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「帝国」ロシアの地政学 の商品レビュー

4.3

29件のお客様レビュー

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2022/08/19

プーチン大統領の頭の中を知りたい、西側の理論ではなくロシアの立場に立った時の見方を知るべきではないか、と思って何冊かの本を読んでいます。いくつかの発見はありました。例えば ・2007年2月のプーチン氏の演説は民主主義を標榜する西側の論理?のみが唯一の正義と見なされることに対する反...

プーチン大統領の頭の中を知りたい、西側の理論ではなくロシアの立場に立った時の見方を知るべきではないか、と思って何冊かの本を読んでいます。いくつかの発見はありました。例えば ・2007年2月のプーチン氏の演説は民主主義を標榜する西側の論理?のみが唯一の正義と見なされることに対する反論。 ・クリミア侵略についての考え方としてクリミアはロシアと(ロシアの一部であるところの)ウクライナの共有財産であり地域安定のための重要なファクターなので強く安定した主権(ロシア)の下になければならない。 ・他国に依存せず「自由」=自己決定権を自らの力で保持できる国だけがプーチン大統領の言う「主権国家」であり、この要件には軍事力(核保有含む)が含まれており、この能力を持たない旧ソ連諸国(ドイツも日本も)は真の「主権国家」ではないと見なされる。 ・ロシア、中国にとって不安定で巨大な国家を統治する上で不可欠な体制が権威主義体制なのであり安易な民主化は国家の崩壊を招きかねないと見なされている。 プーチンにとっての言葉の定義(自由、主権国家など)は私達=西側とかなり違うことを再認識しましたが、プーチンは「国家」を優先する余りその中にいる「人」への優先順位が低くならざるを得ないのかと感じました。

Posted byブクログ

2022/05/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本書は、身勝手にみえるロシアの行動の論理を理解するための材料を提供してくれる。我々とは違う国境観・主権観について説明し、ジョージア (本書では「グルジア」) やバルト三国、2014年のウクライナ危機、中東介入、日本の北方領土の実効支配、北極政策といった事例を解説しながら、その思想の説明を補足していく構成になっている。 ロシアの「主権」観は、自由民主主義陣営に生きる我々とは異なっている。我々は、国境ははっきりと定まったものであり、各国がその範囲において不可侵な主権を持つという現代的な価値観を共有している。しかしロシアの考える国境は、本書が半透膜に例えるように、近代以前の国家像に近い曖昧なものであり、ロシア民族の広がりにより伸び縮みする。 ロシアの考える「主権」は、ロシアやアメリカ、インド、中国など、独立した大国のみが持つものである (ドイツや日本すら主権国家とはみなされていない)。ソ連崩壊直後はアメリカによる一極世界だったが、現在は、そうした「主権国家」がそれぞれ勢力圏を従えている多極世界になりつつある。そしてロシアは、自らが主権の危機にあると考えている。 まず、国家のアイデンティティが曖昧になってしまった。ソ連の持っていた共産主義というアイデンティティは失われてしまい、かつ (「ほとんど我々」であるウクライナ人などを含む) ロシア民族が分断されてしまった。 そして、ロシアの勢力圏は次々にロシアの影響から外れていっている。その主な原因は民主化革命だが、ロシアはこれをアメリカ陣営の陰謀とも捉えており、これを防ぐことはロシアの「主権」侵害への正当防衛であると考えている。 本書は、このような理解をベースに、各事例をわかりやすく説明していく。時にエッセイ風の雑談を差し込みながら容易な口調で綴っていく文体で、とても読みやすかった。また、今後の見通しや現行政策の是非などについての筆者の意見も含まれており、興味深いものであった。特に、日本国民にとって重要な (とはいえ本書のいうとおり、ロシアにとっては広大な領土の一面に過ぎないことに注意すべき) 北方領土問題については、筆者の訪問体験から政策への意見に至るまで詳しめに書かれており、面白かった。類書と比べても読みやすく、おすすめできる一冊である。

Posted byブクログ

2022/05/15

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻については「プーチンは頭おかしいんじゃないの?」と思ったが、本書を読むことでここに至るまでの経緯を知ることができた。 本書は、著者がこれまで発表してきた論文等を加筆・修正したものを主体としているが、非常にわかりやすい内容となっている。 以下(...

