世界が赫に染まる日に の商品レビュー
中学3年生の緒方櫂は夜の公園で出くわした高橋文稀に申し出た。「自分を手伝ってくれないか?」とである。何を手伝うのか?“復讐”であった。 緒方櫂には実の兄弟も同然に育った、1歳下の従弟、更に1歳下の従妹が在った。従弟達は別な中学校に通っていた。そして深刻な“いじめ”を受けてしまって...
中学3年生の緒方櫂は夜の公園で出くわした高橋文稀に申し出た。「自分を手伝ってくれないか?」とである。何を手伝うのか?“復讐”であった。 緒方櫂には実の兄弟も同然に育った、1歳下の従弟、更に1歳下の従妹が在った。従弟達は別な中学校に通っていた。そして深刻な“いじめ”を受けてしまっていた。従弟は酷い暴行を受けて、簡単に回復出来ないような重傷を負ってしまっていた。従妹も嫌がらせを受けて心に深い傷を負って祖父の家に引き籠ってしまっていた。それだけのことになって、加害者は厳罰に処されたとも言い難い状態であったのだ… 緒方櫂はその加害者に“復讐”でもしなければ気が済まないという思いで、気持ちのやり場に困っていたのだ。高橋文稀は、この緒方櫂の申し出を受け入れた。 高橋文稀は、最初から本命の「従弟達への加害者達の首謀者」に手を出すのでもなく、“予行演習”が必要だとする。緒方櫂はそれに得心する。そうして、方々で“いじめ”の加害者であった者達について調べ、襲撃を重ねるのである… この襲撃の顛末、緒方櫂と高橋文稀との奇妙な連帯の行方、或いは2人各々の心境の変遷というようなことが本作の物語だ… “いじめ”によって回復困難な重傷を負う、命を落とすというような事例は随分と以前から尽きない。そういう中で“復讐”を想う人達は在ることであろう。或る意味で、そういう問題に向き合っている物語だが、他方で独特な歩みで独特な個性を育んで現在に至っている高橋文稀の物語という感でもある。 何か「憑かれる」かのように、ドンドン読み進めてしまった物語だった…実際、休日の1日で読了してしまった。
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勧善懲悪を主軸としたシンプルな話の展開で、読んでてスッキリするからか、1日で読了。 法で裁けない悪ってのがあって、人は一定数イカれてて、その中で集団として生きていかなきゃいけない限り、やるせない事件は起こり続けていくんだろうなあー、って他人事のように思うけど、こういう理不尽が自分...
勧善懲悪を主軸としたシンプルな話の展開で、読んでてスッキリするからか、1日で読了。 法で裁けない悪ってのがあって、人は一定数イカれてて、その中で集団として生きていかなきゃいけない限り、やるせない事件は起こり続けていくんだろうなあー、って他人事のように思うけど、こういう理不尽が自分にいつ降りかかってきてもおかしくないワケで。 小説の中の出来事だけど、現実に起きててもおかしくないし、きっと起きてるんだろうな、って考えると怖いし悲しいし、何よりやるせない。
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登場人物も少なくストーリーも分かりやすい。 私はもう30歳を超えた立場なので達観した気持ちで 読み終えることができた。 学生の時に読んでいればまた違った感想を 持っただろう。 従兄弟の復習を、接点のないクラスメート共に 遂げていく計画。 2人は徐々に友情を深めていくが、、 ...
登場人物も少なくストーリーも分かりやすい。 私はもう30歳を超えた立場なので達観した気持ちで 読み終えることができた。 学生の時に読んでいればまた違った感想を 持っただろう。 従兄弟の復習を、接点のないクラスメート共に 遂げていく計画。 2人は徐々に友情を深めていくが、、 従兄弟の回復と共に復習に対して気持ちが 揺らいでいく。 毒親をもつフミキ。誰からも必要とされていないと 知り自暴自棄となり、1人でも計画を確実に遂行してゆく。 愛されていないと思っていたが、 父が彼の生きていることを望んでいることが分かる場面があるが、本人はそれを知ることが出来ないという部分が 切ない。 文章自体は、難しい表現もなく、 淡々とすすんでゆく。 時間があれば読んでみてもいいかと。
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表紙絵と帯で購入。完全なジャケ買い。 社会に絶望を感じている二人の少年の邂逅。 一人は従兄弟が理不尽ないじめのため人生を狂わされたことに、一人は両親のために自身がおかれた境遇に理不尽さを感じ、通常の生活に馴染めなくなっていた。 その二人が少年法と事なかれ主義の社会に守られて正当...
表紙絵と帯で購入。完全なジャケ買い。 社会に絶望を感じている二人の少年の邂逅。 一人は従兄弟が理不尽ないじめのため人生を狂わされたことに、一人は両親のために自身がおかれた境遇に理不尽さを感じ、通常の生活に馴染めなくなっていた。 その二人が少年法と事なかれ主義の社会に守られて正当な罰を受けていないと思われる者たちに報いを与えるという行為で、ある種の友情を育みながら社会の構成員としての自覚を持っていく。 今の世の中にあるイジメ問題や少年犯罪の裁きを捉えた作品であると同時に青春小説である。 二人の行為がリアルで、読んでいて恐怖を覚えた。また行為を受けた者はそのような報いを与えられる行為をし、かつ納得する裁きを受けていないという現実にも慄然とする。 主人公たちの行為、報いを受けた者が行ったことが現実に蔓延しないことを願いたい。
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