帰れない山 の商品レビュー
5月に上映予定の映画「帰れない山」の原作。イタリアアルプスが舞台で、比較的ストーリーは淡々と進むのだけれど、情景の描写が美しくて好きだ。映画も映像が綺麗だろうから期待している。 ストーリーは主人公ピエトロと父ジョバンニ、そして山で生きる少年ブルーノという、タイプの違う山男たちをメ...
5月に上映予定の映画「帰れない山」の原作。イタリアアルプスが舞台で、比較的ストーリーは淡々と進むのだけれど、情景の描写が美しくて好きだ。映画も映像が綺麗だろうから期待している。 ストーリーは主人公ピエトロと父ジョバンニ、そして山で生きる少年ブルーノという、タイプの違う山男たちをメインに進む。派手さはないけど、切なさを含んだしっとりした余韻が残る。
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タイトルの意味が最後でやっとわかる(ヨミが外れた)。登場人物のキャラクタ、育ちと生き方が繊細に描かれている。
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ブルーノが山に消えた後の人生をピエトロがどう生きるのか。ブルーノの娘はいつか山に戻ってくるだろうか。ブルーノには本当に山以外で生きることはできなかったのか…日本での日常・現実を忘れ、美しい山の風景のイメージの中でひと時を過ごせ、余韻の残る良作だと思う。 ただ、イタリアが舞台で、友人関係を描いた小説というと、すぐに「ナポリの物語」が思い浮かぶ私個人にとっては、この物語は「ナポリの物語」ほどには刺さらなかった。
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「いきている山」ですっかり山岳小説(と言っていいものか)に漬かりたくなって買った本の一冊なんだけど、これもすごく良かった。山岳小説で、家族小説で、友情の話で…。著者が自分の幼少期にヒントを得、取材を重ねたという山や廃墟の村の描写も生き生きとしていて楽しく、読んでいてわくわくする。その良さを自然に伝えてくれる翻訳も素敵だと思う。 モンテ・ローザの山々のふもと村での友人ブルーノとの交流が主な話になるけれど、主人公は少年時代は同じ季節の一定の期間しか訪れることができない。そして村を訪れなくなって大人になり、父の死をきっかけに長い時間を山でブルーノと過ごすことになるのだが、季節ごと、時間ごとに全く表情を変える山をそこで初めて知ることになる。そして同じように、友人や父、母にも、違う角度から光が当たり、少年時代とは全く違った様相が徐々に見えてくる。 山のことも人のことも、知り尽くすことはできない。それでも共に過ごしたかけがえのない時間があり、場所があり、決して「帰れない山」がある。読み終わった後に心にわんわん反響してくる、厳しくも温かく、生き物のにおいのする小説だった。そう、小説中は様々に孤独がほのめかされているのに、動物や植物も山も含め、たくさんの生き物がうごめいているのが不思議で、それでも底に透徹した孤独が身に染みてくる。それがただかなしくはないのが、とても好き。
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ここ最近は新潮クレストブックスしか読んでない。笑 北イタリアの山岳地帯を舞台に、ミラノで育った少年ピエトロと山で育った少年ブルーノの友情と人生を描いた作品。 山を舞台にした物語やノンフィクションが好きで、今まで数十冊読んできたが、海外小説では初めてかも知れない。 同じ作者の『フ...
