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虚構推理 の商品レビュー

3.9

43件のお客様レビュー

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2023/07/21

一つの事件に対し、複数の解決への仮説が示される、ミステリのジャンルの一つ「多重解決」もの。しかし、この『虚構推理』はその「多重解決」ものを一段階超えていくものかもしれません。 ミステリの限界をメタ的に捉えつつも、それを奇想天外な設定と、緻密な展開で本格ミステリに転換してしまう。「...

一つの事件に対し、複数の解決への仮説が示される、ミステリのジャンルの一つ「多重解決」もの。しかし、この『虚構推理』はその「多重解決」ものを一段階超えていくものかもしれません。 ミステリの限界をメタ的に捉えつつも、それを奇想天外な設定と、緻密な展開で本格ミステリに転換してしまう。「多重解決」ならぬ「多重解決創作」ミステリともいうべき、新しい本格ミステリの匂いがしてきます。 ベレー帽をかぶり、つねにステッキをつく小柄な少女の岩永琴子。いつも通院している病院で、桜川九郎という大学生に惹かれた岩永は、九郎が最近彼女と別れたと聞き、早速アプローチをかける。そして徐々に二人の規格外の能力が明らかになっていく。 それから数年後、ある地方都市で亡くなった女性アイドルが深夜、鉄骨を振るい人を襲うという〈鋼人七瀬〉の都市伝説が囁かれ、実際にその目撃者が現れ始める。そしてその鋼人七瀬は、女性警官の弓原紗季の前にも姿を現す。七瀬に襲われそうになった紗季を救ったのは、岩永琴子だった。 妖怪や亡霊、怪異や怪奇が普通に現れます。鋼人七瀬も、人間が化けている、真犯人がいるというものでもなく、本物の亡霊の一種。そしてその亡霊は、琴子曰く人間の想像力が生んだとのこと。ネットなどで、鋼人七瀬の都市伝説が拡散し、それに興味や、好奇心を持った人が増えるほど、亡霊はますます力を強めていく。 鋼人七瀬を倒すために必要なのは、人々の興味や好奇心を満足させつつも破綻のない、都市伝説を完結させる解決を与えること。事件は亡霊が起こした、なんて身も蓋もない解決は、世間には受け入れられない。だからこそ辻褄があった、合理的で現実と矛盾しない、なおかつ面白くて世間が満足する真相を作らなければならない。 実際の事件に対して、犯人や証拠だけでなく、動機や設定に至るまで、琴子は現実と照らし合わせながら、一から十まで「虚構」を作りこんでいく。 本来ミステリは一つの真実を解き明かすものなのに、この『虚構推理』は真実を作ることをミステリとしてしまう。まさに離れ業というべきか、その逆転の奇想がとても面白かった。 推理シーンもかなり読み応えがあります。普通のミステリなら関係者全員集めて、探偵が推理を披露するところですが、『虚構推理』の場合は、関係者とはネット上の鋼人七瀬に興味を持ち、情報を拡散する人々すべて。 琴子はネット上に4つの推理をあげ、疑り深いネット民たちにそれぞれの真相を提示しますが、その真相もバリエーション豊か。大がかりな物理トリックから、逆に亡霊の存在を認めるものまで多種多様。そんなばらばらの推理にもある理由があり、それが最後に語られる4つ目の真実へ紡がれる。 4つ目の真実とその目的が明らかになったとき、詰め将棋を連想しました。すべて琴子の狙い通りに物事が進行し、そして最後の怒涛の展開に至る。4つの真実の論理、それも本格ミステリ的ですが、それぞれの推理が伏線となり、最後につながっていくのもまさに本格ミステリ的です。 そして推理の勢いの凄まじさは、ネット上の推理ならではかもしれない。4つの推理はそれぞれに、荒唐無稽なところは含んでいるのですが、ネットの世界は時折、細かい点よりも面白さが先に立ち、狂乱のお祭り状態になる。 多少のツッコミどころよりも、面白さやインパクトが優先される。そうしたネットの雰囲気も取り込んだ、このミステリならではの推理劇だったように思います。これも独特で面白かった。 キャラクターや登場人物の掛け合いは、コミカルでマンガ・ラノベ的でそれも良かったのだけど、琴子の内面は意外と熱い。現実と異界、その狭間に立つものとしての矜持を持ち、それぞれの壁を守るものとして、現実と非現実の壁を壊そうとする〈鋼人七瀬〉に頭脳と論理で戦いを挑む。全体的にはサバサバした印象の強い彼女ですが、一方でその矜持の熱さもより魅力的に映る。 本格ミステリ界に現れた多重解決もののニュータイプと、そしてニューヒロイン。本格ミステリの可能性を改めて感じさせる作品でした。 第12回本格ミステリ大賞

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2020/10/28

元々、スパイラル〜推理の絆〜がとても好きで読み始めたのですが、虚構を虚構で謎解いていくという新しいミステリー物でとても面白かったです。 終盤の解いていく章は思わず一気に読み進めてしまいました。 アニメや漫画も見ましたが、また違った面白さがあり良かったです。わかりやすいのはアニメで...

元々、スパイラル〜推理の絆〜がとても好きで読み始めたのですが、虚構を虚構で謎解いていくという新しいミステリー物でとても面白かったです。 終盤の解いていく章は思わず一気に読み進めてしまいました。 アニメや漫画も見ましたが、また違った面白さがあり良かったです。わかりやすいのはアニメですが、小説版を読んでからでもいいかもしれませんね。

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2020/09/03

巨大な鉄骨を手に街を徘徊するアイドルの都市伝説、鋼人七瀬。人の身ながら、妖怪からもめ事の仲裁や解決を頼まれる『知恵の神』となった岩永琴子と、とある妖怪の肉を食べたことにより、異能の力を手に入れた大学院生の九郎が、この怪異に立ち向かう。その方法とは、合理的な虚構の推理で都市伝説を滅...

