ままならないから私とあなた の商品レビュー

朝井リョウ(著者)

2019/05/10

すごく共感の出来る話だったと思うが、結末にあまり納得出来ていない自分がいる。

世界をふたつに分けるとするなら、必要なことと、不要なこと、だろう。その両方をまるっと愛せる人もいれば、不要なことは切り捨て、必要なことだけを愛する人もいる。本作はそんな理解し合えない2人が親友になったことから始まる物語。

どちらが良くて、どちらが悪い、異端だということではない。どちらもこの世界に存在していても良いのだ。ただ、強い言葉でお互いを否定せず、存在を許すという選択を取れないものだろうか。

“ままならなさ”は世界の進化を止めはしないし、自分と誰かの関係も壊さない。“ままならなさ”があるからこそ自分たちは出会えたのであって、不要があるから必要も際立つ。ずっと前からこれから先も、世界は「綺麗に揃って」いるわけではなく、「歪で不整頓」であり続ける。

自分の理解できない「何か」を否定せずただ認めることが現実世界にも要求されている、というのをこの作品は示してくれているように感じた。

2019/05/07

朝井リョウさんの作品は、
自分の中で言葉にできてなかったことが「そう！そういうことなの！」と思う文があったり、
「あっ…自分ではそんなつもりなかったけどこんなずるい部分があったなあ。誤魔化してたなぁ」と思う文があるのです。
今回も、雪子にめっちゃ共感しながら読みつつも、薫に指摘された「ずるさ」の点でどきーーー！！っとなりました。

本を読んで自分が思ってたのはこういうことかも！と思うことが多いけど、それは、自分がどう思ってるかを言葉にするのをサボってるのかもなぁーとは思います。朝井リョウさんの小説を読むことで、自分の思ってること整理するための言葉や表現が増えた、として、うまく生きていけるようになりたいものです。

という所謂「厨二病」みたいな文章をとっくにその年代の2倍は生きてもまだうじうじ考えてたりするのです。

2019/05/05

どっきり感はなかったけど、現代的な考え方の善し悪しが共感できたり、出来なかったりするところがあって面白かった。主人公が終始真面目キャラでドラマが無かったのが残念だけど、何もかも効率化、プログラミング化される社会に対して、構えなくて考えられる小説だった。

2019/05/04

「レンタル世界」と「ままならないから私とあなた」の二編を収録。 安定の朝井さん。 すごく読みやすくて、先を予想させなくて、現代の闇をうまくあぶり出す。 どちらの作品もこの令和という新時代に進みゆく日本が抱えている希望の光と陰をうまく描き出している。

レンタル世界では、レンタル友達やレンタル彼氏、その仕事についている女性とそんなレンタルな世界をありえないと思う体育会系男子の話。 ちょっとびっくりなオチで自分の固定概念が崩される様を描いている。

ままならないから私とあなたでは、考え方の異なる２人の少女がそれぞれの道へと進む様を描く。 こちらもオチが秀逸。 新しい技術や世界を否定されたくない、新たなものを便利な技術を「提案」していきたいという考えも、ままならない部分にこそ人間的なものが宿る、めんどくさいの中に出会いや想いがあるという考えも、どちらにも共感できてすごくよかった。

2019/05/03

レンタル世界とままならないから私とあなたという二編入っている。前者も後者と合理的すぎる主人公が印象的。合理的なことがいいわけでない、けど、全面的に否定もできないもう1人の主人公の対比でとても面白く描かれている。

2019/05/03

２つの話が収載されているが、２つとも人間関係がテーマとなっている。
表題作は考え方が全く異なる女性２人の交流を描いた物語だったが、少し考えさせられた。人間的なものを大事する考え方と、あくまで合理性を追求する考え方。２人のやり取りは、人間的なものの価値や今後を示唆している気がする。今後、AIやデータ活用が進化する世界で生きることの怖さを感じてしまった。
文庫版で追加されたというエピソードも、合理性と人間性（人間的なもの）が対立するものではないと言いたかったのかもしれない。それは私にとっても明るい希望となった。

2019/04/29

雪子派。だと思った自分は。でも、真剣に考えてみると、新技術が導入されても人間的なつながりってなくならない気がする。技術の中心にはいつも人がいる。（リッチマンプアウーマンより）
ただ、薫の作ったソフトにはやっぱ共感できない。マイケルジャクソンの曲がこれから作られても興奮しないでしょ？終わりがあるからいい。ストーリーがあるからいい。不完全だからいい。
歌ってそういうもの。

好きなフレーズ
渡邊君が、会話の端っこの部分を、すりこぎで丁寧に伸ばすように言った。
ままならないことがあるから、皆別々の人間でいられるんだもん。

2019/04/20

私は合理的なのか薫の考え方にとても共感した。
とことんまでの合理性と、友達を想う気持ちは両立できるよね。私は自分の合理性をある程度隠して生きてるから、薫みたいな生き方が羨ましい笑

2019/04/19

デフォルメされた人物造形ではあるけど、情緒的なものをとことん廃して合理性を追求する薫と、その人にしかできない唯一無二のものを大切にしたい雪子に現代社会の葛藤を見た気がする。雪子に共感するけど、薫の主張も尤もなところはある。あと朝井リョウが描く恋心が真に迫りすぎてて甘酸っぱくて苦しい。
最後には2人の子供たちが出てくるけど、それぞれその親とは反対の価値観のもとに生きてて、結局合理性と情緒性はバランスが大事なんだと思った。

2019/04/16

タイトルでもある「ままならないから私とあなた」と短編の「レンタル世界」を含む２つの物語が収められた一冊。

ままならないから私とあなた。が衝撃的。
最初は何を言いたいのかもわからぬなんてこと無い日常だが読み進めるにつれて雪子と薫の13年間にわたる「違い」が描かれている。

AIが発展する中で「人間らしさ」が失われていく
こういう議論は実際に起こり始めていると思うがこのお話を通して私自身考えさせられた。

雪子と渡邊くんの恋愛という曖昧な、人間らしさが対比的に描かれていることで「違い」に深みが生まれているように感じた。