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方丈記 の商品レビュー

4.1

44件のお客様レビュー

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2026/04/08

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖と、またかくのごとし。」 このあまりにも有名な冒頭は、読むたびに静かに胸に響く。漢語の硬質な響きとは異なる、大和言葉ならではのやわら...

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖と、またかくのごとし。」 このあまりにも有名な冒頭は、読むたびに静かに胸に響く。漢語の硬質な響きとは異なる、大和言葉ならではのやわらかな響きと深い余韻が、意味を理解する前に情感を伝えてくれる。その余韻の中で、無常の感覚がすっと胸に染み入る。『平家物語』や『草枕』の書き出しにも通じるこの感覚から、改めて日本語の豊かさと力強さを味わうことができる。 本書は鎌倉時代に鴨長明によって記された随筆である。全体は大きく二つに分けられる。前半では度重なる災厄の記録を通して、住まいと生の儚さが無常観とともに描かれる。後半では、長明自身の来歴と、終の棲家となった方丈の庵での閑居の生活が静かに綴られている。この対比的な構成により、外界の不安定さと内面の静けさが際立ち、無常という主題が多面的に示されている。 出家遁世した長明は、一見すると無常を受け入れた静かな境地にあるように見える。しかし一方で、和歌や音楽などの風流を手放さず、俗世への未練や自らの在り方への執着も率直に語る。そこには、すべてを捨て去った者ではなく、何かに心を寄せたまま生きる人間の姿が浮かび上がる。 和歌にまつわる逸話も、それをよく示している。「瀬見の小川」の歌は当初正当に評価されなかったが、後にその価値が認められ、『新古今和歌集』に採られることとなった。長明はこれを喜びつつも、評価に一喜一憂する自分の心を自覚し、やがてそれさえも執着に過ぎないと受け流したとされる。この姿から、無常を理解するとは、ただ手放すことではなく、変化を受け入れ、揺れる心を抱えながら生きることなのだと実感させられる。 長明は、無常を理解しつつもなお何かに心を寄せてしまう。その矛盾の中に留まり続けた人だったのではないか。そのあり方は達観とは少し異なり、現実に生きる人間の姿に近い。無常とは外界の変化にとどまらず、人の心の揺れそのものにも現れる。その矛盾を抱え続けた長明の姿こそ、無常の感覚を身をもって示している。 長明の心を思い浮かべながら、その逸話にまつわる一首を紹介する。 石河の瀬見の小川のきよければ月もながれをたづねてぞすむ 長明の生き方は、心の揺れや迷いさえも否定せず、静かに受け入れる柔らかさを教えてくれる。私たちもまた、移ろう日々の中で揺れながら生きている。同じではいられない──その揺れの中にいること自体が、すでに無常なのかもしれない。

