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芝園団地に住んでいます の商品レビュー

4.2

15件のお客様レビュー

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2024/02/21

芝園団地の近くに住んでいます。なので芝園団地にはめちゃくちゃ関心がありました。 団地内の図書館を利用していますが、そういえば中国の人は見かけたことないかも。日本の書籍しかないし当然といえば当然か。 さて、住民の半分以上が外国人になった芝園団地に実際に生活しながら、団地の実態を描...

芝園団地の近くに住んでいます。なので芝園団地にはめちゃくちゃ関心がありました。 団地内の図書館を利用していますが、そういえば中国の人は見かけたことないかも。日本の書籍しかないし当然といえば当然か。 さて、住民の半分以上が外国人になった芝園団地に実際に生活しながら、団地の実態を描いた本書は、住人という当事者視点とジャーナリストとしての客観視点で書かれているノンフィクションです。 かつて『チャイナ団地』と揶揄された芝園団地は、URや自治会の地道な活動によって中国人住民のマナーも向上し、芝園団地自治会は2018年に地球市民賞を受賞するなど、多文化共生の優れた事例としてメディアでも話題になりました。 しかし著者が実感するのは、一見深刻なトラブルもなく共に暮らしているが接触がほとんどない【共存であって共生ではない】という根が深い問題でした。 外国人側の「協力しないけどイベントは楽しむフリーライド」と日本人側の「古参の居場所を奪われたくないという多数派の不安」は、著者も当事者としていろいろ働きかけるもお互いの歩み寄りはなかなか難しいもよう。 もちろん「共存」が悪いことではなく、芝園団地のありかたとして一つの選択肢ではあるけれど、この団地では「小さなステップでもいいから、何かあった時にお互いが協力しあえるような『顔の見える関係』を作っていきたい」というのが芝園団地を復活させた中心人物である岡崎氏の思いであるようです。 『顔の見える関係』という考えは非常に参考になりました。これは「中国人はこうだ」とひとくくりにして決めつけてはいけない、中国人でも日本人でも一人一人は違う。もちろんマナーも悪い人はいるが良い人もたくさんいるし、違う文化同士で交流を持ちたいひともいます。全体ではなく個人の顔を見れば偏見はなくなるのではないかという考え方です。 本書の最後の章で、筆者が芝園団地で起こっている問題についてインターカルチャリズムの有識者に質問しています。 根深い問題のひとつである『多数派の不安』への対処法は「正確には何を恐れているのか」聞いてみること。すると「我々の文化や居場所がなくなってしまう」というのは真実ではないことに気づく。そのうえで自分たちが決して妥協できない本質的な要素を問うてみると、それが移民にとって社会と繋がるためののチケットになる。とのこと。 これから人口がどんどん少なくなる日本にとっても移民問題は考えていくべき問題だし、現在私が住む川口市では中国人よりクルド人の移民が大きな問題になっています。つい最近もデモが起きてドキッとしましたが本書を読んで、「クルド人ひとくくりにしない」という意識を持つようにしています。

Posted byブクログ

2023/05/13

個人的にこの団地の近くをときどき通るので気になっていた。 筆者はこの団地に住んでいる方なので生の声と言えそうだ。 外国人が多いというのは聞いていたが、芝園町の人口の半分以上が外国人とは。 ヒャッハーな感じのトラブル劇のようなことはあまりなくて、静かに分断されている団地という印象を...

個人的にこの団地の近くをときどき通るので気になっていた。 筆者はこの団地に住んでいる方なので生の声と言えそうだ。 外国人が多いというのは聞いていたが、芝園町の人口の半分以上が外国人とは。 ヒャッハーな感じのトラブル劇のようなことはあまりなくて、静かに分断されている団地という印象をもった。 日本人と外国人という人種的な分断に加えて、高齢の日本史と若い外国人の年齢的分断も感じた。 住人の外国人は中国系のIT技術者が多いのだそうだ。だが、中国のIT産業が栄え日本が没落したいく今後は、中国の若い技術者はわざわざ日本に来ないだろうという意見が印象に残った。 蕨の駅前などではイランやバングラデシュの方をよく見るが、また別のコミュニティがあるのだろうか。

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2022/01/02

移民関連テーマとして、比較的近所にある芝園団地(団地内の外国人比率が5割を超えた団地)をテーマにしてる本があったので手にとった。 移民とつきあっていく上で複数の軸での課題があることがわかった。 ・地域住民との「共存」か「共生」か ・「同化主義」か「多文化主義」か「間文化主義」...

移民関連テーマとして、比較的近所にある芝園団地(団地内の外国人比率が5割を超えた団地)をテーマにしてる本があったので手にとった。 移民とつきあっていく上で複数の軸での課題があることがわかった。 ・地域住民との「共存」か「共生」か ・「同化主義」か「多文化主義」か「間文化主義」か ・マジョリティが感じるネガティブ感情(マイノリティへのステレオタイプや、既得権益を失う不安) 日本特有、ではなくすでに他の国々でも同様の課題がでて考察されているようなのでそのあたりは理解しておきたい。

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2021/08/29

蕨に近いURが所有する芝園団地。 かつては、中堅サラリーマンが我が家を構える場所だったが、今や、単身高齢者が主体。そこに若い中国人IT技術者が多数住むようになり、コムユニティーが激変。その中で、住民同士の対立が生じ、外野が色々口を出し、自治会が融和を画策し、近年では、中国人よりベ...

