中野京子と読み解く 運命の絵 の商品レビュー
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運命の絵、初めて読みましたが本作は第2弾とのことで、第1弾も読まなくてはと思いました。 名画をそれぞれ解説。 印象に残った絵 マネの「フォリー·ベルジェールのバー」 モデルの女性の虚無の表情が彼女の今後の人生を表していて、絵にストーリーが描かれているかのよう。 ゴーギャン「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」 大作だと思っていたが、遺書のつもりだったのかと納得した。 ティツィアーノ「マルシュアスの皮剥ぎ」 アテナが落とした笛を拾って吹いていただけでアポロンの怒りを買い、皮剥ぎされてしまう。
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著者、中野京子さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。 ---引用開始 中野 京子(なかの きょうこ、生年不詳)は、日本の作家、ドイツ文学者、西洋文化史家、翻訳家。 ---引用終了 で、本作の内容は、次のとおり。 ---引用開始 誰...
著者、中野京子さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。 ---引用開始 中野 京子(なかの きょうこ、生年不詳)は、日本の作家、ドイツ文学者、西洋文化史家、翻訳家。 ---引用終了 で、本作の内容は、次のとおり。 ---引用開始 誰もみな、堕ちては昇る―。世紀を越えた名画が私たちに突きつけるコントロール不能な、人生の流転。ナポレオンにオーラを授けたグロ奇跡の一枚、ゴーギャンの遺書になり損ねた大作、シェフェールがエロティックに描いた死に向かう乙女、ターナーが戦艦に重ねたイギリスの栄枯盛衰、バーン=ジョーンズの真に迫る運命の車輪ほか、オールカラー絵画32点で読み解く17の運命。『怖い絵』『名画の謎』に続くシリーズ第2弾。 ---引用終了 本作に登場する画家数名の生年没年等を調べておきます。 ・グロ(1771~1835)、フランス ・ゴーギャン(1848~1903)、フランス ・アリ・シェフェール(1795~1858)、フランス ・ターナー(1775~1851)、イギリス ・バーン=ジョーンズ(1833~1898)、イギリス ・エドゥアール・マネ(1832~1883)、フランス で、本作の表紙を飾っている作品は、エドゥアール・マネの最晩年の大作『フォリー・ベルジェールのバー』。
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(一番好きなセクションを書き残します)今もイギリス人が好きな絵画1位に選ばれるというターナーの「戦艦テメレール号」。1805年トラファルガー海戦で輝かしい活躍をしたテメレール号がついに解体されようと、最新型の蒸気船に曳航されていく…。ターナーの計算しつくされた色彩と描写によって、この哀愁が、人々の心にぐんっと届く。中野さんの解説のおかげでアートの素晴らしさを感じることができた。
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2022.08.23 あっという間に読んでしまった。一枚の絵の奥にある物語はとても深いものばかりだ。
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前から気になっていた中野京子さんの著書。 表紙が行きたかったコートールド美術館展のパンフレットだったマネの晩年の傑作と評された作品だったのでお取り寄せ。 なぜ運命という題がついているのだろうかと思いながら読み進める。 目次がまずその作品の見所について独自の語りくち。 作家の生涯や関わった人々や時代背景、作品の詳しい説明が見開きでコメントとともに記されている。 縁のある音楽の紹介もあって楽しい。 中野さんの創作物語も作品の理解に面白みを加える。 黄昏時をフランス語では「犬と狼の間」というとか、欧米では異界から出現するのはほとんど男性だが、日本では異界からやってくるのは女性が多い、幅広で平たい顔面、飛び出たどんぐり眼、低い鼻といったアジア的特徴は見慣れないだけに恐怖のものだったらしいなど、豆知識も得られる。 「若さと奇麗な顔だけを武器に」として、マネ『フォリー・ベルジュールのバー』を紹介。 ウィンスロウ・ホーマー『メキシコ湾流』と『ハリケーンの後で』の裏話は、間違い探しのよう。 ウィリアム・ターナー『戦艦テメレール号』の、実際とは違う創作であったり、イギリス人が選ぶナンバーワン絵画になったいきさつも知ることができる。 グスタフ・クリムト『パラス・アテナ』の美しさと圧倒的存在感を深く味わうことができる。 胸当てアイギスが黄金のきらめきや神々しさ、メデューサで防御力を増す。黄金の槍を触る手は触れている感じが優しげで女神と指摘、上腕に知恵のシンボルであるフクロウが止まっているのは今回知った。右手の小さな像は勝利の女神ニケか、真実の擬人像という説もあるらしい。 ローザ・ボヌール『馬市』『バッファロー・ビル肖像』が最後の作品紹介だが、作品中での作家や彼女の男装の秘話にも触れている。女がズボンを穿くことが男の権利簒奪と見なされた時代。 『美術界は男社会だ。 画家も教師も購買者も批評家もほとんどが男性で、男の嗜好が作品に反映され、男の価値観で評価されてきた(現在進行形)。そして数少ない女性画家は常に過小評価されがちだった(現在進行形)。』 中野京子さんの他の著書も読んでみたい。
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絵の事は正直よく分からない。でも歴史は好きで、その絵画が描かれた時の時代背景とか画家さんの人物像を知りたくて、中野京子さんの絵画の本を読むのは好きです。 今回、この本を手に取ったのは表紙の絵が好きだからです。けっこう前に「美の巨人たち」で紹介されてて、すごく印象に残りました。カ...
