神は、脳がつくった の商品レビュー
脳の進化から見る人類の心の進化の歴史。なぜ同じタイミングで世界各地に文明が花開いたかなど、平行進化の仕組みが鮮やかに書かれています。我々の脳が進化したことで他者の気持ちが分かり、未来を見通せ、信仰が生まれたのです。
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脳の仕組みや機能について書いた部分は、読みこなすのが難しめ。ここは、はしょって、見ているだけで脳が相手の行動をなぞるように自分の脳が働いているというミラー理論と、相手の気持ちになりかわって感じる一次的こころの理論、間に間接的な事情が絡む二次的こころの理論。機能については、脳の各機...
脳の仕組みや機能について書いた部分は、読みこなすのが難しめ。ここは、はしょって、見ているだけで脳が相手の行動をなぞるように自分の脳が働いているというミラー理論と、相手の気持ちになりかわって感じる一次的こころの理論、間に間接的な事情が絡む二次的こころの理論。機能については、脳の各機能をつなぐ部分が賢いといわれている動物がその内部にあるのに対して、より格段におおきくなって脳全体を包むように灰白質を形作っていること、それが時間を認識する機能に大きくかかわりをもつことを、押さえれば、あとの部分はその通りに読んで、分かりやすく、興味深い。こころがあるということは、神を認識する脳と、人間の作り出した社会のありさまと対置される。 能力の発達につれて、社会が産み出され発展していく。この本の内容は、一言では、言い表せないが、もやもやしたものがようやくひとつにまとまっていく、驚きに満ちた本です。
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E.フラー・トリー(1937年~)は、マギル大学医学部博士課程修了、スタンフォード大学修士課程修了(人類学)、スタンフォード大学医学部勤務を経て、スタンレー医学研究所研究部副部長。専門は精神医学。 本書は、2017年発表の『Evolving Brains, Emerging Go...
E.フラー・トリー(1937年~)は、マギル大学医学部博士課程修了、スタンフォード大学修士課程修了(人類学)、スタンフォード大学医学部勤務を経て、スタンレー医学研究所研究部副部長。専門は精神医学。 本書は、2017年発表の『Evolving Brains, Emerging Gods:Early Humans and the Origins of Religion』の全訳で、2018年に出版された。尚、松岡正剛の有名書評サイト「千夜千冊」の1786夜(2021年11月9日)で取り上げられている。 本書は、進化論に基づく脳の進化が神及び宗教を作ったことを主張・説明したものであり、人類史の中で神・宗教の起こり(と変化)を論じているという点において、ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー『サピエンス全史』(2011年に原書発表)や社会学者・広井良典の『無と意識の人類史』(2021年)等ともオーバーラップするが、更に、著者の専門領域である人類の脳の進化の研究(ヒト族の頭蓋骨の研究、古代の遺跡の研究、ヒトや霊長類の死後脳の研究、生きているヒトや霊長類の脳画像研究、子どもの発達に関する研究)の視点が加えられており、実に興味深い内容となっている。また、欧米人の著作にしばしば見られる、冗長なエピソードや日本人の思考パターンに馴染まない部分もほとんどなく、とても読み易い。 人類の脳の進化理論に基づく説明は、概ね以下である。 ◆<第1段階>約200万年前に、ホモ・ハビリスとして、脳の著しい大型化や知能全般の大幅な向上を経た。 ◆<第2段階>約180万年前以降、ホモ・エレクトスとして、自分を認識できる能力を身に付けた。 ◆<第3段階>約20万年前以降、古代型ホモ・サピエンス(ネアンデルタール人)として、他者の考えを認識できる能力を身に付けた(=「心の理論」を持った)。 ◆<第4段階>約10万年前以降、初期ホモ・サピエンスとして、自分自身の考えについて考える内省能力を発達させた。 ◆<第5段階>約4万年前以降、現代ホモ・サピエンスとして、「自伝的記憶」(自分を過去だけでなく将来にも投影する能力)を持った。