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「帝国」ロシアの地政学 の商品レビュー

4.3

29件のお客様レビュー

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2024/08/04

ロシアにはロシアの論理がある。 戦前の日本には戦前の日本の論理があったように。しかしそれは、いつの間にか欧米史観に上塗りされ、そこからしか物が見えなくなり、しかも、それこそが正論だと考えたり、あるいは誤りだと気付いても、世の中は既にその普遍的ルールで動いているからと、諦めたりし...

ロシアにはロシアの論理がある。 戦前の日本には戦前の日本の論理があったように。しかしそれは、いつの間にか欧米史観に上塗りされ、そこからしか物が見えなくなり、しかも、それこそが正論だと考えたり、あるいは誤りだと気付いても、世の中は既にその普遍的ルールで動いているからと、諦めたりしている。 2000年に成立したプーチン政権は当初、エリツィン政権末期に悪化した西側諸国との関係改善を掲げ、現在では考えがたいほど、米国に配慮した対外政策をとっていた。たとえば2001年、米国で同時多発テロ事件では、プーチンはアフガニスタンにおける米国の対テロ作戦に協力を表明し、中央アジア諸国への米軍展開を認める方針を打ち出した。「勢力園」である中央アジアへの米軍展開については軍や情報機関からの強い反対があったとされるが、これを政治判断で押し切ったのがプーチンだ。 2004年にバルト三国のNATOおよびEU加盟が決まった際にもロシアは強く反対せず、2006年にはグルジアに駐留していたロシア軍の撤退が一部平和維持部隊を除いて完了した。 変化は2000年代半ば以降。米露関係は次第に悪化していく。米国がロシアの反対を押し切ってイラク戦争に踏み切ったことや、2005年に米国が東欧への弾道ミサイル防衛(MD)システム配備計画を打ち出したことに加え、旧ソ連諸国において相次いだ政変が米国の陰謀によるものであると見るロシアは、米国に対する不信感を募らせていった。ロシアが「勢力圏」とみなすグルジアとウクライナがNATOへの加盟を公然と掲げるようになったことに、ロシアの被害者意識はさらに強まっていた。 西側諸国がロシアを冷戦の敗者とみなし、何かにつけてロシアの政治体制や経済体制に注文をつけてくることもロシアは気に入らなかった。元々ソ連としては冷戦に敗北したという意識は希薄であり、人類の破滅を避けるために、アメリカと成し遂げた共通の成果であると見られていたのだ。 グルジア、バルト三国を巡る歴史からシリア介入、北方領土問題まで、歴史を紐解きながら、ロシア側の論理を解読する本書は秀逸である。また、中国との関係性、北極エリアまで話は及ぶ。それだけロシアが複雑で広く、影響力を維持しながら注目されてきた由でもある。ウクライナ情勢を理解するためにも読むべき一冊ではないだろうか。

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2023/12/08

ロシアの主権や勢力圏に対する考え方に触れられるいい本だった。 ロシアなりのロジックを理解する助けになった。 (無論、ロシアのロジックは国際的な標準とは程遠いものだが……)

Posted byブクログ

2023/04/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2019年7月発行。コロナ禍とウクライナ侵攻前というと隔世の感が出てきた今日この頃(2023年4月)ですが、ロシアという国がどういった思想によって政治を行っているのかがよく分かる良書だと思います。 バルト三国やウクライナとの関係についてはここ最近よく取り沙汰されているので馴染みがありましたが、中東とロシア、北方領土、北極についてはまだまだ不勉強、というか北極を巡る攻防は初めて知りました。北極を中心にした地図を見ると不安が募ります。 ***************************************** 本書とはあまり関係がありませんが、バルト三国というとチャペック『オランダ絵図』の「小さな民族」の冒頭、ラトヴィア人の若者の「どの言語で仕事をしていくべきなのか」という苦悩を思い出します。バルト三国は、今まさにロシアから離れていこうとしていますね。

Posted byブクログ

2023/03/21

とても面白かった。 私にとっては馴染みのない分野の書籍だったが、読みやすかった。 大国ロシアの国家戦略を簡単には理解することはできないが、ひとりの日本人学者の視点を通して、ロシアの一端を理解させてくれる。 物事に対しての認識や、優先事項の異なる国家と国家との関係を良好に保つために...

