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庭とエスキース の商品レビュー

4.7

14件のお客様レビュー

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2026/03/09

久々に、本当に読んでよかったなと思える本との出会いだった。 写真家である奥山さんが、ある日取材仕事で出会った「弁造さん」というおじいさんを、弁造さんが79歳から92歳で逝ってしまうまで通い続けて、ひたすら写真に撮り続ける、その日々を綴った本。 読み始めてから最初の間、私はこの作...

久々に、本当に読んでよかったなと思える本との出会いだった。 写真家である奥山さんが、ある日取材仕事で出会った「弁造さん」というおじいさんを、弁造さんが79歳から92歳で逝ってしまうまで通い続けて、ひたすら写真に撮り続ける、その日々を綴った本。 読み始めてから最初の間、私はこの作者の弁造さんへの近づき方に不満があった。 なんかもっと踏み込んでこの人の生に踏み入ってほしい、そんな気持ちをもったのだ。 でも、当たり前だけど、人は人の生にそんなに立ち入れるものではない。 なんだか人の心というか人生はひとつに庭のようだと思った。 実際、弁造さんは自給自足生活のためとても素敵な庭を作っていた。 この本の中には奥山さんがフィルムに収めた弁造さんの庭も出てくるけど、その庭は、私がココで「庭」と描いて表現できそうもないくらい素敵な庭なのだ。 池があって、日本にはあんまりないメープルの木がその圧倒的な透明感で秋を彩り、小鳥たちのためのひまわりの種まで自給自足するような庭。 そんな庭に、奥山さんはお邪魔させてもらう。 人が人の人生に関わるというのも、そういう、庭をお邪魔させてもらうような、そういうものなんじゃないか、と思った。 人は庭を見せてもらったり、お邪魔させてもらうことはできるけど、その庭を勝手に掘り起こしたり、勝手に何かを植えたりはできないし、してはいけない。 奥山さんと弁造さんの関係は、そういう人と人のデリケートで優しくあろうとする部分をギリギリなぞるように進んでいく。 この本を読むと「老いる」ということや「お年寄り」というものへの見方が一変する。 「老いる」ことは「生きる」ことなのであり、「お年寄り」なんていう人は一人もいない。 ずっと絵を書き続け、絵描きになりたいと願いながら、それが叶わなかった弁造さん。 でも、弁造さんが亡くなったあとで、奥山さんは弁造さんにとっての「絵を描く」ということがどういうことだったのかを分かったような気持ちになる。 それは私も知っているかもしれないと思えるもので、人って一生、どんなに年をとってもこういう感じなのかよと絶望する気持ちもありながら、弁造さんというか、人生への愛おしさのようなものがマックスボンバーになる。 弁造さんが収められた「Benzo」という写真集もあるみたい。 今度図書館に行って、めくってみようと思う。 自分の一生でつくる「出会えてよかった本100選」みたいなものがあるとしたら、そこに並べたい一冊。

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2025/09/23

弁造さんの葬儀辺りはちょっと読みにくかった。 写真家が絵描きの老人を写真に撮る。老人は確かに魅力的だけど、なぜ老人?と思いました。 老人の歴史を紐解き「弁造さんの魅力について掘り下げる」宗教観や死生観、自分がこの世からいなくなった時の始末の仕方など、とても参考になる話もありま...

弁造さんの葬儀辺りはちょっと読みにくかった。 写真家が絵描きの老人を写真に撮る。老人は確かに魅力的だけど、なぜ老人?と思いました。 老人の歴史を紐解き「弁造さんの魅力について掘り下げる」宗教観や死生観、自分がこの世からいなくなった時の始末の仕方など、とても参考になる話もありました。 亡くなってしまって、悔しいことはわかりますがラストが同じことを繰り返しているような気がしました。 ブクログピックアップ

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2025/03/03

独自の信念を持って自給自足を実践する弁造さんの暮らし、「生きることとは何か」を彼から見つけようとする著者の嗅覚と長年の取材にただただ圧倒される。特に著者が自分なりの真理を求めて動き、それを言葉として紡ぐ作家としての忍耐と感性には時折息を呑む。後半は「老い」もテーマであるように思う...

独自の信念を持って自給自足を実践する弁造さんの暮らし、「生きることとは何か」を彼から見つけようとする著者の嗅覚と長年の取材にただただ圧倒される。特に著者が自分なりの真理を求めて動き、それを言葉として紡ぐ作家としての忍耐と感性には時折息を呑む。後半は「老い」もテーマであるように思う。ひとり北海道での自給自足生活という厳しい環境を通して生まれた言葉や写真を、歳を重ねて読み返すに違いない。

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2025/01/22

自給自足の庭を作り、死ぬその瞬間まで画家として生きることを教えてくれた弁造さん。 「自給自足は喜び」ということを意識するだけで、なぜ野菜を作りたいか、それは自分が、地球が喜ぶということにシンプルに結びつくのではないかと思った。 画家という夢を追い続け、感情が揺さぶられ何度も描くの...

