〔少女庭国〕 の商品レビュー
何かの記録文書を読んでいるかのような気分になった。 様々な考察ができるのかもしれないが、自分はこの本の独特な雰囲気が楽しめたのでそれでいいかな、と思う。
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女の子が閉鎖空間に閉じ込められるサバイバルゲームものかと思いきや、そう単純には行かず、思いもよらない方向へと進んでいく。 設定があまりに異質なのと、キャラクターの名前の適当さのためか、悪趣味な仮想空間を観察させられているような気分になる。
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色々な意味で問題作だよなぁ、と思う。少女庭国にしろ、補遺にしろ。表題作は短くて、むしろ補遺が本番って感じ。 生活の描写が出てきた後に、それについて詳しい解説がなされるのは、報告書を読んでいるような気分で不思議な感じがする。それがなぜか、っていうのは、読み進めていくと、ああ意図...
色々な意味で問題作だよなぁ、と思う。少女庭国にしろ、補遺にしろ。表題作は短くて、むしろ補遺が本番って感じ。 生活の描写が出てきた後に、それについて詳しい解説がなされるのは、報告書を読んでいるような気分で不思議な感じがする。それがなぜか、っていうのは、読み進めていくと、ああ意図的だったんだな…って分かった。 壮大なエピソード集(短編集とは違う。叙事詩が近いかな…?)って感じなんだけど、百合として読むのにもSFとして読むのにも、どちらにも明確な結論みたいなものが用意されてなくて、ちょっと消化不良な感じが残る。風呂敷広げるだけ広げて、放ったらかして次を広げるみたいな。ただ、オチは余韻があって…というか、この一連の物語に唯一意味が生まれたと言えるような関係性が育まれていて、良かった。むしろもう最後のエピソードだけでいいと思う。 SFというジャンルは、ストーリーの面白さのみならず、舞台設定でどれだけ魅せるかという点も重要なジャンルだと思っている。その点、本作の作り上げた世界は斬新であると思う一方、今一歩自分はそれを面白く見ることはできなかった。 また、ありがちなバトルロイヤルものに対する、豊富なバリエーションの思考実験を試みた小説でもあるのかな、という風に読める部分もあって、そこは面白かった。
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これは、百合なのか…SFなのか…?と考えてしまうがたしかに百合だしSFなんだなぁ、という感想に困る不思議。 卒業式に向かう中3女子生徒は気がつくと白い四角い部屋にいて2つのドアがあった。少女庭国は結構コミカルに進むが、補遺はひたすらに同じ境遇の女子生徒の物語を羅列している。カニバリズムとか、他に食べ物がないから仕方ないけどあっさりやっててビビる。まぁ無限に起きる女子生徒のうちの1つだしね。過去方向の扉を壊した時は革命かと思ったが、先も後も同じなんだよね。老いたロジ子とか、戻った生徒は無事なのだろうか。
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【不条理?道理?ありえない?おそろしい、、、】 これから長く続くであろうとクリーム色のページをまた1Pめくっていたあなたは気がつくと壮絶な「教科書」「史記」「申し送り事項」「伝説」「とんち」「過去と未来」「エトセトラ」を読んでいた。 顔の前に本があり、月か太陽か蛍光灯か、ぼんやり周囲の明るさを感じ、ほんの微かでも何も匂わなかった。腕時計はしていなくて、何をするにも中途半端な時間だということは感覚的にわかっていた。まぶたの上から眼球をもみほぐし、体を伸ばして頭に触れた。知っている自分の、でもこんなのだったけなという髪質で、読んでいる間に体が緊張していたことに気づいた。
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ハヤカワ文庫の百合SFフェアに伴い、早川書房の単行本から文庫化された作品。 とある女学院の卒業生である少女は、卒業式が行われる講堂へ向かう途中、気付くとうす暗い部屋に寝かされていた。その部屋にはドアが二つあるばかりで、一方のドアにはドアノブがなく、もう一方のドアには張り紙がさ...