ここ最近は新潮クレストブックスしか読んでない。笑 北イタリアの山岳地帯を舞台に、ミラノで育った少年ピエトロと山で育った少年ブルーノの友情と人生を描いた作品。 山を舞台にした物語やノンフィクションが好きで、今まで数十冊読んできたが、海外小説では初めてかも知れない。 同じ作者の『フォンターネ 山小屋の生活』を楽しむために手始めに、と読み始めたのだが、予想以上に良かった。 淡々とした語り口なのに、読み難い無骨さや無愛想さはなく、物語の奥行きと芯の強さみたいなものを感じる。 北インドには何度も滞在しているのでヒマラヤ山脈は馴染みがあるが、イタリアはおろかヨーロッパには行ったこともないので遠い感じ。検索したりGoogleアースで確認しつつ読み進めた。 でも、途中からその必要はなくなった。大袈裟な表現とは無縁の文章は、パチパチと木のはぜる暖炉の前で訥々と語るお話を聞いているよう。自然と山の情景が豊かに広がり、沢の音が聞こえ、焚き火の匂いなんかがしてくるようだった。 都会の少年と山の少年の友情と人生の葛藤を描いたある意味激しい物語だけれど、静寂を感じながら読んだ。 ジャンルはまるで違うが、よしもとばななさんの本を読むときに感じるものと同じ気がする。 都会生まれのピエトロと山生まれのブルーノの少年時代は、まるで映画「スタンドバイミー」のようで、その季節はやっぱり夏だ。 だがいつしか交流も途絶え、ピエトロは都会に移り住み、父とは衝突したまま疎遠になってしまう。そして父の死、その死をきっかけに山に戻るピエトロ。 和解出来ないまま逝ってしまった気難しい父親が山の家に遺した地図。その地図に込められた父の想いに気付くシーン、その地図を辿るように山を登るシーン、そして山頂のノートに父の筆跡を見つける場面は胸が熱くなった。 父の死によって再び始まるピエトロとブルーノの交流は、ぎこちなさの中にお互いに対する揺るぎのない信頼と尊敬が感じられた。 大事に想うからこそ、うまく伝えられなかったり、ぞんざいな態度になってしまったりするのは、全人類共通のものなんだな。 今まで読んだ山が舞台の小説は、山を登って山の世界に入り込んでいく厳しさや過酷さ、その中に輝く美しさを強く受け取ったものだが、この物語は違う。 けっこうすんなり登ってしまう。 それは、山が舞台だけれど切り口が違うからなんだなと思った。 長い人生の中でいつも真ん中にある山。 曼荼羅の真ん中にそびえる須弥山のように、二人にとってかけがえのない存在になっていく山。 読了後は、静かな余韻に包まれた。この余韻はなんだろう。 と、これも感動のひとつなんだと気づいた。静かな感動の余韻。 映像になったら素晴らしいだろうな、と思っていたら映画化されて、この5月に日本で公開されるらしい。楽しみだ。
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山との関わりに距離を持つピエトロ、山の生活に一途なブルーノ、二人の友情は深い。孤独で悲しいブルーノ。
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イタリアの山を舞台に家族愛や友情を感じる一冊 子供の頃の友情が大人になるとまた違う形になっていくのが伝わる 山の美しさを知られた反面、山の厳しさを感じました 翻訳は優しい言葉で綴られていて読みやすかった
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読書記録 2022.10 #帰れない山 #パオロコニェッティ 山の峰に深々と降り積もる雪のように、心にしみる物語。 風景の描写がとても濃密で、自分では訪れたことのないアルプスの景色を少しでも頭に描こうと、一行ずつ丹念に読んだ。(映画化も進行中とのこと。公開された際には必ず観に...
読書記録 2022.10 #帰れない山 #パオロコニェッティ 山の峰に深々と降り積もる雪のように、心にしみる物語。 風景の描写がとても濃密で、自分では訪れたことのないアルプスの景色を少しでも頭に描こうと、一行ずつ丹念に読んだ。(映画化も進行中とのこと。公開された際には必ず観に行きたい) 「湖面は、絶え間なく揺れ動く夜空のようだった。風が、一方の岸から反対側の岸へと小波の連なりを追い立てる。すると、流線に沿って黒い湖面に並んでいた星々の光が消えてかと思うと、今度は別の方向から光るのだった。」 原題である八つの山を巡る人生と、中央の須弥山を極める人生。ピエトロとブルーノの人生が読み手に幸福のあり方を問いかける。 その問いも全て飲み込んで、アルプスの峰々は今日もそこにある。 #読書好きな人と繋がりたい #読了 #新潮クレストブックス
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北イタリアの山岳地帯に住むブルーノと、ミラノ育ちのピエトロの心の交流を描いた本作。そして2人を繋ぐ役割としてピエトロの父親が物語の軸、キーパーソンになっている。ピエトロ同様に著者も、幼い頃から父親との登山に親しんでおり、本書は彼の自伝的小説とも言える。 生きてきた中で山登りと呼...
