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サンデル教授、中国哲学に出会う の商品レビュー

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2022/12/17

マイケル・サンデルそのものではなく、オマージュというか、マイケル教授の思想、論文を学者が講評しているような内容だ。詩的、いやまさに哲学という事だが、中国の故事に触れ、アジア的な価値観の源泉も辿るような感覚もある。 例えば、「礼」の具体的事象。通勤の途中で通り掛かる人におはようと...

マイケル・サンデルそのものではなく、オマージュというか、マイケル教授の思想、論文を学者が講評しているような内容だ。詩的、いやまさに哲学という事だが、中国の故事に触れ、アジア的な価値観の源泉も辿るような感覚もある。 例えば、「礼」の具体的事象。通勤の途中で通り掛かる人におはようと言って微笑み、その人が同じように挨拶を返してくれれば、二人はお互いに前向きな姿勢を徐々に高め、相手を気遣うようになる。相互に親切であろうとする心構えができるであろう。儒教の理想はこのような「礼」の実践を通じて同胞への気遣いや情を養うこと。 孔子は我々が刑法を頼りに社会を管理すればトラブルを避けられるかもしれないが「恥」という道徳感覚が涵養される事は無い。「礼」の実践を通じてのみトラブルを避けられる。従い、法や刑への重度の依存は社会機構の劣化を示している。孟子も人間と動物を分つのは適切な人間関係を結ぶ点を指摘する。この辺は、人間社会の関係性の基礎にあるべきは、制度か礼かという論点を明確にしている。 議論は深まり、制度ではなく人間の美徳と悪徳へ。アリストテレスも、内面の健康は外面より大切であるとする点で儒者と同一。王陽明は、コントロール不能な悪徳を抱えたり、美徳に欠ける原因を二つ。第一に人はいわゆる気や気質と言う身体的・精神的な素質を持って生まれてくると言う事。第二に環境の影響受けると言う事を挙げる。 礼から徳へ。そしてこの話は、トロッコ問題の応用編に発展。世の中、どちらの損失、被害を選択するか、そこに個人の得失が結びつく判断が必要な事など日常茶飯事。個人の得失に肉体的損傷、命のトリアージ的テーマが混入すれば、トロッコ問題だ。 ここでは、親の悪徳を訴えるべきか。親を守りたいという孝と社会正義は矛盾しないという立場が孔子。親を訴えるのではなく、親を諫めるべき。国ならば、諫言する大臣になれと。分からない。社会正義などクソ偽善という気もするが、その共通概念を持たねば成立しない関係性もある。しかし、その関係性におけるロールプレイを思えば、自分は警察の役割まではいかないから、親を通報などしない。自らの心の法律、価値基準で諌めるに留める程度。孔子が言っているのも、公私価値観が重なるか否かの程度問題に過ぎないが、同意見。面白い本だ。

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2022/08/25

サンデルの書いている部分は、ほんの少しで、大半はサンデルの考えに対する儒教的論考である。 また、サンデルお得意の身近な例から哲学的、正義的何かを考えていく手法ではなく、論文的なものなので、それを念頭に本書を手に取るといい。

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2019/06/11

 中国の儒家とサンデル哲学の出会いをまとめた本。  中国の新経済体制での富裕層の躍進は、その背景に儒家思想での家族主義が暗に正当化され、ある意味、無節操に共産党一党体制のもとで一部の体制に近い国民の間で、助長されているのではないかと思ってしまう。  一方、新自由主義経済で躍進する...

 中国の儒家とサンデル哲学の出会いをまとめた本。  中国の新経済体制での富裕層の躍進は、その背景に儒家思想での家族主義が暗に正当化され、ある意味、無節操に共産党一党体制のもとで一部の体制に近い国民の間で、助長されているのではないかと思ってしまう。  一方、新自由主義経済で躍進する国、あるいは、自国ファーストが叫ばれる保護主義に傾斜する国でも、あるべき姿が失いつつある。  異文化哲学の比較を通して、あるべき姿を、人々の生のあり方を考えるのは大切であり、サンデル教授のそのような姿勢に共感する。

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