絵の事は正直よく分からない。でも歴史は好きで、その絵画が描かれた時の時代背景とか画家さんの人物像を知りたくて、中野京子さんの絵画の本を読むのは好きです。 今回、この本を手に取ったのは表紙の絵が好きだからです。けっこう前に「美の巨人たち」で紹介されてて、すごく印象に残りました。カウンターに立つ女性の表情に惹かれました。本の解説を読んで思い出し、だから何とも言えない物悲しい表情をしてるんだなあと思いじっくりと観ました。 他の画家さんの話で思わず笑ってしまったのがゴーギャンです。原田マハさんの「リボルバー」を読んだとき、ゴーギャンてそういう趣味なんだ、今だったら逮捕されちゃうよ。と思ってたら中野京子さんも同じような事を書かれてました。 最後のローザン・ボヌールの話が印象に残りました。昔は音楽家の世界は男尊女卑だったと聞いたことがあったけど、美術の世界もかつてそうだったと知りびっくりしました。でも、それに負けずボヌールは成功したのですごいと思う。
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今作はモローの『ユピテルとセレメ』に一番惹き付けられたかも ごちゃごちゃしててハウルの部屋みたいだと思った ボスの描く想像上のクリーチャーも気持ち悪いのになぜか見入ってしまう ボヌールはその生涯がかっこいいと思った女性の画家
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中野京子の筆が躍る。 ただ単に名画を紹介する本ではない。それならここまで売れないだろう。 絵をどのように捉えるかは、作者の生き方、考え方次第。中野京子の目で見た捉え方にワクワクするのだ。 特に括弧書きされた作者の呟きが、楽しい。 エレン・テリーに執着するワッツについて書いたく...
中野京子の筆が躍る。 ただ単に名画を紹介する本ではない。それならここまで売れないだろう。 絵をどのように捉えるかは、作者の生き方、考え方次第。中野京子の目で見た捉え方にワクワクするのだ。 特に括弧書きされた作者の呟きが、楽しい。 エレン・テリーに執着するワッツについて書いたくだり。p107「妹の方だけでも養女にすることを思いつき、手紙で友人にどう思うか訊いてみた、返事は養女にするにはその子は年をとりすぎている、というものだった。次にワッツは、それでは養女ではなく妻にしたいがどうだろうと、また手紙で訊いた。友人の答えは、妻にするには若すぎる、というものだった。(なかなか道理のわかった人間である)」 シニカルな呟きが冴え渡る。 p202「美術界は男社会だ。画家も教師も購買者も批評家もほとんどが男性で、男の嗜好が作品に反映され、男の価値観で評価されてきた(現在進行中)。そして数少ない女性画家は常に過小評価されがちだった(現在進行形)。」 現代社会への曇りのない目。 最後のボヌールは知らない画家だった。男装の女性画家。ぜひ映画化してほしい。 ブリューゲルの徹底的に書き込む絵画表現の是非について、スティーブンキングに擬えているところも、筆者のフィールドの広さを感じた。 恐るべし中野京子!
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絵画を通して、画家の生き様、歴史や西洋の神話、時代や地域でのジェンダーの考え方など、さまざまな角度で、ものごとが見える。 その広がりがとてもおもしろい。
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相変わらず中野京子さんの本はハイレベルだと思う。実に面白い。絵画のモデル、描いた画家にはそれぞれちゃんと物語があるのだ。特に西洋画には、その色合いが濃い。 表紙のマネ「フォリー・ベルジェールのバー」は実物を見たことがある。真ん中の女の子の目は愁いを含んでいていいと思ったが、虚ろな...
相変わらず中野京子さんの本はハイレベルだと思う。実に面白い。絵画のモデル、描いた画家にはそれぞれちゃんと物語があるのだ。特に西洋画には、その色合いが濃い。 表紙のマネ「フォリー・ベルジェールのバー」は実物を見たことがある。真ん中の女の子の目は愁いを含んでいていいと思ったが、虚ろな目だったとは。このバーはお上品なものでなく享楽に満ちたところで、この女の子も酒を売るだけでなく春も売っていたのではないかというのだ。当時のパリの女の子たちは生きていくのも大変だったようだ。ワッツ「選択」という絵も、生きていくために30以上も年上の画家と結婚した旅回りの芸人の子がモデルである。1年もたたないうちに彼女エレンは画家と別れて、のちに大女優(エレン・テリー)になる。 ブリューゲル「雪中の狩人」は、緑が美しい絵と思っていただけだったが、狩人たちは不猟で、犬たちも寄せ集めなので、一頭がこちらを向いて「どうせ駄犬ですよう」と言っているみたいだという解釈を読んで笑ってしまった。絵の中に、火事の家があったとは気がつかなかった。 ベラスケス「ブレダ開城」の中心人物スペイン軍総司令官アンブロシオ・スピノラ将軍(ジェノヴァ出身)は、いわば傭兵の立場だったが、戦いに勝ったのにフェリペ4世に裏切られて報酬がもらえず、苦しい立場に追いやられたそうな。フェリペ4世(無能王)は取り巻きの言いなりだったのだ。 こんなふうに盛りだくさんの情報があり、絵はよく理解できるし、西洋の歴史のいろいろな知識を得ることができる。17編。
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