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芝園団地に住んでいます の商品レビュー

4.2

16件のお客様レビュー

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2020/01/25
  • ネタバレ

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自分の考えや仮説に沿った情報だけを集めてしまうことを、心理学で「確証バイアス」と言う。「見たい現実」だけを見てしまうことだ。外国人住民が増えたことによる摩擦も、交流に取り組む住民の姿も、どちらも芝園団地の一つの現実ではある。だが、一つの現実だけで描き出す姿が、真実とは限らない。(p.47)  学生を除けば、多くの日本人住民は特に声をかけるわけでもない。日本人住民からすれば、顔見知りではないからということかもしれないが、初めて顔を出した中国人住民が「歓迎されていない」と居心地の悪さを感じたとしても不思議ではない。結局、顔を出すのは一度きりになってしまう。私には、日本人の側が、「見えない壁」をつくっているように感じた。(p.100)  池谷さんがなぜ、「トランプの言葉を広場で叫びたい」とまで言うようになったのか。何か一つのことがきっかけというわけではないという。「この団地は楽しい場所だった。おもしろいことが一年中あった。そういう中に違うものがポンと入ってきた。その瞬間みんな、同じように思ったんじゃないの。じわーっとくる違和感というか…」 その「違和感」が積もっていき、ある時点で中国人住民に対する気持ちが変わってしまったのだという。「バーンと消えたんですよ。ある瞬間に、心から消えてしまったんです」(p.107) 一つの場所に、お互いうまく住み分けをしていく「共存」も一つの選択肢ではある。互いに迷惑をかけない最低限のルールを守って静かに暮らせればそれでいい。お互い生活も文化も違うのだから無理に交流する必要はないという考え方だ。 一方の「共生」は、共存に比べると相互の関係や協力というニュアンスがある、「一緒に生きる」という意味の言葉だ。生物学では、異なる二つの生物が同じ場所に住み、一方あるいは双方が利益を受ける形で、密接な結びつきを持ちながら生きることを指す。芝園団地でいえば、日本人住民と外国人住民が交流し、協力しながら同じ団地住民として暮らすのが共生のイメージだ。(p.166) ここに住んでいると、なぜ米国でトランプ大統領が誕生したのか、なぜ欧州で反移民政党が伸長しているかが「見えてしまう」のだ。(中略)そうした「普通の団地」でも、外国人が急増して環境が変わっていけば、もともと住んでいた人々の間には、外国人住民に対する漠然とした不安や警戒感が芽生えていく。 私は団地に住みながら、「多数派のもやもや感」とでも呼ぶべき感情のことを考えてきた。このまま放置すれば、米国や欧州で起きたことと同じように、大きな排外主義的なうねりに「持っていかれる」のではないかという思いが消えなかったからだ。(pp.184-185) (グッドマン)「文化の問題とは、違いをどう理解すべきか、そうした違いとどう折り合いをつけていくかでしょう。子あれはパワー・ダイナミクスほどには難しい課題ではありません。一方でパワーの問題とは、ここは誰の団地なのか、誰の土地なのか、誰の国なのかといったものです。それは『特権』につながるものです」(p.204) (グッドマン)「私だったら、団地の交流イベントには来ないけどそれほど極端な意見を持っているわけでもない、中間的な人たちと一対一で接することから始めます。何が不安なのか、どんな気持ちなのか、話を聞くのです。次に、自分が知っている日本人と中国人を招待して、お茶でもするのもいいかもしれません」(p.207) 「郷にいれば郷に従え」という言葉で気になるのは、「同化」という意味合いや、そもそも社会の一員として受け入れることに否定的な意義が見え隠れする時があることだ。  異なる文化を持つ人々とも同じ社会の一員として共生することと、一方的に自分たちの文化に従うことを求める「同化」は異なる。もちろん、外国人も守らなければならないルールがあるのは当然だ。だが、「郷にいれば…」という意識が前に出すぎると、文化的な多様性が社会の強みや楽しさではなく排除すべき対象になりかねない。(pp.210-211)

Posted byブクログ

2020/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

外国人の人口が増える中、日本でも「多文化共生」を目指そうとする声があがる。しかし、そもそも「多文化共生」は人々から求められているのか、またいかにそれが険しい道のりであるかということが、象徴的に描かれている。 下記はメモ。 「共生」と「共存」の違い、また後者を望む住民を否定することは出来ないということ。 外国人:日本人という単純な構図で分けられないこと。そもそも、世代も職業も異なる両者を、無理やり交わらせる点に、かなり無理がある。 「中国人」という大きい主語で語られることの多さ。 多数派で支配的だった人々が、少数派だった人々の割合が増えて来ると、「侵略されている」と感じてしまう。相手が自分と同様の義務を果たし、権利を持っていたとしても、自分たちに従うべきだと思ってしまう。

