謎とき『風と共に去りぬ』 の商品レビュー
2015年に新潮文庫からマーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」(Gone With The Wind→GWTW)全5巻の新訳を行った鴻巣友紀子氏が、翻訳を通して見えてきたGWTWと、作者マーガレット・ミッチェルがこの大ベストセラー小説に込めた想いを分析した評論。 GWTW...
2015年に新潮文庫からマーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」(Gone With The Wind→GWTW)全5巻の新訳を行った鴻巣友紀子氏が、翻訳を通して見えてきたGWTWと、作者マーガレット・ミッチェルがこの大ベストセラー小説に込めた想いを分析した評論。 GWTWはマーガレット・ミッチェルが10年をかけて書き上げ、発売と同時にベストセラーとなりピュリッツアー賞を受賞した。しかしながら、それだけの功績を挙げながらもこの作品はベストセラーになった→大衆小説という扱いを受けてアメリカの文学史においてもあまり顧みられなかったばかりか、作者であるマーガレット・ミッチェル自身の生い立ちや、作品の時代背景(南北戦争前後)から生まれる人種差別等に対する記述などにばかり注目がいき、その複雑かつ精緻な文体の構成といったテクスト批評がほとんど行われなかったと筆者は言う。 鴻巣友紀子氏は別のエッセイの中でも翻訳という作業は訳を書くのは全体の作業のごくごく一部でしかなく、翻訳作業のほとんどは繰り返し繰り返し深く原文を読み込み、深く理解する事であるという。 だから、翻訳するにあたって作品を何度も読み込むことによって、自分自身のGWTW感も大きく変わり、実はこの作品の真のヒロインは強気で強引なスカーレット・オハラではなく、無垢でか弱いと思われがちなメリー、メアリー・ウィルクスではないかと思うに至ったという。 原文も引きながらの解析は是非新潮文庫版全五巻を横に置きながら読んでもらいたい。 一度読み終えた「風と共に去りぬ」をもう一度楽しむための一冊。
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風と共に去りぬは疾走感溢れる大作で、主人公スカーレットの魅力と相まって、あの長大なボリュームをものともせずあっという間に読める小説だ。もし映画を先に観ていれば、スカーレットとレットの恋物語が最も印象的だろう。しかし本を読んでみると気づく、「あれ、レットってなかなか出てこないな」と...
風と共に去りぬは疾走感溢れる大作で、主人公スカーレットの魅力と相まって、あの長大なボリュームをものともせずあっという間に読める小説だ。もし映画を先に観ていれば、スカーレットとレットの恋物語が最も印象的だろう。しかし本を読んでみると気づく、「あれ、レットってなかなか出てこないな」というほんの小さな違和感… 本書は、翻訳者ならではの丁寧さで、それら違和感を拾い上げ、風と共に去りぬの新たな側面を開いてみせる。読み終わったら、同作がもう一度読みたくなること間違いなし!
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再読しているときは、それこそ夢中で読み終えた『風と共に去りぬ』。 その謎とき、深掘りに本書は大成功している。 何が書かれているかではなく、どう書かれているかに注目するのは翻訳者ならではの視点。そこに注目するとき、とびっきりのドライブ感がなぜ生まれるか明かされる。 スカーレット...
再読しているときは、それこそ夢中で読み終えた『風と共に去りぬ』。 その謎とき、深掘りに本書は大成功している。 何が書かれているかではなく、どう書かれているかに注目するのは翻訳者ならではの視点。そこに注目するとき、とびっきりのドライブ感がなぜ生まれるか明かされる。 スカーレット/メラニーの分裂・協調、アシュリの性欲への着目、エンディングの評価、そして主要4人の密接度などどどれも冴えている。全体的におぼろげに夢中で読んだ原著の輪郭がはっきりした。 結語の「この傑作のテクストの下に、発動機の危うい喘ぎや細かい震えを、いまのわたしは感じざるを得ない」には、わたしは恐れをも抱いた。
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映画の印象が強すぎる作品を読み解いていく面白さ。10代の頃読んだ時は映画のシーンを思い返すだけであったことを痛感(映画に出ない人物の存在すら読み飛ばしていた模様)鴻巣訳も買い揃えたので近々読み返す。
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初めて読んだのは確か小5くらいのときで、家にあった河出書房の世界文学全集の、なので大久保康雄訳。他のがグリーンなのになぜか「風と共に」と一部の小説が白い表紙で、その乙女っぽい装丁にときめいた記憶がある。その後、高校生くらいまで何度か再読した。映画のほうはたぶんNHKで観たと思う。...
