アサイラム・ピース の商品レビュー
自分の性質に合っていたのか共感できるところがあったのか、読んでいる間は絶望のぬるま湯に浸かっているみたいで心地良かった。 ストーリーを楽しむためではなく、自分の心を楽しむための読書が出来た気がする。 己の心の有り様によって、世界が異質に変容する瞬間の、その歪さ・不自然さを、精密に...
自分の性質に合っていたのか共感できるところがあったのか、読んでいる間は絶望のぬるま湯に浸かっているみたいで心地良かった。 ストーリーを楽しむためではなく、自分の心を楽しむための読書が出来た気がする。 己の心の有り様によって、世界が異質に変容する瞬間の、その歪さ・不自然さを、精密に繊細に描いているように感じた。 だから幻想的なようでリアルでもある。 ストーリーを楽しむための読書も大好きなんだけど、気分が沈んでいる時はそうではないものを読みたい、そういう時にぴったりの本だった。
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この絶望感と閉塞感、うっすら著者の実体験から来るものかなと推察できたけど、文字に起こすこと、物語にすることが著者を現実世界に引き留めていたと記した後書きに熱くなるものを感じた。人間誰もが抱えうる絶望以上に、物語が辛い現実に抗うための希望になりうるというメッセージに自分は共感してし...
この絶望感と閉塞感、うっすら著者の実体験から来るものかなと推察できたけど、文字に起こすこと、物語にすることが著者を現実世界に引き留めていたと記した後書きに熱くなるものを感じた。人間誰もが抱えうる絶望以上に、物語が辛い現実に抗うための希望になりうるというメッセージに自分は共感してしまう。 著者の抱えた悲しみと現実世界に引き留めた証が時間を超えて書店に小説として並んで共感する人が現れる。大袈裟かもしれないけど、読書の意義を新たに見出したような気がした。
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精神を病み、薬物中毒者でもあった女性の書いた散文なのか短編集なのか、ともかく不穏な1冊。 とっつきにくい本だけれど、精神の不調を体験したことのある人なら『ああ、あの感じね』、って分かるかも知れない。
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短編集14編 閉塞感のある状態,先の見えない不安,ただ死刑かそうでないかの通知を待つ不確かな現在,妄想と願望と現実が混在してただ怯えている. またお城のような豪華な精神病院に囚われている人々を切り取った表題作 読むほどに暗くなるが,今のこの自分も突き詰めてみれば多かれ少なかれこの...
短編集14編 閉塞感のある状態,先の見えない不安,ただ死刑かそうでないかの通知を待つ不確かな現在,妄想と願望と現実が混在してただ怯えている. またお城のような豪華な精神病院に囚われている人々を切り取った表題作 読むほどに暗くなるが,今のこの自分も突き詰めてみれば多かれ少なかれこのような不安を奥底に持っていると気付かされる.
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※このレビューにはネタバレを含みます
表題作が特に好みだった。散りばめられた断片を集めていくうちに全体図が見えてくるのがたまらない。 この静かな絶望と悲しみをたたえた人々の、変わり映えのしない長い一日。壊れてしまっていたり、一歩を踏み出せず停滞するしかない苦しみの檻の中にいて、毎日絶望を繰り返す。まるで時が止まったような錯覚をする。こんな永遠のような日々が何故だかとてつもなく愛おしく思えてくるのが不思議だった。 表題作以外では、圧倒的な権力と対峙している無力な人という構図が印象的で、また別種の絶望感に支配されていた。細部は語られても実際何があったのか、具体的には分からない点が想像を掻き立てる。 全体を通して、登場人物たちにはおそらく愛情が必要なのだと思った。そしてそれを冷静に見つめていた作家のまなざしを感じる。
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I~VIIIの8編からなる連作短編集「アサイラム・ピース」。 「アサイラム・ピースⅣ~Ⅷ」は、後半の4作にあたります。 外界での生活に未練を断ち切れない4人の患者の絶望が描かれています。 一作一作が、頭の中に映像が浮かび上がってくるような見事な情景描写。 例えていうならば、繊細...