これにより将来の計画を立てられるようになり、また、自分の死、死んだ祖先がいる世界などを想像できるようになった。 ◆8,000~7,000年前、農業革命(農耕の開始)に伴って、生者と死者の関係における革命(祖先崇拝)が起こり、祖先たちの一部がだんだん神に祀り上げられて、最初の神々が出現した。 ◆2,800~2,200年前、増加した人口を抱える巨大な帝国を統治するために、体系化された神・宗教が必要になり、儒教、ヒンドゥー教、仏教、ゾロアスター教、ユダヤ教等が生まれた。この時代を哲学者ヤスパースは「枢軸時代」と呼んだ。 そして、著者は、「脳の進化理論では、なぜ神々が現れたのかと、なぜ神々が、実際のそのときに現れたのかの両方を説明でき」、また、「並行進化に基づき、・・・神々が地球上のさまざまな場所で別々に姿を現したこと」も「どのようにして地域社会の司法的、経済的、社会的なニーズが地域社会の霊的なニーズと結びつくようになったのか」も説明できるとしている。 神・宗教の起こり(と変化)を、脳の進化に基づく人類史の中で解き明かした、興味深い力作といえる。 (2022年2月了)
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脳の進化を人類学、脳科学、考古学を用いて解き明かす。ホモ・ハビリスとして200万年前に脳の著しい大型化と知能の向上をみた。180万年前以降ホモ・エレクトスは自分を認識できる知識を持った。そして20万年前以降古代型ホモ・サピエンスとして他者の考えを認識できる「心の理論」を身に着けた...
脳の進化を人類学、脳科学、考古学を用いて解き明かす。ホモ・ハビリスとして200万年前に脳の著しい大型化と知能の向上をみた。180万年前以降ホモ・エレクトスは自分を認識できる知識を持った。そして20万年前以降古代型ホモ・サピエンスとして他者の考えを認識できる「心の理論」を身に着けた。10万年前以降初期ホモ・サピエンスとして自分自身の考えについてじっくりと考える内省能力を発達させた。4万年前以降現代ホモ・サピエンスとして自伝的記憶(エピソード記憶)という能力をものにした。そして脳の能力が向上するにつれて、死者を埋葬したり、悼んだり、恐れたりするようになり、その死者の地位が向上して神となり、人口の増加に伴い複数の神々が序列化され、今の宗教につらなったと考えられている。
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著者は宗教学を専攻していた。著者の経歴は非常に特徴的である。 「大学に入ってからは宗教学を専攻し、神々が目に見える姿で人の前に現れるときのさまざまな形について学んだ。それから人類学を専攻した大学院生のときに、似ても似つかない文化で驚くほどよく似た神が祀られていることを知った。医...
著者は宗教学を専攻していた。著者の経歴は非常に特徴的である。 「大学に入ってからは宗教学を専攻し、神々が目に見える姿で人の前に現れるときのさまざまな形について学んだ。それから人類学を専攻した大学院生のときに、似ても似つかない文化で驚くほどよく似た神が祀られていることを知った。医師および精神医学者になってからは、脳の研究に携わりながら、脳のどこに神々がいるのだろうかと問い続けてきた」 神が人間の産物であるとするならば、それがどのように生み落とされたのかを探求するのは無駄ではあるまい。神々がどのようにして人間の中に生まれたのかというのを語るにはうってつけのキャリアかもしれない。著者は宗教学と脳神経科学を学び、「神々がどこから来たのかについて、本書では、人間の脳からだと主張する」からだ。著者の主張は、具体的には脳が次のような五段階の認知的発展を遂げたからだという。著者はそれぞれに脳の特定の部署の発達を要因として見ている。 ・脳の著しい大型化や知能全般の大幅な向上 - 200万年前 (ホモ・ハビリス) ・自分を認識できる能力 - 180万年前 (ホモ・エレクトス) ・他者の考えを認識できる能力 (心の理論を持つこと) -20万年前 (古代型ホモ・サピエンス) ・自分自身の考えについてじっくり考える内省能力 - 10万年前 ・自伝的記憶(自分を過去だけでなく将来にも投影する能力) - 4万年前 (現代ホモ・サピエンス) 神々が心の理論を持つと想定すると、社会にとっていくつかのメリットが生じる可能性がある。まず、神々が人の心を読めるという信念につながると、それはある種の社会秩序につながる。 