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻については「プーチンは頭おかしいんじゃないの?」と思ったが、本書を読むことでここに至るまでの経緯を知ることができた。 本書は、著者がこれまで発表してきた論文等を加筆・修正したものを主体としているが、非常にわかりやすい内容となっている。 以下(本書からの抜粋)を知るだけでも今後の世界情勢を理解する上で極めて有用。 ①旧ソ連諸国はロシアにとっての勢力圏であり、NATOのような外部勢力が旧ソ連諸国に拡大してくることは阻止されなければならない。 ➁ロシアは、より弱体な国々の主権を制限しうる「主権国家(大国)」である(プーチンはドイツでさえも「主権国家」でないとしている、日本については推して知るべし!)。 ③ロシアにとってウクライナはベラルーシと並ぶ「スラブの兄弟」、「ほとんど、我々」。 ④元々ソ連としては冷戦に敗北したという意識は希薄であり、むしろ冷戦の終結は、人類の破滅を避けるために米国と成し遂げた「共通の成果」であると見られていた。 ⑤ロシアが「勢力圏」とみなすグルジアとウクライナがNATOへの加盟を公然と掲げるようになったことに、ロシアの被害者意識はさらに強まっていた。 必読書!

Posted byブクログ

2022/05/15

ロシアのウクライナ侵攻前に書かれたものだが、ロシアの考える勢力圏、主権というのが、よくわかった。到底受け入れられるものではないが、彼らの理屈からいくと、直近の北欧のNATO加盟などで更に態度を硬化していくのだろう。お互いの主張が真っ向から対立する妥協点が見いだせない泥沼の状況を解...

ロシアのウクライナ侵攻前に書かれたものだが、ロシアの考える勢力圏、主権というのが、よくわかった。到底受け入れられるものではないが、彼らの理屈からいくと、直近の北欧のNATO加盟などで更に態度を硬化していくのだろう。お互いの主張が真っ向から対立する妥協点が見いだせない泥沼の状況を解決できるやり方があるのだろうか。。。

Posted byブクログ

2022/05/13

ロシア政権が大国を維持しようとする思惑を転換できずに侵略という愚行へと決断する過程が、周辺国への体裁や意地を絡めて読み解いていく。置き去りにされるのは市井の人々であり権力は命の尊厳を躊躇わず踏みにじっていく。現在のウクライナ情勢しかり、何が急務なのか。様々な意見が飛び交う中、決し...

ロシア政権が大国を維持しようとする思惑を転換できずに侵略という愚行へと決断する過程が、周辺国への体裁や意地を絡めて読み解いていく。置き去りにされるのは市井の人々であり権力は命の尊厳を躊躇わず踏みにじっていく。現在のウクライナ情勢しかり、何が急務なのか。様々な意見が飛び交う中、決して突き進んではいけないのは軍事力強化への道である。これは一部の人々の自己満足にとどまる。そうではなく外交努力に邁進することを願う。日本政府の不得手な手段なのだが。

Posted byブクログ

2022/05/04

ロシアの地政学的な理解から今の状況を理解出来るが、こんな身勝手な理解を持つ国とは。国民一般の理解もこのようなものなのか。身の丈に合わない故に粗暴になっている様に見えてしまう今のロシアだが、納得出来る。

Posted byブクログ

2022/04/24

ロシア目線での世界観がよくわかる1冊。 2022年のウクライナ侵攻は唐突感があると思っていたが、ロシア側の理屈の上では、いつ起きてもおかしくなかったことも理解できた。

Posted byブクログ

2022/04/16

プーチンロシアの対外政策を、同国の国家観を踏まえて軍事的な話題を中心に考察した本 著者は小泉悠氏。ロシアのウクライナ侵攻により、今メディアで最も私達が目にしている人である。 ロシアの軍事、安全保障が専門。現在は東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野、...