巨大な鉄骨を手に街を徘徊するアイドルの都市伝説、鋼人七瀬。人の身ながら、妖怪からもめ事の仲裁や解決を頼まれる『知恵の神』となった岩永琴子と、とある妖怪の肉を食べたことにより、異能の力を手に入れた大学院生の九郎が、この怪異に立ち向かう。その方法とは、合理的な虚構の推理で都市伝説を滅する荒技で!? 驚きたければこれを読め――本格ミステリ大賞受賞の傑作推理!

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2020/08/02
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表紙からラノベ色が強いだろうと思っていたが、むしろ骨太の本格ミステリだった。 都市伝説や想像力が生みだした物の怪に対して、都市伝説をも上書きしてしまう虚構推理で消し去るというアイディアがいい。捨て推理が後できいてくる部分も好みだった。 続編もあるようなので機会があったら読んでみようと思う。

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2020/08/13
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アニメ化で店頭に並んでるのを見たのがきっかけで手に取ってみたけど 真実がわかったうえで 推理を考えるという発想は どこか反則的な気もするけど 面白かった キャラクターも個性的で事件とは関係ない普段の会話でも面白かった 特に琴子が好き!! ただ 鋼人七瀬の話の推理のくだりは前の3つの推理が何故必要だったのかよく分からなかった コミックの方も見てみて、コミックの方も面白かったが 小説の方は細かい心理描写や行動の理由が分かる分 分かりやすかった 普段は琴子に対して邪険にしてる九郎が最後に「お前は花より綺麗だから 僕はどこにも返していないだろう」と言った時は身悶えした ツンデレとも違って、上手いこと言おうとしたりした訳でもなく本心からそう思ってると分かるだけに 琴子同様、これはずるいと思う

Posted byブクログ

2020/06/13

今まで読んだことのない設定の本。タイトル通り、この世の物ではないものを、推理した虚構で立ち向かう話。 キーパーソンが突然ストーリーに出てくるなど少々強引なところがマイナスか?

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2020/06/03

原作もコミックもアニメも全て面白いという稀有な事例。最後の六花さんとの勝負は一気に引き込まれた。人は自分がそうあって欲しいと思うことが真実と思いたい。ネットにおけるデマの拡散、人は自分に都合のいいように解釈する。そういった人の想念が鋼人七瀬を産み出すように仕掛けられたのだ。一旦火...

原作もコミックもアニメも全て面白いという稀有な事例。最後の六花さんとの勝負は一気に引き込まれた。人は自分がそうあって欲しいと思うことが真実と思いたい。ネットにおけるデマの拡散、人は自分に都合のいいように解釈する。そういった人の想念が鋼人七瀬を産み出すように仕掛けられたのだ。一旦火がついたものは時々燃料を投下するだけで炎上する。言葉のもつ怖さ、言い換えれば言霊とも言うべきものとの戦いの物語。時折直截的な下ネタが入るのは人を好むかも知れないが、そういう風には見えない琴子のキャラ付けとしては面白いと思う。

Posted byブクログ

2020/04/29

ノベルス版を持っていたのですが、持ち歩き用に文庫買ったのでこちらに感想をば。 読みやすく、普通に面白い。 ライトノベルとしてはいいと思う。 タイトルによって推理ものとか思うと、全くそうではないとは思います。 シリーズものではないけれど、その雰囲気があるので、ちょっと不完全さが残...

ノベルス版を持っていたのですが、持ち歩き用に文庫買ったのでこちらに感想をば。 読みやすく、普通に面白い。 ライトノベルとしてはいいと思う。 タイトルによって推理ものとか思うと、全くそうではないとは思います。 シリーズものではないけれど、その雰囲気があるので、ちょっと不完全さが残ります。 というより、黒幕の存在があるのなら、一巻ではなく少なくとも二巻辺りからの方が、焦ったつくりにならずに良かったのかなとは思いました。 二巻ないんですが。続かないのかな。 アニメ良さそうなので、機会があったら観てみます。

Posted byブクログ

2020/04/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まんがを読んでアニメを見てから原作を読了。あやかしたちの巫女となった岩永が、不死の九郎とともに、「想像力の怪物」鋼人七瀬に挑む。 【虚構】で真実に挑むというのが斬新でおもしろかった。私も岩永のように頭が良ければなあ。普段はつれない九郎が、いざとなったら岩永のことをちゃんと考えているところを見せるのが実に良かった。

Posted byブクログ

2020/02/29

アニメの出来がすこぶるいいので読んで見る気になった。題名の通り、鋼人七瀬によって起こされる事件を虚構の推理によって押し込めると言ったなかなかややこしい話である。小説自体が虚構であるのに普通の推理小説では名探偵が最後に解き明かしてそれで解決となりそうな推理が虚構であって、それによっ...

アニメの出来がすこぶるいいので読んで見る気になった。題名の通り、鋼人七瀬によって起こされる事件を虚構の推理によって押し込めると言ったなかなかややこしい話である。小説自体が虚構であるのに普通の推理小説では名探偵が最後に解き明かしてそれで解決となりそうな推理が虚構であって、それによってこの小説で起こっている事実を虚構化させるわけだ。なんとも小説の虚構性を逆手に取ったような、最近散見されるニューウェイブ的な小説だ。登場人物たちも魅力的で正に日本のアニメには最適な虚構である。

Posted byブクログ