とても面白かった。 私にとっては馴染みのない分野の書籍だったが、読みやすかった。 大国ロシアの国家戦略を簡単には理解することはできないが、ひとりの日本人学者の視点を通して、ロシアの一端を理解させてくれる。 物事に対しての認識や、優先事項の異なる国家と国家との関係を良好に保つためには、相手への想像力を大切にしながら、愚直にコミュニケーションをとりつづけなければならないと感じた。

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2023/02/15

日本は日米安全保障条約体制にあるのでロシアから見たら「半主権国家」としか見做されていない。 旧ソ連構成国も同様に主権国家ではなくロシアが主権を持ってるものなんだと思っている。 シンプルに書いてしまいましたがそのような考えを持っているんだということがよく理解できました。

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2022/12/03

2016年にプーチンとロシア軍について著した二冊によって新進気鋭の専門家として認知された筆者が今をときめくウクライナシリーズともいうべき論説を展開し始めた一冊。クリミア併呑、ドンパス侵攻に言及するのはもとより、そこまでに至るロシアにとっての「必然性」に関し幾つかの異なる角度から論...

2016年にプーチンとロシア軍について著した二冊によって新進気鋭の専門家として認知された筆者が今をときめくウクライナシリーズともいうべき論説を展開し始めた一冊。クリミア併呑、ドンパス侵攻に言及するのはもとより、そこまでに至るロシアにとっての「必然性」に関し幾つかの異なる角度から論考するお馴染みのパターンがもう確立している。本書では一見関連がなさそうな中東介入と北極戦略に関する二章が目を引く。

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2022/11/29

ジョージアが「ロシアとの紛争を抱えている限り、集団防衛機構であるNATOはロシアとの戦争を避けるために加盟を認めることはできない」 ウクライナが「ロシアとの終わらない紛争を抱えているということは、当面はNATO加盟が不可能になる」 「戦争状況を継続させることそのものがロシアの目標...

ジョージアが「ロシアとの紛争を抱えている限り、集団防衛機構であるNATOはロシアとの戦争を避けるために加盟を認めることはできない」 ウクライナが「ロシアとの終わらない紛争を抱えているということは、当面はNATO加盟が不可能になる」 「戦争状況を継続させることそのものがロシアの目標であると考えられよう」 「ロシアにとって重要なのは、旧ソ連諸国に対して介入を行う際、西側がそこに横槍を入れてこないよう抑止しておくことである」

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2022/10/31

「境界」の概念を軸として、ロシアの地政学的戦略を解説。現在のロシアによるウクライナ侵攻前に出版された本だが、今に至るロシア(プーチン政権)の国際秩序等についての考え方(浸透膜のような境界観、「勢力圏」の論理など)について理解が深まった。 安倍政権下の北方領土交渉における日本の考え...

「境界」の概念を軸として、ロシアの地政学的戦略を解説。現在のロシアによるウクライナ侵攻前に出版された本だが、今に至るロシア(プーチン政権)の国際秩序等についての考え方(浸透膜のような境界観、「勢力圏」の論理など)について理解が深まった。 安倍政権下の北方領土交渉における日本の考え方がいかに甘々だったかも再認識した。日本はロシアから「半主権国家」とみなされてるというのは納得感があった。

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2022/10/29

わかりやすい言葉で、多くのことを知りました。温暖化による北極圏の氷が溶ける、といったことも勢力圏に関係してくるとは。

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2022/10/07

イズムィコ先生の代表作。ロシアの対外戦略を勢力圏をキーに読み解きます。勢力圏の概念自体は19世紀や20世紀には存在して今も根底にはあるのでしょうが、それを武力で公然とは主張しないというのが国連時代のルールなんじゃないのかなとは思うわけで。そもそも過去の最大領土を元に現在の勢力圏拡...

イズムィコ先生の代表作。ロシアの対外戦略を勢力圏をキーに読み解きます。勢力圏の概念自体は19世紀や20世紀には存在して今も根底にはあるのでしょうが、それを武力で公然とは主張しないというのが国連時代のルールなんじゃないのかなとは思うわけで。そもそも過去の最大領土を元に現在の勢力圏拡大していこうっていうのは、一度も負けたことの無い国の我儘でしかない気がします。

Posted byブクログ