真実の終わり の商品レビュー
毎日新聞2019623掲載 評者: 池澤夏樹(作家) 朝日新聞2019727掲載 評者: 西崎文子(東京大学教授・アメリカ政治外交史) 毎日新聞20191215掲載 評者: 沼野充義(東京大学教授・スラブ文学) 日経新聞2020111掲載 評者: 渡辺靖(慶應義塾大学教授) 朝日...
毎日新聞2019623掲載 評者: 池澤夏樹(作家) 朝日新聞2019727掲載 評者: 西崎文子(東京大学教授・アメリカ政治外交史) 毎日新聞20191215掲載 評者: 沼野充義(東京大学教授・スラブ文学) 日経新聞2020111掲載 評者: 渡辺靖(慶應義塾大学教授) 朝日新聞2021911掲載 評者: 三浦俊章(朝日新聞編集委員)
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トランプ大統領に代表される虚言やフェイクニュースを批判した書籍である。フェイクニュースが存在すること以上に、虚言やフェイクニュースが非難されずに受け入れられていることが問題である。現実に2019年の台風19号で二子玉川が浸水したが、住民団体「二子玉川の環境と安全を考える会」が多摩...
トランプ大統領に代表される虚言やフェイクニュースを批判した書籍である。フェイクニュースが存在すること以上に、虚言やフェイクニュースが非難されずに受け入れられていることが問題である。現実に2019年の台風19号で二子玉川が浸水したが、住民団体「二子玉川の環境と安全を考える会」が多摩川氾濫後にWebサイトを削除したとのフェイクニュースも流布された(林田力「台風19号の多摩川氾濫と住民運動へのフェイクニュース」ALIS 2019年10月14日)。 本書は、この背景としてポストモダニズムがあり、右派メディアとソーシャルメディアが加速させたと分析する。これに対抗するためには、教育と自由な報道が必要と主張する。ポストモダニズムの相対主義が背景になっているとの分析には同意する。 しかし、絶対的な権威の押し付けに対抗するためにポストモダニズムは有用である。20世紀的リベラル価値観は相対化してはならないという主張は御都合主義になるだろう。むしろ、21世紀を多く生きている世代にとって20世紀の価値観押し付けが息苦しさの原因になっており、その反感があることを直視しなければならない。20世紀的リベラル価値観の押し付けは反感を強めるだけである。 右派的なフェイクに対抗するためには虐げられた個人の立場に立ったポストモダニズムの相対主義を徹底することと考える。全体最適や目の前の問題の解決という名目で個人に負担や我慢を押し付けることを正当化しない。これを許してしまうと、例えば不法移民を規制するために何をやっても良いということになる。これに左派リベラルは、あまり有効に対抗できていないが、それは左派にも公共の福祉などの全体最適思考が強いためである。
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著者は1955年生まれの日系アメリカ人二世。長くニューヨークタイムズ紙上で書評を担当。批評部門のピューリッツァー賞受賞者。ドナルド・トランプと彼を登場させたアメリカの現実について舌鋒鋭い議論が展開される。ウソつきの恥知らずのトランプに対する批判は、それ自体むちゃくちゃ小気味よいが...
著者は1955年生まれの日系アメリカ人二世。長くニューヨークタイムズ紙上で書評を担当。批評部門のピューリッツァー賞受賞者。ドナルド・トランプと彼を登場させたアメリカの現実について舌鋒鋭い議論が展開される。ウソつきの恥知らずのトランプに対する批判は、それ自体むちゃくちゃ小気味よいが、問題はそういう人物を担ぎ上げ、今なお支持を続ける人々がアメリカの半分近くいること。そして同じようなことが近年日本でも起こっていることは改めていうまでも無い。アベ、スガに続いてどのウソつきが次の政権を握るのか未だ不明だが、いつまでもウソつきの恥知らず集団の中で椅子取りゲームが続いているのが日本の悲劇。今や共産党が一番まともな市民政党に見える。
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この本を読み終わった時、トランプの大統領就任が後々歴史を振り返ってみた時に、大きなターニングポイントだったと思ってしまうような(悪い意味で)事にならないようにと祈りたくなった。 ファクトをフェイクだと力技で捻じ曲げ、ロシアのトロールの暗躍させた事の影響は、アメリカ一国の事だけにお...
この本を読み終わった時、トランプの大統領就任が後々歴史を振り返ってみた時に、大きなターニングポイントだったと思ってしまうような(悪い意味で)事にならないようにと祈りたくなった。 ファクトをフェイクだと力技で捻じ曲げ、ロシアのトロールの暗躍させた事の影響は、アメリカ一国の事だけにおさまらないだろう。 バイデン大統領以後世界はどうなるか。。。
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市民は政策決定に参加できなければならず、戦争は悪であり、人権は守られなければならない。そのためには民主主義が最善の政体で、それには有権者が正しい情報を得ることが前提である。よって嘘をばら撒いて権力を手中にしたトランプは許せない。 ...ナイーブ。お花畑。幼稚。 有権者はトラン...
