虚構推理 の商品レビュー
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うーん… ラノベ感強そうだなと迷いつつも、昔この作家さんのスパイラルが好きだったから手に取ってみた。 所謂本格ミステリとはまた違った推理物。 人の噂話が巡り巡って怪異に実体を持たせる系の話はいっぱいあるからそういう点では斬新さ等は感じられず、解決策も、それを上回るような話に人々の認識を塗り替えるというお決まりのもの。 それ故か最後の虚構争奪までが、退屈ではないにしろちょっと長く感じてしまった… でも事件そのものの真相を暴く訳でもなく「嘘」で事態を収拾つかせるところや、 一眼一足の知恵の神琴子と件と人魚の肉を喰って異能を身につけた九郎の設定は面白かった。
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ミステリであってミステリではない、不思議な読後感のある一作。 本格ミステリ大賞を受賞してはいるが、タイトルの通り物語に通底しているのは虚構の存在だった。 人では無い存在に対する調停者と、人であって人ではない存在というフォーマット自体は怪異を扱う物語では見たことのあるフォーマット...
ミステリであってミステリではない、不思議な読後感のある一作。 本格ミステリ大賞を受賞してはいるが、タイトルの通り物語に通底しているのは虚構の存在だった。 人では無い存在に対する調停者と、人であって人ではない存在というフォーマット自体は怪異を扱う物語では見たことのあるフォーマットであるし、中盤までの展開は普通のミステリ・推理ものから大きく離れたものではない。 しかし、ミステリというジャンルのコアを逆手に取ったような展開は無理矢理にも見えるものの、一定筋の通ったストーリーに仕上がっていて面白かった。 登場人物の会話にどこかクセがあって、サキさんってこんな口調するのかなぁ?と思ったところがいくつかあり、読む手が若干止まったが、作品としての面白さを削るものではない。
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私はこれを読んで、『毒入りチョコレート事件』(アントニー・バークリー)を思い出した。といっても私が読んだのは一九八六年ポプラ社の子ども向け抄訳版だが。『毒入り〜』は、迷宮入りした事件の推理をミステリー愛好家たち六人が行い、六通りのそれらしい真実(案)が披露されては否定され…とい...
私はこれを読んで、『毒入りチョコレート事件』(アントニー・バークリー)を思い出した。といっても私が読んだのは一九八六年ポプラ社の子ども向け抄訳版だが。『毒入り〜』は、迷宮入りした事件の推理をミステリー愛好家たち六人が行い、六通りのそれらしい真実(案)が披露されては否定され…という構成の話で、ミステリー小説では必ず「ひとつの正しい事実」と「ひとつの正しい推理」がセットで存在することになっているけれど、それってどうなの?という問題を投げかけていた(と思う)。ゲームとしてそういう約束事が必要なのはわかるけど、所詮約束事に過ぎないよね?と。ミステリーなのだけど「アンチミステリー」だ、という感想を抱いた。 『虚構推理』は、妖怪などの登場するファンタジー要素、個性的なキャラクターたち、ライトなセリフの応酬、主役二人の恋愛模様など本当にいろんな楽しみ方ができるのだが、その大胆な「アンチミステリー」ぶりを堪能するのも主要な味わい方のひとつだといっていいだろう。なんせ、「犯人は怪物」というのが真実で、アリバイとかトリックとかそういった都合は無視して犯罪は可能。そして探偵役がどのようにその真実に辿り着けたかというと、「現場にいた地縛霊に聞いたから」。ぶっ飛んでいる。 普通のミステリーでは、真実を突き止め、その真実が揺るぎない唯一の真実であることを人々に対して証明し認めさせることがゴールとなる。詳しい説明は省くがこの小説の場合、「犯人は人間ではなくて怪物に違いない」と信じている(または面白がってそう望んでいる)ネット民から、その真実を覆い隠し、信じるのをやめさせることがゴールなのである。そのためには、みんなが怪物説を捨てて代わりに支持したくなるような、よりあり得そうでより魅力的な虚構を成立させなければならない。リアリティや道義的な問題はおいておいて、そういうルールを小説上設定したうえで推理披露が始まり、山場へと盛り上がっていく。 真実もぶっ飛んでいるし、推理の目的もぶっ飛んでいる(推理というより「とんち」だとの言葉も作中にある)。正義や真実よりも「ネット民が支持したくなるような面白さ」を求めなければいけないところもぶっ飛んでいる。それでいて論理ゲームであることには変わりない。また、ネット上の世論を扇動する怪しい輩のように見える行動をしているけれど、主人公たちは、怪物による被害の拡大を防ぎ世の秩序を守るためにこれをしているのであり、「正義の味方」ではある。 ミステリー小説の面白さ、危うさを逆手に取った倒錯の世界。この切り口で他にどんな展開を見せてくれるの?!と、続きのシリーズも読みたくなる。 (マリモさんのレビューがきっかけで読みました。ありがとうございます!)