また、内省的能力は、言語の発達にもつながり、両者はそろって発達した可能性がある。なぜなら、自らの考えを持たなければコミュニケーションとしての言葉を持つことは想像しがたいし、逆に言葉の存在が明確な内省の対象となる自己を構築することを手助けしただろう。 そして、その結果として自伝的記憶が死の認識につながった。それは宗教誕生の萌芽となるものだ。 脳の発達とそれに伴う認知の発展は、農業革命につながり、定住社会が始まった。そのため、死者の遺体を埋葬した場所の近くでずっと生活をするようになり、祖先崇拝が重要となった。そして、おそらくは1万年前から7千年前までのある時点で一部の祖先が、概念的に神々と見なされるようになったのではないか。すでに6,500年前には多くの神々がいることが残された文書から明らかになっている。この時期、世界中の各地で似たような形で宗教が生まれている。平行進化で神々が生まれたのは、それがある種の必然であったことの証左でもある。 宗教は、死の問題に対して答えを与え、現実的にも宗教によって統べられる集団に所属することで、心の支えや社会的な保護を受ける機会を与えた。その後、政治的統治体制と結びつき、強化し、信者の経済的、政治的、軍事的な成功によって決まった。そして、宗教は発展した。 本書の図8-1がすべてを表している。 最後の章で、デュルケーム、ニコラス・ウェイド、デイビッド・リンデン、ダニエル・デネット、ジュリアン・ジェインズ、リチャード・ドーキンス、スコット・アラン、パスカル・ボイヤーなどが取り上げられるが、いずれも断片的で、もう少し落ち着いた理論的構築が欲しかったか。 デネットの『解明される宗教』でも読んでみようかな。
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「神」がどのように発生したか、という意味ではタイトル通りだが、実際は人類の進化から脳の変化、そして知能の変化に伴って”神”を人類が”文明”を持つうえで必要とした状況を時系列的に説明している。 そのため、人類と神の関わりに至るまでも長いし、特定の宗教について語られることも無い。 あ...
「神」がどのように発生したか、という意味ではタイトル通りだが、実際は人類の進化から脳の変化、そして知能の変化に伴って”神”を人類が”文明”を持つうえで必要とした状況を時系列的に説明している。 そのため、人類と神の関わりに至るまでも長いし、特定の宗教について語られることも無い。 あくまでも、人類発達の過程で何故”神”という概念がもたらされたかを脳科学的に説明している。 しかし、太古の民の頭蓋骨からここまで多くの事がわかるのは本当に驚き。 いかにして人類は進化し、意識を手に入れ、狩猟民族から農耕民族に変わり、定住し、文化や芸術を発展させたのかが分かりやすく書かれていて、中学や高校の歴史でも入り口でこういう視点からの話があれば、ただの暗記科目ではなくずっと楽しく学べるだろうに残念。
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いい題材だけど、おおむね筋書きがわかっていることもあってか、単調だからか、起伏がないのか、とりあえず面白くないや。
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人類史を脳科学からみていくという内容。子供の描いた絵をみて、初期人類の描いた絵と似ているなと思ったことがあるのですが、初期人類の頭の中が、現代人の子供と同じレベルという見方で研究してる人はいないのかな?と思っていたら、この本。もちろん私は思いつきでしかなく、脳科学はもっと複雑でし...
人類史を脳科学からみていくという内容。子供の描いた絵をみて、初期人類の描いた絵と似ているなと思ったことがあるのですが、初期人類の頭の中が、現代人の子供と同じレベルという見方で研究してる人はいないのかな?と思っていたら、この本。もちろん私は思いつきでしかなく、脳科学はもっと複雑でしたが、世界中に見られる初期人類の痕跡が、よく似ているのは脳科学から解決できるというところがおもしろかったです。脳科学は発展途上の研究分野ですが、人類史に応用できるところまで来ました。
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