市民は政策決定に参加できなければならず、戦争は悪であり、人権は守られなければならない。そのためには民主主義が最善の政体で、それには有権者が正しい情報を得ることが前提である。よって嘘をばら撒いて権力を手中にしたトランプは許せない。 ...ナイーブ。お花畑。幼稚。 有権者はトランプを支持しているのではない。 作文でメシが食べられる結構なご身分でありながら、自分たちの生活基盤を支えている共同体を「古臭いナショナリズム」と見下し、上から目線でご高説を垂れ流すだけでなく、犯罪集団に近いノイジーマイノリティーばかりを擁護する「リベラル」にNOを突きつけたのである。 自分たちの誤りについては一言の反省、自己批判もなく、「ロシアが悪い、政治家が悪い、批判精神に欠ける国民が悪い、自分たち高尚なリベラルは悪くない、間違っていない。...」 ロシアが悪いというなら共産革命を支持したのは誰だったのか。「国民」の分断を嘆きながら、移民が反感を買うようなハッピーホリデーを提唱したのは誰なのか。マイノリティの権利を認めるのは当然だが、ポリコレ棒を振りかざして多様な表現を「攻撃」しているのは誰なのか。 ...「図に乗りすぎた」ことに気がつかないのか。 人間、普通に生活していれば世界は理不尽であり、理想は夢物語でしかないことなどいくらでも思い知るはずだ。 その中で意地を通して袋叩きや嫌がらせにあい、理想が決して万人の共通理念ではないことを知り、妥協したり、「敵の敵」と手を組んだり、あるいは声を上げずに泣き寝入りしたり、見ないふりをしてやり過ごしたりする、弱く、卑怯で、見苦しく、その中でまれに高潔で勇敢になるのが現実の人間で、その人間の支持を集めて社会を運営するのが政治である。 有権者の支持に立脚する政治は、当然ポピュリズムに始まる独裁の危険をはらんでおり、そのために三権分立や権力チェックのしくみがある。 そして、チェックが正しく機能するためには「公正な」教育、「正しい」科学的知識、「事実」としての情報提供が必要なのだが、教育、科学、報道自身の公正さは誰が保証するのか。 単なる私企業の分際で「第四の権力」「社会の木鐸」などと自称するマスゴミは、選挙で落とせるチャンスのある政治家以上に信頼できない。科学機関もその性質上、オープンであるがゆえに工作員の侵入と権力掌握を排除しづらい。作家や学者、評論家などはもってのほかだ。 何が正しいかわからない状況(そして本書は、これこそが独裁政治の温床だと警告する)の中で、国民が「世界市民」「地球環境」とかの胡散臭くなってしまった理念にすがり、いとも簡単に敵国に操られる「リベラル」よりも、安全保障と経済政策で「強い」国家を約束する右翼を支持するのは当然の成り行きである。 その約束が嘘であったとしても、リベラルの「敵国など存在しない」という見え透いた嘘を信じて武装解除し降伏「させられる」よりは、下品で暴力的な右翼が主張する「敵国」(少なくとも嘘ではない!)に対抗しようとして騙されるほうがマシなのである。 ただし、著者の主張はリベラルだが、アメリカの建国理念と民主主義を信頼し、ロシアからの工作を警戒している。 決して好きにはなれないが、特亜のゴミの手先である日本のサヨク・リベラルと同一視するのは失礼だとは思う。
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何よりも驚いたのは、ロシアのトロールたちによるメディアへの介入と世論操作の実態である。どうしてロシアがアメリカ大統領選に介入するのか、その意図するところがよくわからなかったが、それは恐ろしい意味を持っていたのである。 トランプ政権のしていることを、同様の手法でわが国に万円させたの...
何よりも驚いたのは、ロシアのトロールたちによるメディアへの介入と世論操作の実態である。どうしてロシアがアメリカ大統領選に介入するのか、その意図するところがよくわからなかったが、それは恐ろしい意味を持っていたのである。 トランプ政権のしていることを、同様の手法でわが国に万円させたのが安倍政権である。国民の一人として、常に「真実はどこにあるのか」ということを見極めていくことを肝に銘じたい。
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最悪の米大統領の嘘、嘲り、脅し、欺瞞の圧倒的な量情報にかき消され、米国の良心が押し流されている。ロシアや中国にもつけ込まれ、それでも自分のためだけに真実に背き、毒を垂れ流す。 こんな世の中から早くまともな状態に戻って欲しいが、トランプが替わっても直ぐには良くならない可能性が高い。...