初めて読んだのは確か小5くらいのときで、家にあった河出書房の世界文学全集の、なので大久保康雄訳。他のがグリーンなのになぜか「風と共に」と一部の小説が白い表紙で、その乙女っぽい装丁にときめいた記憶がある。その後、高校生くらいまで何度か再読した。映画のほうはたぶんNHKで観たと思う。ヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブルのビジュアルは本を読む前から知っていて、そのイメージで本も読んだ…かもしれないけど、映画は原作の良さが全然入ってなくて退屈だな…と思った記憶がある。なので私の中では映画はあまり印象にない。 鴻巣さんが手がけた新訳版は読んでないが、この本は読書リストには入れていた。なんといっても暗記するくらい読んだ「風共」だから。最近はこういう評論は読まなくなって久しいのだけど、BLMの動きで一瞬「風共」に注目が集まり、その流れで手に取った。 本の中には鴻巣さんによる新訳が随所に引用される。それを見ると私の読んだ訳よりずいぶんとカジュアルな感じがする。私自身はこの本に相当のめり込んで、登場人物が勝手に生き生きと躍動していたので、当時の翻訳がどうこうというのはなかった。またあまりにも子供だったから、「風共」がはらんでいる問題を全然意識してなかった。地の文と登場人物の心の声が地続きになっているなんてこと気づかずに、かといってミッチェルが差別主義者だなんてまったく思わずに、これは登場人物の心理だと思って当然のように読みこなしていた。本が作者の考えを表すなんてこと、その頃は意識したことなかったのだ。物語の中の登場人物がすべて。神の視点で語られる場面もあるが、それを当然のように受け止めていた頃、なんて幸福な時代の読書体験だったんだろう。でも優れた小説はすべてそういうものじゃないか。鴻巣さんが発見するいろいろなことは1人の作者としてこのテクストを読まざるを得なかった結果から導き出されたことで、純粋な読者はそんなことは思いもせずに、ただ物語の中に浸り、登場人物の声を聞く。 なので、私にはあまり解くべき謎もなかったし、知ったところで「風共」の読書体験に変化はまったくないのだけれど、以前から感じていたメラニーの存在感(私には彼女はグレーでイメージされている)が言語化されたのはすっきりしたのと、スカーレットの目からしか描かれていなかったアシュレーが肉欲もある一人の男性であるという気づきは久しぶりに再読しようかなという気持ちをそそった。そう、本当に再読しようかな、今度は鴻巣さんの新訳で。
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新潮文庫で既に『風と共に去りぬ』の訳を手がけられた、鴻巣友季子さんの『風と共に去りぬ』論。100分de名著の名講義をオンデマンドで見て、すごく面白かったので、これまたようやく退院が見え始めた頃に病室で読み始め…本日読了した。 初めて中学生で『風と共に…』読んでからずっとの、私の...
新潮文庫で既に『風と共に去りぬ』の訳を手がけられた、鴻巣友季子さんの『風と共に去りぬ』論。100分de名著の名講義をオンデマンドで見て、すごく面白かったので、これまたようやく退院が見え始めた頃に病室で読み始め…本日読了した。 初めて中学生で『風と共に…』読んでからずっとの、私の疑問は3つ。 『アシュリ・ウィルクスとは、本当はどんな男の人なのだろう?(カッコいいって言われる割に、どんな男の人か、性格とか今ひとつよく判らないのよね)』 『スカーレットって賢いのに、こんなにおばかさんに書かれているのはどうしてだろう?』 『逆に、メラニーが、ばかだの意気地なしだの(ボロカスに書かれているのに)ひ弱には見えなくて、案外スカーレットと二人、いいコンビに見えたり…。そのくせアシュリを巡っての恋敵なら、私がスカーレットだったら、ウィルクス夫妻、まとめて手を離してしまうのに。なんだ?この関係?』 ぼんやりと疑問に思い、そして形にはしないで、こうかな、ああかな、と考えてきたことが、疑問氷解!すっきりした。実はこうだったんだよ、ということを詳らかに書いてしまうと、この本の面白いところがネタバラシになってしまうので、自粛しておくけれど。難しいと思って『風と共に…』に???が一杯ついてる方や、映画や小説の、定着したイメージから一度離れて、じっくり小説を読んでみたい方には、面白い本だと思う。 アレクサンドラ・リブリーの公認続編や、ヴィヴィアン・リーの評伝は読んだし、十分自分は詳しいわ、という方も、ざっと小説を読んだんだけど、という方も。笑ったり膝を打ったりしながら、きっと夢中で読んでしまわれるのではないだろうか。 ところで。本書に引用されていたミッチェル自身の書簡の訳がとても興味深くて、もし評伝や書簡集も出ているなら、ぜひ読んでみたい。ミッチェル自身は、周到に作品の大ヒットの名声から、一枚ヴェールを上手に身に着け、作品とはまた別の、自分の人生を生きた人のように思えたからだ。 面白い本に当たると、こうやって深堀りして行きたくなるから、読書ってやつはたまらない。
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私の中で風と共に去りぬフィーバーが来たものの語り合える人もなく、ただただエンディングに喪失感を覚え、私なりの答えが欲しくて購入。 この一冊を読んで何だか風と共に去りぬについて人と意見を交わしている感覚になって満足です。またいつだって人からの影響を受けるにしても自分の解釈でしか物語...