北イタリアの山岳地帯に住むブルーノと、ミラノ育ちのピエトロの心の交流を描いた本作。そして2人を繋ぐ役割としてピエトロの父親が物語の軸、キーパーソンになっている。ピエトロ同様に著者も、幼い頃から父親との登山に親しんでおり、本書は彼の自伝的小説とも言える。 生きてきた中で山登りと呼べる経験は数えるくらいしかしていない。そのせいか少年期のピエトロが経験したような登山中の息切れや吐き気は何となく想像が出来ても、登山の喜びや山への愛情に関してはあまりピンと来なかった。映像化されてようやく完全に物語を味わえるレベルなのが、ちょっぴり悔しい。 でも弱音ばかり吐いてはいられず、何とか想像を巡らそうとしたのも事実。ピエトロも終わりにかけて山への郷愁を覚えていったんだし。 終わりにかけてと言えば、2人の友情も段々確かなものになっていく。ピエトロが自然と上手く共存しているブルーノに憧れを抱いていた一方で、当のブルーノは心を許していたには違いないがぶっきらぼうだった。 それが長い年月の末に「今でも友達だよな?」とブルーノ側が確かめるようになっていて、こちらとしてはジーンと来るしかなかった。(波瀾万丈まではいかずとも、ここに行き着くまでに色々と紆余曲折があったから…) 「ここに登ったのは何年ぶりだろう。誰とも会わず、麓まで下りることもなく、みんなで山にいられたら、どんなに素晴らしいだろう」 母親やブルーノの証言から、また山頂に設置された登山者のノートから、父親の足跡や想いが明らかになっていくのも特筆に値する。 特に2人のことを、遠い昔に失った無二の親友と自分に投影していると気づいた時には胸が熱くなった。日常生活では不機嫌な傍ら、山への執着が人一倍強いという、自己中な父親としか思えていなかっただけに尚更だ。 乏しい登山経験同様、今まで読んだ山関連の小説も『塩狩峠』『八甲田山 死の彷徨』と、かなりハードなものに限られていたが…… ここで初めて例外を知ることになった。 文章が優しい。優しく包んでくる。あれだけピンと来ていなかったのに、2人の遊び場だった沢や父親と3人で向かった氷河といった山のイメージも、ぼんやりとだが目に浮かぶようになっていた。
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なにで読んだのか、いつ読んだのか、全然覚えていないのだけどずっと心の中に残っている文章があります。「長い一本道を向こうから歩いてくる二人の男がいる。一人は年老いた男で、一人は若い男である。ふたりはずっと無言のまま言葉は交わしていない。だとしたら二人は父子である。」たぶん記憶の中で...
なにで読んだのか、いつ読んだのか、全然覚えていないのだけどずっと心の中に残っている文章があります。「長い一本道を向こうから歩いてくる二人の男がいる。一人は年老いた男で、一人は若い男である。ふたりはずっと無言のまま言葉は交わしていない。だとしたら二人は父子である。」たぶん記憶の中で原典とは違う文章になっていると思いますが、でも忘れられません。自分も父とのコミュニケーションに居心地の悪さを感じていた十代のころに出会った言葉なのではないか、と思っています。この本を読んで、思い出したのはその言葉です。父親の息子に向ける想いと、それを受け取る息子の心は必ずタイムラグがある…同じ瞬間には繋がらないものなのでしょう。そんな父との関係が縦糸です。横糸は逆に時間を経てもそれをものともしない子どもの頃に一緒に過ごした友達との関係。こちらも自分にとってのブルーノの顔が浮かび上がりました。ただ自分も彼も時間の流れの中で変わり過ぎてこの物語のようにふたたびの関係を蘇らせることは出来ませんでしたが。この縦糸と横糸を編み込む織機はアルプスの山々。自動織機のようにガチャガチャ動くのではなく春夏秋冬の不変のテンポでゆっくり編み込まれていくのです。時が経たないと見えてこないこと、時が経っても変わらないもの、時が経つと失ってしまうもの、山という舞台がなければ見えてこない織物です。「山と父と友」というタペストリー。胸の中に起こるムズムズは自分が男だからなのでしょうか?女性もこの物語に心揺れるのでしょうか?いつも山を楽しんでいる友人と山歩きしながら、この本の話をしたくなりました。
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