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火の鳥(角川文庫版・新装版)(10) の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2026/02/27
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7世紀(古代)と21世紀(未来)の物語が交互に進行させながら、「人はなぜ争うのか」「宗教とは何か」という重厚なテーマを扱い、シリーズ最長のボリュームを誇るエピソード。 物語の二つの時間軸(7世紀と21世紀)に共通して、「新しい思想(仏教/光一族)」が「古い思想(産土神/シャドー)」を駆逐しようとする構図を浮き彫りにし、「信仰」というシステムがいかに争いの火種や支配の道具になり得るかを描く傑作。 「光」が勝てば「影」が生まれ、新たな支配が始まればまた反乱が起きる……という、人類が繰り返す争いの輪廻の悲劇。 ハリマは異形として苦しみながら生きるものの、最終的には魂はそうした苦しみを超えてスグルに輪廻する。とても美しい幕切れだった。 霊界対戦等、少年漫画の要素をしっかり組み込みながら、過去(歴史)と未来(SF)の二つの世界を完璧に往来させる構成がとにかく見事。読みながらスケール感にとにかく圧倒された。 個人的には、「未来編」や「鳳凰編」と並んでトップクラスに好き。

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2025/03/21

1人の人間(王)が、民の信じる神が何であるかを決めてはいけない。 220Pにある、大海人皇子が兄から暗殺されることに気付くシーンから、一時的に自身が出家し兄を安心させる策を思いつくシーンへの転換が好き。

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2024/12/21

 「太陽編」は、連載の舞台となった『野生時代』の発行元である角川書店社長の角川春樹氏が、壬申の乱を舞台にした「火の鳥」を書いて欲しいとの慫慂により実現したとのこと。  主人公となるのは、白村江の戦いに敗れた百済の国王一族のハリマ。彼は顔の皮膚を剥がれて狼の皮をかぶらされた。何とか...

 「太陽編」は、連載の舞台となった『野生時代』の発行元である角川書店社長の角川春樹氏が、壬申の乱を舞台にした「火の鳥」を書いて欲しいとの慫慂により実現したとのこと。  主人公となるのは、白村江の戦いに敗れた百済の国王一族のハリマ。彼は顔の皮膚を剥がれて狼の皮をかぶらされた。何とか命を取り留めたハリマは医者のオババに助けられたが、敵軍の来襲を前にし、オババの言うがまま海を渡り倭の国に向かうことになった。倭国に辿り着いた彼らは、狗族に出会い、命を助けられる。彼らは産土神としてこの地と人間を守護してきたのだが、そんな彼らの前に渡来した外つ国の仏教が現れ、この土地を明け渡せと侵攻が始まる。  このような展開に、天智天皇と弟大海人皇子との争いが絡んでくる。  またハリマの苦難する夢の中で、地下組織の殺し屋のような少年の姿が度々現れる、一体彼は何者で、何をしているのか、というのが横スジのようなもので、どのようにこの古代の時代と未来とが絡んでくるのか、興味が尽きない。

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2024/04/15

なんておもしろいんだ… ハリマのセリフ「なにが正しくてなにがおかしいかよく見きわめます。その上でなにと対決すべきか考えたいんです…」に付箋した。 目が死んでないのよこの人。

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2023/12/24

幼少時に目にして怖-ッってなった場面、ハリマのあの、顔の生皮剥がされて狼の頭の皮を被せられる場面、これだったのか…。 こいつぁトラウマものですよ…。 昔から土着信仰として根付いていた神様が仏教に根絶やしにされるっていうの、怖いな……。 同じ宗教でも、仏様たちまで何かの種族のよう...

