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草々不一 の商品レビュー

4.1

29件のお客様レビュー

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2019/09/02

良かった。とくにタイトルにもなっている一編がよかった。 短編8つ。 以下覚書。 紛物(まがいもの)/肥った芸者ふくのヒモになって暮らす浪人の信次郎、行きがかりで助けた若侍の悶着の種がじつは自分の過去と関係があり、、 青雲/貧乏旗本の三男で商家に奉公にでて、酒屋の丁稚として樽拾...

良かった。とくにタイトルにもなっている一編がよかった。 短編8つ。 以下覚書。 紛物(まがいもの)/肥った芸者ふくのヒモになって暮らす浪人の信次郎、行きがかりで助けた若侍の悶着の種がじつは自分の過去と関係があり、、 青雲/貧乏旗本の三男で商家に奉公にでて、酒屋の丁稚として樽拾いをしていた真吾が相次ぐ兄の死により家督を継ぐことになり、、 蓬莱/貧乏旗本の冷や飯食い四男に、舞い込んだ過分の婿養子縁組、しかし妻はどうやらいわくつき、、? 一汁五菜/大奥の江戸城本丸、御台所の膳所に努める料理人の伊織は、ある恨みを胸に抱えていて、、 妻の一分/大石内蔵助の飼い犬の目線で語られる大石家、忠臣蔵の裏話?江戸弁の語り口が耳障り良い 落猿/某中堅の藩の江戸留守居役を務める理兵衛、藩内外をめぐる己の役割とあらゆる駆け引きと苦悩、タイトルは掛け軸の絵になぞらえ、 春天/道場で父と兄と暮らす女剣士、芙希と、武者修行で訪れた二刀流の剣士、原数馬、短編にしておくのが惜しいラスト 草々不一/武道一辺倒で没字漢の隠居、忠左衛門は長年連れ添った妻に先立たれ失意モード、そこに妻から自分へ宛てた手紙が出てきて、、文盲と知りながら夫へしたためた文の真意を知るべく、老いの手習いをはじめるが、、 ※覚書は自分の記憶のための個人的なものです、) どれも良かった、妻の一分、春天、草々不一あたりは肉付けすれば良い映画にもできそう。でもラストの草々不一はほんとに秀逸、うまいなあ、ほろっと泣けた。さまざまな人間模様が詰まっていて、読み応えのある1冊だった、これは手元に置いておきたい。オススメ。

Posted byブクログ

2019/06/27

8編からなる江戸時代の武士について描かれているのだが、、、どれもこれも、ググっと引き込まれてしまう。 「紛者」なんて、武士であればこそ、断れない事情もあり、命を賭けないといけないなんて、、、、 「青雲」酒屋の樽拾いという仕事もこなし、手代になろうとしていた矢先に、兄の死で、武...

8編からなる江戸時代の武士について描かれているのだが、、、どれもこれも、ググっと引き込まれてしまう。 「紛者」なんて、武士であればこそ、断れない事情もあり、命を賭けないといけないなんて、、、、 「青雲」酒屋の樽拾いという仕事もこなし、手代になろうとしていた矢先に、兄の死で、武士の跡目相続にさるのだが、、、この当時から、鬘があったとは、、、面白い。 「蓬莱」旗本への婿入りしたのだが、最初に妻から、3つのお願いを聞かされるが、どれも、妻の優しさからである。 「一汁五菜」江戸城本丸の膳所、、、最近のある店の従業員がゴミ箱へ投げ捨てたのをまな板の上に戻すように、、、、最初のシーンの芥溜の竹籠に切り身の魚の片身を放り込み、その後お持ち帰りに・・・給料の少なさに、料理人は、料理屋で、アルバイト稼業である。 「妻の一分」赤穂浪士の物語りを、犬が解説するところなんて、面白い。 「落猿」江戸の留守居役が、新人の者からの無礼討ちに対して、偽証していた事への采配を2つの選択肢から選ばせる。「しかるべく」・・・・ 「春転」剣術指南どころの娘と二刀流の修行人。恋心を抱く娘だが、修行人は妻帯者、、、、父も、そして兄も亡くしながら、、、所帯を持たなかった娘の前に、現れた片腕の武士は・・・・ 「草々不一」妻に先立たれた隠居の夫、文字など読まなくても済むと武芸のみに生きてきたのだが、、、妻が、残した手紙を読むことが出来ず、手習い所へ、、、、 亡き妻と、息子の優しい策略であった。 読み易く、完結して行くたびに、心が、ホンワカするのは、作者の力であろう。

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2019/07/09

「福袋」で庶民を巧みに描いたまかてさん、今度は武士を描いて、その筆致はますます冴えています。 武士の生き方、心情を、まるでそばで見たかのように表現してみせる手腕は惚れ惚れしてしまう。この時代に、瞬く間に引き込まれていきます。 ただ、庶民の方は共感できることが多かったのですが、如...