自給自足の庭を作り、死ぬその瞬間まで画家として生きることを教えてくれた弁造さん。 「自給自足は喜び」ということを意識するだけで、なぜ野菜を作りたいか、それは自分が、地球が喜ぶということにシンプルに結びつくのではないかと思った。 画家という夢を追い続け、感情が揺さぶられ何度も描くのをやめながらも、弁造さんにとって生きる糧だったように思う。

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2024/08/29

写真家の奥山さんが北海道で自給自足をしている弁造さんを14年間撮影し、追いかけた記録。 良かった。いや良すぎた。 もっとずっと読んでいたくて、途中からペースを落として読んだくらい良かった。 何も知らない弁造さんの日々の暮らしの中に、私も入り込んでいるように思えた。 奥山さんの...

写真家の奥山さんが北海道で自給自足をしている弁造さんを14年間撮影し、追いかけた記録。 良かった。いや良すぎた。 もっとずっと読んでいたくて、途中からペースを落として読んだくらい良かった。 何も知らない弁造さんの日々の暮らしの中に、私も入り込んでいるように思えた。 奥山さんの文がとても誠実で美しく、実直に「生きること」を問いかけてくる。 弁造さんとの暮らしで語られるのは、雪虫の話だったり、弁造さんが夢として握りしめてた絵のことだったり、薪割りの話だったり、本当に暮らしの中での些細なエピソードにほかならない。でも、そんな自分ではない誰かの人生を満たしている日々に触れるということは、何かを得るということではなくとも、その人の記憶の中で育まれてきた豊かさを享受するものなのかなと思った。

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2024/06/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

淡々としているけれど、時にきらきらして温かく、「生」を感じる1冊だった。 生きることは、暮らすことなんだと。 暮らすことは、寒い日にストーブを焚いて温まったり、今日一日頑張ったらから乾杯するとか、そんなごくごくシンプルなもので埋めていくこと というフレーズが好き

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2023/09/19

弁造さんとの思い出、人柄、北海道の自然、庭の美しさが淡々としていているようで、ハッとするような美しい文章で書かれていて、何日からかけて少しづつ読みました。 弁造さんの死後の周りと人たちとの関わりも、筆者の人柄なのかな、とても微笑ましいです。

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2022/10/07

自給自足のための庭を作り、一人暮しの小屋で好きな絵を描く。世間や文明を否定した隠遁ではなく、好奇心や科学的研究心、ユーモアに溢れる暮しを送る弁造さんに惹かれ写真を撮り続けた若い写真家が、彼の没後にその思い出を綴った思索的なエッセイ集。描き続けた絵は完成せず庭も自然に還ったが、自分...

自給自足のための庭を作り、一人暮しの小屋で好きな絵を描く。世間や文明を否定した隠遁ではなく、好奇心や科学的研究心、ユーモアに溢れる暮しを送る弁造さんに惹かれ写真を撮り続けた若い写真家が、彼の没後にその思い出を綴った思索的なエッセイ集。描き続けた絵は完成せず庭も自然に還ったが、自分の信じること、好きなことを最後まで続けた素敵な人生と暮しへの思いは、この本になって残り続けることになった。写真と絵の展示会が開かれ、限定販売の写真集もあったようだけど入手は困難。いつかどこかで出会うことがあればいいな。

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2021/07/21

写真は当たり前に良かったけど、文章がとても濃密で、美しくてハッとするような言い回しが多くて、何個もフレーズをメモした。濃密すぎて、1章ずつ余韻を味わいながらしか読み進めることができず、時間がかかった。目で文字を追っているのに、講演会で直接弁造さんのお話を聞いているような空気感だっ...

写真は当たり前に良かったけど、文章がとても濃密で、美しくてハッとするような言い回しが多くて、何個もフレーズをメモした。濃密すぎて、1章ずつ余韻を味わいながらしか読み進めることができず、時間がかかった。目で文字を追っているのに、講演会で直接弁造さんのお話を聞いているような空気感だった。時間についての哲学感、生きること、死ぬこと、たくさんの思考を共有してもらった。写真集も手に取ってみたい。

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2021/03/30

東京から岩手に引っ越した若き写真家と、大正の終わりから北海道・石狩平野の外れで自給自足の暮らしを営む「弁造さん」の、1998年に出会ってから2012年に弁造さんが逝ってしまうまでの、14年間の交流の記録。 どれだけ深く語り合おうと、他者のことはわからない。「弁造さん」のような自...

東京から岩手に引っ越した若き写真家と、大正の終わりから北海道・石狩平野の外れで自給自足の暮らしを営む「弁造さん」の、1998年に出会ってから2012年に弁造さんが逝ってしまうまでの、14年間の交流の記録。 どれだけ深く語り合おうと、他者のことはわからない。「弁造さん」のような自由奔放な人なら尚更そうだったのだろう。そこで想像するのをやめ、孤独や諦観に浸るのもいいのかもしれない。でも作者の深山さんはわからないながらもその事実を「不思議さ」として受け止め、記憶や遺品の数々から「生きること」(亡き後は「不在」)の意味に少しずつ迫っていく。 北海道の美しい自然の描写や写真も随所にあって、またいつかゆっくり訪れたいと強く思った。

Posted byブクログ