ハヤカワ文庫の百合SFフェアに伴い、早川書房の単行本から文庫化された作品。 とある女学院の卒業生である少女は、卒業式が行われる講堂へ向かう途中、気付くとうす暗い部屋に寝かされていた。その部屋にはドアが二つあるばかりで、一方のドアにはドアノブがなく、もう一方のドアには張り紙がされていた。張り紙には「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」と書かれている。つまり卒業生の寝ている部屋が次々と続いており、ドアを開放することで、2人の少女が目覚めたならば1人が、5人の少女が目覚めたならば4人が死ななければその空間から脱出できないというのである。 100頁に満たない短編「少女庭国」はそのような状況で目覚めた13人の少女が、互いに殺し会うのか、それとも別の選択をするのかといった物語である。この物語の結末は気持ちのよいものとは言えないかもしれないが、心に響く良い結末だったと私は感じた。 しかし圧巻なのはこのあとに続く「少女庭国補遺」である。例えば先ほどの状況で12人が死に1人が生き残った場合、13人目の次の部屋で眠っていた14人目の少女が、また1人目として目覚める。そのように無限に空間が続いていくのだ。 そしてこのような状況設定の中で、どのようなことが起こりうるのか網羅的に語られるのが「少女庭国補遺」なのだ。少数人数で話し合うか殺しあうかして、1人を選ぶのが基本的なパターンだが、時として国が成立することもある。当然構成員のすべてが少女となるため、帯に書かれているとおり「百合SF建国史」が描かれることになる。 限定的な状況のなかでどこまで可能性は広がるのか、想像力の極地を体験してほしい。しかし、食糧もない空間での生き残りとなるため、必然的にグロテスクな描写がかなりの頻度で登場する。苦手な方は注意されたし。
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Jコレクションが刊行された時から、何となく気にはなっていた1冊。文庫になったのでいそいそと購入した。 設定……というか、物語の冒頭自体はさほど珍しいものではない。所謂『●●すれば、×人だけ脱出出来る』という、『デスゲーム』ものと呼ばれるジャンルのお約束を踏襲している。しかし殺し合いが始まるのかというとそうではなく、登場人物の人数が増えるに従って記号的な要素を増してゆく。描写の多寡はあれど、『補遺』に至っては完全に『記号』だと言えるのではないか。 さて、『デスゲーム』と言うからには、何らかの形で、脱出するなり、死ぬなり、場が破綻するなり、いずれにせよ、その世界が永劫に続くわけではない……というオチを想像する読者が大半だと思う。が、本書は『デスゲーム』としての『ラスト』を迎えることはない。ひょっとすると、この『〔少女庭国〕 』という小説自体も、本当の意味で『終わり』を迎えることはないのでは……?
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卒業式会場へ続く通路を歩いていた少女は、ふと暗い石造りの部屋で目覚める。この部屋には二つの扉があり、片方にしかドアノブがない。ドアには以下のような文面の張り紙がある。「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ」。扉を開けると次の部屋にも少女...
卒業式会場へ続く通路を歩いていた少女は、ふと暗い石造りの部屋で目覚める。この部屋には二つの扉があり、片方にしかドアノブがない。ドアには以下のような文面の張り紙がある。「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ」。扉を開けると次の部屋にも少女がおり、張り紙があり、また次の部屋にも少女がいる。 このシンプルな条件から、どんな物語を想像するだろう。この物語は、おそらくその想像の通りには全くならない。 異常な世界に突如放り込まれた少女たちの思考と行動はリアル。羅列された「生命行動」はデスゲーム系への否定的命題を投げかけるし、それは「物語」というもの自体に対してまで波及する。 クローズサークル化での卒業試験は、世界のルールであり、この物語の上ではそれ以上の何も表していない。だからこそラストの展開はどこか理不尽な世界への一つの答のような気がしてくる。 この理不尽で広大な密室は、我々が住む世界と本質的にどれほど違うのだろうか。そんなことを想う。
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