奇説 無惨絵条々 の商品レビュー
この手の時代小説をあまり読んだことがないので一つ一つの言葉をなかなか理解できず、読むのに時間がかかったが話自体はおもしろかった。どの短編も悲しさや胸糞な展開が多かった印象。個人的には『女の顔』が一番読んでてぞくっとしたかも。
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入院中、病棟の本棚にあったので読んだ1冊目。 血生臭い、奇怪な人情話の数々に無機質な入院生活を忘れ江戸の風を感じることのできた一冊。ラストの黙阿弥と幾次郎の対話には胸を打たれた。今まさに弱っている自分のためにあった物語だった。
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谷津矢車の2019年初版「奇説 無残絵条条」 「おもちゃ絵芳藤」の中の登場人物で実際にいた絵師、幾次郎。 浮世絵師としても名前をあげていたにもかかわらず、明治に入ると新聞の仕事につく。 歌舞伎はその頃、破廉恥で荒唐無稽な江戸時代の芝居小屋の演目から、生き残ろうと喘いでいた。 当時歌舞伎の脚本を書いていた黙阿弥がヒントを得ようと、幾次郎に依頼。ネタを探しに行った先は、元は版元で今では古本屋を営んでいる清兵衛の元。 そこで、清兵衛から次々と5つの戯作を読まされる。 全部が全部本当のことではないが、その中にも本当にあった事件が元になっているおどろおどろしいものであったり、浮かばれないような悲惨さが漂うような。 明治政府主導の近代化は、江戸時代の文化の全否定から始まっていたようなものだ。 そこで当時の文化の担い手が、どんな風に迷い争っていたのかを想像させるに十分な作品。
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読み進めるにつれて、作中作がだんだん面白くなってきた。それぞれ序盤から、結末がなんとなく透けて見える感じではあるけれど、最終的にそれら全体が“仕込み”だったところまで含めれば納得できる気もする。つい最近観た舞台「仮面山荘殺人事件」が思い浮かんだ。 幕間に語られる、作家本人の決意の...
読み進めるにつれて、作中作がだんだん面白くなってきた。それぞれ序盤から、結末がなんとなく透けて見える感じではあるけれど、最終的にそれら全体が“仕込み”だったところまで含めれば納得できる気もする。つい最近観た舞台「仮面山荘殺人事件」が思い浮かんだ。 幕間に語られる、作家本人の決意のような思いを忘れないでおきたい。
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明治23年、浮世絵師としての筆を折った落合 芳幾。 歌舞伎新報社の編集人として頑張るも、 「新作が欲しければネタを持っておいで」 と作家先生に追い返され、なじみの古書店にネタを求めてゆく…… 浮世絵好きなら、この序盤だけで読むべし!とオススメできる一冊。ただし思うところあって星は4つである。 作中で、主人公が5作の戯作を読むのに合わせて、読者のほうもその戯作を読んでゆく体裁。 そして、「明治23年文明開化の時代」という設定がある故に、主人公は躊躇い、 「この戯作は、今の時代には出せない」 と戸惑いを深めてゆく。 国策の『演劇改良運動』で、史実に合致しない内容、風紀紊乱、勧善懲悪以外は排除されるのに。 5作を読み終えてみると明かされる、『作家先生にネタをもってこい』を超えた目論見と、主人公の決断は……察しの良い読者なら、途中から予想はつく。予想がつく、それをきちんと描いて安堵できるエンディングなので、この点に不満はない。 思う処あって星を減じたのは、「明治時代の検閲は、いわば官製検閲であって、それに下々の民間人、絵師や戯作者が反抗する」という大筋の部分が気に入らなかったため。 先般のあいちトリエンナーレで起きた、『表現の不自由展』問題。展示内容の偏向(駅乃みちかや碧志摩メグは何故か取り上げられてない)、監督の津田大介氏の不見識と無責任、文化庁の交付金取り上げ(しかも決定に際して議事録無しという)等々。個別の問題の列挙にいとまがない、それほどの駄目づくしである。 現代の検閲は、民間検閲である。 民間人の企画し、発表した表現物に、同じく民間人(党派の下部組織である事例も散見されるが)が、女性や子供の人権を盾にして、発表の中止や取り下げを迫る構図が大半、である。 明治が舞台になった物語が、現代の問題にはかすりもしない。 そこは本作の咎ではないのだが、あくまで私見に基づき星を減じた事をお断りしておきたい。
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幕間6編でつなぐ短編集5編 戯作(黄表紙)のそれぞれが,短いながらも生き生きとしてこれが歌舞伎になれば面白いのではという内容.ミステリー風の「女の顔」と仇討ち物「落合宿の仇討」が良かった. そして幕間の物語が落合芳幾の明治になったあたりの伝記のようで,それも興味深かった.
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時は明治、文明開化の華やぐ時代。 だか、それは古いものを捨て行こうとする時代でもあった。 かつて、落合芳幾の画号で浮世絵を描いていた幾次郎は狂言作者黙阿弥に書き下ろし台本を書いてもらうため、ネタ元を探してかつて書物問屋を営んでいた清兵衛を訪ねたのだ。 そこで幾次郎が渡された5つ...
時は明治、文明開化の華やぐ時代。 だか、それは古いものを捨て行こうとする時代でもあった。 かつて、落合芳幾の画号で浮世絵を描いていた幾次郎は狂言作者黙阿弥に書き下ろし台本を書いてもらうため、ネタ元を探してかつて書物問屋を営んでいた清兵衛を訪ねたのだ。 そこで幾次郎が渡された5つの物語とは。 面白い! 時代の狭間にいる文化人の苦悩と、それを軽々と飛び越えていく物語。 時代ものが好きな方には是非とも読んでもらいたい。
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戯作5編の短編集。 河竹黙阿弥の台本のネタ探しのため、古本屋店主から渡された5編の短編。無惨絵の主題になりそうな作品の放つ魅力は、どう表現すればいいのだろうか?
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初出 2016〜18年「オール讀物」の5話 蜂谷凉氏が「これからの時代小説界を背負って立つ」と評していた作品だが、今ひとつ響かない。 明治になって仕事をなくし、新聞に挿絵を描いている浮世絵師落合吉幾が、旧知の古本屋を訪れて話のネタになる本を紹介されるという狂言回し役で、その5...
初出 2016〜18年「オール讀物」の5話 蜂谷凉氏が「これからの時代小説界を背負って立つ」と評していた作品だが、今ひとつ響かない。 明治になって仕事をなくし、新聞に挿絵を描いている浮世絵師落合吉幾が、旧知の古本屋を訪れて話のネタになる本を紹介されるという狂言回し役で、その5冊の本が本編。 ・島抜けした花鳥と父親の話は平凡 ・隠居させられた前松江藩主の妄執と暴虐に淡々と向き合う女中の話は絵になる ・サディストの女主人の暴虐の無惨さもあるが、解決した同心の妻も怖い ・明石藩主に子供を殺された猟師の仇討ちが成功するのは、主人公の殺し屋との対比が際立つ ・吉原で花魁殺しに巻き込まれて手足を切り落とされ見世物小屋に売られた女の昔語りは秀逸
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歌舞伎に詳しければもっと面白いかもしれない。感情の書きぶりがざらりとこちらの神経を逆撫でするような部分もあり、短編でここまで感情を刺激できるのはすごいなと思った。
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