Posted byブクログ

2020/04/12
  • ネタバレ

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「もやもや感」 ・「自分たちの提供物(税金や労働)によって成り立っているサービスに、外部の人間が『ただ乗り』をしている」という意識(p.62) ・外国人住民が過半数となり、自分たちが少数派になったことに対する、日本人住民の思い(p.63) ・「自分たちの場所だったのに脇に追いやられる」という反発と、不安(p.70) ・「本来私たちのためのものなのに、『彼ら』がただ乗りしている」という不満 ◆訪日ラボ(2020.4.3):増える中国人、日本が直面「多文化共生」は可能なのか?「儀礼的無関心」とは:芝園団地のケースから考える https://honichi.com/news/2020/04/03/chinseatshibazono/

Posted byブクログ

2020/01/03

もう都市の若者はこない  中国都市部との賃金格差が少なくなっている ビザはとりやすい IT技術者 技術・人文知識・国際業務という在留資格 かつては技術と人文知識・国際業務で技人国 社会心理学 接触仮説 偏見は相手の集団の無知から生まれるものだから、集団同士の接触が増えれば、偏...

もう都市の若者はこない  中国都市部との賃金格差が少なくなっている ビザはとりやすい IT技術者 技術・人文知識・国際業務という在留資格 かつては技術と人文知識・国際業務で技人国 社会心理学 接触仮説 偏見は相手の集団の無知から生まれるものだから、集団同士の接触が増えれば、偏見もなくなる 移民に対して、移民独自恩文化を保ち続けるよりも、ホスト社会に同化するのをもとめることが同化主義 移民が自分たちの文化を保ち続けることを認め、多様性を尊重するのが多文化主義 異なる文化間の交流や社会の結びつき、共通性を重視するのがインターカルチャリズム 団地の商店街の大半が中国系の店になったことをさみしく思う古参住民に対しては、心情的に、「その気持も無理はないか」と思う。一方では、「ここは私達の団地だ」という意識が「日本人と外国人」と分ける発想に繋がり、ステレオタイプや偏見につながることも少なくない 多数派の感情の根底には、ステレオタイプと恐怖という要因があると指摘した 多数派が「我々の文化やアイデンティティ、伝統が失われる」というとき、それは正確には何を意味するのか、聞いてみるのです。あなたが失うことを恐れているのは、正確には何なのか?私は多くの人々と、このやりとりをしてきました。そうすると、「我々の文化がうしなわれてしまう」というのは真実ではないことに気づきます。すべてを失うわけではないのです。 日本社会の特質(和、集団主義、均一性)は、多様性と相性が悪いのではないかということだ。日本の中核的な価値が多様性と衝突するのであれば、多様性を尊重した共生社会を造ること自体が、難しいということになってしまう 多数派の不安に対処するためには、多数は=受け入れる側自信の意識も変わっていかなければならない 多数派の特権意識 カナダで、新たにやってきた移民の定住を支援する取り組みを取材したことがあった これは文化の問題であるとともに、パワー(力、権力)の問題でもある 人間はパワーを失う時、自分たちが脅かされていると感じる 自分たちと違うルールや価値観で行きているひとがいるということは、実際に異文化と接した経験がないと、簡単には考えが及ばないものだ すると自分たちのるーるを相手に伝えるというプロセスを飛ばして、なぜルールを守らないんだと反応してしまうことがある

Posted byブクログ

2019/12/23

著者の体験から掘り起こした埼玉の村社会の様子がとてもわかりやすく読みやすかった。何より◯◯人という括りが相手を知ることでしか、その垣根を払えない。聞いた気になったり、知った気になる、違うコミニティーを理解しようとする気持ちが大切なんだよね。

Posted byブクログ

2019/10/13

日本の行く末の縮図な様相の、シェアが中国人優位となった団地内の人間関係と、住む人たちの想いと。 芝園団地の現状と課題は、世界がまさに直面し、日本がこれから本格的に直面しようとする課題であり、どう向き合えばよいのか、その答えと試みが参考となりました。 P165 中国人の思い ...

日本の行く末の縮図な様相の、シェアが中国人優位となった団地内の人間関係と、住む人たちの想いと。 芝園団地の現状と課題は、世界がまさに直面し、日本がこれから本格的に直面しようとする課題であり、どう向き合えばよいのか、その答えと試みが参考となりました。 P165 中国人の思い ・日本人と比べれば、中国人住民の方が  「もっと交流を深めたい」と思っている人は多い。 ・日本人ともっと話したいと、日本語教室にやってくる  中国人住民もいる。 一方で、多くの中国人にとって芝園団地を選んだ理由は ・中国人コミュニティがあるから。 共生→日本人住民と外国人住民が交流する団地にしたい人達 共存→お互いが静かにトラブルなく暮らせれば  特に交流が無くてもかまわないと思う人達 共存と、共生と、どちらを目指すのか? お互いうまく住み分けをしていく共存、 共存と比べると相互の関係や協力というニュアンスのある共生。 P186 芝園団地の現状と課題 ・トランプ大統領の誕生 ・欧州における反移民政党の伸長 は、ポピュリストたちは、 彼らの都合の良いように不安感を掻き立て、 その感情をフラストレーションに変化させ、 移民の人々をスケープゴートにして 利用した結果であった。

Posted byブクログ