Posted byブクログ

2026/03/22

現代語訳がとても読みやすい。また、原文は格調が高い。訳を先に読むと、原文もよく理解できる。短いものではあるが、この世の儚さや無常を端的に表現した名作である。

Posted byブクログ

2026/02/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作品情報 タイトル:方丈記 著者:鴨長明 形式:電子書籍(Kindle Unlimited, 光文社新訳古典文庫) かかった時間:約1時間30分 読みやすさ:★★★★★ 方丈記 - 光文社古典新訳文庫 読み方に関する振り返り 岩波文庫から光文社古典文庫に変更。 実はこのチャレンジ、当初は「岩波文庫チャレンジ」として始めたのだが、まさか岩波文庫がここまでラスボス扱いされているとは微塵も知らなかったわけである。数冊読む中で「おや….難しいぞ….?日本語はわかるけど、1mmも理解できない…」と感じていたところ、今流行の三宅先生のYouTubeを見て、「岩波は分かりにくい」ということを知る。 代わりにおすすめされていたのが光文社新訳古典文庫。岩波のカバーの方がかっこいいので一瞬迷ったが、プライドもへったくれもなくすぐに乗り換えた。結局、網羅性では岩波に分があるのでまた挑戦することにはなるのだ。古典チャレンジと題している以上、岩波から逃れられるわけがない。 光文社は本当に素晴らしく分かりやすい。解説が豊富で、理解が20%から50%に上がる感覚。訳者の名前やエピソードにも多くページが割かれていて、彼らにも思いを馳せることができる。 選んだ理由 「日本なりの幸福の在り方を知りたい」と言ったときにChatGPTが推薦してくれた。 感想 感動。素晴らしい。 「日本的感性ここに極まれりじゃないか?」とすら思った。これを中等教育で習うことの人格形成への影響は非常に大きいんじゃないかと感じた。流石、日本三大随筆に数えられるだけあって、文章は美しく整っていて感動。 ① 状況を受け入れ適応していく日本人イメージの源流はここにあり 日本人は状況を受け入れて適応していくのがうまいと言われる。いわゆる「いじめられっこマインド」である。それは人知を超えた自然災害が多い国だからこそ形成されたキャラクターだとも言われる。そして方丈記はまさに、自然災害やどうしようもない出来事に見舞われた日本人の態度を描いている。 方丈記の舞台は鎌倉時代初頭。鴨長明の時代は大地震・火災・飢饉が頻発していて、悲惨である。これは出家も共感できるレベルだと思った。当時は災害や飢饉への対応も不十分で、どうしようもなく精神的救いを求めるしかなかったのだろう。そこに仏教の無常観が重なり、「全て流転する」「受け流す」マインドができていったのだと思う。 現代では「問題を改善しようとせず逃げる」と批判されがちだが、実は絶望的な時代を生きた先人の生き抜く術でもある。それを知ると、むしろ現代の幸せに生きるヒントがここにあるのではと思う。 ② 平穏な世俗離れのすすめ この「受け流すマインド」を体現したのが鴨長明本人。世の中に絶望して出家し、世俗離れした生活を送った。 彼の態度はニヒリズムとも違っていて、世の中への期待を一切持たない、静かな怒りに近い。最近のZ世代の感覚にも似ていると思った。 権威のある者は欲深くて、心が満たされるということがない。誰とも関わらない孤独な者は、後ろ盾がないことから軽んじられる。財産があれば心配が多くなるし、貧乏なら悔しさや恨みの気持ちが去らない。人を頼りにすれば、その人の言いなりになってしまう。人を養い育てると、自分の心が愛情に振り回されてしまう。世間の常識に従えば、苦しくなる。従わなければ、まともではないと思われてしまう。 『方丈記』鴨長明/光文社古典新訳文庫 鴨長明は都を離れ、移動式の仮住まいで生活。花鳥風月を愛でる姿は映画『Perfect Days』を彷彿とさせる。 夜、静かなら窓から月を眺めて亡き友を思い出し、猿の声に涙する。 『方丈記』鴨長明/光文社古典新訳文庫 ↑猿って…(笑)。 現代では働かなければならないから同じことはできないが、私は大学生なので、今のうちに花鳥風月を楽しむ時間を作って感性を養いたいと思った。AIが雇用を奪い尽くしたX年後の未来には、理想の在り方はむしろ鴨長明の方丈記かもしれないのだから。 さいごに 建暦二年に書かれた本書は、全然古臭くない。むしろ令和にも通じる「最先端のナウい感覚」がここにあった!現代の若者を理解するヒントは実は方丈記にあるのかもしれないと思ったりする。とても面白かった!!!

Posted byブクログ

2025/12/30

年末の読書会の課題本。 挫折してた。 わざわざ読まないけどだれもが知ってる名文句。 なんとなくこの世に未練があるかんじの作者がいいかんじ。もしかしてさとってないんじゃ?小さい家にいても時々都いってる?というところが800年も読まれてきた所以かなぁ?なんて。

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2025/11/29

さすがに原文を読んでもさっぱりわからないけど、このように訳を読んでみると、現代でも活かせることがたくさんあると思った。古典はあまり読まなけど、いいものだなと。 やどかりは小さな貝を好む。そのほうがよいと知っているのだ。それと方丈の庵を作った自分を重ねる。 「世間に近く住むことがど...