最悪の米大統領の嘘、嘲り、脅し、欺瞞の圧倒的な量情報にかき消され、米国の良心が押し流されている。ロシアや中国にもつけ込まれ、それでも自分のためだけに真実に背き、毒を垂れ流す。 こんな世の中から早くまともな状態に戻って欲しいが、トランプが替わっても直ぐには良くならない可能性が高い。それでも、トランプが続くよりはマシだ。米国人よ、ベターを目指せ。
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トランプが良いとは当然ながら全く思わないし現状を憂慮しているが、 上から目線で群衆を評し正統派で優等生なことしか言えないリベラル派知識人の態度こそがトランプの台頭を許してることが分からないのだろうか。 人々を糾弾する正義の言葉はなんだか空々しい。 どうすればいいのかは私だって分か...
トランプが良いとは当然ながら全く思わないし現状を憂慮しているが、 上から目線で群衆を評し正統派で優等生なことしか言えないリベラル派知識人の態度こそがトランプの台頭を許してることが分からないのだろうか。 人々を糾弾する正義の言葉はなんだか空々しい。 どうすればいいのかは私だって分からないが、念仏のように民主主義の理念を繰り返して振りかざすだけでは事態は好転しないことだけは分かる。 スペルミスや生活習慣の揶揄などトランプの揚げ足取りとも思える批判なども知性が感じられない。 全体的に読んでいて嫌な気持ちになった。
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トランプ大統領のことを痛烈に批判している。 また、ここに書かれているアメリカの現状は日本にも通じることが多い。 「真実は民主主義の基盤である」はずなのに、その真実が揺らいでいるというか、軽んじられ、絶滅危惧種となってきている。 真実が軽んじられ、感情が理性に取って代わる。そ...
トランプ大統領のことを痛烈に批判している。 また、ここに書かれているアメリカの現状は日本にも通じることが多い。 「真実は民主主義の基盤である」はずなのに、その真実が揺らいでいるというか、軽んじられ、絶滅危惧種となってきている。 真実が軽んじられ、感情が理性に取って代わる。その先にあるのは全体主義的統治ではないか。 そういう危険性がある今の社会で、私たちはどう生きるべきかを考えさせる一冊であると思う。
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フェイクVSファクト、という対立構造で語られることが多くなったトランプ出現後の報道の世界。この対立は民主党VS共和党、とか左翼VS右翼、という旗色がはっきりわかるものではなく、どちらも相手をフェイクとデスっているところがややこしい。つまり、正しい、正しくないという議論では結論が出...
フェイクVSファクト、という対立構造で語られることが多くなったトランプ出現後の報道の世界。この対立は民主党VS共和党、とか左翼VS右翼、という旗色がはっきりわかるものではなく、どちらも相手をフェイクとデスっているところがややこしい。つまり、正しい、正しくないという議論では結論が出ない空しさを世界に定着させてしまっています。 各自が自分の信じたい「真実」だけを「真実」とし、それとは違う「真実」を「フェイク」と呼んで聞く耳を持たないどころか、徹底的に攻撃することが当たり前の時代、それを著者はTHE DEATH OF TRUTH「真実の終わり」と読んでいます。もちろんニュースを捏造するシステムや、それを拡散するシステムは明らかにされているのに、それでもその調査そのものをフェイクと呼ぶ人々の不信感が吹き荒れています。P52で引用される2016年共和党大会でCNNのキャスターがギングスリッジ元下院議長にアメリカが暴力と犯罪に悩まされているという統計をもとにしたインタビューをした際に、ギングスリッジが答えた「政治における候補者として、私は人々が感じていることに同調する。あなたは理論家たちに同意すればいい」という言葉の圧倒的平行線感、つまり論理的思考への拒絶感に恐ろしさを感じました。でもそれが、実はトランプや彼を支えるラストベルトの支持層(あるいはイギリスのBREIXTや、反EUを支持する層)が持ち込んだ物ではなく、そもそも、そのベースはフーコーやデリダやボードリヤールなどによるポストモダンの理論であることを指摘したのが本書の一番の衝撃でした。ポストモダニズムは、人間の知覚から独立して存在する客観的実在を否定し、認識が、階級、人種、ジェンダー等のプリズムによってフィルタリングされているとする理論。うわー、そうかも!ファクトVSフェイクはモダンVSポストモダンの悪夢のようなコピー?ポストモダンが多様性とか多元主義とかポリティカルコレクトネスを生み出して来たとなんとなく信じて来たのに、逆に、その視点が現在の反理性主義を育んでいるという矛盾。本書によって「真実の終わり」時代の理解は進みましたが、その時代を乗り越える、新しい知性への道は?そして「真実の終わり」時代を作っているSNSのこれからは?とりあえず、この本を薦めてくれた人と話たい、と思っています。
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