蕨に近いURが所有する芝園団地。 かつては、中堅サラリーマンが我が家を構える場所だったが、今や、単身高齢者が主体。そこに若い中国人IT技術者が多数住むようになり、コムユニティーが激変。その中で、住民同士の対立が生じ、外野が色々口を出し、自治会が融和を画策し、近年では、中国人よりベトナム人がの増加が目立つ、というグローバリズムの中の日本の縮図を描く。

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2021/05/05

外国からの移住者が住民の半数以上を占める芝園団地で、昔からのお祭り、餅つき大会などのイベントを通じて異文化人との共生にスポットを充てた作品。 これからグローバル社会になっていくことが決まっているので、自分事として将来を考えられる作品。 ノンフィクションドキュメンタリー映画にして...

外国からの移住者が住民の半数以上を占める芝園団地で、昔からのお祭り、餅つき大会などのイベントを通じて異文化人との共生にスポットを充てた作品。 これからグローバル社会になっていくことが決まっているので、自分事として将来を考えられる作品。 ノンフィクションドキュメンタリー映画にして公開しても良いくらいの内容がある本。

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2021/02/28

おもしろっ。芝園団地、私も住んでみたいが収入が足りない。 マイノリティが増えることで何かを脅かされているように感じる、ってのがすごくわかった。 ときどき地位のある中年男性と話してると(この人は私に何かを奪われると感じているのでは?)と不思議な気持ちになることがあるんだわ。私はそん...

おもしろっ。芝園団地、私も住んでみたいが収入が足りない。 マイノリティが増えることで何かを脅かされているように感じる、ってのがすごくわかった。 ときどき地位のある中年男性と話してると(この人は私に何かを奪われると感じているのでは?)と不思議な気持ちになることがあるんだわ。私はそんなつもり全然ないんだけど。 その人はたまたま貰えるケーキが多かったのだな。

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2020/06/17

誰でも心の中に小さなトランプを抱えている…というのは、トランプ大統領が当選した時にメキシコ人記者が書いていた文章の一部。たしか、メキシコ人が「bad hombre」と言われて公然と大統領の敵意を受ける相手となっていた頃だが、一方でメキシコ国内では他の中米諸国からの移民を排斥しよう...

誰でも心の中に小さなトランプを抱えている…というのは、トランプ大統領が当選した時にメキシコ人記者が書いていた文章の一部。たしか、メキシコ人が「bad hombre」と言われて公然と大統領の敵意を受ける相手となっていた頃だが、一方でメキシコ国内では他の中米諸国からの移民を排斥しようという動きもあることを批判した内容だった気がする。この本の筆者も、自分の家族が米国でアジア系マイノリティーとして生きていくことについて考える際、マイノリティーとしての立場から訴えるのではない。自分がマジョリティーである日本の中で、まずは日本人の心の中にある「小さなトランプ」に向き合っている。すごいなあ。

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2020/02/20

この団地、中国人が多数住んでいることで有名だそうだが、初期のゴミ捨てなんかのトラブルをうまく解決し、学生ボランティアらによる交流活動も盛んだったりで色んなグローバルナンチャラ的な賞をもらうほどになった。著者は新聞記者として実際にこの団地に住み、自治会活動にも参加しながら、住民だか...

この団地、中国人が多数住んでいることで有名だそうだが、初期のゴミ捨てなんかのトラブルをうまく解決し、学生ボランティアらによる交流活動も盛んだったりで色んなグローバルナンチャラ的な賞をもらうほどになった。著者は新聞記者として実際にこの団地に住み、自治会活動にも参加しながら、住民だからこその目線で等身大の団地の姿を描く。 それは必ずしも理想の共生社会とかではなく、それぞれ(特に日本人側)のモヤモヤが鬱積しお互い距離を取り合う2分割されたコミュニティだったりする。理想論だけでは片付かない旧住民側の本音は突き詰めれば「この団地は自分たちのもの」という団地愛なのだが、それが一転して排外的にもなりかねない、微妙な空気をはらんでいる。 「それは差別だ」的な正論で押しても解決にはならない、旧住民が守りたい本当の価値とは何かを辛抱強く探り続けることが大切だというインター・カルチュラリズムに立つ社会学者の言葉が印象に残る。

Posted byブクログ

2020/02/08

埼玉県川口市の、外国人居住者が多い「芝園団地」に住む新聞記者、大島隆氏の著書。日々団地で起こる、面白エピソードを紹介するような軽い内容…、を想像していたが中身は全然違っていた。 芝園団地には90年代頃から、中国人を中心に多くの外国人が住み始め、現在は住民の半数以上が外国人となっ...