さすがに原文を読んでもさっぱりわからないけど、このように訳を読んでみると、現代でも活かせることがたくさんあると思った。古典はあまり読まなけど、いいものだなと。 やどかりは小さな貝を好む。そのほうがよいと知っているのだ。それと方丈の庵を作った自分を重ねる。 「世間に近く住むことがどういうことか、どうなるか、すでに知っているから、もう何かを望むこともないし、あくせくすることもない。静かに暮らすことだけを考え、余計な心配のないことそのものを楽しんでいる」

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2025/04/16

まず率直にエッセイとして面白い。鴨長明の無常感が、人と住まいを軸に展開されていき、素直に共感した。 その一方で、解説にも書いてあることだが、長明は現世を達観しているとは言い難い。仏道修行に身が入らず、芸能への情熱を残し、世間の目を気にする素振りもある。その揺れる長明の心は、現代...

まず率直にエッセイとして面白い。鴨長明の無常感が、人と住まいを軸に展開されていき、素直に共感した。 その一方で、解説にも書いてあることだが、長明は現世を達観しているとは言い難い。仏道修行に身が入らず、芸能への情熱を残し、世間の目を気にする素振りもある。その揺れる長明の心は、現代を生きる私たちと何ら変わりのないものだ。だからこそ共感出来る。何度でも読み直したい一編である。 現代語訳と原文が共に収録されているため、私のような古典ビギナーにも親しみやすかった。次は原文を読んで、美しい和漢混淆文のリズムに浸りたいと思う。

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2025/01/08

「行く川の流れは絶えずして~」有名な冒頭。約800年前に書かれたあれこれは現代にも当てはまることばかり。きっと800年後も同じことの繰り返しを人間はやっているはず。だとしたら今生きている私達がしていることってなんなんだろう?とか思いにふけってみたり。達観してるように見える作者が実...

「行く川の流れは絶えずして~」有名な冒頭。約800年前に書かれたあれこれは現代にも当てはまることばかり。きっと800年後も同じことの繰り返しを人間はやっているはず。だとしたら今生きている私達がしていることってなんなんだろう?とか思いにふけってみたり。達観してるように見える作者が実は俗世を気にしてるという点もリアルっぽくて良い。読む側の年齢によってもこの古典の中身の受け取り方は変わってくるんだろうなと思いながら、しばらく寝かせて再読できればいいなと思う。

Posted byブクログ

2024/11/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大火や飢饉、大地震が立て続けに起こり、物に執着しても仕方が無いと痛感し、簡易な方丈の庵で暮らす。出家して山に暮らしながらも、短歌や楽器は断ち切れず、人間味がある。 ストレスからは逃げれば良い、簡易な庵と趣味さえあればどこででも生きていけると。 肩の力が抜けて、そんな暮らしも良いかもしれない。

Posted byブクログ

2024/09/01

いつでも他の選択肢を取り得ることの心の余裕というのは何においても言えることだと思ました。 いくつかの選択肢を抱えておきたいです。

Posted byブクログ

2024/04/26

1000年以上前の書物なのに現代にも通じる考えや共感出来ることばかり。冒頭の「ゆく河の流れは絶えずして」、この一文で社会を表しているのがすごい。そうだよね。誰もが羨む成功者も豪華な家々も、川を流れている水と同じで、ずっと留まることは出来ない。時間が経てば、豪邸は朽ち果て、どんなに...

1000年以上前の書物なのに現代にも通じる考えや共感出来ることばかり。冒頭の「ゆく河の流れは絶えずして」、この一文で社会を表しているのがすごい。そうだよね。誰もが羨む成功者も豪華な家々も、川を流れている水と同じで、ずっと留まることは出来ない。時間が経てば、豪邸は朽ち果て、どんなにイケメンやスーパースターでも歳をとって老けるし、病気にもなって、次第にみんなから忘れられ、最後は一人で呆気なく死ぬ。この世の全てのものは栄枯盛衰である。大災害が起きれば、建物も人も全て一瞬で無くなってしまう。だったら家とか物に拘泥するのはバカバカしくないか?そんな、良くよく考えてみれば、当たり前だけど、大切で忘れがちなことを方丈記から教えられた気がした。 このことを心に持っておけば、人生につまづいた時に物事いつまでもうまくいくとは限らない、いつかは廃れるものだからな、と思えて楽になりそう。悟りを開いたような感じ。こんな風に生きて、気楽に生きれたらなあ。人生に辛くなった時は、方丈記を読み返したい。 発心集の「貧男、差図を好む」も面白かった。

Posted byブクログ