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片目と片足と引き換えに妖たちの「知恵の神」となった岩永琴子、妖の肉を食らい異能力を身に着けた桜川九朗、人ならざる者通し共に行動する彼らと巷を騒がす死んだアイドルの都市伝説「鋼人七瀬」。 都市伝説を駆逐するために曖昧な伝説に合理的な虚構をぶつけろ! 本作の主眼はおおよそ都市伝...
片目と片足と引き換えに妖たちの「知恵の神」となった岩永琴子、妖の肉を食らい異能力を身に着けた桜川九朗、人ならざる者通し共に行動する彼らと巷を騒がす死んだアイドルの都市伝説「鋼人七瀬」。 都市伝説を駆逐するために曖昧な伝説に合理的な虚構をぶつけろ! 本作の主眼はおおよそ都市伝説として人の心に根付いてしまったアイドルの亡霊を滅ぼすために人々に合理的で納得のいく虚構を与えるというものだ。 人は信じたいものを信じる、魅力的な嘘を吐くには真実を追い求めるに等しいぐらい事件に対して齟齬なく挑まなくてはならない。 真実を暴くのと秀逸な偽物語を創るのではベクトルは正反対でも、事件を精査し隠されたストーリーを見つけ出すという点では一致していて、そこに既存のミステリとは違った論理性、整合性が生まれる。 このユニークな特殊設定ミステリを漫画経験が生きた可愛く魅力的なキャラクターで描いている、変な作品好きなので割と普通にミステリとして読んでましたね。 アニメの出来も上々
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初著者本です。アニメでチラッと見た琴子の様子がずっと残っていてどんな話なのか読んでみたいと思っていました。 虚構と言うだけあって、考えが難しい。でも楽しみました。
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スキャンダルとともに亡くなったアイドルの霊。 暴れ回る彼女を弱体化させるため 彼女の強さの根源、ネット上の噂に対して レスバを繰り広げるミステリ。 ファンタジーに論理をぶつける設定がまず面白すぎる。 人々を納得させるための推理と真実の距離よ。
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多重解決の傑作。鋼人七瀬を消し去るために「嘘」の真相を成り立たせるために論理を構築し、それを読者に納得させ、信じ込ませる。犯人を当て真実を語るのではなく、真実を創る。この作品は、従来のミステリの常識を覆すアンチミステリと言えるのではないか。
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実際に存在している鋼人七瀬に対して、〝亡霊が実在する〟という現実よりも人を惹きつける虚構を作り上げるという無理難題に正面から対峙している印象を受けました。 桜川九郎の力があってこそではありますが、4つの解決を提示する事で、ネットで話題の都市伝説以上の話を語り、ネットを沸かせる難行を為した岩永琴子に惹かれました。
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'22年8月19日、Amazon audibleで、聴き終えました。この作者さんの作品、初体験です。 クライマックスの「虚構の推理」の章で、集中力が持続できず、何度か中断して、ようやく聴き終えましたが… 全体のアイデアは、素晴らしいと思いました。井上真偽さんの「その...
'22年8月19日、Amazon audibleで、聴き終えました。この作者さんの作品、初体験です。 クライマックスの「虚構の推理」の章で、集中力が持続できず、何度か中断して、ようやく聴き終えましたが… 全体のアイデアは、素晴らしいと思いました。井上真偽さんの「その可能性はすでに考えた」を、連想したくらいです。こんな話、よく考えつくなぁ、と。 でも、肝心のクライマックス、「虚構の推理」の章が、僕には冗長に感じられちょっと残念な感じでした。 シリーズの次作も聴いてみます。
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推理小説にこの本のようなカテゴリーがあるのが驚きです。タイトルの意味を理解して、正直、素晴らしいと!
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