I~VIIIの8編からなる連作短編集「アサイラム・ピース」。 「アサイラム・ピースⅣ~Ⅷ」は、後半の4作にあたります。 外界での生活に未練を断ち切れない4人の患者の絶望が描かれています。 一作一作が、頭の中に映像が浮かび上がってくるような見事な情景描写。 例えていうならば、繊細なクリスタルガラスで作られた工芸品。 まぎれもない芸術です。 全ての説話は、最後の数行で描き出される絶望に向かっていくようです。
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「アサイラム・ピース Ⅷ」以降、「終わりはもうそこに」「終わりはない」は良かったが、前半はあまりハマらなかった 読み終えてみれば、全体の構成としては納得できるけれど…… 鬱の描写はリアルだった 脈絡のない神経質さもかなり納得できる ただ実際に鬱状態にあった人、そして私みたいにい...
「アサイラム・ピース Ⅷ」以降、「終わりはもうそこに」「終わりはない」は良かったが、前半はあまりハマらなかった 読み終えてみれば、全体の構成としては納得できるけれど…… 鬱の描写はリアルだった 脈絡のない神経質さもかなり納得できる ただ実際に鬱状態にあった人、そして私みたいにいま鬱が落ち着いている人にとっては、リアルな描写はリアルなだけで、読み物としてはあまり魅力的じゃないのかもしれない 自分の過去の日記を読むぐらい淡々と読んだ あとがきの皆川博子の解説は、ずば抜けて良かった
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「痛んでいるのは脳そのものなのだ」 優しい光が病棟を包む。 鈍く唸る頭の中の機械。 キリキリとーー 不安と絶望で押し潰す。 悶え苦しむ、静謐。 「この世界のどこかに敵がいる。執念深く容赦のない敵が。でも、私はその名を知らない」 ///// 終生ヘロインを常用し、不安...
「痛んでいるのは脳そのものなのだ」 優しい光が病棟を包む。 鈍く唸る頭の中の機械。 キリキリとーー 不安と絶望で押し潰す。 悶え苦しむ、静謐。 「この世界のどこかに敵がいる。執念深く容赦のない敵が。でも、私はその名を知らない」 ///// 終生ヘロインを常用し、不安と狂気の泥水の中でもう一つのペルソナを文学に掻き付けたアンナ・カヴァンの切実で苦しい、痛みを伴う幻想短編集。 極限の断崖に立ち尽くし、しかしなぜこれがこんなにも美しく惹きつけるのだろう?と困惑する。
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13の短編と表題作。表題作のみ70ページ超だが、これも病院収容にまつわる連作八編で構成され、それぞれが独立したエピソードとして読めるため、実質は21の短編。ボリュームとしては一話平均で10ページを切る短さ。 全体に強い閉塞感と孤独を漂わせる夢のような物語が集められている。主人公...
13の短編と表題作。表題作のみ70ページ超だが、これも病院収容にまつわる連作八編で構成され、それぞれが独立したエピソードとして読めるため、実質は21の短編。ボリュームとしては一話平均で10ページを切る短さ。 全体に強い閉塞感と孤独を漂わせる夢のような物語が集められている。主人公の被害妄想じみた内面を描いた作品も少なくない。表題作に限らず、全編を通して「アサイラム・ピース」をテーマに創作したと言われても違和感はない。やや寓話的で不条理な作風からは、カフカの小説も連想させられる。それぞれが自立した作品として完成しているというより、アイデアにある程度肉付けをした、構想の過程のようにも受け取れる。 第一篇の短編「母斑(アザ)」は、岸本佐知子編訳のアンソロジー『居心地の悪い部屋』にも収められている。ここで本書訳である山田和子氏以外の訳者を持ち出すのも失礼かもしれないが、岸本氏の作品のチョイスがお好みの読者に合う可能性は高い。
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時折、大型書店に行く。 新宿、池袋、八重洲口、神保町など。 新宿の大型書店で、新刊で平積みになっているのを見て、気になって購入した。 奥付は2019年7月10日。 半年以上積読されていて、三日で読了した。 何の予備知識もない作家で、いわばタイトル買い。 レコードのジャケ買いに近かった。 そして、今回は大当たり。(僕にとっては) 収録二編目の「上の世界へ」はカフカの「城」や「審判」を彷彿させる。 不条理とも違う、ハッピーエンドのない世界。 時間を置いて、時々読み返したい。 そして、次には同じ著者の「氷」も読みたい。
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