埼玉県川口市の、外国人居住者が多い「芝園団地」に住む新聞記者、大島隆氏の著書。日々団地で起こる、面白エピソードを紹介するような軽い内容…、を想像していたが中身は全然違っていた。 芝園団地には90年代頃から、中国人を中心に多くの外国人が住み始め、現在は住民の半数以上が外国人となっている。芝園団地が特に積極的に、外国人の受け入れを推進していたわけではないのだが、他地域に比べ入居の条件が比較的緩かったため、結果として大勢の中国人が集まってしまったようだ。 当初はゴミ出しのルールをめぐりトラブルもあったそうだが、中国語の注意書きを張るなどして、現在はトラブルも無いらしい。しかし団地に住む古参住人の中には、中国人が住む事に対し否定的な意見を持つ人も多く、大島氏はこの状況を、トランプ政権が助長する移民排斥や人種差別問題と重ね合わせている。自治会が中心となり、イベントなどで住民同士の交流を図っているのだが、なかなか難しい問題のようだ。 いま日本では高齢化や人工減少が急速に進んでおり、減少する労働力を補う手段の一つとして、外国人の受け入れは増やさざるを得ない。最近は自分の住む田舎町にも外国人を見かける事が多く、芝園団地が現在直面している問題というのは、これから近い将来に日本全体が経験する問題なのだと思う。

Posted byブクログ

2020/01/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

自分の考えや仮説に沿った情報だけを集めてしまうことを、心理学で「確証バイアス」と言う。「見たい現実」だけを見てしまうことだ。外国人住民が増えたことによる摩擦も、交流に取り組む住民の姿も、どちらも芝園団地の一つの現実ではある。だが、一つの現実だけで描き出す姿が、真実とは限らない。(p.47)  学生を除けば、多くの日本人住民は特に声をかけるわけでもない。日本人住民からすれば、顔見知りではないからということかもしれないが、初めて顔を出した中国人住民が「歓迎されていない」と居心地の悪さを感じたとしても不思議ではない。結局、顔を出すのは一度きりになってしまう。私には、日本人の側が、「見えない壁」をつくっているように感じた。(p.100)  池谷さんがなぜ、「トランプの言葉を広場で叫びたい」とまで言うようになったのか。何か一つのことがきっかけというわけではないという。「この団地は楽しい場所だった。おもしろいことが一年中あった。そういう中に違うものがポンと入ってきた。その瞬間みんな、同じように思ったんじゃないの。じわーっとくる違和感というか…」 その「違和感」が積もっていき、ある時点で中国人住民に対する気持ちが変わってしまったのだという。「バーンと消えたんですよ。ある瞬間に、心から消えてしまったんです」(p.107) 一つの場所に、お互いうまく住み分けをしていく「共存」も一つの選択肢ではある。互いに迷惑をかけない最低限のルールを守って静かに暮らせればそれでいい。お互い生活も文化も違うのだから無理に交流する必要はないという考え方だ。 一方の「共生」は、共存に比べると相互の関係や協力というニュアンスがある、「一緒に生きる」という意味の言葉だ。生物学では、異なる二つの生物が同じ場所に住み、一方あるいは双方が利益を受ける形で、密接な結びつきを持ちながら生きることを指す。芝園団地でいえば、日本人住民と外国人住民が交流し、協力しながら同じ団地住民として暮らすのが共生のイメージだ。(p.166) ここに住んでいると、なぜ米国でトランプ大統領が誕生したのか、なぜ欧州で反移民政党が伸長しているかが「見えてしまう」のだ。(中略)そうした「普通の団地」でも、外国人が急増して環境が変わっていけば、もともと住んでいた人々の間には、外国人住民に対する漠然とした不安や警戒感が芽生えていく。 私は団地に住みながら、「多数派のもやもや感」とでも呼ぶべき感情のことを考えてきた。このまま放置すれば、米国や欧州で起きたことと同じように、大きな排外主義的なうねりに「持っていかれる」のではないかという思いが消えなかったからだ。(pp.184-185) (グッドマン)「文化の問題とは、違いをどう理解すべきか、そうした違いとどう折り合いをつけていくかでしょう。子あれはパワー・ダイナミクスほどには難しい課題ではありません。一方でパワーの問題とは、ここは誰の団地なのか、誰の土地なのか、誰の国なのかといったものです。それは『特権』につながるものです」(p.204) (グッドマン)「私だったら、団地の交流イベントには来ないけどそれほど極端な意見を持っているわけでもない、中間的な人たちと一対一で接することから始めます。何が不安なのか、どんな気持ちなのか、話を聞くのです。次に、自分が知っている日本人と中国人を招待して、お茶でもするのもいいかもしれません」(p.207) 「郷にいれば郷に従え」という言葉で気になるのは、「同化」という意味合いや、そもそも社会の一員として受け入れることに否定的な意義が見え隠れする時があることだ。  異なる文化を持つ人々とも同じ社会の一員として共生することと、一方的に自分たちの文化に従うことを求める「同化」は異なる。もちろん、外国人も守らなければならないルールがあるのは当然だ。だが、「郷にいれば…」という意識が前に出すぎると、文化的な多様性が社会の強みや楽しさではなく排除すべき対象になりかねない。(pp.210-211)

Posted byブクログ