私の中で風と共に去りぬフィーバーが来たものの語り合える人もなく、ただただエンディングに喪失感を覚え、私なりの答えが欲しくて購入。 この一冊を読んで何だか風と共に去りぬについて人と意見を交わしている感覚になって満足です。またいつだって人からの影響を受けるにしても自分の解釈でしか物語は消化できないものなのだと改めて感じました。 私は岩波文庫で読んだので、著者の新潮の方にもいつかチャレンジしたいです。
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やや論理の詰めが甘い部分が気に掛かるが、いま現在の『風と共に立ちぬ』評論としてはかなりきめ細かく網羅されており、入り口にぴったりな一冊。特にマーガレットミッチェルと母、さらにその祖母との関係から分裂した彼女の女性観を引き出し、それがどうスカーレットとメラニーに影響を与えているのか...
やや論理の詰めが甘い部分が気に掛かるが、いま現在の『風と共に立ちぬ』評論としてはかなりきめ細かく網羅されており、入り口にぴったりな一冊。特にマーガレットミッチェルと母、さらにその祖母との関係から分裂した彼女の女性観を引き出し、それがどうスカーレットとメラニーに影響を与えているのかという部分はかなり説得力のある批評だった。スカーレットとメラニーはふたりでひとりというのは、読解としては分かるが、女性の分裂としては非常に痛々しい。そしてそれは二十一世紀の今も女性が抱えるひとつの痛みであり、わたしがこの物語に圧倒的な強度を感じたひとつのキッカケでもある。しかし、母娘関係の描写が見事であり共感性が高いということ、また女性の分裂したあり方を描き出すということ、それが20世紀前半のアメリカで女性の手によって行われたということごとと、今現在にこの分裂が私たちのあり方に何をもたらすかという問題はまったく別ですね。 レット=母説はこちらも説得力があるが、まったく救いのない話だ。レットの母性みたいな部分は、逆にわたしはマーガレットミッチェルの先進的なキャラ造形の把握力の凄さとして読んでいるので無視するとして、確かにエレンの死とレットの入隊がオーバーラップしているというのはありえる話だとおもった。しかし、それを取ると物語全体がまったく悲しい話になってしまう。スカーレットは母を追い求め、しかし捨てられ続ける話だし、最後まで母しか愛し、求めていなかったというのはあまりに悲しい。わたしとしては、レットはやはり他者としての男性(=異物)であり、それに出会い損ねた話として読みたいのだが…。結局、スカーレットはアシュリに萌え続けたことにより、現実的に対男性としては目が曇ってアシュリとも出会い損ねたし、レットとも出会い損ねていると考えると、本当に萌えって残念な感情なんだという風に思ってしまう。 アシュリの性欲の話は、わたしも本文を読みながら「こいつはやけに身体に言及するんだよなあ…」と思っていたので大変面白かった。アシュリ、つくづく可哀想な男である。最後にいくにつれてどんどん「こいつはなんなんだ…」という気持ちで読んだのだが、鴻巣さんの文章を読むと、それはわたしの若さの傲りな感じもしますね。 なんとまあ、多彩な読みができる小説か!わたしはレットの部屋に一晩メラニーが泊まった時、部屋ではなにが起こったのか。そのことばかり考えてしまう。
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鴻巣友季子さんの新訳を読み終えてから、手に取りました。 風と共に去りぬの世界をじっくり探検してみる水先案内人のような本で、彼女の視点、ひとつひとつが興味深かったです。 確かに、風と共に去りぬは、女性が女性を描いた物語で、作者が意識的か無意識にか、そこに込めたものに、翻訳者が共鳴...
鴻巣友季子さんの新訳を読み終えてから、手に取りました。 風と共に去りぬの世界をじっくり探検してみる水先案内人のような本で、彼女の視点、ひとつひとつが興味深かったです。 確かに、風と共に去りぬは、女性が女性を描いた物語で、作者が意識的か無意識にか、そこに込めたものに、翻訳者が共鳴して、読者である女性の私も共鳴してるとこがあるのかも知れません。この本を読んで、その視点に気が付きました。かの林真理子さんも、今、風と共に去りぬを題材に書かれているし。 今も、昔も、女性ならではの枠に押し込められている感覚はあり、その枠を思いっきり叩き壊したい衝動に駆られたり、その枠の中で、社会に受け入れられて生きているように見える一つ上の世代に反発を感じたり、しかし、ある時、一つ上の世代の女性が、枠にはまっているようで意外にしたたかに自分の能力を生かしていることに気がついたり、というのはあるのかも。スカーレットの母なるもの(エレンやメラニーや・・・)からの自立、親離れの物語として、読めるのだというのは、面白かったです。 もちろん、他にもいろんな視点から、風と共に去りぬは読めるし、そのたびに違う輝きを見せるのでは、と感じるだけでも、この本は面白かったです。
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鴻巣訳じゃないけど原作も読んでるのに、やっぱり映画の印象が強いんだなあ。「え、そうだっけ」「あれ、そんなこと書いてあったっけ」というのが多かった。物語に対してもだけど、アシュレの見方がちょっと変わった。
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