ノモンハン 責任なき戦い の商品レビュー
ノモンハン 責任なき戦い 著:田中 雄一 講談社現代新書 2538 NHKの番宣なのか、「ノモンハン責任なき戦い」NHKスペシャルと連動したもので、著者の田中雄一氏は、NHKのディレクターだ ①歩兵中心の軽装備の日本軍を、最新鋭の近代兵器のもつソ連軍に投入した ②そして敗戦処...
ノモンハン 責任なき戦い 著:田中 雄一 講談社現代新書 2538 NHKの番宣なのか、「ノモンハン責任なき戦い」NHKスペシャルと連動したもので、著者の田中雄一氏は、NHKのディレクターだ ①歩兵中心の軽装備の日本軍を、最新鋭の近代兵器のもつソ連軍に投入した ②そして敗戦処理について、現場の部隊長らが、自決と言う形で責任をとらされた ③その原因は、関東軍参謀の辻政信とその上司である服部卓四郎である が本書の主旨である 気になったのは以下です。 ・結局、ノモンハンを止めたのは、昭和天皇の激怒だった。というか、日本軍を収拾できるのは、515、226以来昭和天皇しか止められない ・がしかし、聖断あってもなお、辻は日本兵の遺体収容のために、戦争を継続しようとしていた ・もともと、ノモンハンの遠因になったのは、ソ満国境、蒙満国境が不透明で、国境線を策定していなかったため、相互がそれを拡大解釈、実効支配をしようとしたために、武力衝突が頻発した ・さらに、関東軍の人事異動で、一番状況に詳しい辻を残してしまったことが、紛争から戦争に発展するきっかけとなった。 ・辻は、自分がつくった「満ソ国境処理要綱」を実行して出世したかった。参謀として、歯止めが利かない状況下では、やむを得なかった。 ・石原莞爾が関東軍とソ連軍の装備の余りにも違いに対して、兵装を近代化しようとしていたのだが、中国での紛争拡大に対して、原資を確保することができず 壊滅した23師団のように、日露戦争当時に兵装しかもっていない部隊を国境ラインに配備せざるをえず、かつ、運用してしまった ・当時の関東軍は、スターリンを見誤っていた。スターリンは病的なほど臆病な男であり、書面に書いたことでも、実力にて確保できなければ信じることはしなかった。ようは、モンゴルを関東軍に蹂躙させたままで欧州戦線に兵力を転戦することなど考えられなかった ・日本軍の被害を多くしたのは、生きて虜囚の辱めを受けず、である 日露戦争のときは、恥でもなんでもなかった捕虜については、昭和の時代には、民間にまで、捕虜になることは、死ぬより恥ずかしいこととなっていた。 ノモンハンの敗戦は極秘とされ、関連者の処分のために、粛軍人事がおこなわれた 壊滅した23師団の部隊長である、井置栄一中佐に、自決を強要する 井置が自決を行ったため、その死は戦死ではなく、単なる個人の都合による死、このために、恩給が出ることはなく、戦後、残された家族は、赤貧にあえぐこととなる 一方で、辻、服部は、1年余、再び参謀として、マレー戦などを指導していくこととなる。その先にあったのは、ガダルカナルや、インパールと言った兵站を無視した作戦である ソ連が残していた資料を基にしているとはあったが、内容はインタビューが中心であり、ノモンハンが3次にわたる戦争であったにもかかわらずその言及はなかった。 出来得る限り一次資料にあたるとの言もあったが、そのリソースは、主旨をかたるために、偏ったものになってはいなかっただろうか。 現に、ノモンハンは、複数の部隊からなる統合作戦であり、航空機をふくめた一体運用がなされているが、そのことにも言及されていない。 目次 序章 陸の孤島 第1章 関東軍VS.スターリン 第2章 参謀・辻政信 第3章 悲劇の戦場 第4章 責任なき戦い 第5章 失敗の本質 第6章 遺された者たち あとがき いま戦争を語るということ 主要な参考文献 ISBN:9784065168578 出版社:講談社 判型:新書 ページ数:248ページ 定価:900円(本体) 2019年08月20日第1刷発行 2019年09月17日第4刷発行
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ノモンハン事件っていまいち掴みづらい。 もはや、事件レベルではない。 さらにいうと、紛争こえてるし。 ルポを、見てさらにそれを認識した。 張鼓峰事件とのつながりとかがもっと有れば、わかりやすいのか? んー、勉強不足である。
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太平洋戦争とノモンハン事件の結びつきがよく分かった。つまるところ、敵情の過信と戦力の逐次投入が、権力者によって実施されたことが不幸の始まり。絶対悪がたくさんいると思う一方、そうさせた空気は、当該者だけでは作れないだろう。マスコミなどの論調は、果たして正しかったのか、疑問に思う。 ...
太平洋戦争とノモンハン事件の結びつきがよく分かった。つまるところ、敵情の過信と戦力の逐次投入が、権力者によって実施されたことが不幸の始まり。絶対悪がたくさんいると思う一方、そうさせた空気は、当該者だけでは作れないだろう。マスコミなどの論調は、果たして正しかったのか、疑問に思う。 命令に従い、命を落とした人々は、本当に気の毒に思う。しかもそれが、天皇でなく一部の参謀の自己保身から出た命令なら尚更。そして、近畿財務局の自殺の件に触れていることで、形は変われど現代でも似たようなことが起きてると実感させられた。
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偏に第一次世界大戦、第二次世界大戦といっても両手で数えきれないほどの戦いがある。その中の一つの戦争、ノモンハン戦争の理由や舞台裏が書かれている本。 恥ずかしながら聞いたことはあるが、詳しい内容まではこの本を読むまでよく知らなかった。なので、今回知る機会を与えてくれた本書には深く感...