幼少時に目にして怖-ッってなった場面、ハリマのあの、顔の生皮剥がされて狼の頭の皮を被せられる場面、これだったのか…。 こいつぁトラウマものですよ…。 昔から土着信仰として根付いていた神様が仏教に根絶やしにされるっていうの、怖いな……。 同じ宗教でも、仏様たちまで何かの種族のようなキャラクターとして扱って、それも粗暴で乱暴で恐ろしい種族として描いてるの、て、手塚治虫…凄過ぎるて…。

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2021/01/23

「火の鳥」は手塚治虫のライフワークともいえる一大シリーズである。 手塚の構想としては「火の鳥」全体として、過去と未来を行き来し、最後は現在で幕を閉じる形を取ろうとしていたようだが、自身の死によって、現代編は描かれぬままに終わった。刊行されているのは「ギリシャ・ローマ編」「黎明編...

「火の鳥」は手塚治虫のライフワークともいえる一大シリーズである。 手塚の構想としては「火の鳥」全体として、過去と未来を行き来し、最後は現在で幕を閉じる形を取ろうとしていたようだが、自身の死によって、現代編は描かれぬままに終わった。刊行されているのは「ギリシャ・ローマ編」「黎明編」「未来編」「ヤマト・異形編」「鳳凰編」「復活・羽衣編」「望郷編」「乱世編」「宇宙・生命編」「太陽編」である。 シリーズの軸となるのは、火の鳥=鳳凰だ。西欧のフェニックスにも似て、永遠の命を持つとされ、死が近づくと火の中に飛び込んで蘇ると言われる。また、その生き血を飲めばそのものも永遠の命を持つという不思議な力を宿す鳥である。 人間たちはその血を欲し、永遠の命を得ようとする。歴史上の事件や文明が発達した未来を舞台に、人々の欲望と希望が渦巻くさまを、「火の鳥」と絡めて描いていく。 「太陽編」はシリーズ中でも最も長く、晩年近くに描かれた作品にあたる。 単行本は何種類か出ており、この角川文庫版では全13冊。うち太陽編は10~12巻の上・中・下巻で構成される。 本作では、過去と未来が交互に描かれる。 一方は、古代。天智・天武天皇の頃である。主人公はハリマと呼ばれる百済国王の一族。白村江の戦いで敗れて囚われの身となり、顔の皮を剥がれて狼の頭を被せられる。九死に一生を得たものの、顔は狼の異形の身となった。将軍・阿倍比羅夫を助け、日本へと渡る。 一方は、近未来。分断が進んだ社会である。「光」に属する人々は贅沢な暮らしを楽しみ、「影」の者たちは貧しく抑圧された生活を送る。「影」の殺し屋少年、スグルは「光」の本拠地に乗り込み、政権の転覆を図る。 ハリマとスグルは互いに夢で互いと入れ替わる。夢の中で、ハリマはスグルとなり、スグルはハリマとして生きる。 どちらの世界でも顕著なのは宗教闘争である。 過去では仏教の台頭に伴って、土着の神たちが虐げられ、苛まれる。ハリマは、アイヌを思わせるオオカミに似た眷属・狗族と親しく交わり、仏教の使徒らと闘う。 スグルが暮らす未来では「光」の教祖が社会を牛耳っていた。彼らはかつて、宇宙で火の鳥を捕獲していた。「火の鳥」をあがめるものは「光」の一員となり、そうでないものは「影」として地下社会に押し込められた。 どちらの社会でも実は、その宗教はいずれも権力の座からは失墜する。その代わりのように新たな宗教が打ち立てられる。 作中に登場する火の鳥は言う。 宗教とか人間の信仰ってみんな人間がつくったもの そしてどれも正しいの ですから正しいものどうしのあらそいはとめようがない わるいのは宗教が権力とむすばれた時だけです 権力に使われた宗教は残忍なものですわ シリーズ全体として顕著なのは、「正史」なるものに手塚が向けるシニカルで鋭い批判の眼差しである。「正しい」とされるもの、それは果たして本当に「正し」かったのか。 壮大な物語の果てに、ハリマとスグルの旅は、1つになって結ばれる。 彼らが駆け抜けた先に見えるものは何か。 圧巻のラストまで目が離せない。

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