「福袋」で庶民を巧みに描いたまかてさん、今度は武士を描いて、その筆致はますます冴えています。 武士の生き方、心情を、まるでそばで見たかのように表現してみせる手腕は惚れ惚れしてしまう。この時代に、瞬く間に引き込まれていきます。 ただ、庶民の方は共感できることが多かったのですが、如何せん武士の生き方は理解できかねることも多く、深く入っていけなかったところもありました。敵討ちとか、理不尽な道理に、武士は立ち向かっていかなければならなかった。 そんななか、文盲の武士が妻の手紙を読むために手習いをする表題作は、じんときました。 他にも、オチが秀逸な「蓬莱」「落猿」芙希がいじらしい「春天」など、どれも素晴らしかったです。

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2019/05/29

江戸時代半ばから幕末にかけての、様々な武士や武士を取り巻く人々のドラマを描いた短編集。 表題作は特に素晴らしかった。 武士に学問など要らぬ、武芸をしっかり磨いて大樹公(将軍様)をお守りすれば良いという、元徒衆のご隠居が、妻が死の直前に書いたという手紙を息子から受け取る。 自分とは...

江戸時代半ばから幕末にかけての、様々な武士や武士を取り巻く人々のドラマを描いた短編集。 表題作は特に素晴らしかった。 武士に学問など要らぬ、武芸をしっかり磨いて大樹公(将軍様)をお守りすれば良いという、元徒衆のご隠居が、妻が死の直前に書いたという手紙を息子から受け取る。 自分とは違い書道に長けていた妻が、文字を読めない自分に託した文には何やら意味深な言葉が書いてあるが、何を書いているのか分からない。 そこで長年の考えを曲げて、手習いに通うことにしたのだが、腕白少年やかしましい娘たちに混ざって文字を習ううちにご隠居に新しい視界が開けてくる。 自分とは違い、学問に長けてその力で出世街道をひた進む息子との微妙な関係もどうなるのか、亡くなった妻の「不一」に込めた気持ちと夫が読めない手紙を託す気持ちが感動的だった。 他に、 世をすねて牢人者となり深川芸者のヒモとして暮らしていた男がある出会いから武士の一分を思い起こす「紛者」 小普請組の就職活動の悲喜こもごもをコミカルに描いた「青雲」 部屋住みの行き遅れ男に降って湧いた逆玉の輿縁組の行方「蓬莱」 御台所の料理人が長い長い時間をかけて企んでいたあること「一汁五菜」 大石内蔵助の妻りくと子どもたちを見守ってきた犬の視点で描く「妻の一分」 江戸屋敷聞番として政治の裏表を知り尽くす武士ゆえの苦悩と覚悟「落猿」 道場の娘に生まれ武術を極めることに喜びを感じていた主人公の前に現れた、二刀流の男「春天」 いずれも短いながらそれぞれのドラマがきっちりと描かれていて読み応えがあった。 武士の一分、プライドというものは命より重い物でそれにかける思いが時に痛々しく、時にコミカルに描かれているのも良かった。

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2019/05/07

武家には武家なりの生きづらさがあり、それゆえの生きざまがあった。 という当たり前のことに改めて気づかされる。 本書の各篇はどれもそれぞれの人生に寄り添った、味わい深い手練れの仕事だ。

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2019/05/01

どの短編も味わい深いものだったけれど、私の一番のお気に入りは何と言っても表題作の草々不一。武骨な隠居した老武士、前原忠左衛門とその亡くなった妻のお話。それが可愛くてほっこりして感動でした。

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2019/04/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2014年に「恋歌(れんか)」で直木賞を受賞した朝井まかてさんの短編集。 表題作を含む8編で構成されているが、いずれも素晴らしい。 最初の「紛者(まがいもの)」を読むと、連作集かな?と思うが、一つ一つの短編に繋がりはない。 しかし、いずれの短編もそうであるが、その短編をベースにして長編を生み出すことは可能。それほどの広がりを感じる。

Posted byブクログ

2019/04/22

朝井さんのそんなに笑わない方の短編。 ひとつひとつに味があって、面白かった。 特に「妻の一分」が、私としては、最高だった。赤穂が馴染み深い土地なこともあり、イメージしやすかったことに加え、赤穂浪士の話が面白い視点で書かれている。この話、たぶん、ずっと忘れないと思う。

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2019/04/18

武士階級にスポットライト当てて 身分制度から生まれる その生きづらさや 反対に守った矜持を 鮮やかに語ってくれています なんとなく 現代の型にはまった 生きづらさに つながるような気がする そして 窮屈だなぁと思いながらも 己の分をわきまえて 日々を過ごす姿に なぜか 共感してし...

武士階級にスポットライト当てて 身分制度から生まれる その生きづらさや 反対に守った矜持を 鮮やかに語ってくれています なんとなく 現代の型にはまった 生きづらさに つながるような気がする そして 窮屈だなぁと思いながらも 己の分をわきまえて 日々を過ごす姿に なぜか 共感してしまうんですよね

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2019/04/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

以前読んだ『福袋』は江戸の庶民の日常をユーモラスに描いた短編集。 今回は江戸の武士達の喜怒哀楽を描いた短編集。 今回の短編集の中で『蓬莱』『春天』も良かったけれど、一番は表題作『草々不一』。 漢字を読めない隠居侍が亡き妻が遺した手紙を読むため、恥を忍んで庶民の子供らに混じって手習塾に通う話。 妻が書いた手紙の内容が知りたくてヤキモキしたり、子供相手にムキになったりと、大人気ない忠左衛門の姿が実に微笑ましい。 無事、最後の一行に至るまで自力で読みきった忠左衛門、褒めてもらえて良かったね。 最後はほろりとなった。 妻は何でもお見通しである。 「何やら胸が一杯で、とても言い尽くせぬ思いだ。これぞ、不一であるのだろう」 恥ずかしながら「不一」という言葉を初めて知った。

Posted byブクログ