偏に第一次世界大戦、第二次世界大戦といっても両手で数えきれないほどの戦いがある。その中の一つの戦争、ノモンハン戦争の理由や舞台裏が書かれている本。 恥ずかしながら聞いたことはあるが、詳しい内容まではこの本を読むまでよく知らなかった。なので、今回知る機会を与えてくれた本書には深く感謝したい。 辻政信という人物がカギとなって起こした戦争。もしこの戦争の教訓を得ていたら、ガダルカナル島の戦争も真珠湾攻撃もなかったのではないだろうか?家族や村の人たちが知る辻政信と軍関係者が知る辻政信、どちらを信じていいかは戦争書物が焼かれたり、保身を守るために嘘をつく国や軍関係者のためにどちらもわからない。でも、数人の軍関係者の名誉のため評価のためだけに何万人という日本軍やロシア軍、敵軍が戦死、死亡したのは事実である。今は亡き私の祖父(満州、ビルマの戦い)に、もう少し突っ込んで戦争の話を聞いておけばよかったと後悔するばかりだ。彼は、戦争の話はしたくなさそうだったが、戦争の悲劇を次に繋ぐためにももっと話が聞きたかった。 とにかく、もっともっとノモンハン戦争やガダルカナル島の戦い、戦争に関しての書物をもっと読みたいと思わせてくれた本。
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ノモンハン事件に高所と末端の両面から迫ったルポタージュです。 指示に従い善戦したうえでやむを得ず撤退したにも関わらず責任を問われて自決を強要された井置栄一氏のような人物や、生存した兵隊たちが辛い記憶から重い口をなかなか開かないのに対して、多くの犠牲者を出して責任を取るべきだった...
ノモンハン事件に高所と末端の両面から迫ったルポタージュです。 指示に従い善戦したうえでやむを得ず撤退したにも関わらず責任を問われて自決を強要された井置栄一氏のような人物や、生存した兵隊たちが辛い記憶から重い口をなかなか開かないのに対して、多くの犠牲者を出して責任を取るべきだった軍の上層部たちの多くがのうのうと生き延びて、その罪への意識も低く責任転嫁に汲々としていた事実に暗澹としました。 筆者が述べるように、この戦争には後の太平洋戦争での敗因が凝縮されているだけでなく、現在の政府や会社や家庭など、あらゆる組織で起こりうる悲劇が内包されており、戦争の有無にかかわらず社会に生きる誰にとっても、ひとごとで済まされるものではないでしょう。 「ノモンハン事件」という呼称はこの出来事を矮小化しているようにも感じます。
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ノモンハン事件という、まるで1日2日に起きたことのような響きに惑わされていたけれども、これはそんな軽い物じゃない。 司馬遼太郎が坂の上の雲で描いた戦争が、ほとんどそのまま展開されている。日露戦争から30年以上が過ぎているというのに、圧倒的に足りない火力で、昼は塹壕にこもり、日が...
ノモンハン事件という、まるで1日2日に起きたことのような響きに惑わされていたけれども、これはそんな軽い物じゃない。 司馬遼太郎が坂の上の雲で描いた戦争が、ほとんどそのまま展開されている。日露戦争から30年以上が過ぎているというのに、圧倒的に足りない火力で、昼は塹壕にこもり、日が暮れてから白兵で夜襲をかけるという戦法も、日露戦争そのものである。この戦争のことを調べていたから、あのような描き方になったんだろうか。 辻政信という人物を、どう評価したものか、この一冊では判断がつかない。
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ノモンハン関連の本は結構読んでるつもりなので、内容はほぼ理解していたが、テレビの力かNHKの力か、新たな一次証言を拾えているのは素晴らしい。 辻正信の言動やまわりの証言を読んでいるといつも思うのは、頭の良いこと・自分を律する力があること・滅私奉公の精神が横溢していること、イコール...
ノモンハン関連の本は結構読んでるつもりなので、内容はほぼ理解していたが、テレビの力かNHKの力か、新たな一次証言を拾えているのは素晴らしい。 辻正信の言動やまわりの証言を読んでいるといつも思うのは、頭の良いこと・自分を律する力があること・滅私奉公の精神が横溢していること、イコール、リーダーの資質とは全く違う、ということ。人間性は素晴らしい方だったのかもしれないが、絶対にリーダーにすべき人物ではない。
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丁寧な取材に基づいた内容と思う。現場に丸投げし、現場も暴走したのがノモンハン事件。何故当時の軍人は極端に視野が狭いのか。戦術レベルの思考しか出来ず、戦略レベル、政略レベルでものを考えられないのは教育や社会レベルに起因するのか。現代でもそれは当てはまるように感じる。
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ノモンハン事件の実相をえぐる、とまでは行かないが、日本軍の様々なレベルの人がどう関与して紛争がどう推移していったのかが分かる。元々がNHKの番組のための取材ということで、当事者の音声記録に重きを置いているところが目新しい。こうしてみると、軍幹部には太平洋戦争で戦死することなく戦後...
ノモンハン事件の実相をえぐる、とまでは行かないが、日本軍の様々なレベルの人がどう関与して紛争がどう推移していったのかが分かる。元々がNHKの番組のための取材ということで、当事者の音声記録に重きを置いているところが目新しい。こうしてみると、軍幹部には太平洋戦争で戦死することなく戦後も結構生きた人が多いなと思う。
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