プーチンロシアの対外政策を、同国の国家観を踏まえて軍事的な話題を中心に考察した本 著者は小泉悠氏。ロシアのウクライナ侵攻により、今メディアで最も私達が目にしている人である。 ロシアの軍事、安全保障が専門。現在は東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野、専任講師。 出版は2019年。 本書において、ロシアとの関係で考察されている国はウクライナや日本(北方領土)をはじめ、シリア、ジョージア(著者は自身の意向でグルジアと記載)、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、北極。 今まさに世界的関心事のウクライナ侵攻、そして北方領土について、ロシアの政策や論理を知りたくて本書を手に取った。 軍事的な突っ込んだ記述も一部ありイメージできないところもあったが、基本的には非専門家でもわかりやすいように書かれており読みやすい。 ここではウクライナのことをご紹介します。 まずウクライナの基本的な情報として •旧ソ連国 •広い国土、多い人口。旧ソ連指折りの重工業地帯と農業地帯 •ロシアとの密接な関わり。天然ガスの供給、パイプラインの通行料。多くの工業製品、農産物をロシアへ輸出。軍需産業は旧ソ連時代に築かれたソ連とのサプライチェーンに依存。ヒトモノカネの往来活発 がある。 またロシアにとってウクライナは、ベラルーシとともにスラブの兄弟で、「ほとんど我々」「同胞」という認識がある。 そしてロシアの対外政策を読み解く上で、ロシアの主権観ともいうべきものが重要で、それは •ごく一部の大国のみが保持できるもの •政治•軍事同盟に頼る国は完全な主権を発揮できない •旧ソ連諸国は主権国家ではなく、ロシアの影響下におかれるのは当然 だという。 「ドイツは主権国家ではない」とのプーチンの驚くべき発言もある。 またプーチンの国家観を想像させるものとして、ロシア語の前置詞が紹介された。ロシア語には場所を意味する前置詞に「ヴ」と「ナ」があり、普通国名は「ヴ」を使うのだが、プーチンは独立国であるウクライナに対してすべて「ナ」を使う、と。 ウクライナは独立後、EUやNATO加盟を目指す(憲法にも明記)など西側諸国に近づいていったが、ロシアにとって、そんな「我々の」ウクライナの行動はとうてい容認できるものではないのだろう。 本書を読んで改めて思った。 一方で、ロシアの「対外政策には思想的要素と実利的要素、戦略的思考と場当たり主義の相克」があると述べられている。 場当たり主義、確かに。 今回のウクライナ侵攻におけるロシアの動機や目的は、連日の専門家の分析によりある程度理解できたところも多いが、そもそも「なぜ今このタイミングで侵攻?」などの基本的なことでわからないことが多かった。 そのわからなさに関しては、私は独裁的な国家体制かつプーチンの性格•精神状態によるところが大きいと思っていたが、ロシアの政策としてそういう場当たり主義的なところがあるのであれば、納得できる(もちろん自分が見逃している事実や視点もあるだろう)。 北方領土問題…こちらも解決の道のりは非常に険しい。これまで以上につくづくそう思った。

Posted byブクログ

2022/04/10

小泉悠さんの著作。ストーリーとしてよく組み立てられていて、北方領土訪問の導入は成功だと思う。読み始める前はやや警戒していたがどんどん読み進めてしまった。 西欧近代がいわゆる「モダン」であり、国民国家をベースとして組み立てられてられているのに対し、ロシアは融通無碍でロシア人がいると...

小泉悠さんの著作。ストーリーとしてよく組み立てられていて、北方領土訪問の導入は成功だと思う。読み始める前はやや警戒していたがどんどん読み進めてしまった。 西欧近代がいわゆる「モダン」であり、国民国家をベースとして組み立てられてられているのに対し、ロシアは融通無碍でロシア人がいるところが「ロシア」であるといういわゆる「帝国」概念に基づいている。その中でも、ウクライナ、ベラルーシ、ジョージア(著者はグルジアと呼ぶ)は特に重要な国=地域でその国々が独立して西欧的な国民国家になるのは「帝国」を脅かす脅威と認識される。 ただこの考え方はあくまで権力者目線だと思うわけで、結局モスクワ、サンクトペテルブルクの市民もマクドナルドやコカコーラに代表される西欧文化を満喫していたことからも分かるように、別にロシアなるものは鬱屈した権力者や弱者のアイデンティティを慰める概念でしかないんだと思う。そんなことより、ロシアは地方に目を向けて全国民的に真の意味で豊かになれば、別にウクライナだって反発はしないだろうし、日本だってそこまで警戒はしない。要はそういうことなんだと思うので、プーチンには仮想現実的世界にでも引きこもっていただいて、その世界で自由にやってもらいたい。その意味でメタバースの発展は世界を救うかもしれず、一刻も早い進化が待ち望まれる。

Posted byブクログ

2022/03/10

受け入れられるかどうかは別として、ソ連時代を含めたロシアのイデオロギーや周辺諸国に対する考え方、そして西側諸国に対する見方など理解することが出来た。 それと同時に、個人的なレベルは別として、ロシアをはじめとする権威主義的な国家と国同士で分かり合える事は無いのだろうと、絶望的になっ...

受け入れられるかどうかは別として、ソ連時代を含めたロシアのイデオロギーや周辺諸国に対する考え方、そして西側諸国に対する見方など理解することが出来た。 それと同時に、個人的なレベルは別として、ロシアをはじめとする権威主義的な国家と国同士で分かり合える事は無いのだろうと、絶望的になった。 今起きているウクライナ侵攻はロシアにとって必然であり、さらには日本にとって懸案事項である北方領土返還など、実現する事はないだろうと思わされた。

Posted byブクログ