帰れない山 の商品レビュー
仕事や家庭生活を2番目にして、「山」を愛してきた女性を知っている。喜寿のお祝いを家族がするといっていると、うれしくなさそうでもないおしゃべりを先日聞かされた。彼女に、まず最初に薦めたい。 読み終わったばかりで、うまくいえないが、「山」そのものを描いて、ここまで一気に読ませる作...
仕事や家庭生活を2番目にして、「山」を愛してきた女性を知っている。喜寿のお祝いを家族がするといっていると、うれしくなさそうでもないおしゃべりを先日聞かされた。彼女に、まず最初に薦めたい。 読み終わったばかりで、うまくいえないが、「山」そのものを描いて、ここまで一気に読ませる作品がかつてあっただろうか。 https://www.freeml.com/bl/12798349/1069459/
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自然の描写がとても美しく丁寧で読んでいて気持ちよい。成長するとともに伝わってくる父親の心情、二人の少年の人生、その根底に流れる変わらないもの。深い友情。感動しました。
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ミラノから北イタリアのグラーナ村に毎年両親と夏を過ごしにくるピエトロ。村の牧場の少年ブルーナとピエトロは、ともに多くを語らないが夏の間の友人として、ともに育っていく。山を愛し、山の暮らし以外に考えられないブルーナ。けして裕福ではないブルーナは、ピエトロの両親に信頼され、我が子のよ...
ミラノから北イタリアのグラーナ村に毎年両親と夏を過ごしにくるピエトロ。村の牧場の少年ブルーナとピエトロは、ともに多くを語らないが夏の間の友人として、ともに育っていく。山を愛し、山の暮らし以外に考えられないブルーナ。けして裕福ではないブルーナは、ピエトロの両親に信頼され、我が子のようにかわいがられ、ピエトロと共に成長していく。 大人になるにつれ、それぞれの道を歩んでいるように見えた二人だが、ピエトロの父の死を機に、二人でピエトロが父から残された山小屋を二人で修復することになる。 北イタリアのアルプスを望む山村ではぐくまれる二人の友情と、ピエトロと父との確執。現代社会の中では、ちょっと変わり者と思われる二人の山男らしい友情を清冽に描く。 モンテローザを望む北イタリアの空気が感じられるような良い物語だった。
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プロローグから、ぐいっと引き込まれる。 本書を読んでいた1週間余り、僕は北イタリアの山村に滞在していたのかもしれない。美しい山と静かな湖、清冽な渓流は冷たく喉を潤す。牛が牧草をはんでいる風景に、夜ごと浸っていたのだと思う。 主人公の少年は父親との関係に悩み、やがて決裂する...
プロローグから、ぐいっと引き込まれる。 本書を読んでいた1週間余り、僕は北イタリアの山村に滞在していたのかもしれない。美しい山と静かな湖、清冽な渓流は冷たく喉を潤す。牛が牧草をはんでいる風景に、夜ごと浸っていたのだと思う。 主人公の少年は父親との関係に悩み、やがて決裂するが、父の遺したものに救われる。旧友との関係もその一つだ。旧友と自身の限られた時間の交錯に友情は深まり、互いにかけがえのない存在として感じ合うようになる。 父との軋轢、人生への焦燥、豊かな母性に囲まれた彼ら二人は不器用に生き方を模索しているようだ。また、小説の終わり方はドラマチックでも何でもないが、強く印象に残る。 起伏のないストーリーだが、強く静かに、心に染み入る小説だった。
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煌めくような自然、牛やチーズ作りの日々などの描写がゆっくり丁寧で暖かく、心地よい。山の哲学を啓示してくれる山岳小説としても読めるし、父子もの、友情もの、郷愁ものとしても読める。 『ニューシネマパラダイス』を思い出すような感触。 クラカワー『荒野へ』も思い出したが、やはり影響を受...
煌めくような自然、牛やチーズ作りの日々などの描写がゆっくり丁寧で暖かく、心地よい。山の哲学を啓示してくれる山岳小説としても読めるし、父子もの、友情もの、郷愁ものとしても読める。 『ニューシネマパラダイス』を思い出すような感触。 クラカワー『荒野へ』も思い出したが、やはり影響を受けているようだ。 穏やかな悲しみ。素晴らしい。 誰にも” 帰れない山” があるのだと思う。
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