートや、以前にあった伏線などをすっ飛ばすようにして、そのストーリーの続き、あるいは結末にばかり目を向けてしまうようになった。しかも、それだけではない。わたしは大体のそのまだ見ぬ結末に対して、ある一定の希望や絶望を前もって準備をしておいて、それ通りになるか、ならないか、その2択で人生を憂うようになってしまったように思える。 それでももちろん現実は、1年後あるいは明日、はたまた1時間後には自分の想像していたシナリオとは全く異なる出来事が起きるものだし、その都度未来のストーリーの筋道を立て直さなければならない。 ふと、わたしの物語の本質は本当に未来にあるのか。先の展開についてのシナリオ作りは果たして必要なものなのか。など、疑いたくなるきっかけを与えてくれた作品だった。 もしかしたら、わたしの生活を違う星の宇宙人が見ていて、誰かとの会話を翻訳して考察しているかもしれないし、以前大切な人からもらった手紙に今も気づかない暗号が隠されているかもしれないし、2回目のデートの時にしたしりとりで口にしたあの単語が彼にとっては告白に近いものだったのかもしれない。 その瞬間を見逃さず、きちんと掬い上げることさえすれば、わたしの生活も、日々も、純愛小説の中の鮮やかな1ページになりうるし、ちょっとした夢と思い違いを大胆に詰め込むことさえすれば、世界で一番美しい物語にも変われるのだ。途端に、人生が、わたしの物語が、これまで以上に彩度を上げて光を強く放ち始めた。
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